マルコ筆・福音書

道を備えし者

1 誰もが待ちこがれた・・・・・・彼の出現を。預言されし救世主キリスト、神の一人子ひとりご の来たる時を。この最高な知らせゴスペルを耳にする日を。その者の名を。この最高な知らせゴスペルの始まりは、 2 預言者イザヤがむかしむかーしに記した預言からとなる・・・

「よく聞け。私はの前に使者を送る。その使者が道を整える・・・!」 ―― 【聖書:マラキ書3:1より引用】

3 「荒地で叫ぶ声がする・・・“神のお通りだ、道を整えろ・・・!神のために道をまっすぐにするのだ”」 ――【聖書:イザヤ書40:3より引用】

4 この使者とは、とある荒地で人々を水にからせ、洗礼バプテスマを授けていた人物のことである。通称、洗礼者バプティストヨハネ――【洗礼バプテスマとは、水の中に全身をひたす行為。今までの的外れな生活をやめ、神に従い始める決心を表すものだ】

――洗礼者バプティスト・ヨハネ――

――「神さんは、人の犯した過ちをゆるしたいと思うてくれてやす・・・。もし、神さんにゆるしてもらい、神さんが用意する人生を歩みたいなら、生き方、考えを改める決意として、洗礼バプテスマを受けなされ。水から上がって道を改めた時にゃあ、おのれの犯した過ち、しがらみから自由となりやす・・・!!!」

5 洗礼者バプティストヨハネが伝えるメッセージは瞬く間に広まった――

「き、聞いたか!預言者が現れたらしいぞ!」

「俺も聞いたぞっ!たしかヨハネという名の男だよな!」

「そう、あそこの荒地にいるらしい!何でも、各地方から人がぞくぞく集まってるって話しだ!」

これを聞いたエルサレムやユダヤ中の人が、洗礼者バプティストヨハネを見に次から次へと集まって来た。洗礼者バプティストヨハネは、なりふり構わず真理をドンと語った。自分の犯した過ちを告白する人は続出し、洗礼者バプティストヨハネによってヨルダン川の水に体をひたしてもらった。そう、洗礼バプテスマを受けたのだ。まさに預言どおり、救世主キリスト・イエスの道が整えられていった。

6 ところで、洗礼者バプティストヨハネは普通の人とはちょっと違っていた。いや、ちょっとどころではない。彼はらくだの毛皮から作った服にかわおびを締め、それを着こなしていた――【実はこれ、伝説の預言者であるエリヤと同じ格好なのだ】

そんな原始人みたいな格好をしていた洗礼者バプティストヨハネの食事はというと、いなごとハチミツのみ・・・。

7 変わり者に見える反面、彼は威厳いげんをまとい、きもが座っていた。人は彼が来たるべき預言者だと言い、偉大な者としてうやまっていた。そんな洗礼者バプティストヨハネ本人が人々へ、こう宣言した。

――「あっしの次に来る方は、あっしみたいな預言者よりも遥かに。あっしにゃあ、その方の靴ひもをほどく価値すりゃ・・・8 あっしは、水によって洗礼バプテスマを授けてやすが、その方は神の霊ホーリースピリットによって授けやす・・・!!!」

洗礼者バプティストヨハネほど偉大な人を見たことがない群衆は、驚いたと同時に胸が躍った。

一人子ひとりご洗礼バプテスマ

9 ちょうどそのころ、洗礼者バプティストヨハネの手で水にからせてもらうため、イエスは生まれ育ったガリラヤ地方にある丘の上のナザレ村からヨルダン川に出向いた――【その距離およそ15-80㎞。ヨルダン川の長さは延べ251㎞である】

10 ざぶんッ・・・

イエスが水から上がった瞬間――

カッ!

空が引き裂かれたように明るくなり、神の霊ホーリースピリットが自分の上に舞い降りてくるのがイエスの目には見えた。それは、パタパタと、まるでハトのように・・・

11 「!」

「――むすこよ・・・愛しているぞ・・・おまえは私の誇りだ――!!!」

天から響きわたった声。それは、神の喜びの声であった!

悪魔の挑戦

12 神の霊ホーリースピリットまじわったイエスは、彼の導きによって荒野へ送り出された――

13 ワォ――ン・・・

時にけものの鳴き声も聞こえるこの場所は、悪魔王サタンの誘惑がクモの巣のように張り巡らされていた。

待ち受けていたのは40日にも及ぶ悪魔王サタンの誘惑。それはつらーい試練である。この乗り越えるべき試練に耐えるイエスを守り続けていた者たちがいた。神より派遣されし、天使たちだ。

救世主キリストが動く

14 力強く試練を乗り越えたイエスは、ガリラヤ地方を皮切かわきりに、誰もが待ちこがれていた最高な知らせゴスペルを伝え始めた!それはちょうど、洗礼者バプティストヨハネが投獄された後のことだった・・・

15 「時は満ちた、最高な知らせゴスペルだ!アクマの支配下と化したこの世へ、神の王国軍キングダムが乗り込んだ!!心を入れ替え、神の王国軍キングダムに加わるのだ・・・!!!」

イエスの仲間集め

16 ガリラヤ湖――【ヨルダン川中流に位置し、面積はおよそ165㎢】

イエスがガリラヤ湖のほとりを歩いていると、漁師であるシモンと弟のアンデレを見つけた――【シモンは後に岩のペテロとして知られる】

――漁師の兄弟シモンとアンデレ――

いよっ!パシャーン・・・

彼らは、小舟からあみみずうみに投げ入れてりょうをしているようだ――【当時は、魚を獲るために、ふちに丸く小さな重りをつけたあみを使用するのが一般的だった】

17 「シモン!アンデレ!俺について来い!に、俺がする!!!」

18 (え、今俺らに言ったのか・・・?)シモンとアンデレは見合った。

いよーし!2人はさっとあみを置いて、イエスの後を追った。

19 イエスはそのままガリラヤ湖のほとりを歩いていた――

次に見つけたのは、ゼベダイの息子、兄ヤコブと弟ヨハネだ。彼らは小舟に乗り込み、りょうに使うあみの準備をしているようだ。

――漁師の兄弟ヤコブとヨハネ――

20 「おーし、てめぇら今日もぎょうさん獲るどー!」

「へいっ!おかしら!」

父ゼベダイにやとわれた漁師仲間クルーも小舟に数人乗っていた。

「ヤコブ、ヨハネ!行くぞッ!俺について来い・・・!!!」

イエスはまるで親友を呼ぶように、2人を呼んだーー【のちにこの2人は雷兄弟 兄ヤコブ 弟ヨハネ と呼ばれる】

「オヤジィ、仕事中にワリィ!俺たちゃ行くぜ!!」

2人は父と漁師仲間クルーを残してワックワクしながら小舟を降りたのだった――【この時代、がくのある師について行くことは、非常に名誉あることとされていた】

悪魔の追放

21 イエスと仲間たちはガリラヤ湖沿いの町“カペナウム”に向かった。

休日サバスになるとイエスは、ユダヤ集会所シナゴグに行って教え始めた―― 【ユダヤ人にとって休日サバスは、宗教的な義務として働くことができない日であり、 ユダヤ集会所シナゴグに言って聖書の話しを聞く日でもあった】

22 人はイエスの教えに仰天した!掟の学者や、そこらの教師とは違い、絶大な権威を持って話したからだ。イエスが話し始めると人々は引き込まれ、釘付けになった。

23 そんなある時、悪魔に取りかれた男がユダヤ集会所シナゴグにやってきたかと思うと、突然叫びだすではないか!

24 「ナ゙ァザレノイェズゥダト・・・!?ナ゙ッナゼココニイル?我々ヲ滅ボス気カ、アァ?俺ハ知ッテルゾォ!!ハァハァ・・・オマエハ神ノ聖者ダァ〰〰!」

25 「黙れ、失せろ」

イエスは悪魔をギロっとにらみつけた。

「ウ、ヴア゙ァ〰〰〰〰!!!」

26 悪魔は男の体をブルブル震わせ、叫び声を上げて出て行った。

27 それを見た人たちは恐怖のあまり心臓が止まりそうだった。

「い゙ッ、いったい、何が起きてんだ?!こんなの、見たことも、聞いたこともないぞ・・・!あの方の言葉にはとてつもない権威がある・・・悪魔さえも従うなんて・・・!!!」

28 こうして、イエスの評判はガリラヤ地方に爆発的に広まったのだった。

シモンの義母の高熱

29 イエスと仲間たちは、シモンとアンデレ兄弟の家に行くため、ユダヤ集会所シナゴグを後にした。もちろんヤコブ、ヨハネ兄弟も一緒だ。

30 シモンとアンデレ兄弟宅――

ゔッはぁはぁ・・・家に入ると、シモンの義理の母が高熱でうなされていた。

31 イエスは彼女の手を取るとスッと立たせた。

「!」

(あ、あれ・・・?)気付けば、病気が治っているではないか!シモンの母親は、驚いて目をパチクリさせた。しばらくすると状況が読めたのか、イエスに感謝して、仲間たちをもてなし始めたのだった。

32 同日――

多くの人は日が沈むのを待ち、悪魔に取りかれた人や病人を、ここぞとばかりにイエスのもとへ連れて来た――【当時、日の沈みをさかいに日付が変わった。 また、致命傷ちめいしょう以外の治療は仕事としてみなすユダヤ人たちが多くいたため、休日サバスの終わりを待たざるを得なかった】

33 町の住人たちがこぞって押しかけるので、家の周りはちょっとしたお祭り騒ぎだ。 34 イエスは人知を超えた力で次々に病人を治し、取りかれた人たちを悪魔から解放した。

その際、悪魔が喋ろうとすると、イエスはバシッと黙らせた――【イエスの正体を把握する悪魔が彼の正体を明かせば、たちまちローマ帝国への反乱を求める大きな騒ぎがおきかねなかったからだ。当時のイスラエル国は、ローマ帝国の配下にあったため、預言されし救世主キリストが来れば、きっとローマ軍を打ち負かしてくれるだろうと信じられていた。そのため、救世主キリストらしき人が現れる度に、ユダヤ人は反乱を起こそうと躍起やっきになっていた。暴動など起こしたくないイエスは、そうならないようにと非常に注意をはらっていた】

止まらない救世主キリスト

35 翌朝――

一人っきりで祈るためにイエスは家を出た。外はまだ暗くて涼しい。

36 イエスがいなくなってからだいぶ時間がたったが、一向に戻ってこない。何の音沙汰おとさたもなかったので、シモンは仲間を連れてイエスを探しに出た――

37 「い、いたぞー!」

「こぉ—んなとこにいたんスかッ!みんな探してたんスよー!」

38 「・・・今から近くの町や村へ行って、最高な知らせゴスペルを伝えるぞ。俺はそのために来た!」

イエスの目は燃えているようだった。

39 それから、ガリラヤ地方にあるユダヤ集会所シナゴグをくまなくめぐり、最高な知らせゴスペルを伝え、悪魔に取りかれた人たちを解放してあげたのだった。

重い皮膚病ツァラトの男

40 ドスッ!

ある時、重い皮膚病ツァラトおかされた男がイエスの前に来て、ひざまづいた。

「お願いです!どうか私の体を元通りに!先生のお気持ちひとつで治るのですから・・・!!!」

41 イエスは心を打たれた・・・ 。

「もちろんじゃないか!さあ、よくなれ!」

42 イエスが彼に触れると、皮膚病ツァラトはスーっと治っていった。 43 イエスは、帰ったあとの処置しょちに気をつけるよう、強く忠告した。

44 「いいか、このことはだれにも話してはいけない。これから自分の体を祭司に診てもらい、掟のとおり 、神へ捧げものをするんだ。そうすりゃあ、完全に治ったことが、誰の目にもはっきり分かる!」

皮膚病ツァラトが治った男は、感謝して別れのあいさつをした。

45 ――「みんなー!き、聞いてくれーィ!ナザレ村のイエス様がよー、絶対に治らねぇはずだったこの俺のやまいを治してくれたんだぁぁぁ!!!」

男は忠告されたにもかかわらず、町中の人にイエスの素晴らしさを言いふらしてしまった。こうして、イエスの評判はますます広まった。

すると、イエスをローマ帝国に反乱する王にまつりあげ、大きな騒ぎとなった。そのため、町の中に入れなくなってしまう始末。イエスは、ひとけのない場所で騒ぎが収まるのを待つことにした。

だが、そんな期待をよそに、さまざまな町や村から、人がぞくぞくつどうばかりであった。

屋根を掘る友人

1 数日後――

ガリラヤ地方を回ってきたイエスがガリラヤ湖沿いの町、カペナウムへ戻って来た。

――「戻って来たらしぃぞ・・・!!」

「ほんとか!!」

「あんたー、いえっつぁんが戻って来たってよぉ—!」

その噂は電光石火のごとく町中へ広まった。

2 イエスの話を聞こうと人がドドドっと集まってくる。そこでイエスは、ある家に入って教え始めると、あっと言う間に人であふれかえった。外もズラーッと人だかり。

3 ――「はぁはぁ・・・あ、あそこだッ!」

「もうすぐでよくなれっぞッ!」

そこへ、息を切らしてやって来たのは4人の男たちであった。いーや、彼らが担いでいる男を入れると5人になる。担がれている男は、身体からだ麻痺まひしており、動けなかったのであった。

4 「すいません!動けない友達がいるんです、通してくださいッ!!」

「頼む!通してくれッ!!!」

「・・・・・・ク、クソォ!こんなに人がいちゃあ、どうやっても入れねぇ」

「絶対に治してやっからな・・・!」

あまりの人だかりで、入り口に近寄ることすらできない・・・。

「ち、ちくしょう・・・こーなったら!」

――よーいしょ!よし、そおっとだ。

何を思い立ったのか、彼らは屋根に登り始めた。屋根に登ると、今度は他人の家の天井をはぎ始めるではないか!

「お、おい上を見てみろッ!」

中にいた人たちは、イエスの頭上を見た。ガサガサしているかと思えば、男たちが屋根をせっせとはいでいる・・・。

「な、なんてことしてんだ!!」

麻痺まひして動けない友達がいるんです!!」

「先生!今から下ろしますんで、どうか治してやってくださいッ!!」

すると、麻痺まひした友人を布団ふとんに載せたまま、ひもでそっとイエスのもとへ吊り下ろした。

5 イエスは屋根の上にいる4人組が“イエスに診せれば治る”と確信したがゆえにとった行動だと見た。それから横たわっている男に発した。

「イスラエル国の子よ、あなたの過ちはゆるされた・・・!」

6 そこに数人いた掟の学者は思った―― 7 (な!なんてバチ当たりな・・・!過ちをゆるせるのは神様のみぞ・・・)

8 「なんだ?」

イエスはその思いを察した。

9 「目には見えないし、言うのは簡単だなんて思ってるのか?なら、この動けない男に立って布団ふとんをたたみ、歩けと言って、なーにもかも起きたらどうだ?

10 それを目にして俺、つまりが、この世で過ちをゆるす権力がないなんて言えまい・・・!」

イエスは全身麻痺まひした男を見た。

11 「さあ立ちあがれ!布団ふとんをたたんで家へ帰るんだ!」

12 すると男がバッと立ち上がるではないか!あごが外れそうになっている人たちの前で、全身麻痺まひの男が布団ふとんを持って出て行った・・・。

・・・・・・ウ、ウォォォ・・・!バ、バンザーイ!バンザーイ!!バンザーーイ!!!

そこにいた人たちは驚愕きょうがくして、神を讃え始めた。

「こ、こんなことってあんのかよ・・・!!!」

ゴロツキとつく食卓

13 イエスが向かうところは、人、人、人!イエスがガリラヤ湖に向かっている途中、いつものように人が集まって来たので、神についてさまざまなことを教えた。

14 その後――

イエスは、ガリラヤ湖のほとりを歩いていた。すると、アルパヨの息子であるレビを見つけた。

ーーアルパヨの息子・レビーー

レビは机を並べ、イスに座って商売をしている。税金取りだ。

――「俺について来い!」

バタンッ・・・

税金取りのレビは即座に何もかも置いてイエスの後について行った!

15 その日の午後――

イエスは仲間たちと一緒に税金取りを先ほど辞めたレビ宅にいた。レビのほかにも多くの税金取りや、評判の悪い人たちがイエスについていく決断をし、食事を共にしていたのだ。

16 イエスがそんな人たちと一緒に食事をしているという噂が広まり、パリサイ一派の掟の学者たちがやって来た――

「きみ、なぜ彼はこのようなゴロツキたちと食卓を共にしているのですか?」

17 イエスの一味に尋ねた声は、イエスの耳にまで届いた。

「いいか、医者は病人のためにいる。健康な人には必要ない。俺も同じく、正しい人のためではなく、を招くために来た・・・!!!」

イエスが直々じきじきに掟の学者の問いに答えた。

まじわらない古きとあらた

18洗礼者バプティストヨハネやパリサイ一派の弟子たちは断食だんじきしておりますが、あなたの弟子はなぜ、断食だんじきしないのですか?」

この頃、洗礼者バプティストヨハネとパリサイ一派の弟子たちは、断食だんじきをしていたが、イエスの仲間たちはしなかった――【ユダヤ人は、熱心に神を求める名目で断食だんじきをたまに行っていたのだ】

19 この問いにイエスは、3つの例えを用いて答えた。

花婿はなむこを祝う結婚式に招待された客がこんなめでたい時に断食だんじきをすることなんてないだろう。

20 花婿はなむこと共にいるんだ。断食だんじきをする必要はない。だが、花婿はなむこが彼らのもとから離れる時が来る・・・!その時になれば、彼らも断食だんじきするよ。

21 古着のつぎあてに、新しいぬのを使う人はいない。そんなことをしたら、つぎあてた新しいぬのが縮んで古着が破れてしまう!

22 また、新しいワイン を古いかわ袋に入れる人もいない。そんなことをしたら、古いかわ袋は新しいワインの発酵はっこうに耐え切れずに破れ、かわ袋と一緒にワインまでダメになってしまう。新しいワインは、新しいかわ袋に入れるのが、お決まりじゃあないか!」

休日サバスを制す王

23 ある休日サバスのこと――

イエスが一味と麦畑の中を歩いていると、一味の中に麦のって食べていた者たちがいた。

24 コラッ!

それはパリサイ一派の目に入った・・・

「イエス先生、あなたの弟子ですが、麦のを摘んでおりますよ。本日は、休日サバスであることはご存知?立派な掟違反じゃございませんか!」

25 「聖書を読んでいるなら知っているだろうが、ダビデとその仲間たちの食糧がつきて、お腹が減ったとき、ダビデが何をしたか覚えているか?

26 アビヤタルが大祭司だったころ、ダビデは神殿に行き、神に捧げられているパンを食べた・・・。掟だと、捧げものを食べることができるのは祭司だけだったにもかかわらずだ。さらにダビデは、捧げものであるパンを仲間たちにも分け与えたじゃあないか!

27 休日サバスは、人を助けるために創られたものであって、人が休日サバスのために創られたわけじゃあない・・・

28 よって、休日サバスさえも王たるの支配下だ」

休日サバスに治す

1 また別の日のこと――

イエスがユダヤ集会所シナゴグに行くと、手に障害を抱えた男がいた。

2 その場にいた何人かのパリサイ一派は、イエスをじっと見ていた。

(見逃しませんよ・・・)

この日は働くことが掟で禁じられている休日サバスにもかかわらず、イエスが男の手を治すのではないかと目を光らせていたのだ――【休日サバスに働けば、神の民イスラエルである同胞から追放するというのが掟にはあった。人の解釈によっていつしか命に別状ない病気やケガの手当も仕事だとするのが常識となっていた。また、この法を破れば、“刑務所行き”または、“39回のムチ打ちの刑”が科される可能性があった】

3 ――「さあ、みんなに見えるよう、ここに立ってくれ!」

「はい!」

手に障害を抱えた男は言われたとおり、イエスのもとに来た。

4 休日サバスに認められていることとは何か。人助け、それとも人を傷つけることですか?危険から守る、それとも見殺しにすることですか?」

・・・・・・・誰もが黙りこんで、答えようとしない。

5 イエスはパリサイ一派の頑固さに、じわじわと怒りが込み上げてくると同時に、そんな彼らを心から残念に思った。イエスは、手に障害を抱えた男を見て、笑みを浮かべる。

「さあ、手を伸ばして!」

「ッ!」

手を伸ばした途端とたんに彼の手が治った・・・!これには、男もウヒョーッと大喜び!

6 ―― 一方、それを見たパリサイ一派は、何やら恐い顔つきで出て行った。当時、パリサイ一派はヘロデ党と敵対していた。にもかかわらず、それがウソだったかのように仲良くを練り始めた・・・!イエスを危険とみなした2つの派閥にとって、双方の敵対心は二の次になったのだ。

小舟からの教え

7 イエスが一味とともにみずうみへ向かっていると、ガリラヤ地方から大勢の人がついて来た。ガリラヤ地方にとどまらず、イエスの評判を聞いたユダヤ地方、 8 神殿のみやこエルサレム、イドマヤ地方、また、ヨルダン川の対岸たいがんや港町ツロ、 港のみやこシドン 周辺の地域から、人が面白いほど集まる。

9 あまりの多さに、イエスは仲間に小舟を準備させ、きしから少し距離をとった。人が押し寄せて来ないようにする必要があるほど人がひしめきあっていたからだ。

10 イエスが多くの病人たちを治していたので、山ほどの病人たちがわれ先にと押し迫って来る!

「イエスさまー!私も治して下さーい!」

「た、助けて下さい、イエスさまー!」

「こっちです!こっちもお願いしまァす!」

11 「ア゙ァァァ、カ、神ノ子ダァァ!」

中には、悪魔に取りかれた人たちもいた・・・悪魔たちはイエスを見ると、その場に倒れ込んでは叫ぶ。

12 しかし、イエスは自分の正体を明かさないようにと悪魔に厳しく命じた。すると、悪魔は口を貝のように固く閉じるのだった。

選ばれし十二使徒

13 イエスは、丘をのぼった。来たい人は丘の上で待ち合せようと一味へ伝えてあったからだ。仲間たちが現れると、 14 イエスはその中から12人を選び、使と名付けた。イエスは十二使徒を側近として置き、共に生活をした。イエスは使徒たちを中心に最高な知らせゴスペルを広めたかった。 15 また、悪魔を追い出す権威まで授けようと思っていたのだ!

16 イエスに選ばれた12人。

――十二使徒――

岩を意味する“ペテロ”と呼ばれたシモン、

17 ゼベダイの息子で“雷兄弟”と呼ばれた兄ヤコブと弟ヨハネ、 18 ペテロの弟アンデレ、 ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマスと続いて、 アルパヨの息子ヤコブ、 タダイ、右翼うよくのシモンだ。

19 おっと忘れちゃいけないのは、イスカリオテ出身のユダ。後にイエスを敵の手にわたす男である・・・。

悪魔のちから?神のちから?

20 イエスが家に帰ると、たーくさんの人がまたもや押し寄せて来た。その数はイエスと一味たちが食事をとろうにもとれないほど・・・。

21 ――そのころ、“イエスの気が狂った”という噂を聞いて、イエスを連れ戻そうと家族が向かって来ていた。

22 それもこれも、神殿のみやこエルサレムから来た掟の学者が次のように言いふらしていたからだ。

――「あのイエスが悪魔を追い払える理由をズバリ答えましょう!悪魔のかしらに取りかれているのですよ。みなさん、考えてもみてください・・・家来けらいの悪魔が言うことを聞くなんてあたり前ではないですかぁ!!!」

23 ――みんな!

イエスは注目を集めた。

「悪魔が悪魔を追い出せると思うか? 24 内戦をしている国はもたない。 25 もめごとが絶えない家族も続かない。 26 悪魔のかしらである悪魔王サタンだって同じさ。仮に内輪うちわで争っているならそのうち悪魔の一味は崩壊する。

27 これで分かったと思うが、あの噂は見当違いだ。誰が悪魔最強である悪魔王サタン陣地じんちへ入り、ヤツのものを奪い去れる?そりゃあ悪魔王サタンを大きく上回る者だ。屋敷やしきおさを縛り上げ、おさの財産を好きなだけ奪い去る強者つわもののように、俺は悪魔を追い払う必ず悪魔王サタンを縛り上げる・・・!!!

28 人が犯す全ての過ちは、神の冒涜ぼうとくも含め、確かにゆるされる。 29 だがな、神の霊ホーリースピリットが成す、素晴らしい働きを冒涜ぼうとくするとなれば、話が違う。その人がゆるされることは永遠にないだろう。その過ちがもたらす罪悪感は永遠に消えない・・・!!!」

30 イエスの持つ神の霊ホーリースピリットを掟の学者たちが悪魔だと非難し、言いふらしていることへの忠告だった。

イエスの家族はだれ?

31 一方、イエスの母マリヤと弟や妹たちはというと、イエスを呼びに来たのはいいものの、あまりの人だかりで家の中に入れずにいた。

―― 「私はイエスの母なのですが、呼び出して来てもらえないですか?」

「あれま!イエスさんのお母さんでらっしゃいますか!少々お待ちをッ!」

イエスの家族はこのようにして数人を送り込んだ。

32 家の中では、たくさんの人がイエスを取り囲んで座っている。

「イエスさん、お話中にすいやせん!お母さんや弟さんに妹たちがお呼びで!」

33 「俺の母、兄弟とは誰だ・・・?」

そこにいた仲間たちは「?」となった。 34 イエスは、周りに座っている仲間たちを見わたした。

「ここにいるみんながそうじゃねぇか! 35 ・・・俺の母、兄弟姉妹とは、神が望むとおりに生きる人のことだッ!」

種まき農夫

1 さて、イエスはというと、みずうみのほとりで教えていた。もちろん、今日も大きな人だかり。

――「押すなぁ!」

「もっと詰めてぇな!」

あまりの数にイエスはそこにあった小舟に乗り込んだ。

(ふぅ・・・これで落ち着いて話せる・・・)

小舟の上に腰を下ろしたイエスは、みんなに教えはじめた。群衆は、みずうみのほとりで興味津々。

2 イエスは、神について多くのなぞかけをした。今日はどんな話を聞けるのかと、集まって来た人たちはワクワクしている。

3 「よし聞くんだ!あるところにいた農夫が、作物の種をまくために出かけた時の話だ!

4 彼が種をまくと、いくつかの種が道ばたに落ちた。するとどうだ!そこに鳥たちがひょいとやって来て、落ちていた種をあっという間に食べ尽くしてしまった!

5 ある種は、岩でゴツゴツした土が足りない地へ落ちた。土が浅くて、すぐに芽を出したは良いが、 6 日がのぼるとひからびてしまった!根を深く張れなかったからだ。 7 ある種は、いばらがしげる草むらに落ちた。しばらくすると、周りのいばらがすくすく成長した。それは、せっかく育ち始めたいい芽の成長を遅らせ、しまいには、実を結ぶことができなかった。

8 だが、よい地に落ちた種はどうだ!グングン成長して、をつけた!ある種は30倍、ある種は60倍、そしてある種は100倍もの実を結んだんだ!! 9 聞く耳があるなら、よく聞くんだ!」

なぞかけ

10 みずうみでの話しも終わり、群衆と別れると、十二使徒と他の仲間たちがイエスのもとに集まってたずねた。イエスがしたなぞかけについてだ。

11 「おまえたち以外の人には、なぞかけの心を明かさず、真理を教えるわけか?隠された真理を知る特権はまだ、おまえたちにしかないからだ」

仲間たちの目は輝いた。

12 「聖書のイザヤ書にあるとおりだ・・・“彼らは目を凝らして見ようとするが、見えない。何度も聞こうとはするが、理解ができない。もし理解すれば、必ず私のもとにかえってくる。さすれば、私は喜んで彼らをゆるそう”」

なぞかけの心は?

13 目が点になっている仲間を見てイエスは察した。

「・・・もしかしておまえたち!この物語の意味が分からないのか・・・?おいおい、なら他にした話だってさっぱりってことじゃあねぇか! 14 あのな、“種まき農夫”のなぞかけで話した農夫は、神の真理を種まきのように広める人のことだ。 15 いいか、たまに道ばたにこぼれる種がある。これは神の真理を聞いても、すぐに悪魔がやってくると、いとも簡単に植えられた真理を奪われ、忘れてしまう人のことだ。 16 ある人は、岩でゴツゴツしている地へ落ちてしまった種のように、神の教えを聞いて、すぐに、しかも喜んで受け入れはするんだが、 17 心に深く根付かせようとしない。こんな人は長続きしない。受け入れた真理が理由で自分の身になにか問題が起こると、やすやすとしっぽを巻く。 18 ある人たちは、いばらがしげる草むらに落ちた種のように、神の真理を聞いたとしても、

19 他のことで頭がいっぱいになる。将来への不安や金銭欲、また、その他に対する欲求不満。これらによって真理を吸収するのが遅れ、良い実を結べなくなる。 20 それ以外は、よい地にまかれた種のようになる!神の真理を聞くと、しっかり飲み込む。その人は、目を見張るように成長し、良い実をどんどん結ぶ!ある人は30倍、ある人は60倍、ある人は100倍だ!!!」

ベッドの下に隠されたランプ

21 「ランプに火をともし、うつわやベッドの下に隠したりする人がいるか?まずないな!周りを照らすためのもんだからな。 22 同じように隠されたものは、明らかになり、すべての秘密事が明かにされる! 23 聞こえるなら、しっかり聞け! 24 俺から聞いたことをしっかり飲み込むんだ。神はおまえたちが今、に合わせて、を定める。だが実際、必要以上に与えてくれるのが神だ! 25 ある程度の理解さえあれば、更にもらえるが、分からず屋は少ない手持ちさえ失う」

種の成長

26 神の王国キングダムは畑に種を植える男のようだ。 27 なぜ、どのようにして成長したかなどさっぱりな農夫をよそに、種は昼も夜も成長する。農夫が寝ていようが、起きていようがだ。 28 畑は、人の助けがなくてもを実らせる。種はなえになって、をつけ、の中には多くの実がなる。 29 が実をつけたとき、人はその実を刈り取る。これぞ、!」

からし種

30 イエスは続けた――

「何と比べれば神の王国キングダムを表せる・・・例えるならそうだな・・・」

31 と言って少しすると、にやっとした。

神の王国キングダムは、からし種のようじゃないか!植えられる種の中でも断トツに小さい。 32 でも、植えたらどうなる・・・?庭のどんな植木うえきよりも、大きな木へと成長する!鳥たちが木陰こかげに巣を作れるほど太い枝木えだぎやす!」

33 イエスは他にも多くのなぞかけを使って、みんなが理解できるだけのことを教えた。

34 集まる人には、決まってなぞかけをしたが、その心までは教えなかった。しかし、イエスの一味だけになると打ち明けたのだった。

嵐と睡眠

35 その日の夜だった――

「行くぞッ!次はみずうみの向こうぎしだ!」

イエスがこう言うと、 36 仲間たちは集まっていた群衆を残し、舟に乗り込んだ。

お、来たか!イエスはすでに小舟の後ろに座って待っていた。辺りには他にもいくつかの小舟が並んでいる。うし、出航だッ!

37 しばらくしてからのことだ――

ビュ――――・・・・・・

「風が強くなってきたな・・・」

「あぁ、これは荒れるぞ・・・」

風はみるみるうちに強くなり、波が高くなった・・・。

バッシャ――ンッ!!!ザッブゥ――ン!!!

みずうみがひどく荒れ狂いだした!

「ウ、ウワァ〰!沈没ちんぼつするぞぉ〰〰〰〰!!!」

波が勢いよく小舟を叩きつける。あっという間に小舟は水びたしになり、沈みかけた。

38 この非常事態の中、イエスはというと・・・ん?ね、寝ている???しかも、頭をまくらにうずめて鼻ちょうちんをふくらませて熟睡中。

(・・・こ、こんな時に!!!) 慌てふためきながらイエスを起こす仲間たち。

「イ、イエズ――ッ!なに寝てんだッ!!!俺たちがどうなってもいいのか?このままじゃあみんな死んじまいまずッ!!!」

39 イエスはスッと立ち上がると、小舟の外を見た・・・

「黙って静まれ」

す、すると・・・イエスの言葉に反応して突然嵐が止んだ!!!

40 イエスはすかさず、仲間たちの方に振り返った。

「おまえたちは、なにを恐れてやがる?まだ信じないのか?」

・・・・・・仲間たちの頭は真っ白で、少しの間ぼーっと立ちすくんでいた。

41 「こ、この方は・・・い゙、いっでぇ何者なんだ・・・?服従しているぞッ・・・か、風や水までがよぉ・・・!!!」

仲間たちは、恐ろしさのあまり互いに問うたのであった。

墓地ぼちに住むローマ軍団レギオン

1 イエスと仲間たちはみずうみをわたり、ゲラサ人の住む地に向かった――

・・・ガララ、ガチンッ・・・ガララ、ガチン・・・ガララ、ゴキィィィン・・・・・・

「・・・ヴゥオォォォォ!!!」

2 イエスが小舟を降りると、悪魔にかれた男が墓場である洞窟から出てきた。

3 なんと、取りかれた男は墓場を住みかにしていたのだ。鉄の鎖をもってしても、凶暴な彼を止めることができない。

4 というのも、過去に大の男たちが集まり、協力して手や足を鉄でできた鎖でつなぎ、固く縛って、どうにか助けようとした。だが、悪魔はその鎖をいとも簡単に引きちぎるではないか!それから何度も挑戦し、縛りつけたものの、取りかれた男はことごとく鎖を壊してしまった。もう誰も彼を止めることができず、野放しとなった男は、町の悩みの種となっていたのだった。

5 「ギィャア゙ァァァ・・・」

ガリ、ガリガリ・・・

男は昼も夜も、ほら穴の近くや山の上で叫び声をあげ、自分の体を石で傷つけていたのである――

6 取りかれた男は遠くからイエスたちの気配に気付いた。ドドドドッと勢いよくイエスたちのそばへ駆けて行くと・・・ヒッ!と目を見開きイエスの前にひざまずいた!

7-8 「ナ、ナゼアナタガココニ・・・???」

「こんの汚れた霊め、この男から消え失せろッ!」

「恐レ入リマス!モ、最モ偉大ナ神、イエスゥゥゥ!イッ一体、ワダシヲドウナザルオツモリデスガァァァ?!ドーカ、ドーカ、ワダシヲヒィドイ目ニ遭ワセナイト、神ノ名ニヨッテオ誓イクダザィ――!!!」

9 「・・・名を名乗れ」

「申シ遅レマシタ・・・大勢デコイツニ取リイテオリマスユエ、ローマ軍団レギオント申ジマズゥ! 10 ドーカ、オ、オ願イジマスゥ、コゴニイィサァセェテェ――!」 ――【ローマ軍では、6000人の軍隊=1レギオンとしていた】

――ローマ軍団レギオン――

ローマ軍団レギオンは、自分たちをこの地方から追放しないでほしいと、土下座し、ひたいを土にこすりつけるようにして、しきりに頼んだ。

11 「!」

その頃、近くの丘ではブタの群れが草を食べていた。

12 それに気づいた、ローマ軍団レギオンは一瞬、目を細め、しめたとばかりにニヤッとした。

「ア゙ッ!セメテ、アソコニイルブタノ群レニ、取リカセテ下サイマゼェ〰〰!」

13 イエスはそれを承認した。

ズォォォ〰〰ドヒュ—ン!!!

凄まじい数の悪魔が一斉に男から出て行くと、ブタの群れに次々と入っていった。

「ッ!!!ブ、ブヒィィィ――」

ドォゴゴゴゴゴ・・・・・・ザバァン、ザバ、ザバババババーン・・・・・・

およそ2000匹にもなるブタの群れは、気が狂ったように鳴き叫びながら丘を駆け下り、なだれのようにみずうみへ突っ込んでいく・・・・・・・辺りの人たちは、ただ呆然と立ちつくしていた。

――しばらく経ち、何もなかったかのような静けさが戻った。2000匹ものブタがみずうみに沈んだのだ・・・

14 (ンな、うわぁぁぁぁぁ・・・)

ブタを飼育していた男たちは、血相を変えて全員一斉にその場から逃げ出した――

町につくと、慌てながらも、町人に何が起きたかを必死に伝えた。

――住人たちはその光景を見にイエスのもとにぞろぞろ集まって来た。

15 「お、おまえは・・・!!!」

「キャ――!墓に住みついてたケモノよォ・・・!!!」

「え、うそでしょ、なにが起きてんの・・・?」

取りかれていた男が、服を着て普通に座っているではないか。町人は、正気である彼の姿を見て、ゾッとした・・・

16 一部始終を見た人たちは事の次第を町人に説明した。

17 すると、町人たちが恐る恐るイエスのところに集まってきた。

「こ、この町から出てってくれ・・・!!」

町の住人たちはイエスを疫病神やくびょうがみであるかのように追い払った・・・。

18 ――住人の申し出を承認したイエスは、小舟に乗って出発の準備をしていた。

「イエス様!ぜひ、お供させてくださいッ・・・!」

ローマ軍団レギオンから解放された男がイエスに願い出てきた。

19 「いいや、うちに帰って、家族や友人たちにあなたのあるじがしてくれたありとあらゆることを知らせてあげるんだ!」

20 「は、はい!!」

男は、イエスの言葉を胸に立ち去った――この男は、後にその地方にある10の都市で、あるじが自分のために、どれほどよくしてくれたかを熱く、そして大胆に伝えることになる。そして、彼の話を聞いた人たちは、誰もがひどく驚かされるのであった。

長血の女

21 イエスたちは小舟に乗り、みずうみの向こうぎしへ渡った――

小舟を降りると大勢の人がイエスたちの周りに集まって来た。彼らはイエスがやってくる事を一足先に嗅ぎ付けて来たのだ。

22 「!」

その中からある人が慌ててイエスの足元にひざまづいた・・・彼はヤイロというユダヤ集会所シナゴグの会堂長であった。

23 「私の幼い娘が死にそうです!ど、どうか私と一緒に来て、娘の上に手を置いてやってはくれませんかっ。そうしたら、娘は死なずにすみますッ・・・!」

ヤイロは一生のお願いと言わんばかりに頼みこむ。

24 イエスは、もちろんヤイロの家に向かった。そして、群衆もイエスの周りに押し迫るようにして、どしどしついて来る。

25 さて、その群衆の中には、生理が止まらず、出血し続ける病気でかれこれ12年間苦しんでいた女がいた。

26 (辛いよ、苦しいよぉ・・・)

彼女は病気を治すため、多くの医者に診てもらった。わらをも掴む気持ちで、できることは何でもした。結局、彼女は医者に全財産をつぎ込み、破産するほどだった。それだけしてもなお、ただ悪化していく病状・・・。

27 光を失いかけたところへ、希望が舞い降りてきた。そう、彼女はイエスの噂を聞いたのだ。最後の賭けだと、群衆の中をがむしゃらにかけ進んだ。やっとの思いでイエスの背後まで辿りつくと、

(えーぃっ!)

彼女はイエスの上着のすそに手を伸ばした。

28 イエスの服に触れることさえできればやまいは治る!との思いからだった。

29 (え・・・・・・!!!)

彼女の手がイエスの上着にやっとの思いで触れた!すると出血が瞬時に止まったのを感じた。

30 ――「!」

「誰だ!今俺の服に触ったのは!」

女が触れたと同時にさっと振り返ったイエス。自分から力が流れでたのを感じたのだ。

31 「いやいや!先生、これだけの人数がひしめきあっているのに誰がって・・・はは・・・ねぇ」

多くの人がイエスに触れている中での出来事だ。仲間たちには冗談にしか聞こえなかった。

32 しかし、それでもまわりを見渡すイエス。

33 (い゙ッアタイのことだ・・・)

やまいを治してもらった女は、一瞬凍りついた。そして、恐る恐る進み出てイエスの足元にひれ伏した。

「わ、私です!じ、実は・・・・・・」

女が声を震わせ、自分の身に起こったことをかいつまんで話すと、イエスはニコッと笑った。

34 「あなたが治ったのは、あなたがそうなると信じたからだ!安心して。もう苦しむ必要はない」

少女のお眠り

35 イエスが完治された女と話している最中だった・・・ヤイロさーん!!!ヤイロの召使いたちを見るやいなや、ヤイロの顔が青ざめた。

「ど!どうした!」

「ざ、残念ながらお嬢さんが先ほど息をひきとられました・・・もう・・・先生をわずらわせる必要はないかと・・・」

あ、あ゙、あ゙・・・・・・ その瞬間、ヤイロの頭は真っ白。

36 「おいヤイロッ、恐れるな!ただ信じろ!!!」

イエスの声を聞いてハッと我にかえったヤイロ。

「ゔ、う・・・ぐすッ・・・ハイ!!!」

37 ――イエスはヤイロと岩のペテロ、雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネ以外の仲間はついて来ないように言い、ヤイロの家を訪れた。

38 ・・・うわぁーんっ。ひっくひっく・・・うぇーん・・・ずずっ、グゾぉぉぉ・・・

鳴き声は家の外まで聞こえてくる・・・家の中は大勢の人が泣きわめき、収集がつかない状況。イエスはこれを見て、

39 「何を泣いて騒ぎたてる!!!この子は眠っているが、死んじゃいない」

――【イエスの強い口調からも大声で泣きわめいていたのは、偽客さくらだろう。悲しんでいる人が多ければ多いほど、亡くなった人間が偉いと思われた。そのため、亡くなった人の株をあげるために葬儀用の偽客さくらを雇うことがしばしばあったのだ】

40 「!」

そこにいた人の視線は一気にイエスへ集まった。

イエスの発言に彼らは笑いだした。気にもとめないイエスは、彼らに家から出るように伝えた。

イエスは少女の両親と3人の仲間だけを連れ、少女が寝ている部屋に入った。そこにはまだ12才のかわいい少女が横たわっている。

41 両親と3人の仲間が見守る中、イエスは少女の手を取った。

タリタお嬢ちゃんクミ起きるんだ・・・!」

42 ガタンッ!

「い゙—ッ!!!」

少女がいきなり起き上がったと思ったら、歩き始めるではないか!両親と3人の仲間は言葉を失った。

43 イエスは両親にこのことを決して他言しないようにと忠告すると、少女に何か食べ物を与えるようにと加えた。

丘の上のナザレ村に帰る

1 イエスは一味と地元“丘の上のナザレ村”へ帰ってきた。

2 さっそくイエスが休日サバスユダヤ集会所シナゴグで教えていた時のことだ――

昔からイエスのことを知っている地元民は衝撃を受けた――

「お、おい・・・アイツどこでこんな知恵をつけた・・・?」

「あーんなキセキ、どこで拾えば起こせるようになんだ・・・?」

3 「どぉゆうこっちゃ!!あいつぁ、あれだろ!マリヤんとこのせがれだろ?こんなとこで教えてっけどよぉ、元々は大工じゃあねぇか・・・!」

「俺もよく知ってっぞ!兄弟はヤコブとヨセ、それにユダとシモンだぜ?妹たちだってこの村に住んでっしなぁ・・・」

イエスの知恵ある教えを目の当たりにした地元の人たちは、自らの目と耳を疑った。しかし、彼らには結局、ナザレ村出身である元・大工以上の男としてはイエスを見ることができなかった。

4 ――はぁ・・・とイエスはため息をついた。

「人から讃えられるほど偉大な預言者でさえ、受けいれられない唯一の場所がある・・・故郷、そして身内だ」

5 丘の上のナザレ村では、数人の病人に手を置いて治した以上のキセキを行うことが出来なかった・・・。

6 地元民のあまりの疑い深さに、むしろイエスの方が驚かされたのであった。

派遣されし十二使徒

そんなことがあったものの、その地方にあった他の町や村を訪れては、町人に熱く教え続けるイエス。

7 ある日――

十二使徒を呼び集めると、2人1組のチームに分け始めた。

受けとれ――

「!」

十二使徒は、イエスから悪魔を追い払う権限を与えられた。

8 「いいか、旅のお供には何も持っていくんじゃない。食料、かばん、お金もだ。まあ長旅になるだろうから、杖ぐらいはいいが。 9 あ、くつも履いていいぞ!だが着替えはなしだ。 10 町に着き、誰かが宿やどを貸してくれるなら、その町を出るまではその家にとどまる。 11 もし、その町の住民が誰も受け入れてくれず、おまえたちの話に耳を傾けない場合は、その町をさっさと去るんだ。そして彼らへの警告として、足のちりを完全に払い落とすんだ」

イエスは使徒たちを送りだす前に以上の忠告をした――【足のちりを払い落とす行為は、“話すことはもう何もない”という警告だった】

イエスがこのように順序を説明すると、仲間は大きくうなずいた。そして、使徒たちを励まし、力づけて送り出したのだった――

12 使徒たちは他の町や村へ行き、出会う人に話しかけては、心を入れ替え、生き方を変えるようにと教えていった・・・

13 また、次々に悪魔たちを一掃し、病人にはオリーブオイルを塗り、やまいも治していったのだった――【当時、オリーブオイルは薬として用いられていた。またこの行為は、イエスと一味に、神の霊ホーリースピリットを通して与えられた治癒ちゆの力を象徴した】

怯えるヘロデ王

14 たちまちイエスは国中で有名になり、そのうわさがヘロデ王の耳にまで届くほどであった。

――「あの洗礼者バプティストヨハネに違いない!ヨハネが死からよみがえったんじゃなければ、そんなキセキは行えはせんじゃろう!」

15 「いーや、預言者エリヤだ!」

「預言者じゃ・・・それも伝説の預言者たちのような」

――憶測が飛び交う中、 16 ヘロデ王の顔は真っ青。

「ヨハネの首ならはねた・・・そ、その、ヨ、ヨ、ヨハネが、復活した・・・・・・ヒィ〰〰〰〰!!!」

洗礼者バプティストヨハネの死にざま

17 洗礼者バプティストヨハネは、次のようにして帰らぬ者となっていた――

ヘロデ王の妻・ヘロデヤは、もともとヘロデ王の兄弟であるピリポと結婚していた。

しかし、ヘロデ王はそんなのお構いなしにヘロデヤを横取りし、自分の妻にしてしまったのだ・・・このことについて黙っていられない洗礼者バプティストヨハネは、ヘロデ王が一番の権力者であることにじけることなく、ドンと物申した。これが、ヘロデヤの逆鱗げきりんに触れたのだ。ヘロデ王は、ヘロデヤの機嫌をとるため、ヨハネを牢に入れるよう、兵士に命じた。

18 洗礼者バプティストヨハネは声を大にしてこう訴えた――

「王よ、恐れ入りやすが、あっしも神の使いですんではっきり申し上げさせてもらいやす・・・兄弟の妻との結婚ですが・・・こいつぁ立派な不義でございやす・・・!!!」

これがヘロデヤの耳に触った。王家、そして自分への侮辱ぶじょくにしか聞こえなかったのだ。

19 ひどく恥をかいたヘロデヤは、洗礼者バプティストヨハネに対する殺意でいっぱいになった。夫であるヘロデ王にヨハネを殺すよう、何度も持ちかけたが、どうにも説得できずにいた。

20 ヘロデ王自身、ヨハネを逮捕したものの、彼が神に仕える義人であることを身にしみて知っていた。

(このような、聖人を殺しでもしたら・・・世にバ、バチが当たる・・・!)

そう恐れていたヘロデ王は、妻のヘロデヤの思いとは裏腹に、洗礼者バプティストヨハネの身に問題が起こらないよう注意して保護していたのだ。

それどころか、洗礼者バプティストヨハネと時間を過ごすのが日課になっていた。そう、ヨハネの話を聞くのがヘロデ王の楽しみのひとつとなっていたのだ。ヨハネの話にヘロデ王は考えさせられた・・・そう、毎度将来を見直させられるほどに影響を受けていた。

21 そんな日々も束の間、ヘロデヤに絶好の機会が訪れた。それは、ヘロデ王の誕生日のことであった。ヘロデ王は、自身の誕生日を祝うために、政府の高官や軍の司令官、また、ガリラヤ地方の権力者など、位の高い者を招いて宴会をもよおしたのだ。

22 そこには、ヘロデヤの娘 も招かれ、招待客たちの前で踊りを披露して見せた。彼女の踊りは、ヘロデ王を含め、招待客をとりこにした・・・。この上なく喜んだヘロデ王は、勢いあまって少女にとんでもない誓いをした――

「ダァッハッハッ!いーやいやこれはたまげた!これほど世の目をうるおした者はおらんぞぃ!褒美として、おまえの欲しいものは、何でもやろう! 23 もーなーんでもッ!!何ならこの国の半分をやってもええぞぉ!」

24 てへっ!返答を求められた少女は、母親であるヘロデヤのところへ行った。

「お母様!何にいたしましょう?」

ヘロデヤが待ちに待った瞬間である!ヘロデヤは不気味な笑みを浮かべた――

洗礼者バプティストヨハネの首をお願いするの!いい、今すぐに持ってこさせるの、わかった?!」

「え・・・は、はい、お母様」

25 少女はすぐに王のもとに戻った。会衆も、少女が何を言うのか期待している様子だ。

洗礼者バプティストヨハネの首をください・・・今、彼の首を大皿にのせて持って来てください・・・!」

「・・・」

すると宴会の場はガヤガヤと騒がしくなりはじめた。

26 思ってもみなかった願い出に、ヘロデ王も戸惑い、ひたいからは汗がしたたり落ちる。かと言って、少女との約束を破ってしまえば、招待客たちの前で王としての面目めんぼくを保てない。ヘロデ王は心から後悔した。

27 「んぬぅ・・・んな、なにをグズグズしている!彼女の言うとおりヨハネの首を切り落として、ここに持ってごん゙かッ!!!」

命令を受けた兵士は、牢獄に向かった――

ボトッ・・・・・・・

洗礼者バプティストヨハネの首をスパッと切り落とした。

28 無残むざんにも、ヨハネの首が大皿に載せられ、少女の前に運ばれてくると、少女は母にそれを渡した。母は嫌な笑みを浮かべていた。

29 ――この事件は、すぐさまヨハネの仲間たちにも知らされた。一味は大いに悲しんだ・・・・・・。それから、ヨハネの遺体を引き取りに行き、埋葬まいそうしたのであった・・・。

5000人の食卓

30 しばらくしてからであった――

イエスが送り出した使徒たちが、どこかたくましくなって戻ってきた。それぞれがしてきたことや、起きた事を互いに語り、久々の再会を楽しんだ。

31 そんな彼らの周りには、いつものように人がぞくぞく押し寄せる。こんなことではゆっくり食事をすることもできない。

「場所を移すぞ!」

仲間たちはうなづいた。 32 イエスと仲間たちはみずうみに停めていた小舟に乗り込み、ひとけがない場所へ向かおうとした。

33 しかし、それを見ていた人たちは、どのあたりへ行くか先読みし、先回りした。

34 イエスが小舟から降りてみると、

(い゙ッ!)すでにわんさか人が集まっている・・・。

(これほど飢えているというのに、誰も見てあげないなんて・・・まるで羊飼いのいない羊じゃないか・・・)放っておけないイエスはゆっくりするのは二の次にして、彼らに多くの事を教えたのだった。

35 薄暗くなるほど時間が経過したころだった――

イエスのもとに仲間たちが物言いたそうに寄ってきた。

「先生、ちょっといいかな?」

「ん?」

「もう日も暮れてきたが、見るからにここら辺には誰も住んでなさそうだ。 36 今なら、近くの農家や町に行って、食べ物を確保する時間もあるしどうだ、そろそろ解散するというのは・・・」

37 「そうか。ならそう言わず、食べさせてあげたらどうだ!」

「ちょ、ちょっとご冗談を!こんだけの人に食べさせるパンを買う手持ちなんてどこにあんだ!それだけのパンを買おうものなら、俺たち全員で1カ月働いてやっとだぞ!!」

38 「今、いくつのパンがある?ちょっと見てきな!」

「え、おぅ・・・」

――仲間は手持ちの食料を数えに行った。

(えーと、1、2・・・)――

「イエス、パン5つと魚2匹しかないが・・・」

39 「ならみんなをグループに分けて、しばの上に座らせてくれ!」

40 そう決めると、イエスの一味が手分けして、せっせとグループ分けをした。みんなを呼び集める大きな声と、移動のざわつきで辺りが慌ただしくなった。ひとつのグループ、およそ50人から100人にして分けられた。

41 イエスは5つのパンと2匹の魚が入ったかごを持つと、天を見上げ、与えられた食料を神に感謝した。すると、持っているパンをちぎっては、一味の手に配った。

(この数の食糧を配ってどうするってんだいイエスは・・・って、あ、あ、あ、あでぇ〰〰〰〰!!!) 配ったパンや魚が増え続けるではないか!

(すんげぇぇぇ!!!)キセキを目の当たりにしたことで一味の心は踊った!ノリノリの仲間たちは、そのパンをグループに配ってまわった。同じようにして、2匹の魚も、すべての人に分け与えられたのだった。

42 ――「あー無理!もー食べらんない!」

誰もが満腹になった!

43 みんなが食べ終わり、残り物のパンと魚を集めてみた・・・じゅ、12のかごが一杯に!

44 その場には、男だけでも5000人以上いるというのにだ!!!

水の上を歩く幽霊?

45 それからイエスは、先に小舟に乗ってみずうみの向こう側にあるベツサイダの町に行くようにと一味に指示した。1人残ったイエスは、周りにいた人たちにも家に帰るようにと言い聞かせ、 46 みんなにさよならをすると、1人で祈るため、山に登って行った。

47 その夜――

イエスの一味を乗せた小舟がみずうみなかばにさしかかったころだ。イエスは、まだ1人陸に残っていた。

48 (ふむ・・・)イエスはきしから遠く離れた小舟を見つけた。

仲間たちが逆風の中で必死に小舟を漕いでいるのが見える。時間にすると午前3時から6時ごろに事件は起きた――

イエスがみずうみの上をすいすい歩き、小舟を通り過ぎようとしていたのだ・・・・・・!

49 「お、おい・・・」

「ん?」

「ヒ、ヒィェ〰〰〰〰〰〰〰〰!!!」

目ん玉が飛び出るほど驚いたイエスの一味は、みずうみの上に幽霊がいると思った。

50 「おいおい、怖気おじけづくなよ!俺だよ、俺!」

51 イエスは小舟に手をつけると、よぃっと!なんでもないかのように乗り込んだ。すると風がピタッと止んだ?やーんでいる!!!

(あ゙、あ゙・・・・・・)空いた口がふさがらない一味。

52 パンを配った時のキセキに続き、たった今起きた出来事を目の当たりにした一味は、なお、イエスが何者なのか理解に苦しんでいた。

ゲネサレ湖畔こはんの住民

53 イエスと仲間たちは、みずうみを渡った先にあるゲネサレ平原のあたりに小舟を停めた。

54 もちろん、ここでもイエスは有名人。

55 イエスたちが小舟から降りると、

――「!」

町人はイエスだと気付き、急いで地域住民たちに知らせ始めたのだ。

「おォーィ!噂のイエスが来たぞぉー!!」

「えっ?」

「は!」

「うそぉ!」

「ほ、本当かい?」

うわさは秒速で広まった。一心不乱にイエスを探しまわる住民。見つけた人は、病人たちを布団ふとんに乗せ、我先にと運びこんだ。

56 イエスが町や村を訪れると、決まって住民たちが病人をつれて市場に集まり、服の端っこでもいいから触れさせてほしいと、イエスに頼み込んだ。そして、触れた全員が治されたのであった。

神の掟と人間のしきたり

1 ある日、パリサイ一派と掟の先生たちが、神殿のみやこエルサレムからはるばるイエスのもとへやって来ると、 2 イエスの一味が、ユダヤ人のしきたりを守らずに食事をしているのを見た。

3 ―― パリサイ一派を含むユダヤ人にとって、ある決まった手順で手を洗うなどしてから食事をするのは、先祖代々受け継がれている常識であった――【幼い頃から“使用した物をある順序で洗わなければ、汚れてしまう”などと教わり、ほとんどのユダヤ人はこのしきたりを非常に大切にしていたのだ】

4 また、市場から戻ると食事の前には必ず体を洗い、キレイであっても容器や水差し、鍋を洗うといったしきたりも守っていた。

5 「あなたの弟子は、手を洗わずして食事をしておりますが・・・?」

パリサイ一派と掟の先生たちは、イエスに詰め寄った。

6 「あなたがたが伝統をおもんじているのは、自分を良くみせたいがためじゃあないか!預言者イザヤが書き記した通りだ。 “口では私をうやまう彼らだが、心は私から遠く離れたところにある。 7 彼らは私を拝んでいるが、全く無意味。彼らの教えは人の手によって作られた掟にすぎないからだ” と。

8 あなたたちは神に従う以上に、人によって作られた伝統を大事にしてしまっている。 9 伝統をしっかり守ろうとするのに、神の掟は拒絶する。 10 モーセは、“あなたの父と母をうやまいなさい”と言い、 “自分の父と母を悪く言う者は殺されなければならない” とまで言った。 11 にもかかわらずだ! あなたがたは、もし父と母が助けを求めてきたとしても、神に捧げると誓った額を捧げきるまでは、助けなくていいと教えている。 12 その供え物を用いれば、両親を助けることができるのにだ!! 13 神の教え以上にしきたりを守るべきだと考え、周りをも巻き込む・・・他にも挙げたらきりがない」

――【聖書:イザヤ書29:13、申命記5:16、出エジプト記20:12より引用】

図星をつかれたパリサイ一派と掟の先生たちは、ばつが悪そうに顔をしかめた。

14 するとイエスは、もう一度自分のもとに人を呼び寄せた。

「いいか、俺が今から言う事をしっかり聞いて悟れ! 15 人は口にするものによってではなく、内側から出るものによって汚れる ! 16 聞く耳があるなら、よく聞くんだ !」

17 そうしてイエスはその場を去り、一味と共に家に入った。

―― 「あのさ先生、さっき言ってたことって・・・どういう意味?」

イエスの仲間は、先ほど聞いた言葉を理解していなかったのだ。

18 「まだ分かんないのか?神は、人が口にするものを理由に、人を拒まないってことぐらいおまえたちなら分かるだろう! 19 食べたものは、心ではなく腹を通って出ていく。 20 心から出る考え、または、行動によって人は汚れ、そうじしなくてはならなくなる。 21 悪い考え、性的な問題、盗み、殺人、 22 結婚した異性以外とのセックス、欲張り、悪い行い、嘘、勝手気まま、ねたみ、侮辱ぶじょく、高慢、愚かな生き方というのは、全て心の内から始まる。 23 これらの過ちにより、人は汚され、神に背を向けられる。だから心のが不可欠なんだ・・・!」

おこぼれを食べる犬

24 それから、イエスはツロ地方に向かった。自分がいることを町の人々に知られたくなかったので、こっそりある家に入ったが、気付かれるまでそう時間はかからなかった。

25 この噂はある悪魔に取りかれてしまった娘を持つ母の耳にも入った。イエスの居場所をつきとめた彼女は飛んで行って、イエスの足元にひれ伏した。

26 「む、娘をどうか・・・助けてください!」

彼女はユダヤ人ではなく、シリアにあるフェニキヤ州出身の外国人であった。

27 「そーりゃよくない!子どものパンを取り上げて犬に与えるなんて。犬よりも最初に子どもたちが食べるべきだろう?」

28 「先生、おっしゃる通りです!でも、食卓の下にいる犬にも子どもたちの食べこぼしたパンくずを食べる権利はあります・・・!」

29 「ああ、よく言った!さあさあ、早く娘さんのもとへ!もう悪魔は出て行きましたよ!」

30 ――母親が急いで家に帰って娘へかけよると、そこには、気持ちよさそうに眠っている娘の姿が・・・!

母は「はぁ」とため息をつくと、肩の荷が降りたかのように力が抜けた。

エパタ

31 イエスはツロ地方を去り、 港のみやこシドン からデカポリス地方を通ってガリラヤ湖に戻った。

32 ガリラヤ湖――

た、頼んます・・・!そんなとき、耳が聞こえず、はっきりと喋れない男が、身内などに連れられてやって来た。身内が彼の上に手を置いて治してほしいと頼むと、 33 イエスは耳の聞こえない男をつれて2人きりになりに行った。イエスは、彼の耳に指を入れると、指にペッとつばを付けた。はい、べー・・・そして、その指を男の舌に乗せた・・・。

34 イエスは天を見上げ、大きく息を吐いて言い放った。

エパタ開け!」

35 キィ――ンッ・・・

男は一瞬にして耳が聞こえるようになったかと思うと、はっきり喋ることまでできるではないか!

36 イエスはこの出来事を他人に話さないようにと彼の身内を含めて忠告したが、注意すればするほど、彼らはこの話を広めた・・・

37 ――「あの方はやる事なす事、とんでもなく素晴らしいんだッ!耳の聞こえない人が聞こえるようになって、はっきりしゃべれなかった人がはっきり話せるようになったんだぜ!!!」

驚きと興奮のあまり、口を閉じることができなかったのだ。

満腹4000人

1 ある日、イエスの周りにたくさんの人が集まっていた。しかし、問題があった。誰にも食べるものがなかったのだ。そこでイエスは、一味を呼び寄せた。

2 「可哀想だと思わないか。みんなもうかれこれ3日間ついてきているせいで食べもんがない。 3 お腹を空かせたまま帰すわけにはいかない。遠くから来た人たちもいる、途中で倒れちゃあいけないからな・・・」

4 「そ、そうは言っても!町からはだいぶ離れたし、こーんなにたくさん人がいるのにどっから食料を調達するつもりで!」

5 「パンはいくつある?」

「え・・・?ッとー。7つしかないけど・・・」

6 それを聞いたイエスは群衆に座るように伝えた。すると、イエスは7つのパンを手に取ると、神に感謝をささげた。そして、パンをちぎり、ほらっと仲間たちにわたした。一味は指示されたとおり、群衆にパンを配り始めた。

7 他にも小さな魚を数匹持っていたので、イエスはもう一度神に感謝すると、仲間たちに手わたし、群衆へ配ってもらった。

8 こうして全員、満腹になるまで食べ、辺りは笑顔でいっぱい!イエスの一味が食べ残りを拾い集めると、7つのかごがいっぱいになるほど残っている!

9 そこには軽く4000人以上いるというのにだ・・・!こうして、心配なく群衆を帰らせることができた。

10 ――いよっと!・・・よっこらっしょ!・・・うし、出発進行!!!

それから、イエスは仲間たちと一緒に小舟に乗り込み、ダルマヌタ地方に向かって出発した。

求められる

11 「あなたが本当に神の力を持っているのであれば、そのとして、キセキを起こしてみせなさい」

ある時、イエスが本当に神の使者なのかを知りたいパリサイ一派が突拍子もないことを吹っかけにイエスのもとへやって来た。

12 はぁ~・・・

イエスはあきれて、深いため息をついた。

「なぜ、しるしを求める?はっきり言うが、あなたたちを説得するためのキセキなんて起こりはしない・・・!」

13 そう言って、そそくさとイエスはその場を去った。それから小舟に乗り、みずうみの反対側へ向かったのだった。

見ても理解しない仲間

14 さぁ次だっ!

一同は、気持ちを切り替えて小舟を出航した。

あ!ッちゃー・・・・・・

イエスの仲間たちは、肝心なパンを積み忘れていた・・・。 1つだけパンを持っている人はいたが、食料はこれだけとなってしまった。

15 ――「パリサイ一派のイースト菌や、ヘロデ党のイースト菌は危ないから気をつけんだぞ!」 ――【イースト菌とは、パンをふくらませるための材料。また、掟に従っていたユダヤ人は毎年春にある過越祭すぎこしさいの前日にイースト菌を家から完全に取り除く必要があった】

イエスは仲間に忠告した。

16 ・・・・・・「?」となる仲間たち。

「たぶんあれだ、俺たちがパンを忘れたからだ・・・」

「い゙ッ、違いねぇ・・・」

一味は、イエスの言ったことについて話し合い始めた。

17 なぁなぁおまえたち!

イエスは仲間の話していることに気付いた。

「なんでパンがないことを気にしてんだ?まだ見ることも理解することもできないのか?おまえたちの頭は停止でもしたか? 18 目はあっても見えねぇのか?ついてんのは聞こえもしねぇ耳なのか?前にパンが足りなかったとき、俺が何をしたか覚えてないのか? 19 5つのパンを5000人に分け与え、おまえたちが拾った残りもんで、いくつのかごがいっぱいになった?」

「12のかごがいっぱいに・・・」

20 「4000人に7つのパンを配った時は?」

「7つ・・・」

21 「俺のしたことを覚えていてなお、理解できねぇか?」

ベツサイダの盲人に2度目の手

22 ガリラヤ湖沿いの町ベツサイダ――

「お願いしますッ!どうか、彼に触れてやってください!こいつの目を治してやってください!!」

イエスと一味がベツサイダの町に着くと、数人の人が盲目の男を連れて来て、イエスに頼み込んだ。

23 イエスは了解すると、男の手を取って町の外まで連れて出た――

ペッ!

イエスは盲目である男の目につばを吐きかけると、その上に手を置いた・・・。

「見えるか?」

24 盲目の男は顔を上げ、見えないはずの目で見ようと目をパチクリした。

「えぇ・・・あ、は、はい!ひ、人?何人か見えますが・・・まるで、木が歩き回ってるようだ・・・」

25 イエスは、もう一度彼の目に手を置いた。

――カッ!

「み、見える、見えるぞぉ〰〰〰〰!!!」

盲人の目は、かっ開いてはっきり見えるようになった!

26 「帰る途中、街へは寄らないように!」

変な騒ぎが起きることを心配したイエスは、家に帰らせる前に忠告しておいた。

イエスのうわさ

27 イエスと一味は、20㎞ほど北上したピリポ・カイザリヤのみやことその周辺の町々を訪れた。

――「人は、俺のことを誰だと言っている?」

28洗礼者バプティストヨハネだと思ってる人たちがいましたよ!」

「預言者エリヤだとか、預言者の一人だって言う人たちもいるよなぁ」

29 「おまえたちはどう思う?」

「あなたこそが神に選ばれし王、救世主キリストだ!!!」

真っ先に岩のペテロが答えた。

30 「俺の正体は、ここだけの話だ・・・!」

イエスの後に続く者

31 、イエスは、多くの苦しみを通らなければならない・・・。ユダヤ指導者、祭司、掟の学者たちは、俺を認めない。そして俺は彼らに殺される必要があり、その3日目によみがえる・・・!!!」

イエスは歩きながらこれから起こる預言を仲間へ伝えた。 32 イエスは、仲間に何ひとつ隠さなかった。

――ちょっと、ちょっとイエス・・・

道中、岩のペテロがイエスを連れてグループから少し離れた・・・

――いけないよ・・・

岩のペテロはイエスの預言を正そうとした。 33 するとイエスは、仲間たちの方を向いた。

「失せろ、サタン !神の思いはそっちのけで、人間の欲に漬け込みやがって・・・!」

これは岩のペテロを使った悪魔に放った言葉だった。 34 するとイエスは一味と群衆を呼び集めた――

「誰でも俺について来たいなら、自分勝手な考えや欲を捨てろ!俺の後に続く代わりにわたされる十字架を進んで背負え!

35 誰でも自分の人生を自分で救おうものなら、。だが俺のため、また、最高な知らせゴスペルを告げるために人生を捧げる者は、人生を

36 たとえ、世界を手にいれようとも、自分を失えば元も子もない。

37 どれだけお金を積もうが、失った人生を取り戻すことはできないからだ・・・!

38 おまえたちは、神に不忠実で過ちだらけな世の中にいる。だがいいか、そんな中でもこの俺と俺の教えを恥らわないように。もし恥らうなら、、すなわち俺が父さんの栄光をおび、天使の軍勢を従えて戻る時、俺はその人を・・・!!!」

1  イエスは群衆を見渡し、こう続けた――

「今から言うことを信じろ・・・この中には、死ぬまでに神の王国キングダムの圧倒的な力を拝める者たちがいる・・・!!!」

伝説の預言者エリヤとモーセ現る

2 6日後のことであった――

イエスは十二使徒のうち、岩のペテロと雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネの3人を連れて高い山に登った。山頂には、彼ら以外だれもいない。

・・・ドヒュンッ!

「ゔわぁぁぁ—っ!!!」

使徒たちの目の前で一瞬にしてイエスが変身したではないか!

3 服は光り輝くほど純白で眩しい。それは人知を超えた白さであった・・・

4 トコトコ・・・・・・

「!」

突然、2人の男が現れたかと思うとイエスと親しそうに話し始める・・・誰だ?と使徒たちが目をこらすと・・・な、なんとそれは、あーの伝説の預言者エリヤとモーセではないか!!!

5 「イ、イエスゥ〰〰っ!光栄ですっ!ほんと光栄ですっ!なんと言うか、こ、この場に居合わせることができるなんて・・・そ、そうだ!みなさまが神を讃えるための幕屋テントを3つ、われわれに作らせて下さい!ひ、ひとつはイエスの名誉、それとモーセ様とエリヤ様の名誉のた、た、た、ために!!!」――【紀元前、神殿が建てられる前のユダヤ人は、幕屋テントの中に神を礼拝する場所を設けていた】

6 岩のペテロは勢い余って口走ったが、自分でも何を言っているのかさっぱり。彼を含む使徒3人は恐れのあまり、まばたきもせずに硬直していた。

7 ――ぐおぉぉぉ・・・

雲が現れたかと思うと、彼らをおおった。また、その中から声が聞こえてきた。

「――これは俺の愛する子。いいか、に従うのだ!!!――」

8 ヒュ~・・・・・・

使徒たちが、ふと我に返って辺りを見回すと、元通り、彼らとイエスしかいなくなっていた。

9 なんだかんだ起きた後、イエスと3人の使徒は山を降りていた――

「いいか、が死からよみがえるそのときまで、ここで見たことは心に閉まっておくんだ・・・!」

10 使徒3人はこのイエスの忠告を守り、山で見たことを他言することはなかった。しかし、“死からよみがえる”という言葉の意味が理解できず、なんのこっちゃと話し合い、煮詰まったあげく、イエスに尋ねることにした。

11 ――「なぁイエス、なんで宗教家たちは、“まず最初に、預言者エリヤが来なければならない”なんて言ってんだ?」

12 「あぁ、確かにまずエリヤが来て全てを。だが、重要なのは、聖書になぜ、“が大きな苦痛をとおり、人にさげすまれる”とあるかってことだ。 13 エリヤはすでに来た。だが、エリヤのおいでを未だに楽しみにしている彼ら自身が、エリヤをひどい目に遭わせた張本人だ。聖書にあるとおりにな・・・!」――【エリヤは、洗礼者バプティストヨハネのことだった】

取りかれた少年

14 山を降りたイエスと岩のペテロ、雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネが一味のもとへ戻ると、大勢の人たちが一味を中心につどっていた。何やら掟の学者と仲間たちが議論しているようだ――

15 「おっ!イエスだー!」

「イエスが帰ってきたぞー!」

仲間はイエスを見るなり走り寄って、歓迎した。

16 「何を議論してんだ?」

17 イエスが聞くと、ある男が進み出てきた。

「先生!息子が悪魔におかされ、話すことができないんです・・・イエス先生ならと思い、見てもらいに来たんです!!

18 憎い悪魔は、息子が口から泡を吹くほどにドンッと地面に投げ倒し、歯ぎしりをして硬直させやがるんです・・・ぐすッ・・・先生がいないって言うんで、先生のお弟子さんに悪魔を追い払うよう、お願いしたんですが、無理だったようで・・・先生、どうかっ!!!」

19 「信じない時代だなー!いつまで俺が一緒じゃなきゃいけない。いつまで待てばいんだ・・・その子をここに」

20 数人がかりで取りかれた少年を連れてきた。ところが悪魔は、イエスを見るなり少年をさらに苦しめ始める――

ぐわぁぁぁ〰〰っ・・・ブクブクブク・・・・・・

少年は地面に倒れて転げ回り、口から泡を吹いた。

21 それを見たイエスは哀れんだ表情を浮かべた。

「いつからですか?」

「もぉ幼いときからです・・・ 22 この悪魔が息子を殺そうと、炎やみずうみの中に身を投げ込むもんで、息子は何度死にかけたか。お、お願いします!もし救えるなら、うちの子を救ってくださいッ!!」

23 「なぜと言う?・・・信じる者に不可能はない!」

24 「し、信じますとも!どうか、不届き者である私がもっと信じられるように、助けてください!!!」

25 イエスはわんさか野次馬が集まってきたのを見ると、悪魔をギロッとにらんだ。

「おい、耳と口をふさぐ悪魔。少年から出ろ。そして2度と戻ってくんじゃねぇ」

26 「ウギャァァァァ〰〰・・・・・」

悪魔は叫び声をあげながら、少年を地面にもう一度投げ倒して出ていった。少年は白目を向いてピクりともしない・・・

「し、死んじまったァァァ――!!」

恐ろしくなった群衆はキャーキャー騒ぎ始めた。

27 イエスは平然と少年の手を取り、立ち上がらせた。

28 騒ぎも一段落すると、イエスは仲間たちと一緒に家に帰った――

「先生・・・どうして俺たちにはあの悪魔を追い出すことができなかったんだい・・・?」

一味だけになってから仲間たちは尋ねた。

29 「あの種の悪魔は、祈らなければ追い出せない」

救世主キリストの死にざま

30 イエスと一味は、人に見つからないよう、密かにその町を出発し、ガリラヤ地方を通って旅を続けた。

31 イエスは一味にのみ伝えたいことがあったため、他に誰もいない所に来た――

は人の手に落ち、殺される・・・。そして、3日目によみがえる・・・!!!」

32 ・・・「?」

一味にはなんのことかさっぱりだったが、恐ろしくて誰もつっこむ気になれなかった。

最も偉大な者

33 イエスと一味はガリラヤ湖沿いの町カペナウムに向かった。

――「道中、何について議論してたんだ?」

ある家に着くと、イエスが一味に問いただした。

34 (い゙ッ・・・気づいてたのか!) 仲間たちは、たちまちとぼけて、なんのことか知らんぷりっ。自分たちの中で誰が一番偉いのかを論じ合っていたなんて、とてもじゃないがイエスには言えない・・・。

35 イエスは腰掛けると、十二使徒を集めた。

「一番になりたいか?誰でも一番になりたいなら、自分のことは後回しにして人に仕えなければならない・・・!」

36 イエスは幼い子どもを一味の前に立たせ、その子を両手で抱えた。

37 「このように幼い子どもを俺の子かのように受け入れる人は、俺を受け入れた。誰でも俺を受け入れる人は、俺を遣わした神をも受け入れたことになる!!!」

敵対しなければ味方

38 すると、雷兄弟・弟ヨハネが反応した――

「先生!勝手にあんたの名前を使って悪魔を追い出している人がいたんだ!だが心配ない!仲間じゃないんで、俺たちで止めといたっ!!」

39 「止めちゃダメだ!俺の名によって、大きなことを成し遂げる人が、俺を悪く言うことはないだろ? 40 いいか、俺たちの敵じゃなきゃ、味方だ! 41 おまえたちが俺の仲間だからというだけで、水を一杯でも飲ませてくれる人は必ず報われる」

誘惑を絶つ警告

42 「俺を信じる“うぶ”な人を誤った道へおとしいれる人は、首に大きな石臼いしうすを巻かれて、海に沈められる方がましだ・・・

43 もし片方の手が過ちを犯すなら、その手を切り捨てればいい。両手を持って地獄に行くより、片手を失って天国に行く方が断然いい。地獄では燃えつきることがない炎で燃やされ続ける・・・ 44 45 もし片方の足が過ちを犯すなら、その足を切り捨ててしまえ。両足を持ったまま地獄に投げ込まれるより、片足を失ってでも永遠の命を得る方がましだ! 46

47 もし片方の目が過ちを犯すなら、そんな目はえぐりだせ。両目を維持したまま地獄に投げ込まれるより、片目を失って神の王国キングダムへ行く方がいいだろう。 48 地獄では、人を食い尽くすうじ虫と炎とが絶えることがない。

49 全ての人は火のような試練で塩漬けされて塩気を増す・・・!

50 いい塩も、塩気をなくせば、だいなしだ。味付けの役にたたない。いいか、おまえたちは塩気を失わないように注意すんだ!そして、互いに平和を持って暮らすように、いいな!」

離婚の権利

1 ガリラヤ湖沿いの町カペナウムを出発したイエスは、ユダヤ地方に向かっていた。

ヨルダン川を渡ったところで――

「おっ!イエスだー!!」

再び多くの人たちが集まって来たので、イエスは教え始めた。

2 「イエス先生に質問です!夫は妻と離婚する権利を、はたして持っているのでしょうか?」

こう問うのは、パリサイ一派だ。

(さあ答えてみなさい・・・)

笑顔とは裏腹にイエスを罠にはめようとしていた。

3 「モーセは、何て言った?」

4 「夫が離婚状を書くならば、妻との離婚をゆるすとありますが」 ――【聖書:申命記24:1より引用】

5 「ああ、妻を愛し続けないことで、神の教えに背くおまえたちのためにモーセが記した掟だ! 6 ・・・真にあるべき姿ではない。神がこの世界を創ったとき、人を男と女とに創った。 7 男は父と母を離れ、自分の妻と結ばれる。

8 こうして、夫と妻はひとつになる! 9 神がひとつに結び合わせたんだ、誰も引き離してはならない!」――【聖書:創世記2:24より引用】

うっ・・・パリサイ一派は、イエスの言葉に何も言えなくなってしまった。

10 家に帰ってからのこと――

「イエス、さっきの離婚についてだけど・・・・・・」

一味は、再確認した。

11 「事実、妻と離婚して他の女と結婚すれば、不倫だ。 12 妻もしかり、夫と離婚し、他の男と結婚すれば不倫同然だ」――【マタイ筆・福音書5:31-32、19:9のように例外もある】

子どもの祝福

13 ある時、どこからともなく子ども連れの親御おやごさんたちが集まって来た――

「しっし、だめだめぇー!先生は忙しいのッ!」

イエスから自分の子どもに手を置いてもらい、祝福を祈ってもらおうとしたが、イエスの一味が止めた。

14 ――「!」

「止めるなッ!!!」

イエスの目からは火が立ちのぼるようだった。

「子どもたちを通せ・・・まるで神の国民のようである子どもたちを。 15 いいか、子どもが物事を鵜吞うのみするように、神の王国キングダムを受け入れなければ、入国できやしない・・・!」

16 そう言うと、イエスは子どもたちを抱きかかえ、彼らの上に手を置いて祝福されるように祈ったのであった。

裕福な男が求める永遠の命

17 イエスがその場から立ち去ろうとすると、ある男が駆け寄って来て、イエスの前にひざまづいた。

きよき教師よ、私が永遠の命を得るためには、どうすればよいのでしょうか?」

18 「なぜ俺を“きよい”呼ばわりする?神のみがきよい方だ。 19 それに、“殺さない、結婚した異性以外とセックスをしない、盗まない、うそをつかない、だまさない、父と母をうやまう”という神の掟ぐらい知っているだろう?」 ――【聖書:出エジプト記20:12-16、申命記5:16-20からの引用。イエスは確かに唯一きよい人ではあったが、この人がそれを見通してではなく、イエス以外の教師をもこう呼んでいたからこその応答であろう】

20 「もちろんです、先生!幼いころから、ぜんっぶ守り続けておりますッ!!」

男は、自信ありげだ。 21 イエスは心から彼のことを思った。

「ああ、惜しいが1つやり残している・・・。今から自分の全財産を売り払い、貧しい人たちに与えてこい!そうすれば、天に富を築けるぞ!!終わったら俺について来い!!」

22 「え・・・・・・!」

はつらつとしていた男の表情がとっさに曇った・・・・・・この男、相当な金持ちなのだ。結局、お金だけは諦められないと男は帰って行った。立ち去るその背中はなんと小さいことか。 23 イエスは、仲間たちの方へ振りかえった。

「裕福な者が神の王国キングダムに入るのは、至難のわざだな・・・」

24 「えッ?」この言葉に仲間は驚いた。

「若者のみんな、富に信頼をよせる者が神の王国キングダムに入るのは厳しい。

25 富に信頼をよせる者が神の王国キングダムに入るよりか、らくだが針の穴を通る方がまだやさしい・・・」

26 「そ、それなら一体誰が救われるって言うんだよ・・・!」

仲間たちは、こう互いに言って一様にとまどいはじめた。

27 イエスは一味を見た。

「人間に不可能でも、神には可能だ。神に不可能という文字はない!」

イエスは、仲間たちの疑問を断ち切った。

28 「俺たちは全てを置いて、あなたについてきたッ!」

岩のペテロが突然声を上げた。

29 「約束する!!!誰でも最高な知らせゴスペルである“俺”のために自宅や兄弟姉妹、父と母に子ども、財産までも差し置いた者は、 30 敵も増えるが、100倍の家や兄弟姉妹、母、子、財産を与えられる!のちに行く世界では永遠の命さえ与えられる・・・!!!

31 その時には、この世でいばった者の身分は最も低くされ、へりくだった者の身分は最もされる!!!」

死に場所へ

32 イエスは、仲間と群衆の先頭に立って、神殿のみやこエルサレムに向かった。仲間たちは、後ろでこれから何が起こるのかと考えていた。そのまた後ろの群衆は、これから起こりうることを恐れつつもついて来ている――

イエスは十二使徒を呼び集めた。歩きながら彼らにのみ、エルサレムで起こることを伝えたかったのだ。

33 「俺たちは、これからエルサレムへ行くが、まずは、祭司や掟の学者たちの手に渡る。彼らは、“が死ななければならない”と言って、俺を外国人の手に引き渡す。 34 その外国人たちは、をバカにし、つばを吐きかける。そして、ムチで打ち・・・殺す!だが、3日目にするッ!!!」

苦しみの杯サカズキ

35 「先生・・・お、お願いがあるのですが・・・」

ゼベダイの子である雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネが、イエスのところにやって来た。

36 「ん、どした?」

37 「あなたが王として王座に君臨する時、その栄誉を俺たちにも分かち合ってもらえないでしょうかッ!!1人は、あなたの右の座に、もう1人は左の座に座らせて下さい!」

38 「おまえたち・・・自分でも何を言っているか分かってないみたいだな。俺が飲まなければならない苦しみの杯サカズキを味わえるか?俺が通らなければならない洗礼バプテスマという名の試練を通ることができるか?」

39 「も、もちろんッ!!」

「ああ、確かにおまえたちは、俺と同じ苦しみの杯サカズキを飲み、同じ洗礼バプテスマを通る。 40 だとしてもだ。隣の座に座る人を決めるのは俺ではなく、神だ。神に選ばれた者がその座に座る・・・!」

41 雷兄弟がしたお願いは、他10人の使徒の耳にまで入った。

「俺らを出し抜こうってかッ!!」

他の使徒たちは雷兄弟にキレた。 42 その状況を知ったイエスは、みんなを呼び集めた――

「外国人には権力者がいるよな。知ってのとおり、権力者は自分の力を見せつけるのが大好きだ。そしてその権力者に仕える指導者たちもまた権力を振りかざすのがたまらなく好きだ。 43 いいか、おまえたちは、そうであっちゃいけない!上に立ちたいなら、喜んで彼らに仕えるんだ。 44 1番になりたいなら、召使いのように彼らに仕えるんだ。 45 は、仕えてもらうためではなく、!!!それは、俺の命と引き換えに、人が救われるためだ・・・!!!」

盲目のバルテマイ

46 イエスと一味は城壁の町エリコに到着した――

イエスの周りには、たくさんの人がついて来ていたので、あっという間に町は人であふれ返ってしまった!イエスたちが城壁の町エリコを出たとき、道端にバルテマイという名の盲目の男が座っていた。彼は、いつもその場所で物乞いものごいをしていたのだ。

47 (ん?今日はやたら騒がしいな・・・)

目の見えないバルテマイだが、周りにいた人から“ナザレ村のイエス”が自分が座るこの道を通ることが分かった。

――「イエスー!ダビデの子よー!!どうぞ、お助けをッ!!!」

突然、バルテマイは大声で叫んだ。

48 「おい、静かにしやがれ!」

「やかましいぞ!」

「んダ〰ビデの子や〰〰!!ど〰かお助けを〰〰!!!」

そこにいた多くの人が、突然叫び始めた盲目のバルテマイを黙らせようとしたが、黙るどころか、さらに大声で叫ぶ!

49 ピタッ・・・イエスは、その場に立ち止まった。

「彼にこっちへ来るよう、伝えてくれ!」

「うっす!」

――「よかったなー!さあ立ちな!イエスが呼んでんぞ!!」

50 バルテマイは軽快けいかいに立ちあがると、上着をバサッとその場に置いてからイエスのところまで案内してもらった。

51 「俺に何をしてほしい?」

「先生!もう一度・・・もう一度、見えるようになりだい゙ッ!!」

52 「よく信じたッ!そのおかげで治った。行けッ!」

――ハッ!

バルテマイは目をパチクリさせた。

「み、見えるぅ――!!!」

彼は大喜びで町の外までイエスについていったのであった。

王の帰還

1 イエスと一味は神殿のみやこエルサレムまであと少しというところであった。オリーブ山のふもとの村、ベテパゲとベタニヤに到着し、イエスは2人の仲間を呼びだした――

2 「これからあの町へ行ってくれ。そこには、まだ誰も乗ったことのない若いロバがいる。そのつなをほどき、俺のところに連れてくるんだ。 3 “なぜロバを連れて行く?”と聞いてくる人がいれば、“主人が入用で、すぐに戻す”と答えるといい」

4 エルサレム街壁周辺にある村――

おっ!

2人が村に入ると、通りに面した家の戸口に若いロバがつながれているのが見えた。彼らがよしよしとなわをほどいていると、 5 その場に立っていた人たちが不思議そうに見ていた。

「あんちゃんたち、ロバのつなをほどいてどうすんだい?」

6 「いや 、主人が入り用でね。すぐにお戻ししますんで!」

2人がイエスに言われたとおりに答えると、不思議なことにその人たちは納得しているようだった――

7 そして2人はイエスのもとにロバを連れてきた。仲間たちが次々に上着を脱ぎ初めると、ロバにバサッと掛けていった。そこにイエスはどしっと座った。 8 イエスを迎えるために、群衆が道の上に上着を敷き始めた。中には、小枝こえだを切ってイエスの通り道の上に敷く人たちもいた。

9 ある人はイエスの前を歩き、ある人は後ろについて歩いた。

バンザーイ!神に栄光あれェ—! 我が君の名によって来られる方にさちあれェ—! 10 我らの父、ダビデの王国にさちあれェ—! 今こそ、その王国が建ちあがる!天の神に栄光あれェ—!えい、そら、わっしょい!!――【聖書:詩篇118:25-26の預言】

みんなはイエスを王としてあがめ、たたえた!

11 こうして、イエスは神殿のみやこエルサレムに入ったのである。

それから、イエスは神殿の境内けいだいに入り、辺りを見渡したが、既に日も暮れていたので、十二使徒と一晩休むために隣町のベタニアに向かった。

呪われたイチジクの木

12 翌日――

イエスと一味はベタニアを発った。

ぐぅぅぅ・・・

イエスはお腹の虫が鳴るほどおなかが減っていた。

13 イエスが遠くを見ると

「お!」

これはこれは、遠くに葉がしげるイチジクの木が見える。イエスは実がなっているかどうかを確かめに、その木に近寄った。しかし、実がる季節ではなかったので、あるのは葉っぱのみ。

ヒュ~・・・

14 「人は、もう二度とお前の実を口にすることはない・・・」

イエスがイチジクの木に向かって言ったことは、仲間たちにまで聞こえた。

泥棒の巣と化した神殿

15 イエスとその一味が神殿のみやこエルサレムに着くと、さっそく神殿の敷地内しきちないに入った。

「!」

神殿の敷地内しきちないで商売をしている人たちを見て、イエスの目の色が変わった。

バンッ!バタンッ!!チャリリリーンッ!!!

イエスは両替人たちの机や、ハトを売っていた商売人たちのイスを勢いよくひっくり返した。 16 イエスはこれ以上神殿で物を売ることを許さなかった・・・。神殿を商売にしていたからである。

17 「“私の神殿は全ての国の祈りの家と呼ばれる”と聖書にあるにもかかわらず、神殿を泥棒の巣にするとはどういうことだッ!!!」

「ひぃーすみません・・・!!」

イエスは、追い出した人たちや関係者たちを強く叱った――【聖書:イザヤ書56:7、エレミヤ書7:11より引用】

18 あ、あやつめ、赦しませんぞぉ・・・

イエスのこの行いを耳にした祭司と掟の学者たちは、イエスを殺す方法はないのかと考えていた。しかし、彼らはイエスを恐れた。 イエスが町中、いや、各地方中の人たちからしたわれ、多大な支持を得ているからだ。手を出したら、どれほど反感をくらうか・・・。

19 その夜、イエスは仲間を連れ、町を後にした。

確信の祈り

20 翌朝――

おぉ!

昨日、イエスが呪ったイチジクの木が見えた。だが、様子が明らかに変だ。つい昨日まで元気いっぱいだったその木が、根元から枯れ、変わり果てていたのだ。

21 「せ、先生ッ!見てくれ!あんたの言ったとおりになってるよッ!!」

これを見た仲間たちの中でも、特にペテロが強く反応した。

22 「神を信じるんだ。 23 おまえたちがこの山に向かって、“海に入れ”と命じ、そうなると信じて疑わないなら、神がそのとおりにする。

24 また、求めていることを神に祈り求め、それがすでに与えられたと確信するなら、その通りになる!!!

25 だが、もし誰かをゆるせずにいるなら、ゆるすのが先だ。そうすれば、天にいる父さんも、おまえたちの過ちをゆるしてくれる・・・!!!」 26

神?それとも人の権限?

27 神殿のみやこエルサレム――

イエスと一味は、再びエルサレムに来て、神殿の周辺を歩いていた。すると祭司や掟の学者、長老たちがイエスのもとに血相を変えてやって来た。

28 「答えなさいッ!! あなたにどんな権限があるのですか、えェ? 誰の権限でこれらのことをしているのかと聞いているのですよッ!!!」

29 「・・・その前に質問がある。答えるなら、誰の権限で動いているか、私も教えましょう。 30 教えてくれ、洗礼者バプティストヨハネが人に洗礼バプテスマを授けていた時、彼の権限が神から来たのか、人から来たのか答えなさい」

31 ユダヤ権力者たちはイエスの質問についてヒソヒソ相談し始めた――

「もし“ヨハネの洗礼バプテスマは神から来たもの”だなんて答えてみなさい、やつはきっと“ではなぜ、ヨハネを信じなかった?”なんてほざくに違いありません・・・。

32 くっ、しかし、ヨハネの洗礼バプテスマが人の権限によるものだなんて、言いたくても言えませんね・・・・・・」

大多数の人が洗礼者バプティストヨハネは神に召された預言者だと信じていたのを知っていたお偉いさん方は、民衆を敵にまわすことを恐れていたのだ。

33 「ゴホッ、ゴホン。えぇ、我々は存じておりませぬ」

「そうですか!では、私も答えるまい!」

遣わされた一人息子

1 イエスはなぞかけを用いて、ユダヤ指導者をはじめ、そこにいる群衆に教えた――

「ある人がぶどう園を造り、ビジネスを始めた。まず、園の周りに垣根かきねを造り、ワインを作るための穴を掘り、その上に見張り用のやぐらを建てた。彼は、何人かの農夫をやとい、そのぶどう園を任せてから旅に出た。

2 やがて、収穫の時期が来ると、園長は自分の分け前を取らせに、やとわれ農夫たちのところへ使いにだした。

3 やとわれ農夫は、到着した使いに分け前をわたし、うやまうべきところだが、使いを袋叩きにし、手ぶらで送り返した。

4 そこで園長は別の使いを遣わしたが、結果は変わらず、農夫たちは使いの顔をぶん殴って、侮辱ぶじょくした。

5 それでもこらえた園長は、また別の使いを遣わしたが、今度は殺されてしまった!園長は農夫たちのもとへ、何度も何度も使いたちを遣わしたが、彼らはことごとく袋叩きにしたり、殺したりと残忍極まりないことを続けた・・・

6 もはや園長に使いは残っていなかった。

こうなったら!と最終手段をとることにした。それは、最愛の一人息子を送り出すことだった・・・。(非情な農夫たちもわが息子なら敬意を払ってくれるはずだ・・・)との考えからだ。

7 ところが・・・やとわれ農夫たちはとんでもないことをたくらみ始めた。“こいつぁ、驚いた。園長のガキじゃあねぇか!いいこと思いついた!このぶどう園はいつか、跡取りのこいつのものになる。ならいっその事、こいつを殺しちまえばいいじゃあねぇか。そうすりゃあ、このぶどう園は俺たちのもんよ!!ガハハハハ――”

8 農夫たちは彼を捕えて殺害し、その遺体をぶどう園の外に放り捨ててしまったのだ! 9 この後、園長はどうすると思う・・・?さすがの園長も堪忍袋の緒は切れ、ぶどう園にすっ飛んで農夫たちを殺す。そして、他の人をやとうだろう。

10 これは、聖書に書かれている通りだ!“大工が捨てた石は、最も重要ないしずえに。 11 これぞ神業!神よりなされしこの偉業、われわれ人間には信じ難き素晴らしさ”」――【聖書:詩篇118:22-23より引用】

12 (ッ!あやつ、もしや・・・んぬ゙ぅぅぅ・・・)ユダヤ人権力者たちの顔が真っ赤になった。この例え話の悪い農夫は自分たちを指しているのだと気付いたからだ。それからどうやったらイエスを逮捕できるか、必死に良い口実を探っていたが、途端とたんに民衆の反感を買うことを恐れ、イエス拘束を諦めることにした。その場を立ち去る背中はなんと小さいことか・・・。

納付の義務

13 その後――

深く根に持ったユダヤ人権力者たちは、イエスをおとしいれるために、パリサイ一派やヘロデ党から数人、使者を送り出した。

14 「先生、あなたは正直な方であられることを存じ上げております。あなた様は他人の顔色をうかがうことなく、真っ直ぐに神の道を教えていらっしゃる。先生、ここで一つお尋ねしますが・・・ローマ帝王カイザルに税金は納めるべきでしょうか?」

使者たちはイエスを目にするとさっそく食って掛かった。

15 「なぜ俺をはめようとする・・・?ここに銀貨を」

イエスはひっかけ問題だと察したため、あきれたそぶりだ。

16 チャリンッ

彼らが銀貨をイエスに手渡した。

「この銀貨に描かれているのは誰の肖像だ?また、刻まれている名は誰だ?」

「カイザル様ですが・・・」

17 「ああ、カイザルのものはカイザルに返し、神のものは神に返すんだ」

イエスの答えは、使者の想像をいっしていた。あまりに立派な答えであったがゆえ、驚きを隠せなかった。結局、それ以上議論をすることができなかった・・・

生きた者の神

18 次に挑戦しに来たのは、死人が生き返ることはないと強く信じているサドカイ一派――

19 「先生、モーセは掟の中で、夫が子どもを残さずに亡くなった場合、取り残された妻は家系を絶やさぬため、夫の弟と結婚しなければならないと定めています。

20 そこで質問です。仮に7人の兄弟がいたとしましょう。兄が亡くなり、次男が結婚しましたが、子どもを残さずに次男も亡くなりました。 21 そこで、三男がその妻と結婚しましたが、三男も子どもを残すことなく亡くなりました。同じことが四男にも起こり、 22 7人の兄弟全員がその女と結婚しましたが、誰ひとり彼女との子どもを残すことなく、この世を去りました。そして、取り残された彼女もついには亡くなりました。

23 7人全員が彼女と結婚したわけですが、死からよみがえり、天国に行くとき・・・結局彼女は誰の妻になるのでしょう?」――【聖書:申命記25:5-6参照】

24 「お門違かどちがいもいいところだ。まずひとつ、あなたたちは読んでいる聖書を理解できていない。ふたつ、神の力がどう働くかをもまるで分かっちゃいない。

25 人が死から復活するとき、結婚という概念はまず存在しない。天に住む天使たちのようになるからだ。 26 聖書を読んだことがないのか?モーセの書には、燃えるしばの中から神がモーセに語った言葉が記されている。“私はアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神でではなく、神でとな。

27 神は生きている者の神であり、死んだ者の神ではない。おまえたちの考えは的外れもいいところだ」――【聖書:出エジプト記3:1-12より引用】

イエスはあきれた様子であった。

最も重要な掟

28 「質問してもよろしいですかな?」

ある掟の学者は、サドカイ一派とパリサイ一派に挑まれたイエスの鋭い対応を見て、ある質問をしたくなった――

「神の掟の中で最も重要な掟は、なんでしょう・・・?」

29 「イスラエル国の同士よ、よく聞くんだッ!最も重要な掟を・・・我らの王以外の神は存在しない。 30 心、魂、思い、ちからを尽くして神を愛すんだ。

31 次に!周りの人間を自分事のように愛すんだ。以上2つが最も重要な掟だ!!!」――【聖書:申命記、レビ記より引用】

32 「先生・・・全くもってご名答!おっしゃるとおり、神は唯一無二・・・! 33 心、頭、全身全霊で神を愛し、自分同等に人を愛すこと。これは、どんな捧げものをどれだけ捧げたとしても、まったくとるに足りない重要な掟です!」

34 この賢明な応答を聞いて、イエスはニコッとした。

「あなたは、神の王国キングダムまでもう少しだ!」

これ以降、イエスと知恵比べしようとする人はいなくなったのだった。

救世主キリストはダビデの子か

35 あるとき、神殿の境内けいだいでイエスがこんなことを教えていた――

「なぜ掟の学者たちは、救世主キリストはダビデ王の子だと教える? 36 神の霊ホーリースピリットが、ダビデ王を通して言ったことはこうだ。

“𝄞王なる神より我が王へ

‘腰をかけろ、私の右の座へ

敵はひれ伏す、きみの足下あしもとに’”――【聖書:詩篇110:1より引用】

37 ダビデ自身が救世主キリストのことをと呼び、どうして救世主キリストがダビデの子になりえる・・・?」

ありとあらゆる人がイエスの教えに夢中になり、心をおどらせた。

宗教家の正体

38 さらに、イエスは教えをこう続けた――

「掟の学者や宗教家たちに気をつけるんだ。彼らは深々と頭を下げてあいさつされるのが好きで仕方がないから、身分の高い服装を好んで着ては、人通りの多い場所をうろちょろする。 39 はたまた、ユダヤ集会所シナゴグやパーティー会場では上座かみざに座りたがる。 40 だが、裏では夫に先立たれた貧しい女たちの家をだまし取る・・・。表面上、長々と祈り、自分がいかに信仰深い者なのかを見せびらかすが、そんな八方美人は神によってひどく罰せられるのがオチだ」

額を上回る価値

41 イエスは神殿の献金箱の反対側に腰掛け、献金を入れる人たちの様子を眺めていた。

ジャリリリリン・・・

多くの金持ちたちが来て、大金を入れているのが聞こえる。 42 そこへ、1人の貧しい未亡人が来た。

チャリン、チャリン

1円にも満たない小さな銅貨を2枚入れた音がした。

43 見ろッ!

イエスは嬉しそうに仲間たちを呼んだ。

「この貧しい未亡人は小さな銅貨を2枚入れなかった。だがな、彼女はどの金持ちよりも

44 あの金持ちは、自分にとっちゃどうってことない額を捧げただけだが、彼女はすべてを捧げた。必要な生活費をそそぎ込んだんだ・・・!!!」

この世の終わりの前兆

1 イエスが神殿から出て行こうとしているときのことだった――

「うっわー!先生、あれ見ってください!あのおおっきな、いしぃ〰〰!こりゃあ立派な建物だッ!」

建物が並んでいるのを見かけた一味は目をキラキラ輝かせた。

2 「ああそうだな!みんなもこの立派な建物をよく見てくれ!こいつぁいつか全壊すんだ。1つとして重なったままにはならない・・・!!!」

イエスは、先を見越した表情で神殿を見つめていた。

3 ――それから、イエスは岩のペテロ、雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネ、そしてアンデレの、使徒4人を連れてオリーブ山に行った。山の頂上に着くと、みんなで腰掛けた。そこからの眺めは素晴らしく、神殿がよく見える。

4 「イエスさん、さっきの話だが、いつそんなことが起きるか教えてくれ!なんか前兆とかってあるのか・・・?」

仲間がそう聞くと、イエスの目が鋭くなった・・・

5 「誰からも騙されないように注意しろ・・・! 6 俺の名を語るヤカラが多く現れる。“私こそが救世主キリスト!!”などと言って偽り、人を惑わす・・・。

7 あっちこっちで戦争があった、始まったなどと耳にする。だが恐れる必要はない。これらはこの世が終わる前に必ず起こることだ。 8 民族は民族に、国々は国々に敵対して立ち上がり、食糧は底をつき、人は飢えに苦しんだり、あらゆる場所で地震が起きたりするが、陣痛のようにほんの始まりでしかない・・・!!

9 気をつけろよぉ、俺の仲間だって理由で捕まえ、訴えようとする人たちがわんさか出てくるからな。ユダヤ集会所シナゴグで打たれ、叩かれては、王や政治家たちの前に立たされ、俺のことを証言することになる。 10 おまえたちは、この世が終わる日の前に最高な知らせゴスペルを全世界へと伝えなければならない!

11 逮捕され、連行されたとき、どう弁明しようかなどと心配する必要はない。神の霊ホーリースピリットがおまえを通じて語るからだ!神が教えてくれるままに語ればいい。 12 兄弟が兄弟と、父はわが子と、子どもたちは両親と敵対し、死に追いやってしまう・・・。

13 俺の仲間だからって、憎まれることもあるが、最後まで忠実な者は救われる・・・!! 14 預言者ダニエルの言ったとおり、崩壊をもたらす者たちが本来居るべきでない場所に居るのを見たら、すぐ逃げろ!」 <読者に告ぐ、これが誰を指しているか、分かっていることを前提で記す>――【聖書:ダニエル書9:27,11:31,12:11より引用。福音書の筆者マルコは、読者にこの破壊をもたらす者がローマ軍であり、彼らがエルサレムを破壊すると遠回しに伝えている。しかし、それを一般に公開すれば、身が危うくなるため伏せたのだ】

「そのとき、ユダヤにいる人は山へ。 15 何があっても足を止めてはいけない。屋上にいる人は、家に荷物を取りに入らないように。 16 畑にいる人は上着を取りに戻らないように。 17 その日、妊婦や赤ん坊を持つ母にとっては、特につらい時期になる・・・。 18 また、それが冬に起こらないように祈るんだ! 19 神が世界を創造してから起こる、最も悲惨な時期になるからだ!! 20 ・・・だが、神が選んだ人たちのため、神はこの過酷な時を短縮することにした。でないと全滅する・・・!!!

21 救世主キリストがいるぞ!”だとか、“彼がそうだ!”なんて叫び始める人が、続々出てきはするが相手にするな。 22 えせ預言者やえせ救世主が来て、うそを信じさせるために魔法のようなわざを行って、神に選ばれた人たちをだまそうとする。 23 そのための警告だッ!!だれもだまされないことを願う・・・」――【この魔法のようなわざは悪魔の力によって成される】

終焉しゅうえんの季節

24 「これらの困難に続いて、預言者イザヤが言うとおり“太陽は暗くなり、月は輝きを失う。 25 星々は天から落ち、天空の権威は揺れ動く!”」――【聖書:イザヤ書13:10,34:4より引用。その時代、王を神としてたたえる人や王の死後、星になって天で輝き、天空の神の一人に数えられると信じる人たちが大勢いた。また、世界を支配する権威が天空の星々より与えられると信じている文化的背景があり、このように例えた。つまり、偽物の神、あるいは、政治的勢力が揺れることを意味したのだ】

26 「人は目の当たりにする・・・が雲に乗り、神の栄光と権威をまとって来るのを! 27 は地上の至る所に天使を遣わし、神に選ばれし人たちを呼び集める!! 28 イチジクの木から学ぶんだ。そのえだが緑色になり、柔らかくなると、新しい葉をしげらせる。人はそれを見て夏が近づいていることを知る。 29 同じように、これらのこと全てが起こったら、ついにそのときが来たと察しろ!

30 保証する。今この時代に生きている人たちの中には、これらの事を全て体験する者がいる・・・! 31 やがて、この世は天も地もひっくるめて滅びる。だが、俺の言葉は永遠に残る・・・!!! 32 その日がいつか、や天使も含め、知るものはいない。知るのは、父さんのみだ。 33 だからいつも万全の準備をしておくことだ・・・!

それがいつになるか、おまえたちに知るすべはない。 34 まるで、召使いに自分の家を任せて旅に出る主人のようなもんだ。主人は召使いたちに、それぞれ仕事を割りふって、留守の間、しっかり家を守るようにと命じる。 35 主人が昼に帰るか、真夜中になるか、雄鶏ニワトリが鳴くころか、朝日が昇ってくるころか、なんて分かりはしない。だからこそ念を押す。万全に備えろ!

36 いつも万全でいるなら、主人が早く帰ってこようと、居眠りしてサボっている姿を見られはしない。 37 いいか、俺は全ての人に言っているんだ。準備万端でいろ・・・!」

祭の前の企み

1 【ユダヤ人は、種なしパン祭が毎年があった。初日には過越すぎこしの祭典として、子羊を生け贄にし、1週間かけてイースト菌の入っていないパンを食べるのだ】

この種なしパン祭が2日後に迫ったころのことだ――

祭司や掟の学者たちは、人に見られることなくイエスを逮捕する方法はないもんかと話し合っている。

2 「ちっ、祭りの最中にイエスを捕まえることはできない。民衆の怒りを買い、暴動が起きるだろう・・・」

大多数の人がイエスをうやまっていることが彼らの悩みだった。

香油こうゆを注ぐ女

3 オリーブ山の東側斜面しゃめんにあるベタニヤ村――

イエスたちはシモンの家で食事をとっていた。このシモンは以前、重い皮膚病ツァラトにかかっていた男だ。そこへ、ササッ・・・と、一味の女が入ってきた。手には石膏せっこうのつぼを持って。そのつぼには、純粋なナルド油で作られた、非常に高価な香油こうゆが入っていた。彼女はイエスに接近すると、ポンッとつぼを開け、敬意と感謝の意を持って、イエスの頭にツーと香油こうゆを注いだ――

4 「お、おいッ!なんてことをする! 5 その香油こうゆは300デナリ以上の値打ちがあるぞ!売れば、貧しい人たちを助けることもできたというのに・・・!!くぁーもったいない」

イエス一味の数人は香油こうゆを注いだ女の行為をとんでもない無駄遣いだと言い、彼女への不満をべらべらと並べた――【1デナリは銀貨1枚で、1日分の給料に値した。300デナリは年収に値する】

6 「やめろッ。俺のためによくしてくれたっていうのに、なぜ彼女を責める? 7 貧しい人たちはいつも身近にいる。彼らを助けることはいつだってできるが、俺はいつまでも一緒にいるわけじゃあない・・・。 8 彼女は俺のために最善をつくし、俺の埋葬まいそうに備え、体に香油こうゆを注いでくれた。

9 約束する、最高な知らせゴスペルが世界中に広まり、彼女がした事も同様に世界に知らされる!彼女は、永遠に忘れられることがない・・・!!!」――【聖書:申命記15:11より引用】

イスカリオテ人のユダ

10 おやおや、十二使徒の1人であるイスカリオテ人のユダは、なぜか1人祭司たちのもとへ向かっている――

師匠であり、友人であるイエスを殺すことにやっきになっているあの祭司のもとへだ・・・。彼らとおち合うと、祭司たちに混ざって何やら話し合っている。

「どうすれば、人に見られないところであやつをとっ捕まえることができる・・・?」

な、なんと!ユダは、祭司たちに協力して、イエスを連行する手だてを企てているではないか・・・!!!

11 願ったり叶ったりの祭司たちは大喜び。祭司たちは、イエスと引き換えに希望の報酬を支払うとユダに約束した。それからのユダはイエスとともにいても、脳裏のうりではイエスを引き渡す機会を探っていた・・・。

過越すぎこしの食事

12 さて、種なしパン祭の初日である過越すぎこしを祝うため、子羊を生け贄として捧げる日がきた――

イエスの仲間が何やら尋ねにきた。

「イエスさんのために過越すぎこしの食事を用意したいんだが、食事はどちらで?」

13 そこでイエスは2人の仲間を町に遣わすことにしたが、その前にこう言付ことづけておいた。

「町に行くと、水瓶みずがめを持っている男がおまえたちの所に来る。彼の後について行ってくれ。 14 水瓶みずがめ持ちの男が家に入ったら、“お供と一緒に過越すぎこしの食事をする部屋を見せてほしいと先生から頼まれた”と、家の主人に伝えればいい。 15 主人は俺たちのために用意された2階にある広い部屋へ案内してくれる。そこで、食事の準備を整えてくれ!」

16 仲間たちが町に着くと、全てイエスの言った通りに事が進んだ。こうして、彼らはその家で過越すぎこしの食事の準備を整えた。 17 夕方になると、イエスは十二使徒を連れ、その家に入った。美味しそうな香りはかすかではあるが、外まで漂っていた・・・。

18 食事の最中――

「今、食事を共にしているうちの1人が、俺を敵の手に引き渡す・・・!!」

19 「なッ!!!」

イエスの言葉を聞いて、仲間たちに衝撃が走った。イエスを裏切った自分の姿を脳裏のうりに浮かべ、死んでもそんなことしてたまるか!と1人を残して、みんなが思った。

「俺は絶対、あなたを裏切りません!!」

おのおのが矢継ぎ早に言った。

20 「俺を裏切るのは、12人のうちの1人。そう、俺と同じ器にパンをひたしている者がな・・・」

驚きを隠せない使徒たちの視線が一斉に彼へいった。

21 は聖書に記されている通り、苦しむことになる。だが、を裏切って敵の手に引き渡すことにより、死に追いやる者はなんと哀れなんだ。ユダは生まれて来ない方がましだった・・・」

最後の晩餐ばんさん

22 それから、食事を続けていると、イエスはパンを取った。神に感謝を捧げ、そのパンを裂くと、仲間たちに配った。

「このパンは俺の体。さあ取って食べるんだ」

23 次に、ワインの入ったさかずきを取り、神に感謝を捧げると、同じように仲間たちに配った。

24 「このワインは、俺の血。神と人が新しい条約を結ぶために流される俺の血だ。 25 言っておくが、神の王国キングダムで新しくなったワインを飲むその日まで、俺がワインを口にすることはない」

26 それから、イエスと仲間たちは愉快ゆかいに歌を歌った・・・♪~♫~♪~♫

翌日――

オリーブ山に向け、出発した。

死ぬ覚悟

27 「おまえたちはみな、俺を裏切る。聖書にはこうある。

私が羊飼いを殺す、

すると羊は逃げ惑う――【聖書:ゼカリヤ書13:7より引用】

28 だが、俺は殺された後、死からよみがえり、ガリラヤ地方へ行く。いいか、俺はそこでおまえたちを待つ・・・!」

29 「たとえ、他の誰が裏切ろうとも、この俺は決してあなたを裏切りはしないッ!!」

イエスの言葉に岩のペテロが強く反応した。

30 「・・・残念だな、おまえは俺を否定する。雄鶏ニワトリが2回鳴く前に、3度俺を知らないと断言する」

31 「お、俺がイエスを否定するって?んなの、とんでもない!俺はイエスのためなら死ぬ覚悟だってできてんだッ!!!」

他の仲間たちも続けざまに同じようなことを言うのだった・・・。

独り祈る救世主キリスト

32 イエスと仲間たちはゲツセマネ園に着いた――

――「祈ってくるから、ここに座っててくれ」

33 しかし、イエスは岩のペテロ、雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネだけ、一緒に来るようにと言った。

ゔ ッ・・・・・

イエスは苦しみのあまりもだえ始めた。

34 「俺は悲痛のあまり、心が張り裂けそうだ・・・。目を覚まして、ここで待っていてくれ・・・」

35 イエスは仲間が見聞きできないところまで離れ、その場にひれ伏すと、祈り始めた。

36 「はぁはぁ・・・アバ父さん、あなたにできないことはない・・・。俺がこの苦しみの杯サカズキを飲まなくても、すむようにしてほしい・・・が、俺じゃあなく、アバ父さんの思いのままにしてくれ・・・・・・」――【アバ:アラビア語で父】

37 イエスが仲間たちのもとに戻ると――

zzZ・・・彼らはぐっすり眠っていた。

「おいシモン岩のペテロ!なぜ寝ている・・・?俺とともにたった1時間も、起きていられないか。 38 しっかりと目を覚まして、誘惑に負けることがないように祈るんだ。魂が正しくありたくても、人間は弱い」

39 イエスは、再び仲間たちから離れ、同じことを祈った――

40 イエスが仲間たちのもとに戻ってくると、睡魔に負けた3人が仲良く寝ているではないか。イエスに気づいた彼らは、はッと起きてあたふたする。

41 それから、イエスは3度目も同じように祈りに行った――

さぁ3度目の正直・・・イエスが戻ってくると3人は、くかー・・・と寝息をたてている。イエスはあきらめのため息をついた。

「まった寝てんのか・・・もういい、が罪人の手に落ちるときがきた。 42 立て、時は満ちた。裏切り者のご登場だ・・・・・・」

口づけの挨拶

43 イエスが話し終わらないうちに、十二使徒の1人、イスカリオテ人のユダが、剣やこん棒を持った武装集団を従えてやって来た。彼らは、祭司や掟の学者たちをはじめとした、長老たちに派遣されたのだ。

44 ――「いいか、俺が口づけのあいさつをする人を捕まえるんだ。連行する時は、逃げないように注意しろよ・・・」

と、イスカリオテ人のユダは、あらかじめ武装集団にイエスを見分けるためのサインを伝えていた。

45 「あ、先生!」

ユダは笑顔でイエスに近づき、口づけのあいさつをすると、心の中で不気味な笑みを浮かべた。

46 すると、武装集団が来て、イエスを取り押さえた。

47 にゃろォォォ・・・スパッ・・・

イエスの近くにいた仲間の1人は、自らの短剣を抜くと、武装した男に向かって振りかざした。

ぼとッ・・・地面に落ちたのは大祭司の召使いの耳だ。

48 「なぜ犯罪者を捕まえるかのように、剣やこん棒を持ってきた?

49 俺は逃げも隠れもせず、毎日神殿の境内けいだいで教えていたじゃあないか。なぜそのときに捕まえない?まあいい、聖書に記されたことが完全になされるために起きたまでだ」

50 イエスが捕まると、仲間たち全員が一目散にその場から逃げ出した。

「ゔ、ゔわぁぁぁ――!!」

「コラッ、待て!」

ザザ、ザザザザッ!ガサガサ・・・・・・

「逃げられました・・・追いましょうか?」

「いや、よい」

51 ある青年は、亜麻布あまぬのの服しか着ていなかったが捕まりそうになり、武装集団に服を掴まれたため、 52 服をさっと脱ぎ捨て、下着のまま逃げ出して行った。イエスの他に残ったのは武装集団の手にある青年の服のみであった・・・

正当化をはかるユダヤ指導者

53 イエスを捕えた武装集団は、イエスを大祭司のもとに連行した――

そこには祭司たちや長老たち、そして掟の学者など宗教関係の首領ドンが集結している。殺したくてたまらないイエスの顔を拝みに来たのだ。

54 そのころ――

岩のペテロはというと・・・距離を保ちながら、イエスの後をつけていた。そして大祭司の庭に入り、き火で体を温めている看守たちにこっそり混ざった。 55 祭司や最高議会の議員たちは、イエスの汚点をさっさと見つけて、死刑にする気満々だった・・・。しかし、十分な証拠が全くもって見つからない。

56 うその証言をするヤカラは大勢いたが、彼らの言うことはてんでばらばらで、一致しない。

57 すると、そこにいた数人がザッと立ち上がり、うその証言をべらべら並べた。

58 「我々はこの人が、“私は人の手で造られたこの神殿を壊し、3日目に人の手を一切借りることなく、別の神殿を建てる”と言ったのを確かに聞きました!」

彼らは、イエスの名前を伏せて言った。名前を言うことさえ、しゃくにさわるからだ。

59 しかし、彼らの話もまたもや食い違う。

60 「彼らがあなたにとって不利な証言をしていますが。これらの訴えに対し、何か反論はありますか?それとも彼らの言っていることは誠ですか?」

尋ねるは、群衆の前に立った大祭司。

61 「・・・・・・」

しかし、質問に答える気配が全くないイエスに、大祭司は別の質問をした。

「君は創造主かみの子、救世主キリストなのですか?」

62 「その通りです。みなさんはいずれ、神の子が全能なる神の右の座に腰をすえている姿を見る。そして、が雲に乗ってやって来る光景をも目の当たりにする」――【聖書:ダニエル書7:13より引用】

63 「んなッ、ナニィ――!!!」

ビリビリビリィィィ――!

大祭司は怒り狂って、自分の服をひき裂いた・・・!

「え゙――ぃ!!!もう十分です。これ以上の証言はいりません! 64 我々は聞いた!今まさにこの耳で、この人が神を侮辱ぶじょくするのを!異論ある方はいませんねッ!!!」

「ありませんッ!!!」

そこにいた人全員が、イエスの死刑に同意した・・・。

65 ペッ、ペッ!

そのうちの何人かは、イエスに向かって唾を吐きかけた。

ビシッ、ボコッ、ゴキ・・・・・

「オラッてめぇが本当に預言者なら、誰が殴ったか当ててみやがれぃ!ははは――!!」

イエスに目隠しをして殴り始める・・・!

看守たちはイエスを連れ去り、さらにこてんぱんに痛めつけたのだった。

二度鳴く雄鶏ニワトリ

66 そのころ、岩のペテロはと言うと、まだ大祭司の庭のき火のそばで体を温めていた――

そこへ召使いの少女がやって来て、 67 火が反射し、ゆらゆらとだいだい色に照らされたペテロの顔を覗き込んだ。

「あ、ねぇ!ナザレ村のイエスと一緒にいた人ですよね?!」

68 「うおッ!な、なーにを意味の分からないことをッ!俺は!」

岩のペテロは彼女の言葉を否定した。慌ててその場を離れ、庭の出口へ向かっていると・・・

コケッコッコ――!

雄鶏ニワトリが鳴いた。

69 「ね—ぇ!あの人、あの男の仲間ですよー!」

少女はペテロの慌てる様子を見て、周りに立っている人たちに言った。

70 「にゃろ、つってんだろッ!!」

岩のペテロは振り返って彼女の言葉を打ち消した。すると、周りに立っていた人たちの目線が一斉にペテロに行った。

「間違いない!発音からしてあの男同様、ガリラヤ出身だ!!」

71 「ざけんな!神に誓って言うが、あんにゃろう俺は!!!」

ペテロは呪いをかけて誓った・・・。

72 コッケコッコォォォ・・・・・・

ハッ!

雄鶏ニワトリが2回目の鳴き声を上げたと同時にペテロは、“雄鶏ニワトリが二度鳴く前に、イエスを三度否定する”と言ったイエスの発言を思い出した。

「う、ゔわぁぁぁ〰〰〰〰〰〰!」

岩のペテロは、泣き崩れてしまった・・・・・・

裁判にかけられる救世主キリスト

1 夜明けごろのことだった――

この者の処分を決定いたします・・・!!!

祭司や長老たち、掟の学者、最高議会の議員たちは、イエスの処刑の判決に対し、満足げに立ち上がって拍手した。そうとなると、待ってはいられない。さっそくピラト総督のもとにイエスを連行した。

「閣下、騒動を起こしているイエスを連れてまいりました」

「うむ」

イエスは、ピラト総督の前へと突き出された。

――ピラト総督――

2 「聞くところによるとだが、おぬしはユダヤ人の王なのか?」

「ええ、間違いないです・・・!」

総督を前にイエスは堂々たる風貌ふうぼう

3 「閣下!こやつはとんでもないことをしでかしたんでございます!」

「そうです、ピラトさま!こいつはとんでもない悪党です!!」

「誠実で正しいお方であるピラトさま!どうか、このヤカラを!」

祭司たちは、次々にイエスの有罪を訴えた。あまりの数の訴えに

4 ピラト総督は驚きながらイエスを見た。

「これだけ多くの者が訴えておるというのに、おぬしは黙っているのか・・・?」

「・・・・・・」

5 弁解どころか、気にもしてない様子になおさら驚いたピラト総督であった。

ピラト総督の慈悲じひ

6 さて、毎年過越すぎこしの日には民衆が選んだ囚人を1人、釈放する慣習があった。

7 さて、監獄かんごくには、バラバという名の囚人がいた。

――囚人バラバ――

バラバは、彼の一味とともに殺人を犯した罪状で、投獄されている悪党である。

8 ――「閣下、いつもの・・・!」

ある民衆たちが今回はどの囚人を解放するのかとピラト総督のもとへやってきた。

9 「!」

ピラト総督はひらめいた様子で群衆を見た。

「・・・お主ら、ユダヤ人の王を釈放してほしいか?」

10 ピラトは察していた。イエスが連行されたのは祭司たちの嫉妬しっとのみが原因だと。 11 とんでもない!と慌てたようすで祭司たちは、イエスではなく“悪党バラバの釈放を”と言うように民衆をうながした。

――「・・・バ〰ラ〰バ!バ〰ラ〰バ!!バ〰ラ〰バ・・・・・・!!!」

12 「・・・な、ならおぬしらは、このユダヤ人の王だという男をどうしてほしいというのだ?」

13 「十字架で殺せぇ〰〰〰〰!!!」

14 「なにィ・・・?なぜだ?こやつが一体何をしたと言うのだ?!」

じゅ〰じ〰か!じゅ〰じ〰か!!じゅ〰じ〰か!!!

15 (ぬ゙ぅぅぅ・・気は進まんが、こればかりは手に負えぬ・・・)ピラト総督は野犬のように吠える人たちを見て、彼らの要望どおりにしなければ、大きな暴動が起きる・・・そう思った。役職上、暴動を起こさせるわけにはいかない。なくなく悪党バラバの釈放を承認した。そして、イエスをムチで打ち、極悪人にのみ与える刑である十字架での処分を兵士に命じた。

16 ――「来い!」

ピラトの兵士たちは、イエスをピラトの官邸かんていへ連行した。そして仲間の兵士たちを全員呼び集めると、 17 イエスを王に見立てるため、無理やりムラサキ色のガウンを着せ、鋭いとげが無数にあるイバラでまれたかんむりを頭にかぶせた。とげは皮膚をえぐり、イエスのひたいからは血がしたたり落ちる・・・・・・。

18 ――「おーこれは、これは!ユダヤの王殿ではございませんか!」

「コラッ、おまえたち!ユダヤ人の王に敬礼けいれいせんか!」

「プ・・・ブワッハッハッハァ—!」

ドスッドシ、ゴキ・・・・・・・

19 そして兵士は、イエスの頭を何度も棒で殴り倒し、ペッと唾を吐きかけた・・・!!!それから兵士らは、イエスの前にひざまづいて見せた。まるで、王にひざまづくかのように皮肉ったのだ・・・

20 さんざんイエスを侮辱ぶじょくし、あざわらうと、ムラサキのガウンを脱がせ、元々着ていたイエスの服を着せ直した。イエスの顔はボコボコに腫れている・・・。兵士たちは、殴り飽きたところで、イエスを十字架で処刑するため、官邸かんていから連れ出した。

ユダヤ人の王をかかげた十字架

21 アレキサンドルとルファスの父親・シモンというクレネ人が田舎から町に向かっていたときのこと――

ボロボロになっているイエスは、十字架を背負って進むよう強要されるが、苦戦していた・・・

「おい、そこのお前!こいつの十字架を一緒に背負え!」

「え!で、でもこれから用が・・・」

「ええい、いいから手伝え!」

「ゔッ・・・」

クレネ人のシモンは、突然兵士たちに強要された。 22 兵士たちが向かわせるは、どくろの地ゴルゴダ。 そこは、重い罪を犯したものが十字架で処せられる場所だ。

23 兵士らは道中、麻酔ますいの効果があると言われていた没薬もつやくを混ぜたブドウ酒を差し出したが、イエスは飲まなかった。

24 ――カンッ、カンッ、カンッ、べチャッ・・・・・・

兵士たちは、イエスの体を釘で十字架にはりつけた。辺りにイエスの血が飛び散っている・・・。

――「おーし、サイコロで決めるぞ!」

「行くぞー。そーらよっ!」

「き、きたー!!もーらいっと!」

兵士らは、イエスが着ていた上質な服を切り分け、誰がどの部分を貰うかをサイコロで決めた。

25 兵士たちがイエスを十字架に架けたのは、朝の9時ごろのことだ――

26 イエスの頭上には、イエスの罪状を記した看板が・・・

――ユダヤ人の王――

と記されている。 27 また、イエスの両側に犯罪者が2人、同じようにして十字架にかかっていた。 28 “彼は犯罪者の1人として数えられた”という聖書の言葉が実現したのだ。

29 ――「あらら、クズがいらっしゃるではないですかっ!」

その場を通りがかる人がイエスに近寄っては、侮辱ぶじょくしてあざ笑う。

――「そーこのごみクズさん!神殿壊して、3日で建て直すんですって?プッ! 30 神殿の心配する暇があったら、ご自身を助けてみたらどーう?」

「そこに架かってるあなた、十字架から降りなさいっ!あ、降りれないのか、おっかし!」

31 そこにいた祭司や掟の学者たちは、お腹を抱えてイエスをあざ笑うと、こう口にした。

「彼は他人を救いはしたが、自分は救えやしない!みっともないったらありゃしない!ククク」

32 「もし、仮にですよ。この方が救世主キリストで、イスラエルの王ならば、今ここで十字架から降りて来ればよいではないですか。そうすれば、この我々でさえ君を信じてあげますよ!プー」

さらに、イエスの両脇にはりつけられていた犯罪者たちも混ざってイエスをあざ笑ったのだった。

救世主キリストの死にざま

33 ブオオオオオ・・・・・・

正午になると、国中が暗闇くらやみに包まれた・・・。

3時ごろになったが、まだ暗闇くらやみのままだ――

34 エロイわが神エロイわが神ラマなぜサバクタニ私を捨てたのか〰〰!」

・・・・・・イエスは残りわずかの力をふりしぼって叫んだ――【それは、聖書の詩篇22:1の題名をアラム語にしたものであり、“見捨てた”と嘆いた訳ではなかった】

35 その声は、そこらに立っていた人たちにまで届いた――

「お、おい・・・こいつ今、エリヤを呼んだぞ・・・!」――【イエスが言った“エロイ”が、遠くからは紀元前850年頃に活躍した伝説の預言者“エリヤ”に聞こえたのだ】

36 1人の男が慌てて走り出したかと思うと、スポンジを手に取り、水を混ぜた酸味あるワインを吸わせて棒に結びつけた。そして、上にいるイエスへその棒を伸ばし、飲ませようとした。

「おい、止めろ!預言者エリヤが救いにくるかどうか、確かめてみよう・・・!」

37 「ぐ、ゔあ゙〰〰〰〰〰〰・・・・・・」

イエスは大声で叫んだ!かと思うとそのままぐったりしてしまった・・・。息を引き取ったのだ。

38 バ、バリバリバリィ――!!!

イエスが息をひきとると同時に神の存在と人を分けへだてていた神殿の幕が上から下まで勢いよく真っ2つに裂けた!!!

39 「ご、ご、ごの方は、ま゙ごどに゙神の子だった・・・・・・!!!」

十字架の正面に立っていた軍の将校は、イエスの死に様を見て確信した。 40 その一部始終を離れた所から見守っていたのは、イエス一味であった女たちだ。その中にはマグダラのマリヤ、サロメ、ヨセそして末っ子であったヤコブの母・マリヤなどがいた。 41 イエスがガリラヤ地方にいたとき、いつも面倒を見ていたのは彼女たちだ。また、その他にも、イエスと一緒に神殿のみやこエルサレムに来た女たちが大勢いた。

救世主キリスト埋葬まいそう

42 休日サバスの前日――

太陽が沈み始め、あたりが暗がかりはじめたころ。

43 「閣下、イエスが息を引き取ったと聞きました。ぜひ彼の遺体をこの私に埋葬まいそうさせていただきたく参りました」

アリマタヤ出身のヨセフという男が、勇敢にもピラト総督に願い出た。

――アリマタヤのヨセフ――

彼は、最高議会でも重役である議員の1人で、何よりも神の王国キングダムを待ち望んでいる男だった。

44 「なんと!あやつはもう息を引き取ったのか・・・?」

ピラト総督は、イエスがすでに息を引き取ったと聞いて驚いた。

「おい、すぐ将校に確認してこい」

「はっ!」

45 ――「閣下、将校が確かに死亡を確認したとのことですッ!」

(そ、そうか・・・)――

「ヨセフさん、確認がとれましたので、お望み通りになさってください」

「ありがとうございます。では」

46 ピラト総督から許可をもらったアリマタヤのヨセフは即座に高価な亜麻布あまぬのを購入し、遺体のあるどくろの地ゴルゴダへ向かった――

「うっ、なんて無惨むざんに・・・」

「うわぁぁぁん!ひどすぎるよぉー」

「グスン・・・非道よ、グスン、非道!!・・・グスン」

イエスを十字架から降ろし、その変わり果てた姿に仲間たちは、感情をむき出しにした。その姿なりは誰だか分からないほどだったのだ・・・。そして、購入した布にイエスの遺体をそっと包んだ――

それから、山の側面を掘って造られた立派な墓に、遺体を持って行き、そこへ安置させた。最後に、墓の扉となる大きな岩をゴロゴロと転がし、入り口をふさいだ。 47 このとき、マグダラのマリヤとヨセの母マリヤは、イエスの墓場の位置を覚えた。

復活の伝令

1 日が沈み、休日サバスが終わった――

マグダラのマリヤ、サロメ、そしてヤコブの母マリヤは、イエスの遺体に塗るための甘い香りのする香油こうゆを買いに行った。

2 次の日、週始めの朝日がのぼると共に女たちは墓へ向かった――

3 その途中、女たちはふと思った。

「そう言えば墓の入口の大きな石どうする・・・?」

「私たちだけじゃ、あれ動かすのは無理だね・・・」

4 そんな話をしながら歩いていると墓が見えた・・・

「?」

「開いてるわ・・・」

「う、うん・・・でも誰かしら・・・」

入口をふさいでいた石の扉。大きい円状の扉がすでにどけられている。 5 彼女たちは、とりあえず誰がいるか、墓の中に入って確認することにした。

「すみません・・・」

「やあ☆」

「え・・・!ぎゃぁぁぁ〰〰〰〰!!!」

白いころもを着た若い男が墓の右側に座っているではないか!彼女らの心臓は一瞬止まったかと思うほど驚いた。そして、恐怖に怯えた。

6 「ははッ!恐がらなくていいよッ!十字架にかけられたナザレ村のイエスを探してるんでしょ?彼ならここにはいない!死からよみがえったからね!疑うなら、自分の目で確かめてみな!ほらッここ、ここ!遺体はここにあった。

7 いい?今から、イエスの仲間たちの所へ行って、何が起こったかを伝えるんだ!特にペテロ!彼にはよく伝えておいて!イエスが以前から言っていたとおり、イエスはガリラヤ地方で一味に会うのを待ってるから!そこでイエスに会うように伝えるんだ!」

そう話す男は、天使であった!

8 ヒィー!

彼女たちは、天使とは知るよしもなく、怖くてもうどうなっているのかがさっぱり!逃げ去るようにして墓を出て行った。その後、彼女たちはあまりの恐ろしさに、自分たちが見たことを誰にも話せなかった・・・。

疑心暗鬼ぎしんあんきになる一味

9 イエスが死からよみがえったのは、週始めの早朝であった――

復活したイエスは、まず、マグダラのマリヤの前に姿を現した。イエスに“7つの悪魔”を追い出してもらった過去を持つマリヤだ。 10 マリヤは復活したイエスに会った後、仲間たちにその事を伝えたが、肝心の仲間たちは悲しみに暮れ、泣きじゃくっていた。

11 「みんな!!!」

マリヤは仲間たちにイエスが生きていること、その目で見たことを必死に伝えたが、イエスに付き従ってきた仲間ですら、マリヤの言うことを信じなかった。

12 それからのこと――

イエスの一味である2人が田舎道を歩いていると。

よう!

「?」

――え゙ぇぇぇぇぇぇ!!!

2人の前に姿を現したのは紛れもなくイエス。でも、その姿は殺される前とは少し違う。 13 2人は、その他の仲間のもとに行って自分たちの身に起きたすべてを話した。それでもなお、仲間たちは、信じようとしなかった。

最後の助言

14 それから、11人の使徒がつどって食事をしていた時であった――

スタッ・・・

そこへ来たのはイエスだった!一味が頑固に信じないことを叱りにきたのだ。

15 ――「さあ行けっ!世界中のありとあらゆる人へ最高な知らせゴスペルを伝えるのだ! 16 いいか、最高な知らせゴスペルを信じ、水にかって洗礼バプテスマを受けた人は、だれでもッ!!!だが、信じない人は有罪と定められる・・・。

17 信じた人が救われた証か?彼らは、俺の名により人から悪魔を追い払い、学んだことのない言語を口にする! 18 蛇をつかもうが、毒を飲もうが害を受けず、やまいある人の上に手をかざせば、癒えるのだ・・・!!!」

天国へ帰る王

19 イエスは一味にこれらのことを語り終えると――

ブオーン・・・・・・

天に引き上げられ、神の右の座にこしをすえたのである。

20 それからの一味はと言うと――

世界中に出て行き、神の最高な知らせゴスペルを会う人会う人に伝えていった。神は一味にキセキを起こす力を授け、彼らの語ることが真実であることを証明していったのだった。