ルカ筆・福音書

献る言葉

1 これを読む方々へ捧げる

テオフィロ様

私どもの身の回りで起きたことは、既に多くの方によって記されています。どれもこれも神の計画が成されるために起こったことです。 2 “イエスの教えを伝える”使命にもとづき、イエスと共に行動して見聞きしてきた仲間たちの証言をもとに一から記されています。 3 そこでテオフィロ閣下、ならびに、この書を読む全ての方々に、より理解していただくため、慎重な調査を経て、話の内容を順序正しくまとめることにしました。 4 この書を読む事により、皆様がイエスについて学んだ事が正確だということを知っていただきたいのです。

洗礼者バプティストヨハネの誕生

5 数十年前――

ヘロデ王がユダヤ地方を治めていた頃の話だ・・・

――アビヤ組・祭司ザカリヤ――

祭司ザカリヤは、神殿で奉仕をして暮らすアビヤ組という組織の一員だった。妻の名前はエリサベツ。彼女も代々祭司を勤めてきたアロン家系の1人である―― 【ユダヤの祭司は24組に分けられており、アビヤ組はその中の1組だ】

6 この2人は神を心から愛し、神の言葉に喜んで従っていた。

7 しかし、そんな2人にも悩みがあった。エリサベツばあ不妊症ふにんしょうだったのだ。そのため、子どもがいないまま歳を重ねてきた。

8 これは、神殿での奉仕当番がアビヤ組に回り、ザカリヤを含む組一同で神殿に仕えていた日のこと――

9 この日の“線香担当”を決めるため、しきたり通りにくじを引いた。当たったのは祭司ザカリヤ。彼は自分の務めを果たすべく、神殿の中に入っていった。

10 大勢いるアビヤ組一同が祈っていた。つまり、神殿の中にはザカリヤ1人・・・・・・

11 ブオンッタッ・・・

「い゙ッ!」

部屋の祭壇さいだん右側に天の王に仕えし天使が現れたではないか!その姿はなんと凛々りりしいことか。 12 祭司ザカリヤの心臓は口から飛び出そうになった。

13 「ザカリヤ!恐れる必要はない。君の祈りを神が叶えてくれるッ!君の妻、エリサベツは男の子を産む!!!

その子を――ヨハネ――と名付けるんだ。いいね?

14 君たちだけでなく、その他多くの人が彼の誕生を喜ぶ!

15 ヨハネは天の王にとって、偉大な使者となるからね!彼は酒など、酔いがまわるものを飲んではならない。

ヨハネは母の胎内にいる時から神の霊ホーリースピリットに満たされた男となる・・・!!!

16 さらには神の民イスラエルの多くを天の王たる神へと立ち返らせる。 17 ヨハネは天の王の前ぶれとして、イスラエルの民に“天の王”を迎えるべく、心の準備をさせる!

彼は預言者エリヤと同じ神の霊ホーリースピリットを持ち、屈強な男となる。

そして、親と子の間に平和をもたらし、神に従わぬ者を改心させる!」

18 「じゃ、じゃがどうやってそんな話を信じろって言うんじゃ?わしも妻も老いぼれじゃというのに・・・」

ようやく落ち着きを取り戻してきた、祭司ザカリヤ。

19 「私は“ガブリエル”!!!神のお申しつけをいつでも全うする者!!!神より授かりし、最高な知らせを君に届けに来た。

20 いいか、聞け!この知らせが実現するまで、君は話せない。疑ったその口を閉ざす。だが、時が来れば私の言葉どおりになる・・・!!!」

「!」

ん―、ん―!!!

天使ガブリエルの言葉どおり、ザカリヤは声を失った―― 【天使ガブリエルは、これより500年前に預言者ダニエルにも現れたために、ユダヤ人にその名は知られていた】

21 「おっそいなぁ・・・」

その頃、外で祈っていたアビヤ組は、祭司ザカリヤが出てくるのをまだか、まだか、と待っていた。

22 「お!来た来た」

「遅かったではないですかザカリヤさん。何かあったのですか?」

「聞こえませんね・・・ん?」

出てきたのはいいが、うんともすんとも言わない。その代わり、手を振り回し、表情を変えて必死に何かを訴える。

「大丈夫ですか?」

声の出ない彼の様子をみたアビヤ組の人たちは、きっと神殿の中で聖なる幻ビジョンを見せられたのだろうと考えた。

23 奉仕の時間も過ぎ、祭司ザカリヤは家に帰った――

24 それからしばらくのこと――

「あ〰〰な〰〰た〰〰!!!」

「ん〰んんん、ん、ん〰ん!」(心の声:どぉしたんじゃエリサベ〰ツ!)

「ちょ、ちょっと!見て!このお腹・・・!」

「ん゙〰〰!!!」

そう、妻エリサベツが本当に妊娠したのだ!

彼女は、子が生まれるまでの5ヵ月間、家でおとなしく出産に備えた。

25 「天の王がしてくれたことをご覧なさい!“不妊の女”と長年呼ばれたあたしの恥を取り除いてくださった・・・!!!」

エリサベツばあは喜びに溢れ、神を讃えた!―― 【当時、ユダヤ人の中には人が死んだ後に復活することを信じていない人たちが大勢いた。そのため、彼らの不滅の望みは、自分の子どもに託された。また、子どもたちは、年老いた親たちの世話をし、家族の財政を支え、社会的地位を保った。子どもは“祝福”。いなければ“呪い”といった偏見を持つ風習があった】

救世主キリスト誕生の知らせ

26 エリサベツばあが妊娠して6ヵ月目――

「ゆけッ」

神はガリラヤ地方にある“丘の上のナザレ村”に行くようにと、天使ガブリエルに命じた。そこに住むマリヤという処女に良い知らせを伝えるためであった。

――さいわいのマリヤ――

27 彼女はダビデ大王の子孫であるヨセフの婚約者であった。

28 ビュンッ

「やあ、天の王は君と共にいる!王にとって君はとっても特別なんだ」

29 (え、なに・・・どういうこと・・・)マリヤは混乱していた。

30 「恐れないで!神は君を誇らしく思っている。 31 いい?君はこれから男の子を産む。その子の名前を

――イエス――

と名付けるんだ! 32 その子は偉大になる。すべての上に立つ神の子と呼ばれるッ!

神は彼を偉大な王にする・・・!!!まるでかつての“ダビデ大王”のように・・・ 33 彼はヤコブの子孫・一族を永遠にべ、その王国は永久不滅となる・・・!!!」―― 【ダビデ大王は、神に認められた王であり、イスラエル国史上最も偉大な王である】

34 「で、でも、どうすれば?!あたしはまだ・・・処女しょじょですよ?!!」

35 「君のもとへ神の霊ホーリースピリットが下り、いと高き神の力が君を包む。だから生まれてくる子どもは聖別されし“神の子”と呼ばれる。

36 あ、それと君と歳が離れた親戚のエリサベツばあがみごもった。不妊の女と偏見を持たれていたが、すでに妊娠して6ヵ月。 37 分かった?神に“不可能はない”ッ!!!」

38 「あ、あたしは神様の召使いッ!どうか仰せの通りにッ!!!」

――ビュンッ――

すると、天使ガブリエルは姿を消した。

エリサベツばあを訪ねて

39 ユダにある山里――

そうと分かれば、いても立ってもいられないさいわいのマリヤは、急いで南に90㎞ほど離れたユダの山里へ向かった。

40 そして、祭司ザカリヤの家にいるエリサベツばあを訪ねた。

41 トンットンットン

「エリサベツばあ!ナザレのマリヤです!」

「ッ!」

「あーら!マリヤ!!!」

「エリサベツばあ!!!」

さいわいのマリヤが挨拶をした瞬間にエリサベツばあの胎内の赤ちゃんがぴょんと飛んだ!

――ブオンッ――

それと同時にエリサベツばあ神の霊ホーリースピリットに満たされた。

42 エリサベツばあは大声で、

「マリヤ!あなたは誰よりも幸せな女よ!!!お腹の子も神様に祝福された!

43 あなたはわたしの王の母!そんなあなたがわざわざ会いにきてくれるだなんて・・・こんなわたしに・・・こんなわたしに・・・なぜここまで素晴らしいことばかり起きるのッ!!!

44 あなたの声を聞いたと同時に、お腹の子どもが喜んで踊ったの! 45 天の王があなたに告げたことが必ず起きると信じたから、あなたは祝福を授かった!あなたが信じたからこそよ!!!」

賛美するさいわいのマリヤ

46 これを聞いてマリヤも嬉しさのあまり、歌い始めた――

「心よ、讃えよ

心底から天の王を♪

47 神様のおかげで幸せ者に

救世主キリストのおかげで最高に♫

48 たかが召使い、

いたわる温かさ♪

たかが召使い

世は未来永劫えいごう知る♫

たかが召使い

それを、世界一の幸せ者と♪

49 たかが召使い

絶大なあなたから♫

たかが召使い

それに与えてくれた名誉ある称号♪

彼の名は、神聖、

50 あなたへ、想いをよせる者へ、

注いでくれる情け♫

51 その剛腕ごうわんで、

蹴散らした思い上がり♪

52 頭が高い支配者は

王座から引きずり降ろされ、

昇進させたのは腰低き者♫

53 飢えた者を満たし、

肥えた者を手ぶらで追い払う♪

54 しもべイスラエル神の民を忘れずに救い、

55 アブラハムと子孫に注ぐ永遠の情け♫

すべてが約束どおり♪」

56 それからさいわいのマリヤは3ヵ月ほどエリサベツばあと過ごすと、ナザレ村に帰った。

洗礼者バプティスト誕生

57 ついにその時は来た――

オギャー、オギャー、オギャー・・・

「お、男の子だ―!!!」

エリサベツばあが出産した。天使ガブリエルが告げたとおりに! 58 親戚や近所の人たちは、天の王がエリサベツばあを通して示したキセキの知らせを一緒になって喜んだ。

59 出産8日後――

当時のユダヤ人は、子どもが生まれて8日目に割礼かつれいをした。割礼かつれいを祝うために近所の友人や親戚一同がつどった。

また、子の名前が発表される日でもある―― 【割礼かつれい:産まれて8日目に男の子の生殖器せいしょくき包皮ほうひを切り取り、その男の子を神に捧げるべしと掟にあったのだ】

「エリサベツばあ!この子の名はやっぱりザカリヤ2世かい?」

60 「いいえ、この子の名前は“ヨハネ”ですわ・・・!」

61 「ッ!」

「だ、だが、あんたらの親戚にそんな名を持った人はいないぞッ!」

62 「なー、どうなんだザカリヤじい!」

親戚一同は祭司ザカリヤに詰めよった。

63 祭司ザカリヤは、手振りで書くものを求めたので、手渡すと、

カキカキカキ・・・

「ほ、ほんとかよ・・・」

親戚たちは驚いた。ザカリヤが「この子の名前はヨハネ」と書いたためである。

64 ・・・ぷはぁー!!!

「あーりがとぉぉぉぉぉぉ!!!」

しゃべれないはずのザカリヤが声を出して神を讃え始めた。

65 この日の出来事は近所の驚きと賞賛の的となり、ユダヤ地方の山地に広まっていった。

66 「神様のキセキによって生まれた子どもだぞ?どんな大物になるんだ・・・」

この素晴らしい話を聞いた人は驚き、その子の将来に誰もが期待した。神がこの子と共にいることが目に見えていたからだ。

祭司ザカリヤの預言

67 ――ブオンッ――

父親であるザカリヤは神の霊ホーリースピリットに満たされ、神に授けられた言葉を語り始めた。

68 「わしらの王を褒め讃えよッ!

神様は地上に来てわしらを救い、自由にしたッ!

69 子分たる“ダビデ大王”の子孫から最も力強い、救世主キリスト

を与えてくれた。

70 数々の聖別されし預言者の言葉を通し、

いにしえより伝えられた約束のとおり、

71 わしらの敵、わしらを憎む者から

救世主キリストが救い出してくれる!

72 神様はわしらの先祖に情けをかけ、

結んでくれた聖なる約束を守ってくれるのじゃ!

73 これは神様がわしらの父アブラハムに立てられた誓い・・・。

74 敵の支配下から自由にされるのじゃ!

恐れなく天の王に仕えるため!

75 神様の前にて聖く、正しく、命尽きるまで!

76 むすこぉッ!おまえはいと高き神様の預言者と呼ばれる!!

おまえが主君の先を行き、救世主キリストの道を整える!!

77 おまえは彼の民イスラエルを悟らせる・・・過ちが赦され、救われることをッ!!!

78 愛と恵み深き神様のおかげで、

夜は明け、天がわしらを照らすのじゃッ!!!

79 死を持つだけの人生、まるで暗闇にうずくまるわしらに照らされた光。

わしらを幸せいっぱいの人生へと導くのじゃ!!!」

80 ――やがてヨハネはすくすく成長し、神をこよなく愛す、強い心を持った青年へと成長した。

そしてある日、ヨハネは荒野へ出かけていった・・・

それは、おおやけに出て、イスラエルの民を整える“正しい時”を影でひっそり待つため。彼はその時がくるまで1人、野宿して過ごす日々を送ったのであった。

牧舎ぼくしゃで産まれた天地の王

1 その頃、オクタヴィアヌスが長い戦乱に終止符を打ち、ローマ帝国というひとつの巨大な国家ができ上がった。皇帝アウグスト——尊厳のある者——を名乗る彼の指導の下、世はまさに——ローマ平和パクスローマーナ——時代を迎えたのだ。

彼の指令のひとつとして住民登録が義務付けられた―― 【ローマ帝国の住民登録は、徴兵ちょうへいと税の徴収ちょうしゅうを促進するためになされた。ユダヤ人は、ローマ軍に仕えることは要求されなかったが、税は払わざるを得なかった】

2 これはクレニオがシリヤ州の総督だった頃に行われた最初の住民登録だった。 3 登録するため、国中の人が自分の生まれ故郷に帰ったのだ。

4 ガリラヤ地方にある丘の上のナザレ村――

さいわいのマリヤの婚約者・ヨセフは、ユダヤ地方のベツレヘム町まで行かなければならなかった。ヨセフがダビデ大王の子孫だからである。

100㎞強、南にあるベツレヘム町へ向けて出発した。

5 ベツレヘム町―― 【ベツレヘム町は、海抜かいばつ600m以上の高いところにある町であった】

お腹がふっくらふくれたマリヤを連れ、住民登録を済ませたヨセフ。婚約しているため、いつ産まれてもおかしくない、マリヤを連れていく必要があったのだ。

6 ゔっ・・・

「大丈夫かッ!」

案の定、ベツレヘム町にいる間にマリヤの陣痛は始まってしまった。 7 急な出来事の中で訪ねた先の客間はすでにいっぱい、ど、どうする?

同じ家の居間に案内されたもののそこには、牛や羊が夜の間だけかくまわれていた。

メェ~・・・モォ~・・・・・・

牛や羊などの鳴き声が聞こえてくる中、それは起きた――

うんぎゃ〰〰、んぎゃ〰〰、んぎゃ〰〰

彼女は無事、最初の男の子を出産したのだ!

満面の笑みを浮かべたマリヤは、その子をぬので包み、牛のえさを入れるためのくぼみに敷き詰められた“わら”の中に、そっと寝かしたのだった。

羊飼いの耳に入った最高な知らせゴスペル

8 その夜、ベツレヘムの町外れにある野原――

羊飼いたちが羊の面倒を見ていた。

9 ピッカ―――ン!

「!!!」

夜であるにも関わらず、突然あたり一面が明るくなるではないか!

「な・・・なんだ!!!」

天の王に仕えし天使たちが現れたのだ!そして、天使のまわりを照らすのは、神の栄光であった!

ヒィ――!

羊飼いは恐れのあまり硬直した。

10 「恐れなくてよい!君たちに最高な知らせゴスペルを持ってきたのだから。神の民イスラエルであれば喜ばない人はいない! 11 今日、おまえたちの救世主キリストが生まれたのだ!我らの王、神より選ばれし王である・・・!!! 12 探せッ!彼は布にくるまれ、家畜かちくの餌箱の上で寝ている!!!」

13 ヴオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙――――

1人の天使がそう言うと、その天使に続いて、天から大軍が下ってくるではないか!

羊飼いの目に映ったのは、そう、天使軍である!

すると、すさまじい数の天使軍は愉快に神を讃え、歌いはじめた・・・!

14 「天の神を讃えよ!!!

地球に下れ!!!

平和よ!!!

神に認められし人のもとへ!!!

♪・・・♫・・・♪・・・♫」

15 このパレードの列が天に上ると、あたりが元通り暗くなった。

「なんって光景だっぺ・・・・・・!」

「ベツレヘムに行くっぺ!!!」

「おいらも天の神様が教えてくれたどえりゃ~知らせ、見に行くっぺ!!」

16 ベツレヘム町まで、羊飼いたちはとにかく、嬉しさのあまり笑いながら走った。

はぁはぁ・・・・・・

やっとの事でマリヤとヨセフが泊まる牧舎ぼくしゃを探し当てた。えさ箱の上では確かに赤ん坊が寝ている・・・。

17 「うほぉぉぉぉ、何もかもあの天使が言った通りだっぺ!!!」

これを見た羊飼いたちはそこにいたみんなに先ほど見たことや天使から聞いたことすべてを伝えた。

18 なんと・・・!!!これに驚かないはずがない。

19 (いったいこの子は・・・)これを聞いたマリヤは、事を飲み込もうと思いを巡らせた。

20 「お邪魔しました!」

ははは――!神様ばんざーい!そらわっしょい、わっしょぃ・・・・・・

などと神をたたえながら羊のもとへ帰った羊飼いたちだった。

すべて天使の言ったとおりだった。

21 8日後――

しきたり通り割礼かつれいをしたその赤子は、マリヤが身ごもる前に天使が示したとおり“イエス”と命名されたのであった。

この時は誰も、この子が天地をべる王であるとは知るよしもない。

捧げられる救世主キリスト

22 ベツレヘム町――

掟に書かれている通り、40日後に母と子のきよめの儀式を行い、イエスを神に捧げるため、ヨセフと婚約者マリヤは、8㎞北にある神殿のみやこエルサレムに向かった―― 【聖書:レビ記12:2-8にあるとおり、ユダヤ人のおきてだったのだ】

神殿のみやこエルサレム――

23 掟には「母が産む初子ういごが男の子ならば――王のために聖別された子――であるべし」とあったのだ―― 【聖書:出エジプト記13:2, 12より引用】

24 また、掟には「山鳩やまばとのオスとメスを1羽ずつ、または家鳩イエバトのひな2羽をささげるべし」ともあるため、そのとおりささげた―― 【聖書:レビ記12:8より引用】

シメオンとの約束

25 その日、神殿のみやこエルサレム――

――シメオン――

彼は、神に心を捧げるき男だった。

神の約束どおり、イスラエル国が救われることを心の底から待ち望んでいた。なんと神の霊ホーリースピリットさえもが彼と共にいたのだ。

26 彼は死ぬ前に、神の霊ホーリースピリットから“神に選ばれし王”にお目にかかれると語られていた。

27 そんなこんなで神の霊ホーリースピリットが彼をエルサレム神殿へと導いた――

実はその同時刻に、ヨセフとマリヤは、先ほど挙げた掟、母の初子ういごが男の子の場合、40日後に行わなければならなかった掟の行事真っ最中だったのだ。

「!」

シメオンはイエスを抱いた夫婦に遭遇そうぐうした!

28 2人の許可を求め、シメオンはイエスを抱きかかえると、神に感謝した!

29 「神様よー、あなたは約束を守ってくださった!

これであなたのしもべは、安心して死ねます。

30 あなたがどのように神様の民イスラエルをお救いになられるのか、

“この目で”おがめたからです!

31 これであなたの計画を誰でも見られる!

32 彼はすべての国々をあなたへ導く光、

彼はイスラエルの民にほまれをもたらすのじゃ!」

33 これを聞いて口をあんぐり開けるほど驚いたイエスの父ヨセフと母マリヤ。

34 それからシメオンは夫婦2人の祝福を祈った。

「この子によって、多くのユダヤ人が倒れ、多くのユダヤ人が立ち上がる。誰もが受け入れるわけではないが、神様より与えられし“しるし”となる!!!

35 心に秘められた思いが明らかになる。彼に起こることはあなたを苦しめる。まるで、刃で心をつらぬかれるような思いをするでしょう・・・」

預言者アンナ

36 また、その日はアンナという預言者にも出会った。

――女預言者アンナ――

彼女はアセル族のパヌエルの娘で、若い頃結婚したが、7年後には夫を失い、未亡人みぼうじんとなった。

37 それから歳を重ね、今では84歳。彼女は断食だんじきをし、祈ったりと、神様へ心から仕える日々を送っていた。

38 彼女“も”また、イエスを連れたヨセフとマリヤがいる神殿にいたのだった。

女預言者アンナは彼らとの出会いを神に感謝した。彼女はこの後、エルサレムの自由を待ち焦がれている者に救世主キリスト“イエス”を伝えていったのである。

帰路につくヨセフとマリヤ

39 さて、掟通りの手続きや儀式を終え、3人はついにガリラヤ地方のナザレ村に帰っていった。

40 イエスはナザレ村ですくすくと育った。神に祝福されていたがため、たくましく、知恵豊かに成長したのであった。

少年イエス

41 ユダヤ人には昔から“過越祭すぎこしさい”という祭があった。

イエスの親は毎年この祭りを祝うため、神殿のみやこエルサレムに足を運んだ。

42 これはイエスが12歳の時である―― 【この時代、12歳はほぼ成人であった】

例年通り、今年もイエスは両親に連れられ、神殿のみやこエルサレムへ行った。

43 楽しい祭りが終わり、イエスの父ヨセフと母マリヤは故郷に帰るため、エルサレムを去った。一緒にいるはずのイエスを残して・・・

そう、両親は気づいていなかったのだ!

44 他の人と一緒にいるのだろうと大して気にも留めず、1日もの間旅を続けた―― 【祭に参列する人たちは、道中、強盗から身を守るために、しばしばキャラバン隊を組んで旅をした。ほとんどの場合は、女や子どもをキャラバン隊の先頭にし、男は最後尾についた。12歳の男子は、どちらの集団にいることもできたので、マリヤもヨセフも、イエスはもう一方の集団にいると思ったのであろう】

しかし、異変に気付いた両親は、親戚や友人家族の集団の中を探し始めた。

45 「いッ、いない・・・!!!」

2人は慌てて神殿のみやこエルサレムまで引き返した。

46 「すみません、このような子を見かけなかったでしょうか?」

「悪いが、知らないねぇ~」

「ちくしょう、無事でいてくれイエスッ!」

エルサレム神殿――

イ、イエスッ!!!

3日かけてようやくイエスは見つかった。

なんと神殿で宗教の先生たちを相手どって難しい議論を繰り広げていたのだ。

47 (なんだこの青年は・・・)

誰もがイエスの理解力と受け答えに圧倒された!―― 【神殿は学問の場として有名だった。過越祭すぎこしさいの間は、各地方のもっとも偉大な教師たちが集まり、教えたり、大いなる真理について討論したりした。そのため、わずか12歳で教師を魅了したイエスのすごさが伺える】

48 (こんなことありえるのか・・・)両親は息子の姿を見て、とても信じられない様子だった。

「イエス!なぜこんなことしたの?お父さんとお母さんがどれだけ心配したか分かる?すっごく探しまわったのよ」

安心する間も無く、マリヤはイエスにつめよった。

49 「なぜ探す必要があったの?俺が父さんの仕事場にいなくちゃってことは知っておくべきだよ!」

と少年イエス。

50 2人には、イエスの言葉の意味がさっぱりだった。

51 イエスはナザレ村に無事帰り、その後も両親に従順に育った。この時、母マリヤは未だに起きた出来事について思いめぐらしていた。

52 イエスは、歳を重ねるにつれ、知恵を身につけた。そして神はもちろん、彼を知っている者は誰もが愛す青年へと成長したのであった。

道を備えし者

1 それから時は流れた――

ローマ帝国では皇帝アウグストが死去、二代皇帝ティベリウス・カエサルが戴冠たいかんしてすでに15年が経っていた。

ローマ皇帝ティベリウス・カエサルは元々イスラエルの配下にあった4つの地方統治とうちを以下の4人にたくした。

ユダヤ地方――ポンテオ・ピラト総督

ガリラヤ地方――ヘロデ総督

イツリヤとテラコニテ地方――ヘロデの弟ピリポ総督

アビレネ地方――ルサニヤ総督

―― 【4人は対等な権力を持ち、それぞれのエリアで平和を保つ責任があった】

2 また、ユダヤ人の宗教面での最高指導者は以下の2人。

―アンナス大祭司

―カヤパ大祭司

―― 【掟は、ただ1人の大祭司を認めていた。しかし、この頃までに宗教体制が堕落だらくし、ローマ帝国政府が宗教最高指導者たちを任命するようになり、ユダヤ人支配を強化していた。ローマ当局は、ユダヤ人に任命されたアンナス大祭司を退陣させ、娘婿むすめむこカヤパを大祭司に任命。しかし、アンナスは大祭司としての肩書かたがきと権限の多くを持ち続けていた。ユダヤ人は、大祭司の地位は一生涯だと信じていたからだ】

その頃、ザカリヤの息子・ヨハネはと言うと――

未だに荒野生活を送っていた。

――!――

遂にヨハネは、神からのメッセージを受けとった。

3 ――洗礼者バプティストヨハネ――

ヨルダン川沿岸えんがん一帯で神に与えられしメッセージを伝えていった。

「生き方を改める決意として洗礼バプテスマを受ければ、過去のあやまちが赦される・・・!!!」―― 【何かにひたすことが洗礼バプテスマの意味である。ヨハネは水に全身をひたすことによって洗礼バプテスマを授けた】

4 伝説の預言者イザヤは、洗礼者バプティストヨハネについてこう記した。

「荒地で叫ぶ声がする・・・

『神のお通りだ、道を整えろ!神のために道をまっすぐにせよ!!!

5 谷は埋められ、

山や丘はたいらになる。

ぐにゃぐにゃ道はまっすぐに。

でこぼこ道はなめらかに。

6 誰もが見る。

神の民イスラエルの救いを』」―― 【聖書:イザヤ書40:3-5より引用】

7 ヨルダン川付近――

洗礼者バプティストヨハネに洗礼バプテスマを授けてもらおうと、わんさか人が集まった。

だが、洗礼者バプティストヨハネは人気に興味なし。

「こんのマムシらめッ!!!神さんの裁きを逃れらると誰が言いやしたッ!

8 変わりたいなら心を改め、生き方で示すがすじッ!!!だなんて考えてござんしょうが、大間違い。神さんは、石っころからでもアブラハムの子孫を創れやす・・・

9 もう木を切り倒すおのは整ってやす・・・実のならねぇ木は切ってまきにしちゃあ炎に放り込むんがお決まりでやんしょう・・・!!!」

10 「で、ではどうすればッ?!」

11 「服を2枚持っているなら、持ってない人に1枚ゆずりなされ。食べ物があるなら、お腹を空かせた人と分かちあいなされ」

12 「あんさん、俺たちゃあどうすりゃいいんだい?」

そこへ、洗礼バプテスマを受けたい税金取りたちも洗礼者バプティストヨハネを尋ねてきた。

13 「定められた税“のみ”、もらうのがすじでやんしょう」

14 「我々は?」

兵士たちも尋ねてきた。

「権限を使ってお金を巻き上げることから足を洗い、収入で満足するでやんす」

15 洗礼者バプティストヨハネの言動を聞いた人はヨハネこそ救世主キリストだと考え始めた。当時の人は救世主キリストの登場を今か今かと待っていたからだ。

16 しかし、洗礼者バプティストヨハネは彼らの思いをきっぱりかき消した。

「あっしは、水によって洗礼バプテスマを授けておりやすが、あっしの次に来る方は、あっしみてぇな預言者をはるかに“勝る”。あっしにゃあ、その方の靴ひもをほどく価値すりゃ、ありやせん・・・その方は神の霊ホーリースピリットと炎によって洗礼バプテスマを授けられる・・・!!!

17 彼にはだめなものから良い収穫物を取り出す準備ができておられやす。麦は白き粉になり、倉に納められやすが・・・いらねぇものはいた仕方ないでござんしょう。消せねぇ炎にポイと燃やされるがオチ・・・!!!」

18 洗礼者バプティストヨハネはこのように最高な知らせゴスペルを伝えた。また、他にもさまざまな方法で生き方を改めるようにと勧めたのであった。

総督に物申す洗礼者バプティスト

19 洗礼者バプティストヨハネはガリラヤ地方の領主りょうしゅであるヘロデ総督にでさえ、お構いなしに物申した。ヘロデ総督が兄弟の妻・ヘロデヤをめとったことやその他の悪事について改めるようにと!

20 最終的に過ちを上塗りしてしまった。無実である洗礼者バプティストヨハネを逮捕し、投獄したのである!

一人子ひとりご洗礼バプテスマ

21 洗礼者バプティストヨハネが投獄される前の出来事――

洗礼バプテスマを授けられる群衆の中に1人の男が現れた。

――“イエス”――

イエスは、洗礼バプテスマを受ける者たちの列に加わった。

イエスが洗礼バプテスマを受け、祈っていると――

「!」

空がかっ開いたではないか!

22 そして、その狭間はざまから神の霊ホーリースピリットが降りてきて、そのままイエスの上にとどまった。パタパタと舞い降りてくる姿は、まるで本物のハトのようであった・・・

「――むすこぉ・・・愛しているぞ・・・おまえは私の・・・誇りだ!!!――」

その喜びの声は天から響きわたった。そう、神ご自身の声である!

救世主キリストの家系図

23 こうして救世主キリスト、イエスの伝説はついに幕を開けた。この時、イエスはおよそ30歳であった―― 【聖書:民数記にも記されているように、当時は30歳になるまでは聖職者としての務めができなかったことが影響しているのだろう】

人はイエスのことを、大工・ヨセフの肉親の息子だと思っていた。ヨセフの戸籍上、以下のようになる。ヨセフの父ヘリから順を追って先祖をさかのぼろうではないか。

ヨセフの父

  |

24 ヘリ

  |

 マタテ

  |

 レビ

  |

 メルキ

  |

ヤンナイ

  |

 ヨセフ

  |

25 マタテヤ

  |

 アモス

  |

 ナホム

  |

 エスリ

  |

ナンガイ

  |

26 マハテ

  |

マタテヤ

  |

 シメイ

  |

 ヨセク

  |

 ヨダ

  |

27 ヨハナン

  |

 レサ

  |

ゾロバベル

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サラテル

  |

 ネリ

  |

28 メルキ

  |

 アデイ

  |

 コサム

  |

エルマダム

  |

 エル

  |

29 ヨシュア

  |

エリエゼル

  |

 ヨリム

  |

 マタテ

  |

 レビ

  |

30 シメオン

  |

 ユダ

  |

 ヨセフ

  |

 ヨナム

  |

エリヤキム

  |

31 メレヤ

  |

 メナ

  |

 マタタ

  |

 ナタン

  |

 ダビデ

―― 【伝説の大王。巨人ゴリアテ退治を始め、数々の伝説を残した英雄であり、今なお歌い継がれる詩篇を作った音楽家】

  |

32 エッサイ

  |

 オベデ

  |

 ボアズ

  |

 サラ

  |

ナアソン

  |

33 アミナダブ

  |

アデミン

  |

 アルニ

  |

エスロン

  |

 パレス

  |

12部族を産んだ父ユダ

  |

34 イスラエル国の由来・ヤコブ

  |

 イサク

  |

アブラハム

  |

 テラ

  |

 ナホル

  |

35 セルグ

  |

 レウ

  |

 ペレグ

  |

 エベル

  |

 サラ

  |

36 カイナン

  |

アルパクサデ

  |

 セム

  |

極大洪水のノア

―― 【大洪水の時、箱舟で家族と動物たちを絶滅から救った】

  |

 ラメク

  |

37 メトセラ

  |

 エノク

  |

 ヤレデ

  |

マハラレル

  |

カイナン

  |

38 エノス

  |

 セツ

  |

そして、人間の原点、アダムに到達する。

つまり、これ以上さかのぼると、世界から人間までを作った父、神にいき着く。

悪魔王サタンの挑戦

1 神の霊ホーリースピリットに満たされたイエスは、ヨルダン川から神の霊ホーリースピリットに導かれるまま、荒野へ出かけた。

2 荒野――

そこは、悪魔王サタンの誘惑がクモの巣のように張り巡らされた場所であった。イエスは40日もの間をここで過ごした・・・

グゥゥゥ・・・ゔッ

40日間何も口にしなかったイエスは、ひどい空腹に襲われた。

3 すると悪魔王サタンささやいた。

「おやおや、かわいそうに・・・アナタが本当に神の息子なら、この石をパンに変えたらいいじゃないの・・・」

4 「『人はめしだけでは生きていけない』と聖書にある」―― 【聖書:申命記8:3より引用】

5 (チッ・・・)悪魔王サタンはイエスの手を引くと――

ビュン!

――娯楽ごらく・・・お城・・・財宝・・・美食・・・美女・・・音楽・・・♪――

世界のありとあらゆる国の栄華えいがを見せられた。

6 「すごーいでしょ?アタシはただ、これらすべてをべる王にしてあげたいの、ア・ナ・タ・を♥アナタは世界の称賛しょうさんの的になるわ!!!

これ、ぜーんぶアタシのものだから・・・あげたい人にあげられるの! 7 アタシたちこの仲じゃない・・・遠慮えんりょしないで・・・そうね、アタシをおがむ“だけ”でいいから♥」

8 「『天の王たる神“のみ”に忠誠をつくし、讃えるべし』と聖書にある」―― 【聖書:申命記6:13より引用】

9 (ぐぅぅぅ・・・)今度はイエスをエルサレムの神殿で最も高いところに連れて行き、みやこを一望させた。

「も~し、カ・リ・二!アナタが神の子なら、ここから飛び降りてごらんなさい!

10 キャハ、だーいじょーぶ♥アナタが大好きな聖書には、

『𝄞神が命じ、守るは天使

11 地に落ちて足を砕かぬよう、

彼らの手であなたを受け止めよう』」―― 【聖書:詩篇91:11-12より引用】

12 「だが、ともある」―― 【聖書:申命記6:16より引用】

13 (ぢ、ぢぐじょぉぉぉ、覚えておれぇぇぇ)悪魔はありとあらゆる方法でイエスを試したが相手にもされなかったため、その身を引くしか、なかったのであった。

ガリラヤ地方から動き始めた救世主キリスト

14 ガリラヤ地方――

試練を乗り越えたイエスは神の力をまとって戻ってきた。そんな彼の評判は、ガリラヤ地方一帯に広まった。

15 イエスは、ユダヤ集会所シナゴグに集まる人へ教えた。集まる人は、誰もがその教えを絶賛したのだった!

ただいま!―地元に帰ってきたイエス

16 ナザレ村――

そして自分の生まれ育ったナザレ村に帰ってきた。

帰ってきて最初の休日サバス――

いつもどおりユダヤ集会所シナゴグに向かった。そしてイエスは、聖書を人々の面前で読むため、立ち上がった。

17 聖書・イザヤの預言の書が手渡されたイエスはそれを開き、次の箇所を朗読した――

18 「私に神の霊ホーリースピリットが宿った。

彼は私を選抜した・・・それは、貧しい人に最高な知らせゴスペルを伝えるため。

彼は私をつかわした・・・囚人を解放し、盲目の目が開くと伝えるために。

彼は私をつかわした・・・不平等に扱われた人を自由にし、

19 王の優しさを示す時が来たと告げるために」―― 【聖書:イザヤ書61:1-2; 58:6より引用】

20 イエスは聖書を閉じ、書物を担当の者に手渡すと席についた。会場中の視線がイエスに集まっている・・・

21 「この預言はたった今・・・“実現した”」

22 「!!!」

イエスの言葉に人々は魅了された。彼の言動の素晴らしさは、鳥肌ものだった。

「おい、どういうこった!あいつぁ大工を生業なりわいとしたヨセフのせがれだろ?」

周りにいた人たちは、ひそひそ言い始めた。

23 一息入れてもう一度口を開いたイエス。

「あなた方はきっと、『医者の不養生ふようじょう』ということわざを用いて、『都市カペナウムで大層なことをしたんだって?なら生まれ故郷こきょうでもやってみせろ』と言うだろう。

24 事実、預言者は生まれ故郷こきょうではうやまわれない・・・

25 預言者エリヤの時代には、3年半の間イスラエル国に雨が降らなかった。イスラエル全土で作物は取れず、食料が無くなった。そのせいで、イスラエル国じゃあ多くの人が死に、夫を失った未亡人みぼうじんがわんさか生まれた。

26 にも関わらず、預言者エリヤはわざわざ遠くにある外国の地、港のみやこシドン付近にあった小さな町サレプタに住む外国人であり、未亡人みぼうじんである女性のもとへのみ遣わされた。

27 預言者エリシャの時代も同様。イスラエル全土に重い皮膚病ツァラト患者がいたというのに、イスラエル国ではなく、シリア国から来たナアマン“のみ”を治した・・・!」

28 んだとぉ・・・?

ユダヤ集会所シナゴグにいた者はこれを聞いて、怒り爆発。

29 「表出ろや小僧!その天狗てんぐの鼻をへし折ってやる!」

ユダヤ集会所シナゴグにいた者は、イエスを無理やりナザレ村から追い出そうとした。ナザレ村は丘の上にあったため、村人はイエスをがけから落っことそうと追い詰めた。

30 「――!――」

しかし、イエスは堂々と群衆の間を通って去ったのだった。

悪魔の追放

31 イエスはガリラヤ湖沿いの町“カペナウム”に向かった。

休日サバス――

ユダヤ集会所シナゴグに集まる人たちに教えるイエス。

32 町人は権威を持って語るイエスの教えに圧倒された。

33 このユダヤ集会所シナゴグには悪魔にかれた男がいた・・・彼は叫んだ。

34 「コレハコレハ!ナザレノイエス・・・何シニ来タ?俺達ヲ滅ボス気カ?俺ハ知ッテルゾォォォ、神ノ聖者ダ〰〰!!!」

35 「黙って彼から出ろ」

悪魔は男の体をみんなの前に投げ捨て、それ以上傷つける事なく、おとなしく逃げていった。

36 息も詰まる思いで誰もが唖然あぜんとしていた。

「おいおい、一体何が・・・?権限を持ったかのように悪魔へ命じたら、素直に従ったぞ・・・!!!」

37 この出来事も、イエスの評判を全地域に広めた。

どんなやまい・悪魔も従う命令

38 イエスはユダヤ集会所シナゴグをあとにした。向かったのは、後に岩のぺテロと呼ばれるシモンの家。

その頃――

はぁはぁ、ゔッ・・・

シモンの家ではシモンの義理の母が高熱を出していたのだ!シモン家にいた者たちは、イエスに助けを求めた。最近噂のイエスになら何かができると思ったのだ。

39 イエスは彼女のすぐ側に立つと、やまいせるように命じるではないか。

「え?」

しかも命令通り彼女の熱がひいた・・・

少しすると彼女は、さっきまでの病が嘘だったかのようにイエスたちをもてなし始めたのである!

40 日は暮れた――

町人がやまいを抱える家族、または、友人を治してもらおうと、イエスのもとに運んできた。様々なやまいを抱えた人たちがいたが、イエスが手を置く、病人という病人が完治した!

41 やまい持ちだけでなく、悪魔にかれた者も多くいたが、すべての悪魔が尻尾しっぽをまいて逃げていった。

「チクショウ!神ノ一人子ひとりごダァァァ〰〰!!!」

逃げる際、どの悪魔もこう叫んだが、イエスは一言もしゃべらないようにと命令した。預言されてきた「神に選ばれし王」がイエスだと知る悪魔によって無駄な騒ぎを起こさせまいとその口を封じた。

止まらない救世主キリスト

42 翌日、都市カペナウム――

イエスは1人になるために出かけた。しかし、それに気付いた町人は、イエスが去ってしまったのかと焦って探しまわった。

「せ、せんせーい!」

町人はイエスを見つけるなり、ずっとこの町を守ってくれるよう頼んだ。しかし、首を縦にふることはなかった。

43 「悪いが俺は他の町々にも、神の王国キングダム最高な知らせゴスペルを伝えなければならない。そのために遣わされた・・・!」

44 そう言い残してイエスは旅を続けた――

こうして、ユダヤ地方にあるユダヤ集会所シナゴグを周り、その地域の住民に最高な知らせゴスペルを広めたのであった。

イエスの仲間集め

1 ガラリヤ湖――

「おい!押すな!」

誰もがイエスの話す“神の教え”をなるべく近くで聞きたいと押し合う。

2 イエスの目には浜辺にある2そうの小舟が映った。どうやら小舟の持ち主である漁師たちは、あみの手入れをしているようだ。

3 その内、1そうの持ち主であったシモンと話しをつけた。

うっし、どさっ・・・

その小舟にイエスが乗るとさっそく腰をすえた。何を始めるかと思えば、そこから教え始めたではないか!そう、邪魔されないためにとったイエスの解決策だったのだ。

4 イエスが教え終えると――

「シモン!もうちょい沖に出てあみを投げてみな!魚が獲れっぞ!」

5 「先生・・・漁師である俺たちが夜通し働いて小魚一匹獲れなかったんでっせ。でもあんたが言うんなら・・・」

6 そらよっと・・・ピシャッ

あみは勢いよく広がって沈んでゆく。シモンは慣れた手つきであみを巻き上げる・・・

「!」

「んぐっ・・・!ふんぐぅっ!!・・・ぬぅぅぅ!!!」

あみがはち切れんばかりの大漁だ!!!

7 「お、おい!手を貸してくれ!」

そう漁師仲間たちを呼ぶと彼らは急いで応援に来た。

――小舟に分けて水揚げしたが、どちらも獲物えものの重さで沈みそうだ・・・!

8 シモン・ペテロはあわててイエスの前にひざまずいた。

「これ以上俺に近づいちゃあいけねぇッ!!!おりゃあダメなやつなんです・・・」

9 シモン・ペテロを始め、漁師たちは、度肝どきもを抜かれたのだ。こんなにおびたただしい数の魚が一度に獲れたのは生まれて始めてだ。

10 シモンの仕事仲間であるゼベダイの息子・ヤコブとヨハネも開いた口がふさがらない。

「はは、恐れるなッ!魚はこれでしまいだ。これからおまえは、人を引きあげる男に“なる”ッ!!!」

「!」

11 彼らは小舟をきしに泊めると、何もかも置いてイエスの後を追った。

重い皮膚病ツァラトの男

12 重いやまいにかかった人のいる、とある町にイエスがいた時のこと――

その男がイエスを見るなり、ひたいを地につけ、土下座した。彼の皮膚はまるでブドウの実のようなデキモノだらけ。どうやら重い皮膚病ツァラトにかかっているようだ。

「先生!あなたのお気持ちひとつでおいらのやまいは治ります・・・!!!」

13 「あぁ治したいとも!さあ治れッ!」

イエスが彼に触れるとデキモノが嘘のように消え、やまいが治ったではないか!

14 「いいか、今起きたことを言いふらすんじゃない。これから祭司に見てもらい、完治の診断書をもらうんだ。済んだら、掟の通り、神にお礼の捧げ物を捧げるんだ!いいな、それらを済ませる前に言いふらすんじゃないぞ!」―― 【聖書:レビ記14:1-32より引用。掟では、皮膚病ツァラトえたかどうか、“祭司が判断するべし”とあったのだ】

15 口止めをしても、イエスの名は日に日に知れわたった。噂を聞きつけた人が次々とイエスの教えを聞きに来ては、やまいを治してもらった。

16 イエスは、常に人に囲まれていたが、かかさず、しかも頻繁ひんぱんに1人で祈りに出かけたのであった。

屋根をつきぬける友の信仰

17 ある日、イエスが人々に教えていた時のこと――

群衆の中には、きれいな身なりが、その存在を際だたせるパリサイ一派と掟の学者たちがいる―― 【掟の学者は、掟を詳細まで考え、徹底的に守ることを重視した人たちで、検事や弁護士と祭司を合わせたような仕事をしている】

どうやら、ガリラヤ地方の町々やユダヤ地方の町々、村々、はたまた、神殿のみやこエルサレムから集まって来たパリサイ一派と掟の学者であった。

彼らが見ている中、イエスは人知を超える力で次々に人を治した。

18 その頃――

「はぁはぁ・・・あ、あそこだッ!」

「もうすぐでよくなれっぞッ!」

そこには、体が麻痺まひして寝たきりになった男を布団ふとんに乗せてせっせと運んでいる男たちがいた。イエスが教えていた家に入って、イエスにてもらおうとしていたのだ。

19 「すいません!動けない友達がいるんです、通してくださいッ!!」

「頼む!通してくれッ!!!」

「・・・・・・ク、クソォ!こんなに人がいちゃあ、どうやっても入れねぇ」

「絶対に治してやっからな・・・!」

「み、みんな・・・ありがとう・・・」

お目当てのイエスがいる家は人でごった返し。入口が完全に防がれていた。

「ち、ちくしょう・・・こーなったら!」

――よーいしょ!よし、そぉっとだ。

諦める気などその目からは微塵みじんも感じられない。何を思い立ったのか、布団ふとんに乗せた友人をかついで屋根にあがった。

屋根に登ると、今度は他人の家の天井をはぎ始めるではないか!

ガサガサガサ・・・

「ん、ネズミか?」

「お、おい上を見てみろッ!」

中にいた人たちは、イエスの頭上を見ると、男たちが屋根をせっせとはいでいるではないか・・・

大きく開いたのは天井だけでなく家主やぬしの口。男たちは、群衆の中に麻痺まひした友人を布団ふとんごとつり下ろし、イエスの前に置いた。

20 イエスは彼らの確信の強さを見ると笑みを浮かべた。

「青年!きみの過ちは赦された・・・!!!」

21 「!」――(んな、今こいつ・・・何様だ!過ちを赦す事は神様にしかできないというのに・・・神様への冒涜ぼうとくだ・・・)

掟の学者とパリサイ一派は、耳を疑った。

22 イエスは彼らの考えをさっした――

「なぜそうとらえる? 23 言うのは簡単だと思ったか?赦されたかどうかなど、分かりっこないと。それならこの動けない男に立って歩けと命じたらどうだ? 24 そのとおりになれば、俺、つまり“この人”が、この世で過ちを赦す権力があると認めざるをえない・・・!!!」

「立ち上がれ!布団ふとんをたたんだら、自分の足で帰るんだ」

25 その瞬間、麻痺まひした男は群衆の前で立ってみせると、布団ふとんをたたみ始めた。

見ていた人全員の目が点になった。そんな周りの空気を尻目に、彼は布団ふとんひろうと、神を讃えながら帰って行った・・・・・・。

26 ・・・・・・ウ、ウォォォ・・・!バ、バンザーイ!バンザーイ!!バンザーーイ!!!

誰もが神の力に恐れをなし、絶賛ぜっさんした。

その場にでくわした人たちは、口々に言った。

「今日、偉大な瞬間に立ち会った」

ゴロツキとつく食卓

27 この後イエスは外出した――

すると、税務署の前に座っている男に目をつけた。

税金取りのレビだ―― 【税金取りは、ローマ帝国から税金を徴収ちょうしゅうする権限を与えられていた。ローマ帝国に寝返ったユダヤ人として、ユダヤ人にみ嫌われていた】

――「俺について来い!」

28 バタンッ・・・

税金取りのレビは即座に何もかも置いてイエスの後について行った!

29 レビはイエスと一味を自宅に招き、ご馳走をふるまった。そこには、イエス一味以外に多くの税金取りやその他の悪評高い人たちが席についた。

30 それを知ったパリサイ一派と彼らに掟を教えていた指導者がイエスの一味に何かを言っている――

「君たち、気は確かですか?あの税金取りや悪人と飲み食いするなんて・・・」

31 ピクピク・・・それはイエスの耳にも入った。

「医者を必要とするのは、健康な人ではなく病人だ。 32 俺は正しい人のためではなく、過ちを犯した人たちに生き方を改めたいかを問いに来た・・・!!!」

イエスが直々じきじきに掟の学者の苦情に答えたのだった。

まじわらない古きとあらた

33 すると、ある人が言った――

洗礼者バプティストヨハネやパリサイ一派の弟子たちが断食だんじきしておりますが、あなたの弟子はなぜ、いつも飲み食いしているのです?」

34 「結婚式の場で花婿はなむこが招待した友人たちに“断食だんじきしろ”とは、言えないだろう。

35 だが、式も終われば花婿はなむこは友人の元を離れる。その時になれば、彼らも悲しくて断食だんじきもするさ。

36 例えば、古い上着にあいた穴をふさぐ為に新品の上着を切ってふさぐ人はいない。そんなことをしたら、新品の上着が台無しだ。そもそも新しいぬのと古いぬのの相性もよくない。

37 また、新しいワインを古い革袋に入れる人なんていない。

んな事したら、発酵はっこう時に発生する圧力に負けて袋が破裂してしまう。ワインがこぼれて、革袋が台無しだ。

38 新しいワインは新しい革袋に入れるのがお決まりだ。 39 かといって、ビンテージワインで慣らした口は、新しいワインを口にしない。彼らは、と言う」

休日サバスの主

1 ある休日サバスのこと――

イエスが一味と麦畑の中を歩いていると、小腹がいた仲間たちは、麦のを摘み、手でんで食べた。

2 「な、なぜあなたがたは休日サバスの掟を破っているのですか・・・!!!」―― 【ユダヤ人の休日サバスは、宗教的義務としてあらゆる労働を禁じられていた】

イエスに物申したのは、パリサイ一派。

3 「あなたたちは、ダビデと彼の親衛隊が空腹だった時に何をしたか、読んだ事はあるか?

4 ダビデは神殿に入り、お供え物のパンを食べた。それから、そのパンを一緒にいた仲間たちにも分け与えた。これは、掟に反している。なぜなら祭司以外の者がお供え物を口にしてはいけないとあるからだ」

(ゔッ・・・・・・)

5 「いいか、“この人”は休日サバスぬしだ」

休日サバスに治す

6 またある休日サバスの事――

イエスはユダヤ集会所シナゴグに行って教えていた。そこには右腕が動かない男の姿が。

7 その場にいた何人かのパリサイ一派は、イエスをじっと見ている。

(見逃しませんよ・・・)

この日は働くことが掟で禁じられている休日サバスにも関わらず、イエスが男の手を治すのではないかと目を光らせていた。

イエスを異端児いたんじとして見ていた彼らは、訴える口実を探っていたのだ―― 【休日サバスと呼ばれた休日に働けば、神の民イスラエル同胞から追放するというのが掟にはあった。人の解釈によって、いつしか命に別状ない病気やケガの手当が仕事だとする常識へ発展していた。また、この法を破れば、“刑務所行き”または、“39回のムチ打ちの刑”が科される可能性があった】

8 ――イエスはパリサイ一派の企みなど百も承知のうえだった。

「よし、立ち上がってみんなによく見えるよう、ここまで来てくれるか!」

「はいッ!」

右腕が動かない男は言われたとおりの場所に立った。

9 男が立ち上がると、イエスは群衆を見た。

「さあ聞こう!休日サバスに認められていることとは何か。人助け、それとも人を傷つけることだろうか?危険から守る、それとも見殺しにすることだろうか?」

10 イエスは自分と患者に向けられた人たちを見わたすと、右腕が不自由な男を見て、ニコッとした。

「手を伸ばすんだ!」

動かせない手が・・・の、のび、伸びた?!そう、物の見事に治癒ちゆしたのだ!

11 (んな゙ぁに゙じでやがんだぁぁぁ!!!)

パリサイ一派や掟の学者たちは怒りに我を忘れてしまった。

彼らは互いにひたいを寄せ合わせた。

「あの人、どう処理します・・・?」

選ばれし十二使徒

12 それから数日後――

イエスは丘に登り、一晩中、神に祈っていた。 13 翌朝、イエスは仲間たちを呼び寄せると、そこから12人の名を呼び、その12人を使徒と命名した。

14 ――十二使徒――

シモン!後に岩のペテロとイエスに名付けられる

ペテロの弟、アンデレ!

雷兄弟、兄ヤコブと弟ヨハネ!

ピリポ!

バルトロマイ!

15 取税人マタイ!

トマス!

アルパヨの息子、ヤコブ!

右翼うよくのシモン!

16 ヤコブの息子ユダ!

それから、イスカリオテ出身のユダ!

――この時はまだ、イスカリオテのユダがのちにイエスを裏切るなど、知るよしもなかった・・・

癒して広める最高の知らせゴスペル

17 それから、イエスは十二使徒を連れ、下山すると平地まできた――

その他にも群衆がイエスの後をつけてきた。その中には、ユダヤ全土、神殿のみやこエルサレム、港のみやこツロや港のみやこシドンなどから来た人たちがいた。

18 誰もがイエスから教えを聞き、病気を治してもらうために集まって来たのだ。イエスは悪魔にとりかれて悩まされている人の悪魔を追っ払い、人知を超えた力で治した。

19 神がかった力で溢れたイエスを、多くの人がひっきりなしに触れようとした。イエスは、集まったすべての人をその力で治した。

20 それから、イエスは仲間たちの方を向いて放った。

「貧しい人は喜べ!神の王国キングダムはあなたのためにあるからだ。

21 飢えてる人は喜べ!ありとあらゆる面で満たされるからだ。

泣いている人は喜べ!幸せ一杯で笑顔が絶えなくなるからだ。

22 この人の仲間だって理由で憎まれる。今までの仲間からはのけ者にされ、さらには中傷ちゅうしょうされる。汚名を着せされ、名を口にすることさえ、よせと言う。

これらが起こる時、最高な祝福を手にしたことを知れ!

23 そう、天にある報酬を思えば、喜びのあまり飛び上がる!

そうやって迫害する人たちの先祖も同じように預言者を迫害したのだ。

24 富んだ哀れな人よ。簡単な道を歩めるのも今の内だ。

25 満腹な哀れな人よ。満たされるのも今の内。いつか飢餓きがが訪れるからだ。

笑っている哀れな人よ。笑っているのも今の内。いつしかそれは悲しみへと一変し、泣き声をあげるからだ。

26 誰からもちやほやされるなら、最悪な事態に備えろ。彼らの祖先は、どの時代でも同じようにして偽善者たちをちやほやしたからだ」

神の掟を言い換えるイエス―愛―

27 「いいか?俺から学ぼうとしている者に言う。敵を愛せ・・・。自分を憎む人に良くするんだ。 28 呪ってくる人が幸せになるよう神に願い、失敗を望んでくる彼らの成功を望むんだ。冷たくしてくる人の暖かい幸せを祈るんだ。 29 殴られたら、もう片方のほほも差し出してやれ。上着を奪い取ろうとするなら、服もおまけしてやれ。

30 誰でも、求める者には与え、奪い取る者から、取り返そうなんて思うな。 31 してほしいことをそっくりそのまましてあげるんだ! 32 愛してくれる人だけを愛したからと言って誰も褒めやしない!悪党だって愛してくれる人を愛す。

33 もしお前たちが、自分に良くしてくれる人にだけ良くしたって、誰も褒めやしない。それなら悪党だってやってる。 34 返してもらうつもりで貸したって気前がいいわけじゃあない。悪党だって、返してもらうつもりで金貸しするさ。

35 お前たちは敵を愛すんだ。見返りを求めず、無条件に良くしてやるんだ。そうすれば、どでかい報酬を受け取れっぞ!!!

お前たちは最も偉大な神の子どもになれんだ!!!神は、たとえ感謝する心を持っていない悪人にも情けをかける。

36 親父の示した見本が情け深いように、お前たちも情け深い人になれ!」

偏見についての警告

37 イエスは続けた――

「偏見を持つな。そうすりゃあ神はおまえたちを裁きやしない。

他人を非難するな!そうすりゃあ神はおまえたちを非難しない。赦せ!そうすりゃあ、赦される。

38 与えろ!そうすりゃあ、さらに与えられる。“十二分”にだ。抱えきれないほどのさちを注ぎ込む。あまりの量にひざまでこぼれおちる。神は、おまえたちの与え方に合わせて、与える・・・!!!」

39 イエスは一息つくと例え話をした――

「目の見えない者が目の見えない者の道をどうやって案内する?そんなことをすれば、2人とも気付かず穴に落ちるのがオチだ。 40 生徒が先生より偉くなる事は無い。だが、完全に訓練されれば、“先生のように”はなる。 41 なぜ友人の目にある小さなホコリは見えるのに、自分の目にあるおっきなゴミくずには気付かない? 42 自分の目にある大きなゴミくずが見えていないのに、なんて言える立場か?

こーの良い子ぶりっこが!人にあれこれ言う前に自分の目にあるゴミくずを処理するのが筋だ。澄んだ瞳を持てば、友人の目についたホコリもよく見える。そうすりゃあ、本当の意味で、ホコリを取り除いてあげることができる」

良い木からる良い実

43 イエスはこうも教えた――

「良い木が悪い実をならせる事はない。同じく、悪い木が良い実をならせる事もない。

44 木はその実によって見分けられるだろ?いばらにいちじくの実がなることがなければ、野ばらにぶどうの実がなることもない。

45 つまりだ。良い人が良いことばかり口にすんのは、心が良いことでいっぱいだからだ!逆に自己中な人が自己中なことを口にすんのは、心が自己中な願望でいっぱいだからだ。

いいか、心に秘めたことが人の口からこぼれる」

砂と岩の土台

46 イエスはこう続けた――

と言うから助言してるのに、なぜ行動に移さない?

47 俺の言葉を聞いて、実行する人がどんな人か説明しよう。

48 まるで地面を深く掘り、岩を土台として家を建てた人だ。洪水や津波などの嵐が打ち付けても、土台がしっかりしているため、びくともしなかった。

49 俺の言葉を聞いても実行しない人は、まるで土台なしに家を建てた人だ。洪水が来たら、いとも簡単に崩れ落ち、木端微塵こっぱみじんになる・・・!」

百人隊長と救世主キリストの権力

1 イエスは伝えるべき事を伝えると、休む間も惜しんで都市カペナウムへ向かった。

2 その頃――

都市カペナウムにいる百人隊長が特に目をかけていた部下が病気で死にかけていた。 3 百人隊長は救世主キリストの評判を聞き、年配のユダヤ人指導者たちをイエスのもとに送り、部下を治して欲しいと頼む事にした。 4 彼らは、イエスを探し当てると百人隊長を助けるよう心から頼んだ。

「この方はただのローマ軍人ではありません。助けるにあたいする方です!

5 彼は私たちユダヤ人を差別なく愛してくれたばかりか、私たちのためにユダヤ集会所シナゴグまで建ててくれたのですッ!!」

6 イエスはこれを承諾すると、彼らと共に百人隊長のもとに向かった。百人隊長の家付近まで来た時のことだった――

「せ、先生!!!」

誰かと思えば、百人隊長が送った友人だった。

「先生。百人隊長からことづけを持ってまいりました!わざわざおいでくださいませんように。先生を私なんかの家にお招きするなどもったいなくて、とてもじゃないですができません。

7 直接挨拶に出向かわなかったのは、そのためです。ただ一言、ご命令をいただきとうございます。さすれば、私の部下はきっと治ります。

8 こう言うのも私が上の権威の下で仕事をする身でありながら、私の下にも部下がいます。こんな私でさえ、部下にと命じれば行き、と命じれば来ます。また、と召使いに命じれば、実行するからです」

9 感心したイエスは、後を追う者に向かって振り返った。

「俺はこれ以上の確信を持った人を“イスラエルの民からでさえ”見たことがない・・・!!!」

10 さて、その言葉を伝えようと友人が百人隊長の家に戻ると、部下が完治しているではないか・・・!

人を甦らせる救世主キリスト

11 翌日――

イエスはナインという町に行った。イエスの後には仲間たちを始め、大勢の人が追っていた。 12 イエスが町の門に近づいた時、ある葬列そうれつにでくわした。その遺体は、ある未亡人みぼうじんの一人息子。

大勢の町人が彼女の後について行き、故人こじんとの別れを惜しみながら涙を流した。

13 この母を見て心を痛めたイエス。

「もういい、泣くな」

そう彼女に声をかけると、

14 イエスはそのまま、ふたの開いたかんおけに触れた。

(えっ・・・?)

するとかんおけかついでいた男たちは足を止めた。

「青年よ、起きなさい!」

15 すると、少年が起き上がった・・・!

「ん?みんなどうしたの?」

イエスは、にっこりして、母の方を向いた。

「さあほら、あなたの子ですよ!」

16 その場にいた人たちは恐れをなした。

「偉大な預言者が我らと共に!」

「神様はご自分の民の面倒をみてくださった!」

そこにいた誰もが神を讃え始めた!

17 この出来事は、ユダヤ全土に広まった。

洗礼者バプティストに浮かぶ疑問

18 洗礼者バプティストヨハネの仲間たちは、これらの出来事を全てヨハネに伝えた。獄中にいたヨハネは2人の弟子を呼び寄せた。

19 「あなたは、我々が待ち望んでいる救世主キリストなのか、それとも他の人を待つべきか・・・」

試練の中、疑いが生まれたのか、洗礼者バプティストヨハネは、このことづけと一緒に2人をイエスのもとに送り出した――

20 「せ!先生・・・!」

洗礼者バプティストヨハネの弟子2人はイエスのもとにだどり着き、ことづけを伝えた。 21 その時、イエスは病気や重病に苦しんでいる人、悪魔に取りかれた人、盲目の人たちをその人知を超える力で治していた。

22 「あなたがたが見聞きしたことをヨハネに伝えてやってくれ。盲目の目が開き、足の不自由な人が歩き、重い皮膚病ツァラトは治り、ろう者の耳は開き、死人は生き返り、貧しい人に最高の知らせゴスペルが届けられていると!!!

23 また、俺をこころよく受け入れる者には、最高の祝福がある」

24 ヨハネの弟子は急いで帰って行った。イエスは彼らを見送ると・・・

「お前たちは一体誰を見に荒野へ出かけた?風に揺れる草花くさっぱなのように流されやすい男か? 25 それとも立派な服を着た男か?なわけないな!そんな人は王宮にいけばいくらでも住んでいる。荒野まで見に行く必要は無い。 26 じゃあ、どんな人を想像して荒野へ出かけた?預言者か?ああ、ヨハネは間違いなく預言者だ。いや、それ以上の存在だ。

27 彼については聖書にこうある。

『聞け、私は救世主キリストの前に使者を送る。彼がおまえの道を備える』―― 【聖書:マラキ書3:1より引用】

28 この世に生まれた人の中で、ヨハネほど優れた人間はいない。だがなお、天国で最も身分が低い者でも、そのヨハネよりも身分が高い・・・。

29 さて、洗礼者バプティストヨハネから言葉を聞いた人たちは、かみの教えは良いものだと知った。札付きの税金取りでさえだ。 30 だが、パリサイ派や掟の学者たちは自分の知識に頼って、かみの計画を受け入れようとせず、ヨハネからの洗礼バプテスマを受けいれようとしなかった。

31 この時代の人たちを例えるなら、そうだな・・・ 32 まるで公園でお友達にめそめそ泣きごとを言う子どものようだな!

『笛を吹いたのに踊らないし!

悲しい歌を歌っても泣かないじゃん!』

33 洗礼者バプティストヨハネが来て、変わった食生活に、酒も飲まないから『悪魔にとりかれていかれたんだ』と言い、 34 この人が飲み食いすると、『あの大食いの酒豪しゅごうは、税金取りや悪党同類だ』と言いだす。

35 だが、覚えておけ。神の知恵の正しさは、それを受け入れる人から生まれる実によって証明される!!!」

遊女が救世主キリストに注いだ愛

36 その日はパリサイ派のシモンという人がイエスをパーティーに招待した――

イエスは喜んで応じ、彼の家に行き、食卓についた。

37 ところで、その町には、ある女が住んでいた。彼女は、救世主キリストであるイエスがパリサイ派の人と一緒に食事をしていると聞き、高級な香油の入った壺を持って行った。

彼女は男の気を引き、体を売って、生計を立てる売春婦だったのだ。しかし、華やかな外見とは裏腹に身も心もボロボロだった。 38 彼女はイエスと目が合った。その瞬間、今まで我慢していた涙が、まるでダムが崩壊したかのように流れた。

イエスの足元に近寄り、流れ出る涙で足を洗い、整えられた自分の髪を乱して、そして髪をタオルの代わりにして拭き取り、その足に何度も口づけをし、持ってきた香油こうゆを塗った。

39 シモンはこの様子をじっくり見ていた。(もし、この人が本当に預言者なら、自分に触れている女が遊女、つまり罪人であることが分かるはずだ・・・)

40 イエスは、そんなシモンを見て考えを察した。

「シモンさん、ちょっと聞きたい事があるんだが」

「は、はい?何でしょうか?」

41 「例えば、2人の男が同じ金貸しから金を借りたとしよう。ある人は15万、もう一方の人は150万と言った具合に。 42 しかし2人とも金を返す事ができそうにない。そこで、金貸しは2人の負債ふさいを帳消しにしてやりましたとさ。さて、この2人のうち、どちらが金貸しにより深く感謝するでしょうか?」

43 「そりゃ多く借りていた方ですよね・・・」

「正解!」

すると、イエスは女の方を振り向いた。

44 「彼女を見るんだ。俺がこの家に入った時、俺は足を洗う水を差し出しもしなかった。だが彼女は、自らの涙で私の足を洗い、その髪でふいてくれた。

45 あなたは、口づけの挨拶すらしなかったのに、彼女は入った時から何度も俺の足に口づけをしてくれた。

46 あなたは俺の頭に油を塗って敬意を払うことはなかったが、彼女はすばらしい香りのする油を俺の足に塗ってくれた。

47 彼女が犯したど偉い過ちは赦された!それは彼女が示したど偉い愛が物語った!!!いいか、赦してもらうことがほとんどないほど、正しい生き方を送っていると“思う者”は、愛の器が小さい」―― 【悪い人、良い人など関係なく、誰もが山ほど過ちを犯したのだ】

48 それから、イエスは女を見て笑みを浮かべた。

「あなたの過ちは、赦された!!!」

49 (こやつは一体何様のつもりだ。どうやったら過ちが赦されると言うんだ・・・?)

その席についている誰もがそう思った。

50 「あなたが過ちから救われた!君が信じたからだ!もう安心して帰るんだ!」

イエスと共にいた人たち

1 「さぁ、行こうっ!」

次の日――

イエスは十二使徒と一緒に町や村を回った。人々に神の王国キングダム最高な知らせゴスペルを伝えるためだ。

2 その一行の中には、イエスによって悪魔に解放され、病気から治された女たちもいた。そのうちの1人は、7つの悪魔を追い出してもらったマリヤで、マグダラと呼ばれていた。 3 他にも、ヘロデの家臣クザの妻ヨハンナやスザンナを始め、多くの女たちがいた。彼女たちは自分たちの財産を使って、イエスと使徒たちの働きを支えていたのであった。

種まき農夫のお話

4 大勢の人々が、自分たちの町や村からイエスの後を追ってついてきた。イエスは、集まって来た群衆にある物語を話した――

5 「あるところの農夫が作物の種をまくために出かけた時の話だ。ある種は道端に落ちてしまい、人々に踏まれ、最後には鳥たちがひょいとやって来て、落ちていた種をあっという間に食べ尽くしてしまった!

6 別の種は土が足りない岩だらけの地へ落ちてしまった。土が浅いとすぐに芽を出すことができるが、根を深く張ることができない芽は、日が照りつけると、水がないので、すぐに枯れてしまう。

7 ある種はいばらが生い茂る草むらに落ちてしまった。しばらくすると、周りのいばらが成長し、せっかく育ち始めた良い芽の成長を邪魔したため、結局、実を結ぶことができなかった。

8 その他の種は良い地に落ちた。これらの種はグングン成長し、100倍の実を結んだ。

耳がついてるならよく聞け!」

9 「あのストーリーですが、どんな意味があったのですか?」

イエスの一味が尋ねた。

10 「おまえたちは選ばれたが故に神の王国キングダムの秘密を知った。俺が他のみんなに物語を使うのは、

『彼らが見に来ても、

見ず、

聞きに来ても、

学ぼうとしないからだ』」―― 【聖書:イザヤ書6:9より引用】

種まき農夫のお話―その心は?

11 「この物語の、“農夫の種まき”は、神の教えを広める人のことを意味している。

12 たまに道端に落ちる種があるが、これは神の教えを聞いても、すぐに悪魔が邪魔しに来て、その教えを忘れさせる。そのため、彼らは信じることができず、救われることもない・・・

13 ある人は、岩だらけの地へ落ちてしまった種のように、神の教えを聞いて、すぐに、しかも喜んで受け入れはするが、彼らの人生に深く根付くこともなく、長続きはしない。受け入れた教えが理由で、自分の身に問題や迫害が起こると、簡単にしっぽを巻いて逃げていく。

14 いばらの中に落ちた種はどうだ?彼らは、たとえ神の教えを聞いても、他のことで頭がいっぱいになってしまう。将来への不安や金銭欲、また、その他に対する欲求不満。これらによって成長は遅れ、人生においてよい成果をだせなくなる。神の言葉が彼らの人生を通して実を結ぶことはない。

15 良い地に落ちた種はどうなるかな?それは、神の教えを純粋に聞き、しっかり飲み込む。その人は、神の言葉に従い、流されず、良い実を結んでいく!」

ベッドの下に隠されたランプ

16 「ランプに火を灯し、器やベッドの下に隠したりする人がいる?まずいないだろう!周りを照らすためのものだからな。 17 同じように隠されたものは、明らかになり、すべての秘密はおおやけになる! 18 今耳にしていることを注意して聞け!悟れば、悟るほど与えらえるが、悟らない人は、持っていると思っていたものさえ失う・・・!!!」

イエスについて行く者こそ本当の家族?

19 イエスの母マリヤと弟たちが、イエスに会いに来ていたが、大勢の人に取り囲まれているイエスに、どうしても近づくことができなかった・・・ 20 それを見たある人が、イエスに伝えた。

「イエスさん、お話中にすいやせんが、お母さんや兄弟がお見えでっせ!」

21 「俺の母、兄弟姉妹は、神の言うことを聞き、従う者だ!!!」

おやすみ嵐

22 ある日、イエスは自分の仲間たちと一緒に舟に乗り込んだ――

「さあ、次は湖の向こう岸に行こう!」

イエスの仲間たちが舟を漕ぎ始めた。

23 少し行ったところで、眠り始めるイエス。すると・・・

ビュ————

「ん?風が強くなってきたな・・・」

風はみるみるうちに強くなり、波が高くなった・・・。

ザッブゥ——ン!!ザバザバザバッ——!!!

湖がひどく荒れ狂いだした!

「ウ、ウワァ〰!沈没するぞぉ〰〰!!!」

波が勢いよく舟を叩きつける。あっという間に舟は水びたしになり、沈みかけた。

24 イエスの仲間たちは、慌てふためきながらイエスを起こす。

「イ、イエズ——ッ!このままじゃみんな死んでじまいまずッ!!!」

イエスはスッと立ち上がると、舟の外を見た・・・

「黙って静まれ」

す、すると・・・

イエスの言葉に反応して突然嵐が止んだではないか!!!

25 イエスが一味に振り返った。

「信仰はどこへ行った?」

・・・・・・仲間たちの頭は真っ白で、少しの間ぼーと立ちすくんでいた。

「こ、この方は・・・何者なんだ・・・?か、風や水までもが服従しているぞッ!!!」

仲間たちは、恐ろしさのあまり互いに問うたのであった。

墓地ぼちに住むローマ軍団レギオン

26 ゲラサ人の地――

イエスと彼の仲間たちは、ガリラヤ湖をわたり、ゲラサ人が住む地に向かった。

27 イエスが小舟を降りると、おや、町から1人尋ねにやってきたではないか。

だが、明らかに様子がおかしい。長いこと裸で過ごし、墓場である洞窟で暮らしていた男だったのだ。そう、彼は悪魔にかれていた。

28 「モ、最モ偉大ナ神ガ私二何用デスカ!!!ドーカ、ドーカ、ワダシヲ、ヒィドイ目ニ遭ワセナイデクダザイ〰〰」

彼は、イエスを見るなり、土下座してこう叫んだ。

29 イエスがその人から出るように命じたからだ。

悪魔にかれた男は、町人によって牢屋に閉じ込められ、手や足を鉄製の鎖でつながれたが、毎度悪魔の力によって鎖が引きちぎられた。そして、人がよりもしない場所へ、無理やり住まわされていたのだ。

30 「名乗れ」

ローマ軍団レギオンデズ!!!」

多くの悪魔がりついていたがために、そう名乗った。

31 悪魔たちは、奈落の底にだけは落とさないでくれとイエスに頼み込みこんだ。

32 その頃、近くの丘ではブタの群れが草を食べていた。

ローマ軍団レギオンは、そのブタに入った方がまだましだと思い、そう懇願した。

イエスはそれを許した。

33 ズォォォ〰〰ドヒュ—ン!!!

凄まじい数の悪魔が一斉に男から出たかと思うと、ブタの群れに次々と入っていった。

「ッ!!!ブ、ブヒィィィ———」

ドォゴゴゴゴゴ・・・・・

ザバァン、ザバ、ザバババババーン・・・・・・

ブタの群れは、気が狂ったように鳴き叫びながら丘を駆け下り、なだれのように湖へ突っ込んでいく・・・・・・

すべてのブタが溺れ死んだ。

34 (ンな、うわぁぁぁぁぁ・・・)

ブタを飼育していた男たちは、血相を変えて全員一斉にその場から逃げ出した・・・・・・野原や町に行って、今の出来事を必死に伝えたのだった。

35 ――住人たちは原因を突き止めるために見に行った。イエスのもとに集まると、イエスの足元に誰か座っている。

「お、おまえは・・・!!!」

「キャ——!墓に住みついてたケモノよォ・・・!!!」

「え、うそでしょ、なにが起きてんの・・・」

とりかれていた男が、服を着て正常に座っている。町人は、この姿を見て、ゾッとした・・・。

36 一部始終を見ていた人が、イエスのおかげでこの男が正常になったことを町人に説明した。

37 それを聞いたゲラサ人たちは、恐ろしくなった。

「こ、この町から出てってくれ・・・!!」

町人は恐れ多くて、イエスを疫病神かのように追い払った・・・。

その願い出を承認したイエスは、舟に乗り、ガリラヤ地方に戻ることにした。

38 その時だ。

「イエス様!ぜひ、お供させてくださいッ・・・!」

ローマ軍団レギオンから解放された男がイエスに願い出た。

39 「いいや、うちに帰って、家族や友人たちにあなたの神がしてくれたありとあらゆることを知らせてやるんだ!」

「は、はい!!」

男は、その言葉を胸に、ゲラサの地中で、イエスがどれほどよくしてくれたかを熱く、広めたのであった。

長血の女

40 ガリラヤ湖付近――

イエスがガリラヤ湖付近に戻ると、イエスを迎えようと、にぎわっていた。みんな心待ちにしていたのだ。

41 するとそこに、ヤイロと名乗る男がきた。彼はユダヤ集会所シナゴグの会堂長であった。イエスに土下座し、自分の家に来るようにと、しきりに頼んだ。

42 彼の娘は死にかけていたのだ。彼女はまだか弱い12歳。イエスは了解して、会堂長ヤイロの家に向かっていると、群衆が四方八方から押し迫ってきた。

43 さて、群衆の中には、生理が止まらない病気に12年間苦しんでいる女がいた。

彼女は自分の病気を治すため、全財産をはたいて、多くの医者に診てもらった。破産するまでお金を注ぎ込んだが、何も改善されはしなかった。

44 彼女は、イエスの背後から、上着のすそをめがけて手を伸ばした。

(えーぃっ!)

「え・・・・・・!」

イエスの上着に触れたと同時に生理がと、止まった!

45 「誰だ!俺の服に触ったのは!」

誰もが触れていないと答えるとペテロが前に出た・・・

「いやいや師匠!これだけの人が押し迫っていたのに誰がって・・・はは・・・ねぇ」

46 そんなのお構いなしに、自分の服に触れた人を探すイエス。

「いや、触られた。俺から力が流れ出たのを感じた」

47 (い゙ッこれ以上は隠れるのは無理だ・・・)

やまいを治してもらった女は、震えながら、前に出ると、すかさずイエスの足元にひれ伏した。

「わ、私です!じ、実は・・・」

女が声を震わせ、自分の身に起こったことを、みんなの前で話すと、イエスはニコッと笑った。

48 「娘よ、よく信じた。おかげで君は治った!安心して。もう苦しむ必要はない」

49 ——イエスが女と話している最中のことだった・・・

会堂長の家から何やらよからん表情をした人が出てきた・・・

「お嬢さんは息をひきとられました・・・もう・・・先生をわずらわせる必要はないかと・・・」

あ、あ゙、あ゙・・・・・・その瞬間、ヤイロの頭は真っ白。

50 「ヤイロッ!恐れるな!信じれば娘はよくなる!!!」

それは、イエスの声だった。

「ゔ・・・ハイ!!!」

戸惑いながらも、ヤイロはイエスを信じた。

51 会堂長ヤイロの家に着くと、イエスは、岩のペテロ、雷兄弟・兄ヤコブ、弟ヨハネと娘の両親以外の立ち入りを禁じた。

52 ・・・うわぁーんっ

ひっくひっく・・・うぇーん・・・

ずずっ、グゾぉぉぉ・・・

大勢の身内や人々が、悲嘆に暮れ、ひどい有様だった。

「泣くな。この子は眠っているだけで、死んではいない!」

53 「ケッ!こいつぁばかか!」

死んでいることを知っている彼らは、誰もがイエスを大声であざ笑った。

54 気にもとめないイエスは、少女の手を取った。

「お嬢ちゃん、立て!」

55 すると、少女の霊が戻って来た・・・!!?次の瞬間、少女の魂は舞い戻り、すぐに立ち上がるではないか!

「何か食べさせてあげて」

イエスにそう伝えられた両親と3人の仲間は、言葉を失っていた。

56 両親は発狂するほど驚いたが、イエスは誰にも話さないように釘を打った。

派遣されし十二使徒

1 ある日のこと――

イエスは12人の使徒たちを呼び集め、全てのやまいを治す力と人から悪魔を追っ払う力を授けた・・・ 2 それは、十二使徒を各地に放ち、あらゆる人に神の王国キングダムを伝え、病人を治すためだ。

3 送り出す前にイエスはこう指示をした。

「着ている服以外、すべてを置いて旅に出てもらう!杖、かばん、食料、お金、全てだ。 4 町に着いて、宿として家に迎え入れてくれたら、町を出るまではその家にとどまる。

5 もし、その町で誰も受け入れてくれず、おまえたちの話に耳を傾けない場合は、その町をさっさと去るんだ・・・!そして彼らへの警告として、足のちりをきっちり払い落とせ!!」―― 【足のちりを払い落とす行為は、“話すことはもう何もない”という警告だった】

6 十二使徒は、イエスからの指示を心に刻み、町から町へと足を運んだ。最高の知らせゴスペルを伝え、人知を超えた力で町の人の病を治していった。

噂の預言者イエスは一体?

7 その頃、これらの噂を聞いたヘロデ総督は、ひどく困惑していた・・・

洗礼者バプティストヨハネが生き返ったらしいぞ!」

「いや、エリヤの再来だ!」

8 「俺は昔の預言者が1人、死から蘇ったと聞いたぞ!?」

国中で様々な憶測や噂が広まっていた。状況がつかめないヘロデ王は、

9 「あ、あのぉ・・・ヨハネなら世が首をはねたはずなんだが・・・この噂の男とは一体・・・・・・?」

イエスが誰なのか模索し続けるヘロデ王だった。

5000人強の食卓

10 ――十二使徒が戻って来ると、それぞれが旅で行ったこと、起きたことを一からイエスに報告した。そして、イエスは使徒たちだけとの時間を過ごすため、ベツサイダ村へ向かった。

11 しかし・・・

「イエスさ~ん!やっと見つけたッ!!」

「先生~!俺たちにも話を聞かせてください!」

「こいつの病気を治してください!」

民衆はイエスの居所いどころを嗅ぎ付けると、その後を追った。そんな人たちをイエスは心から歓迎し、神の王国キングダムについて教えたり、病人たちを完治させたりした。

12 ・・・そうこうして、日が暮れ始めた頃。十二使徒がイエスのところへやって来た。

「先生・・・ちょっといいっすか?もう日も暮れますが、ここら辺には誰も住んでなさそうで。今なら、近くの農家や町に行って、食べ物を確保する時間は十分にあります。そろそろ解散のお時間かと・・・」

13 「そうか。ならそう言わず、おまえが食べさせてあげな!」

「先生、パン5つと魚2匹しかない!まさか全員の食料を買ってきてほしいなんてことはないですよね!」

14 群衆の数は男だけでも5000人はいるのだから、使徒たちがこう反応するのも無理はない。

「およそ50人ずつのグループになって、座るように伝えてくれ」

15 頭にはてなマークを浮かべた使徒たちだが、イエスが言うならと指示通りに動いた。

16 イエスは5つのパンと2匹の魚が入ったかごを持つと、天を見上げ、与えられた食料を神に感謝した。

そして、持っているパンをちぎっては仲間たちに配った。配られた仲間は、受けとったパンを人々に配っていく。同じようにして、2匹の魚も、すべての人に分け与えられたのだった。

17 イエスの元に集まっていた群衆は満腹になるまで食べたにもかかわらず、食料はたっぷり残っていた。

余った食べ物を集めると、12個のかごがいっぱいになるほどだった。

イエスのうわさ

18 イエスが一人祈っている時だった――

使徒たちがイエスのもとにやってきた。

「人は、俺のことを誰だと言っている?」

19洗礼者バプティストヨハネだと思ってる人たちがいましたよ!」

「預言者エリヤだとか、そうでなくても預言者の1人だって言う人たちもいるよなぁ」

20 「おまえたちはどう思う?」

「あなたこそが神に選ばれし王、救世主キリストだ!!!」

ペテロが答える。

21 「・・・俺の正体は、ここだけの話だ」

イエスの後に続く者

22 「“この人”、つまり俺は、多くの苦しみを通らなければならない・・・。ユダヤ指導者、祭司たち、そして掟の学者たちによって多くの苦しみの中をくぐらされ、俺は彼らに殺されなければならない。しかし、その3日目には蘇る!」

イエスは、一味にだけ聞こえるようにこう言うと、

23 群衆の方を向いた。

「いいか、友よ!俺について来たいなら、自分勝手な考えや欲を捨てろ!俺の後に続くことでわたされる十字架を毎日背負えッ!!!

24 誰でも自分の人生を自分で救おうものなら、“失う”。だが俺のため、また、最高な知らせゴスペルを告げるために人生を捧げる者は、それを“モノにする”。

25 たとえ、世界を手にいれようとも、自分を失えば元も子もない。

26 俺と俺の教えを恥ないように。もし恥るなら、“この人”、すなわち俺と、父さんの栄光をおび、天使の軍勢を従えて戻る時、俺はその人を“恥じる”・・・!!!

27 今から言うことを信じろ・・・おまえたちの中には、死ぬまでに神の王国キングダムを拝める者たちがいる・・・!!!」

伝説の預言者モーセとエリヤが登場する

28 イエスがこう教えてから8日後――

イエスは十二使徒のうち、岩のペテロと雷兄弟、兄ヤコブ・弟ヨハネの3人を連れて高い山に登った。

29 イエスが祈っていると・・・

ドヒュンッ!

「ゔわぁぁぁ—っ!!!」

イエスの顔が変わり始めた!と思った瞬間には、

ピカーン!!!

イエスが眩しすぎるほどの白い着物をまとっている・・・。

30 トコトコ・・・・・・

「!」

他にも2人現れたかと思うとイエスと親しげに話し始めた・・・あれは、で、伝説の預言者、モーセとエリヤではないか!

31 2人も同じように眩しく光っている。

3人は、イエスがどのように地球を去り、エルサレムで最期を遂げるかについて話していたのだ。

32 これは、丘の上で眠っていた岩のペテロたちが目を覚ました時に見た光景であり、彼らは、イエスと共にいる2人を含め、イエスの輝かしい栄光をしかと目にした。

33 それは、モーセとエリヤの去り際だった――

「イ、イエスゥ〰〰っ!光栄ですっ!ほんと光栄ですっ!なんと言うか、こ、この場に居合わせることができるなんて・・・そ、そうだ!みなさまが神を讃えるための幕屋テントを3つ、われわれに作らせて下さい!ひ、ひとつはイエスの名誉、それとモーセ様とエリヤ様の名誉のた、た、た、ために!!!」―― 【紀元前、神殿が建てられる前のユダヤ人は、幕屋テントの中に神を礼拝する場所を設けていた】

岩のペテロは勢い余って口走ったが、自分でも何を言っているのかさっぱり。

34 ――すぅぅぅ・・・・・・

ペテロが言い終わらないうちに、あたりは光輝く雲が立ちこめて覆われた。何が起きているのか分からず、3人はただただ怯えた。

35 すると!

雲の中から声が聞こえてくる。

「――これは私の子。彼こそが私が選んでいた者。“カレに”従うのだ!!!――」

36 スー・・・・・・

雲が消えるとそこにはイエスしか残っていない。使徒3人の開いた口はふさがらなかった。彼らはここで見た事を、当分、誰にも伝えはしなかった。

取りかれた少年

37 次の日――

イエス、岩のペテロ、雷兄弟・兄ヤコブと弟ヨハネが山から下りてくると、大勢の人がイエスを迎えた。

38 「せんせーい!!せーんせーい!!!」

群衆の中から、ある男が叫んだ。

「先生、息子が悪魔に侵され、話すことができないんです・・・。イエス先生ならと思い、見てもらいに来たんです!!

39 憎い、悪魔は、息子を叫び狂わせながら、口から泡を吹くほどにドンッと地面に投げ倒し、歯ぎしりをして硬直させやがるんです・・・ 40 ぐすッ・・・先生がいないって言うんで、先生のお弟子さんに悪魔を追い払うよう、お願いしたんですが、無理だったようで・・・先生、どうかっ!!!」

41 「信仰がない時代だなー!いつまで俺が一緒じゃなきゃいけない。いつまで待てばいいんだ」

すると、イエスは願い出てきた男を見た。

「・・・その子をここに」

42 少年が向かっている最中だった。

バタンッ!バタンッ!

悪魔が少年を地面に叩き付けた!彼の身体の自由を完全に奪ってしまったのだ・・・

すかさずイエスが一喝いっかつ!すると・・・うそのように完治した!イエスは無事、少年を父親の手に返したのである。

43 この神業に誰もが感激したのだった。

救世主キリストの死にざま

44 「頭に入れろ・・・“この人”は、まもなく人の手に落ちる・・・」

45 「・・・?」

一味は、イエスの言いたいことがさっぱり理解できない。まだ理解できぬよう、言葉の真意が隠されていたからだ。ただならぬイエスの気迫に圧倒され、誰も質問しようとは思えなかった。恐れ多かったのだ。

最も偉大な者

46 ・・・・・・いーや俺だ!・・・いや、俺だ!・・・んだとぉ!・・・・・・

ある時一味では、この中で誰が1番偉いかについて、口論になっていた。

47 一味の様子を見て察したイエスは、近くにいた小さな子どもを連れ、自分の横に立たせた。

48 「このように幼い子を俺の子かのように受け入れる人は、俺を受け入れた。誰でも俺を受け入れる人は、俺を遣わした神をも受け入れた!!!おまえたちの中で誰が1番偉いかって?誰よりも謙虚な人はどこだ、そいつがそうだ・・・!!!」

敵でないなら味方

49 これに雷兄弟・弟ヨハネが反応した――

「師匠!勝手にあんたの名前を使って悪魔を追い出している人がいたんでぃ!だが心配ねぇ!仲間じゃあないんで、俺たちが止めたっ!!」

雷と呼ばれる名の通り、勢いで話にわりこむヨハネ。

50 「止めるな!敵でないなら、味方だ」

都市サマリヤ

51 ――天に帰る時は近づいていた・・・

イエスは、鉄のように意思を固め、とうとう神殿のみやこエルサレムへ出掛けた。

52 先に使者を送り出し、都市サマリヤで一味を迎える準備をさせたイエス。

53 だが、その町人はイエス一行が神殿のみやこエルサレムに向かうと知って、都市に迎え入れることを拒んだ―― 【ユダヤ人とサマリヤ人は犬猿の仲だった。過去には、ユダヤ人が混血であるサマリヤ人の古き神殿を壊す事件があったほどだ】

54 く、こ、こいつら・・・

雷兄弟・兄ヤコブと弟ヨハネはこの様子を見て強く反応した――

「師匠、俺らが天から火を呼び、焼き殺してやろうか!」

55 「オイッ!」

イエスは振り返って彼らをしかった。

56 こうしてイエスは一味を連れ、他の町に向かうことになったのだった。

イエスに従う意味

57 一行が神殿のみやこエルサレムへ足を進めていた時のこと。ある人がイエスへ言った――

「あなたが行くところなら、どこへだってついていきます!!!」

58 「キツネには穴があり、鳥には巣がある。“この人”には、横になる場所もないが?」―― 【イエスは、“物欲しさに近づいてきたところで、あげるものは何もない”という意味でこう言った】

59 また、仲間になるようにとイエスが声をかけたときのこと――

「俺についてこい!」

「師匠、父親の葬式をあげてから行きます」

60 「死んだ人は、死んだ人に任せりゃいい。おまえには、神の王国キングダムを伝える義務がある・・・!!!」―― 【ただ死を待つ人間のことを表現して“死んだ人”と言った】

61 またある人は・・・

「師匠、あなたについていきます!ですが、家族と別れの時を過ごしてからにします」

62 「歩みを始めたにも関わらず、目をそらす者に神の王国キングダムを築く準備はできていない・・・!!!」

選りすぐりの72人

1 この後のことだった――

イエスは一味の中から72人選抜すると、足を運ぼうと考えていたすべての町や村へ2人1組にして送り出した。

2 「収穫できる人間は山ほどだ・・・なのに俺の仲間を増やす手はこれっぽっちだ。いいか、収穫は神のものだ!責任者である神に、もっと働き手を送るように頼むんだ!!

3 行けッ!だが忘れるな。俺が送り込む先でのおまえたちは、まるでおおかみの群れに住む羊だ。

4 お金やかばん、予備の靴は置いてけ。そして、道草を食わないように!

5 家に入る前には、『この家にさちあれ』と祈るんだ。

6 友好的であれば、その一家に祝福はとどまる。拒絶されても祝福は返ってくる。

7 友好的なお宅を宿とし、彼らのおもてなしは遠慮せず、ご馳走になるんだ!働く者が報酬をもらうのは当然。他の家から誘いがあっても、泊めてもらっている家を出ないこと。

8 おまえたちが入った町の人が歓迎してくれるなら、出されたご飯はありがたく、いただくんだ。

9 町の病人を治し、『神の王国キングダムが来た!』と伝えろ!

10 だが、入った町人が厄介払いするなら、町の大通りでこう言え。

11 『足についた、この町のちりでさえも、置いて行こう。だが忘れるな!神の王国キングダムは来た!』。

12 言っておくが、最後の審判ファイナルジャッジメントの日、彼らは火の雨で滅ぼされた過ちの都市ソドムの住民よりひどい目にあう・・・!!!」

最後の審判ファイナルジャッジメントの警告

13 「ああコラジン町、ベツサイダ村よ。恐ろしい目にあうぞ!!俺が幾度となく起こしたキセキを見てなお、変わろうとしなかった・・・

滅ぼされた港のみやこツロやシドンでもし同じキセキが行われていたなら、彼らでさえ、とうの昔に心を入れ替え、生き方を改めただろうに。

荒布あらぬのをまとい、灰の上に座ってまで犯した過ちを悔やんだことだろう。

14 最後の審判ファイナルジャッジメントの時、港のみやこツロとシドンの市民よりもひどい目にあう・・・!!!

15 都市カペナウムはどうだ、天国へ行くのか。いな、死の谷へ突き落とされる!

16 俺に従う仲間、すなわち、おまえたちの言うことを聞く人は、実際、俺の言うことを聞いた。

逆におまえたちを拒む人は、実際、俺を拒んだ。

どこの誰であろうと俺を拒めば、俺の送り主、神を拒んだのだ・・・!!!」

稲妻いなずまのごとく落ちた悪魔王サタン

17 それからしばらくして、選りすぐりの72人が満面まんめんの笑みで任務から帰ってきた。

「師匠の名を使うと、悪魔でさえ従うんだぜッ!!!」

彼らはみな喜びにあふれてイエスに報告を始める。

18 「そうか、そうか!!俺も悪魔王サタン稲妻いなずまのごとく落ちるのを見た! 19 やつらは、敵だ。だが、自覚しろ!おまえたちには、ヤツを大きく上回る力を授けた!その力は、ヘビやさそりのような恐ろしい敵を軽々と踏みにじる力だ。おまえたちに指一本触れることはできない。

20 そうだ、悪魔でさえおまえたちに服従する。

喜べ!

この“力”ではなく、おまえたちの名が“天の書”に刻まれていることをッ!!!」

「うおぉぉぉ!!!」―― 【天の書:天国に行ける人のリストのこと】

神を知る唯一の方法

21 ――ブオンッ――

神の霊ホーリースピリットに満たされたイエスは、天にも昇るような思いになった!

「天地の王!父さん!!ありがとう!!!俺は感謝でいっぱいだー!!!こんな素晴らしい真理を、知ったかぶりの思い上がりには隠し、子どものように素直な人たちに明かしてくれた!ああ、知ってるさ父さん!これがあなたの望んだ王道だ!!!」

22 「俺の父さんは全てをくれた。一人子ひとりごの真の姿は、父さんのみぞ知る。父さんの姿もまた、一人子のみぞ知る。また、一人子が伝えると決めた者のみが父さんを知る・・・!!!」

23 イエスは、仲間たちの方を向いた。

「おまえたちは、幸せもんだなーおい!!この光景を拝めるんだからよ!

24 言っとくが、数多あまたの預言者や王たちが、おまえたちの見る光景を拝みたいと願ったが、叶わなかった。おまえたちが聞くことを耳にしたいと願ったが、叶わぬ夢だった!!!」

真の隣人

25 ある日のこと――

「先生」

掟の学者がイエスの腕を試そうと立ち上がった。

「どうすれば永遠の命エターナルライフを得られますか?」

26 「掟には何と?それを読んだあなたの解釈は?」

27 「『心、魂、力と知性の限りを尽くし、我が君、神を愛したまえ』また、とあります」―― 【聖書:申命記6:5、レビ記19:18より引用】

28 「そう、言ったことを実践してください。そうすれば、永遠のいのちエターナルライフはあなたのものだ」

29 (ぐ、それならやっている!)

「えへん、お言葉ですが、誰もが私の隣人ではありませんよね?!」

この掟の学者は、やるべきことは全部していると思われたかったがために、少しむきになった。

30 「ある男がエルサレムから城壁の町エリコへ向かっていた。道中、盗賊にからまれ、服を剥がされ、虫の息になるまでボコボコにされて置き去りにされた。

31 さて、偶然祭司がその場を通りかかりました。彼は倒れている男を見ると、立ち止まって助けると思いきや、素通りした。

32 次に、神殿に務めるレビ人が痛めつけられた彼と出くわした。助けると思いきや、知らん顔して、またいで行った。

33 ここで、ユダヤ人とは水と油のような仲であるサマリヤ人が、旅の途中、そこにさしかかった。彼は死にかけた男を見て、胸を痛めた。

34 すぐにけが人のもとにかけより、オリーブオイルとぶどう酒を傷口にかけ、包帯を巻いた―― 【当時、オリーブオイルとぶどう酒は、傷を和らげ、消毒や薬の役割を担っていた】

そして、けが人を自分のロバに乗せると、近くの宿に連れて行って介抱した。

35 次の日、サマリヤ人は銀貨2枚を宿主に渡すと、『私はこれで失礼するが、あの人を数日間介抱してあげてください。足りない分は、帰りによってお返ししますから』と言って去った。

36 さーて、強盗に襲われた男を人ごとではなく、隣人として扱ったのは誰だ?」

37 「彼を助けた人です」

「じゃあ同じようにしてこいッ!」

マリヤ、マルタ姉妹

38 神殿のみやこエルサレムへの旅の途中、イエスは村へ立ち寄った。

その村のマルタという婦人が宿代わりに彼女の家へと迎えてくれた。

39 マルタにはマリヤという妹がいた。

マリヤはイエスのそばに座り込んで、イエスの教えに聞き入っている。

40 一方、姉・マルタは――

(どうおもてなししようかしら・・・あれ、それともこれ、いやいや、あれとこれ・・・あ゙〰〰)

接待に気をつかって、てんてこ舞の忙しさ。

「も゙〰!」

遂にマルタは声をあげた。

「先生ッ!妹が私に接待を任せっきりなのになんとも思わないんですかッ!!手伝うように言って下さい!!!」

41 「マルタ、マールータ!あーれこれ心配しすぎだぞ! 42 心配すべきことは“ひとつ”だ!それをマリヤは選んだんだ・・・絶対、取り上げさせやしない・・・!!!」

イエスの教え―祈り―

1 ある日のこと――

イエスは今日も1人で祈っていた。祈り終わって戻ってくると、一味の1人が前にでた。

「先生、洗礼者バプティストヨハネが弟子に教えたように、俺たちにも祈り方を教えてくれないか?」

2 「ああ、こう祈れ。

父さん

あなたの名がいつまでも誰よりも讃えられるように!

あなたの王国キングダムよ、来い!

3 毎日必要な食糧の調達を!

4 俺たちを赦してくれ!俺たちもひどい人を赦した!

どうか俺たちを誘惑から守ってくれ!』」

―― 【決して、神に命令しているのではなく、親子の関係を表した“祈り”を教えたのだった】

求めろ、探せ、叩け!

5 「おまえたちの中から、真夜中に友人の家を訪ね、『パンを3つくれないか?

6 俺の友人がわざわざ遠くから訪ねて来てくれたんだが、何も出してあげるもんがないんだわ!』と言ったとする。 7 友人は家の中からこう言うんだ

『帰れ!何時だと思ってんだ!もう戸締りして、俺も子どもたちも寝てんだ。こんな時間にあげるもんなんてないよ!』

8 いいか、友達ってだけじゃあパンどころか、起きる理由にはならねぇだろう。だが、粘り強く頼むなら、重たい腰さえ起こし、必要な物すべてを分けてくれる。

9 結論はこうだ・・・

求めろ!そうすりゃあ与えられる。

探せ!そうすりゃあ見つかる。

叩け!そうすりゃあ扉は開く。

10 そうだ、求め続ける者は、与えられ、探し続ける者は、導かれ、叩き続ける者の扉は開かれる!!!

11 子持ちはいるか?子どもが魚を食べたいと言ったのに、蛇を出す親はいるか?

12 卵が欲しいと言われて、サソリを出すか?んなことあるか! 13 こん中で1番の悪党だろうと、子どもには良いものをあげるだろうよ!ならなおさら、天の父さんを求める者に神の霊ホーリースピリットを含め、良いものを与えないなんて事があるか!!!」

悪魔のちから?神のちから?

14 ある日のこと――

イエスは喋れない男に取りいた悪魔を追い出していた。

「ウヴォアァアア!!!」

悪魔が出ると、男は正常にしゃべり始めた。集まっていた人たちは感激のあまり、言葉を失った。

15 一方、ちまたでは、こんな噂が流れていた――

「あのイエスが悪魔を追い払える理由をズバリ答えましょう!悪魔のかしらから力を借りているのですよ。考えても見てください・・・家来の悪魔が言うことを聞くだなんて当たり前ではないですか!!!」

16 そのため、ある時、ある人たちがイエスに、神からの印としてキセキを起こせと言うのだ。

17 あからさまにあの噂に影響されて、要望してきたとのだと察したイエス。

「内戦をしている国々は壊滅かいめつする。もめ事が絶えない家族は崩壊ほうかいする。 18 悪魔王サタンの力で悪魔を従わせているだって?それが正しいなら、悪魔王サタンは自分の王国を攻めていることになるが・・・それじゃあ、自滅もいいところだ!

19 百歩譲って、俺が悪魔王サタンの力で悪魔を打ち負かしているなら、パリサイ派が追い出した時には、なんの力を使ったことになる?・・・俺が正すまでもない。

20 俺は神の力によって悪魔を追っ払う。これは、神の王国キングダムが悪魔の陣地に攻め込んだことを意味する。

21 人にとっては強く、完全武装した悪魔王サタンが宮殿を守っているうちは、彼の王国は安泰あんたいだ。

22 だが、悪魔王サタンを大きく上回る者がヤツを倒し、縛りあげたなら、武器も持ち物も取り上げ、後はやりたい放題。悪魔を追い払うたびに俺はヤツを縛りあげ、武器を取り上げる・・・!!! 23 いいか、悪魔を攻める俺に味方しないなら、敵。俺と組まなければ、邪魔だ」

きれいな空き家は格好のアジト

24 「悪魔が取りいていた人から追い出されると、くつろげる場所を探して荒野をうろうろする。だが、優良物件が見つからない。そこでヤツらはこう言う。

『とりあえず、前の住処すみかへ戻ってみるか・・・』

25 そうして前の住処すみかに戻ってみると、そこは空部屋のまま、きれいに整理整頓せいりせいとんされているじゃあないか! 26 その悪魔は、よし、しめたとばかりに、自身より凶悪きょうあくな悪魔を7匹連れて住み込む・・・そしたらその人の人生は以前よりも悪化する・・・」

神の恩恵おんけいを受ける人

27 イエスの話している最中だった――

「素晴らしい!!!あんたを産んで育てた女性は、神様の恩恵おんけいを受けた方だわ!!!」

話に割って入った女は感動の声を漏らした。

28 「神の言葉を聞いて従う人!!神の恩恵おんけいを受けた人とは、そういう人だ」

求められる“しるし”

29 イエスの元に集まる人数が続々と増える中。

「なんて自己中心的な時代だ・・・神からの“しるし”として、キセキを起こせやなんだとしつこいが、あなたに証明する“だけ”のためにキセキは起きやしない。

あなたたちが得られる“しるし”は、ヨナに起きたキセキくらいのもんだ―― 【ヨナとは、大きな魚に食べられたが、3日目に生きて出てきた“伝説のヨナ”のこと。聖書:ヨナ書より引用】

30 ヨナは、ニネベの町人への“しるし”だったように、“この人”もこの時代の“しるし”となる・・・!

31 最後の審判ファイナルジャッジメントの日、この時代は、南の女王シェバと比較される。

あなたがどれだけ罪深いか、彼女本人が証人となる。

なぜかって?彼女は遥か彼方から国宝級の贈り物を持ってやって来た。ソロモン大王の知恵を聞くためだけに。

なのにどうだ・・・知恵の王ソロモンよりはるかに偉大な者をまえにして、全く話を聞こうとしない・・・!!!

32 最語の審判ファイナルジャッジメントの日、この時代の人はニネベの町人とも比較される。

あなたがどれだけ罪深いか、彼らが証人となる。

ニネベの町人は、ヨナの言葉を聞いて、心を入れ替え、生き方を改めた。

なのにどうだ・・・ヨナよりもはるかに偉大な者を前にして、変わろうともしない・・・」

人の見方はランプの照らし方

33 「ランプのろうそくに火をつけ、それにフタをかぶせたりするか?いーや、人が入ってきても、部屋がよく見えるように台の上に置く。

34 あなたの目がそのランプだ。人の見方で、台の上に置いた人か、それとも、フタをした人なのかが分かる。

見返りを求めない目は、光を放ち、私利私欲にくらんだ目は、闇に包まれる。

35 光にフタをしないよう、用心しろ!

36 光の目を持つ人間の周りは照らされ、闇の目を持つ人間の周りは暗くなる」

宗教家の正体

37 イエスが会衆に話終えると、パリサイ派の者がイエスを食事に誘った。誘いにのったイエスは、食卓についた。

38 「!」

パリサイ派の者の口がさっそく“へ”の字に曲がった。イエスが手を洗わずに食卓へついたからだ―― 【当時は、食事の前に手からひじまでを洗う、清めの儀式を行うことがしきたりだった】

39 異変に気付いたイエス。

「パリサイ派が行う手洗いは、まるで、食器の外側だけを洗っているかのようですね。ふたを開けてみれば、私利私欲という名の汚れがとれていない八方美人じゃあないですか。

40 おかしな人たちです!外見を作った方は、中身も作った。 41 なら、中身に目を当て、助けを求める人を助けるんです。

そうすれば、心身ともにきれいにすることができる。

42 パリサイ派はなんて残念なんだ。せっかく、わずかな収入でも細かく計算し、1/10の収入を捧げているのに、重要なことは忘れている。人をひいきせず、神を愛することをです!

もちろん、その他のことをやめていい理由にはならない。

43 パリサイ派はなんて残念なんだ・・・

ユダヤ集会所シナゴグの上座に座っている自分に目がない。人が集まるところに出かけては、頭を下げて挨拶されることが何よりの楽しみになっているじゃあないですか。

44 なぜ残念かって?人目にふれない墓のようだからです。

人は、汚れたものが近くにあるとは気づかず、平気であなたがたのそばを通り過ぎる」

45 「先生、パリサイ派の方々にそんな口の聞き方をするのは、我々を侮辱すること同然ですぞ!!!」

掟の学者が割って入った。

46 「掟の学者も掟の学者です。実に哀れ・・・守れもしない厳しい決まりを作り、無理やり従わせる。自分は守ろうともしないのにです!

47 掟の学者は、なんて残念なんだ。

あなたの先祖が殺した預言者をうやまうために記念碑を建てたのに、 48 私に発しているその殺意から、ここにいるみんなへ先祖がした“預言者殺し”に賛同していることを明かしている。

先祖が預言者を殺し、あなたがたが記念碑を建てるとは、まるで、預言者を殺したのは我らの先祖だと自慢しているかのようですね!笑わせてくれる。

49 神はそんな事を承知でこう預言しました。

『私は預言者や使徒を私の代弁者として送る。だが、多くは悪人に殺され、生き延びた者もひどい目に遭う』

50 だから、この時代に生きるあなたがたは、世の始まりから今に至るまで犠牲になった全ての預言者の責任を負わされる。

51 アベルからあの祭壇さいだんと神殿の間で殺されたザカリヤまでの殺人罪によって有罪判決を言いわたされます―― 【アベルからゼカリヤ。ヘブライ語の旧約聖書の中で、殺害された最初と最後の人】

そうです、あなたたちは、すべてのツケを清算することになります・・・!!!

52 掟の学者は、なんて残念なんだ。

何も学ぶことはないほど賢くなったと思い上がり、頭が麻痺まひしています。

自分が学ばないのは勝手ですが、他人の機会まで奪わないでもらいたい・・・!!!」

53 これ以来、掟の学者とパリサイ派は、イエスに対して執拗しつように言いがかりをつけるようになった。ひっかけ問題をなげ、 54 イエスの口からどうにかぼろを出し、訴えようと、無駄なことに精を出すようになったのであった。

イースト菌のごとく暴かれる秘密

1 数千人もの人がイエスの元に集まり、押し合いへし合いという混雑状態。

イエスは集まった民衆と話す前に、一味を集めて忠告した――

「パリサイ派のイースト菌に注意しろ!いい顔した腹黒い偽善者だからだ!

2 だが、その下心を隠し通すことはできない。やがて、パン生地きじの中のイースト菌のように、ふくれ始め、バレバレになる。

隠されたものは全ておおやけになり、秘密は全て公開される!! 3 陰で言ったことは、おおやけにされ、閉ざされた部屋でぼそっと言ったことも、公衆の面前で公表される・・・!!!」

人を恐れるべからず

4 「友のみんな、人間を恐れるんじゃない!体を殺せても、魂には指一本触れやしない。 5 恐れるに足りるは殺して地獄に落とす力ある神のみだ。

6 だが安心しろ。5羽のすずめを合わせても小銭の価値しかないすずめ1羽ですら神は見捨てない。 7 おまえたちの髪の毛の数さえ知っている。だから恐れるな、どんなにすずめをかき集めても、比べものにならないほどの価値がおまえたちにはある!!!」

イエスを恥じないように

8 「人前で胸をはって俺を信じると言う者は、

俺も天使たちの前で胸はってそう言う!

9 人前で俺を知らないふりをするなら、俺の仲間じゃあない。俺も天使の前できっぱりそう言おう。 10 “この人”に逆らってもゆるそう。だが、神の霊ホーリースピリットの働きに逆らうなら、赦されることはない・・・!!!

11 おまえたちが、重役や権力者の前に連れて行かれ、圧力をかけられたとしても、どう釈明しようかと心配するな! 12 伝えるべき事は、伝えるべき時に神の霊ホーリースピリットが教えてくれる!!」

貧しいお金持ち

13 「先生!どうか親父の遺産を分けるよう、兄貴に言ってくれッ!」

人だかりの中から、イエスに叫んだ男。

14 「いつ、俺がおまえたちの裁判官や仲介人になった?」

「・・・・・・」

15 「気をつけろ!自己中心的な欲望から自分をまもれ!!持ち物を増やしても、心の足しにはならない。

16 ある金持ちが、良い作物のとれる肥えた畑を持っていた。 17 『こりゃ困った!稼ぎ過ぎて、収穫物が倉庫に納まらん!』

18 あれこれ考えたあげくに彼は言った

『そうだ!倉庫を取り壊して、新しい大きな倉庫を建てればいい!そうすりゃあ俺の財産は納められる。

19 もう心配いらん!一生食っていけるだけ蓄えたんだ。食って、飲んで、ゆったり生きよう♪』

20 しかし、彼を見て、神はこう言った。

『この愚かもんが!!!誰がおまえに明日あすを約束した?今夜他界するおまえの財産は一体誰のものになる』

21 これが自分のためだけに財産を築きあげる人の末路だ。人の目には豊でも、神の目には貧しい。天国に来たら一文無しだからだ」

神の国キングダム第一

22 「だから、食べ物や格好がどうかといったことでいちいち心配するな!

23 人生には飲み食いする以上の価値があり、体には格好以上の価値がある。

24 カラスを見てみろ!種も蒔かず、刈り入れもせず、収穫をおさめる倉もないっていうのにゆうゆうとしていられるのは、神がやしなっているからだ!

神にしてみれば、カラスより、おまえたちの方がはるかに大切だ! 25 それに気にしたところで寿命は1秒ものびやしない。 26 こんな小さなことができない人が、もっと大きなことを気にしてどうする?

27 ゆりの花がどう成長するか見てみろ!働きもしなければ、飾りもしない。

だが、この世の富、地位、名声の全てをきわめた知恵の王ソロモンですら、この花ほど着飾ることはできなかった。

28 今日は咲き誇っていても、明日にはしぼんでしまう野草でさえ、神はこんなにも美しくしてくれる。だとしたら、なぜ神が必要を満たしてくれると信用できない?

29 同じように、飲み物や食事の心配をするな。 30 神を知らない人の考え方だ。おまえたちに何が必要か父さんが知らないわけがない!

31 神の王国キングダムを第一に考えるなら、神が日常に必要なものすべてを手配してくれる!!!」

天国銀行ヘブンバンク

32 「少数派だからってどうした?恐れるな!なんせ父さんは、おまえたち息子、娘と神の王国キングダムを分かち合おうってんだからなッ!!!

33 だから持ちものを売り払って、人を助けろ!これが財産を失わない“唯一”の方法だ。泥棒は盗めず、虫には食われず、永久に朽ちない天にたくわえられる!!!

34 宝の在り処に、心も思いも釘付けになるんだ・・・!!!」

常時準備万端

35 「さあ備えろッ!身なりを整え、あかりをともしておけッ!!

36 主人が結婚式から帰ってくるのを待つ召使いのように気を引き締めろ!彼らは、主人が扉を叩いたらすぐに開けて迎えることができる。

37 そんな準備万端な姿を見られた日には、主人自らが給仕きゅうじしてくれる!!

38 召使いによっては、深夜遅くまで主人の帰りを待たなければならない。だが、遅くまで主人の迎えを心待ちにする姿を見られた日には、そうした甲斐かいがあったと心底思うことになる!!!」

39 「泥棒がいつ入るか分かっていれば、一家はそうさせまいとありとあらゆる対策をとって、待ち構えるだろう。

40 これと同じように用心しておけ!“この人”は思いがけない時にやって来るからだ・・・!!!」

責任感ある召使いと無責任な召使い

41 「師匠・・・この話は俺たちのためかい?それとも誰でもそうしろと?」

岩のペテロが口を挟んだ。

42 「主人の留守中、召使いたちをたばねるリーダーに任命された“召使い”に対して話している。主人に認めてもらうには、どうすればいい? 43 主人が戻った時にやるべきことをやっている姿を見てもらった時だ!

44 主人は間違いなく全財産の管理を任せる!!!

45 だが、すぐには帰らないだろうとたかをくくって、他の召使いたちをこき使い、飲んだり、食べたりのどんちゃん騒ぎをしていたらどうなる。

46 出し抜けに帰って来た主人は、この有様を見る。そしたらまず、その召使いを八つ裂きにして、彼をみくびったすべての召使いが収容された場所へ閉じ込める―― 【召使いを持っている人は、大抵、収容所を完備していた。召使いが問題を起こせば、そこに入れて罰していたのだ】

47 主人の望みを心得ながらも、果たそうとしなかった罰だ。

48 じゃあ主人が望んでいることを知らなかった召使いはどうなる?サボっていたことには変わりない、罰は受ける。だが、主人の望みを知りながらサボった者と比べれば軽い。

だれでも多く与えられた者は多く求められ、多く任された者は多く要求される!!」

世界を真っ二つにしに来た救世主キリスト

49 話を続けるイエス――

「俺はこの世を“裁きの炎”で燃やすために来た。すでに燃えつきていればと、どれだけ思うか。 50 だが、受けなければならない苦難の洗礼だ。成し遂げるまで、俺の胸騒ぎはおさまらない・・・。

51 俺がこの世に平和をもたらすために来ただなんて思ってないだろうな?むしろ俺はこの世を真っ二つにしに来た!!!

52 これより、家族は分裂する。5人家族なら、3対2、2対3という具合に俺に賛成するか反対するかで分かれ、争うことになる!! 53 父親は息子に反対し、息子は父親に反対する。母は娘に、娘は母に、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに反対するようになるのだッ!!!」―― 【聖書:ミカ書7:6より引用】

気象と時代の空気を読む

54 「西の雲が大きくなると、と言い、少しすると雨が降り始める。 55 南から風が吹けば、と言ってその通りになる。

56 知らないふりをしやがって!天候を見て、気象は読めるくせして、この時代に起ころうとしていることは、分からないと言うのか?

自己解決のすすめ

57 なぜ何が正しいか、自己判断できない? 58 誰かがお前たちを訴えていたとしよう。裁判所に向かう道中、その人との和解に尽くせ。でなきゃ、裁判官の前までひきずられ、裁判官は役人に引き渡し、役人がおまえたちを牢にぶち込む。 59 そうなりゃ、定められた保釈金を支払い終わるまで務所むしょ暮らしだ・・・」

シロアム塔下敷き事件はバチ?

1 イエスの耳に悲報が入った――

――神を愛す者と生け贄の血混ざりし――

むなしくも、神を愛すガリラヤ出身の男たちがエルサレム神殿にて、生け贄を捧げているところ、ピラト総督の指示によって殺されたのだった。

2 「おまえたち、彼らがガリラヤ地方いちバチ当たりな人間だったからとでも思っているのか?

3 いーや、誰でも生き方を改めなければ、彼ら同然滅ぼされる・・・!!!

4 シロアムの塔の下敷きになった犠牲者18人はどうだ?エルサレムいちのバチ当たりだったとでも思うか?

5 いや、誰でも生き方を改めなければ、彼ら同然滅ぼされる・・・!!!」

園長と召使いの実らないイチジクの木

6 話を続けるイエス――

「ある園長がぶどう園にイチジクの木を植えた。彼は、実がなっているかどうか、何度も何度も見に行ったが、期待はいつも裏切られた。

7 とうとう園長は頭にきた。

手入れを任せていた召使いに命じた。

『3年だぞ。3年待って実1つならん!土地の無駄遣いだ!』

8 『園長、1年だけ待ってあげて下さい。私が土を替えて、念入りに肥料をやってみます。

9 来年こそはきっと実がなるはずです!それでも駄目なら、どうぞお切り下さい』」

やらぬ善と行動する善

10 ある休日サバスユダヤ集会所シナゴグ――

イエスは教えているところだった。

11 そこに腰の曲がった1人の女の姿があった・・・18年間曲がっていた腰の原因は、彼女に住んでいた悪魔であった!

12 イエスは、女をそばへ呼ぶと、

「あなたを自由にした、もう悩む必要はない!」

13 イエスが彼女に手を置いた瞬間!

シャッキーン!

背中がまっすぐ伸びたではないか!そして、彼女はその勢いと共に神を讃えた♪

14 「オイッ!!!」

会衆に向かって怒鳴り声を上げたのは、ユダヤ集会所シナゴグの会堂長。

休日サバスに治してもらうとは何事ですかッ!!働ける日は週に6日もありますッ!治してもらいたい人は、その間に来なさいッ!!!」

15 「この口だけの偽善者めッ!休日サバスに商売用の家畜かちくを小屋から出して、水を飲ませに行っているのはどこのどいつだ」

ギクッ!

16 「たった今治した彼女は、れっきとしたアブラハムの子孫だというのに、悪魔から18年も束縛されてきたんだぞ・・・休日サバスがどうした!辛い思いをしてきた彼女を救って何が悪いッ!!!」

17 イエスを批判した人たちの面目は丸つぶれ。会衆はイエスの行いに歓声をあげたのであった。

神の王国キングダムの例え―からし種―

18 イエスは続けた――

神の王国キングダムはそうだな・・・何と比べるといいだろうか・・・」

19 「そうだ、神の王国キングダムは庭に蒔かれた小さな小さなからし種のようだな!種からは想像もつかないほど大きな木になる!鳥が巣を作れるほどにだ!

20 他に例をあげるとしたらそうだな・・・

21 女がパンを作るために、小麦粉と混ぜ合わせるイースト菌のようだ!目に見えないほど小さいイースト菌がパン生地きじを数倍にふくらませる!」

狭き門

22 イエスは近隣きんりんの町や村に寄っては教え、着々と神殿のみやこエルサレムに近づいていた――

23 その道中だった。

「師匠!救われる人って何人いるんだ?やっぱりごくわずかなのか?」

24 「天国の門は狭い。入場できるよう、神経を研ぎ澄ましとけ!誰もが入りたがるが、入れずに終わるからだ・・・!!!

25 主人が戸を閉めてからでは遅い。外に立って戸を叩いても開けてはくれない。

と叫ぶと、

と返ってきた。

26 『ご、ご冗談を!!同じかまの飯を食った仲じゃないですか!ほら、うちの町で色々教えてくれたのを覚えてないのですかッ!!』

27 そしてこう返ってくる。

はて?誰だ。過ちを犯したヤツが来る場所じゃあない・・・聞こえたなら、とっとと失せろ!

28 神の王国キングダムでは、アブラハム、イサク、ヤコブから全ての預言者にまで会える。選択次第では、外に取り残され、泣きわめいて歯ぎしりすることになる。

29 東西南北から人が集まり、神の王国キングダムの食卓に着く・・・!

30 この世で腰が低い者は、天では高い身分につく。この世でが高い者は、天で低い身分につく・・・!!!」

死の預言

31 すると、パリサイ一派がイエスのもとに来た――

「命が惜しかったらここから出て行きなさい!ヘロデ総督があなたを狙っていますよ」

32 しかし、イエスは揺るがない。

「帰って、あのずる賢いキツネにこう伝えてくれ。

『今日、明日、人から悪魔を追っ払い、やまいを治す。3日目に俺は、死んで役目を果たす・・・!』

33 その後、俺は行かなければならない。すべての預言者はエルサレムで死ななければならないからだ。

34 ああエルサレム、エルサレムッ!神が送った預言者たちを石打いしうちにして殺すとは。何度エルサレムの民を救おうとしたか。まるで雌鶏めんどりがそのひなを翼の下に抱き集めるように手を差し伸べたが、救わせてくれはしなかった―― 【ヘロデ総督はひなを食べるキツネ。イエスは、ひなを護る雌鶏めんどりだが、ひなであるエルサレムの民は、自分を食うヘロデ総督、つまり、世の中を選んだことを表しているのだ】

35 あなたがたの神殿は、荒れ果てたままに見捨てられる。いいか、『ようこそ!王の名によって来られる方に幸あれ!』と言う時まで、俺に会うことはない・・・」―― 【聖書:詩篇118:26より引用】

正しい休日サバスの過ごし方・・・

1 休日サバスのことだった――

イエスは、あるパリサイ派のおさと食事をするため、家へとお邪魔した。

何が起こるのかと言わんばかりに、イエスに集中する視線。

2 イエスの前には手足がひどくれるやまいわずらった男が座っていたため、治すかどうか、様子を見ていたのだ。

3 イエスは、回りにいるパリサイ一派と掟の学者たちを見た――

「ところで、休日サバスに人を治すことは罪ですか?」―― 【休日サバスに働くことは禁じられていた。人の解釈によっていつしか命に別状ない病気やケガの手当も仕事だとするのが常識となっていた】

4 誰も答えないので、イエスはさっさと患者を治して帰らせてあげた――

5 「もし、休日サバスにあなたの息子や家畜が井戸に落ちたら、見殺しにする人はいるか?」

6 ごもっともなイエスの言葉に、誰1人として反論できる者はいなかった。一流のエリートたちが集まっていたのにも関わらずだ。

下座か上座。背伸びか低姿勢。

7 招待客の何人かが、我先に上座へつこうとしているのを見て、イエスは仲間に忠告した。

8 「結婚式に招待されたら、上座かみざは避けるように。おまえよりも大切な人を招待していたら幹事はどうする?

9 『こちらの方にその席をゆずってください』と言われ、赤っ恥をかいて末席まっせきに移動する。

10 招待されたら、下座しもざに座れ。そうすれば、幹事が来て、

『ちょっと、兄弟!遠慮しないでVIP席に来てくれ!』と勧められる。そうして居並ぶ客の前でVIP席につけるなら、名誉きわまりない。

11 偉そうにすれば、粗末そまつにされ、腰を低くするなら大切にされる」

見返りを求めなければ報われる

12 次は招いてくれたパリサイ一派にも忠告した。

「パーティーを開く時、友人や兄弟、親類やお金持ちの知人だけ招くことがないように。彼らは別の機会にあなたを招待してお返しする。

13 むしろ、貧乏人や体や心に障害を持つ人を招くんだ! 14 これがどれだけ幸せなことか!なんせ彼らにはそれに見合ったお返しができない!おかげで天に行く時、神が代わって褒美をくれるんだからなッ!!!」

パーティーの招待状

15 イエスと同席していた1人の男がこれを聞いてこぼした。

神の王国キングダムで食事ができる以上の幸せはないですな!!」

16 「ある人が盛大なパーティーを企画し、大勢の人を招待したとする。

17 準備も整い、あとはドアオープンを知らせるのみ。さっそく主催者は、招待客の元へ使いを送りだした。

『ささっ、お待ちかねのパーティーが始まりましたよ!どうぞ、お越し下さい!』

18 ところがどっこい、招待客は誰1人来れないと言うじゃあないか!理由を聞いてみると、1人目は、

『土地を購入したばかりで、下見しなきゃならんので、辞退で!』

19 2人目は、

『5頭の牛を買ったばかりで、牧場に出て試してみなきゃならんのですよ』

20 3人目、

21 主催者にことの次第を伝えると、かんかんに怒り、使いに命じた。

『よし、それなら、あらゆる地域や通りに出て行き、貧乏人や体が麻痺まひした人、嫌われ者を連れて来るんだ!さあ急げ!』

22 しばらくして戻ってきた使いは報告する。

『言う通りにしましたが、まだまだ空席が目立ちます。どうしましょう?』

23 そこで主催者はこう言う。

『それなら、大通りから田舎道までのありとあらゆる通りから人を招待するんだ。分かったか、この家を満員にするんだ! 24 初めに招待してやった客にご馳走など残しておくもんか!!』」

イエスにつく条件

25 イエスの旅は続いた。その後ろには、イエスについていく長蛇の列。すると、イエスが足を止めて振り返った。

26 「俺の元に来たが、家族離れできない者はいるかッ?!父、母、妻、子、兄弟、姉妹、また、おのれを嫌っているとさえ思われるほど、この俺を愛さなければ・・・」

――「俺についてくる資格はないッ!!!」

27 「いいか、俺の後につけば差し出される“十字架”を、進んで背負わなければ、俺の仲間にはなれねぇッ!!!」―― 【十字架は、当時の人にとって不名誉なことであり、口にすることも汚らわしいことであった。そのため十字架は恥、苦しみ、死などを表している】

28 「建物を建てる場合、仕事に手をつけるのは必要な経費を見積もってからだ。資金の見通しが立たないうちに建て始める人がいるか? 29 建設途中に資金切れになったらどうする?そりゃあいい笑いもんだ!

30 『あいつはできもしねぇことを始めたんだってよ!間抜けだなあ』

31 また、1万の兵を持つ王が、2万の敵軍との交戦を考える時は、必ず参謀会議を開き、はたして勝ち目があるかどうか、あらゆる角度から検討する。

32 どうしても勝ち目がないとわかれば、敵軍がまだ遠くにいるうちに、使者を送り、何としても平和条約を結ぶ。

33 だれでもまず座って、自分の持ち物を数えあげ、それらすべてを、俺のためになら捨てられると思えないなら、俺の仲間になっても、なりきれない・・・!!!」

塩の影響力

34 「いい塩も、塩気をなくせば台無しだ。 35 そんな事になった日には、肥料の足しにもならねぇゴミだ。耳がついてるなら、よく聞けッ!!」

迷子の羊と無くした銀貨

1 イエスの話を聞きにくる人たちの中には、税金取りや札つきの悪党たちが大勢いた。そう、身分や家柄いえがら、資産に関わらず、まさにありとあらゆる人がイエスに惹きつけられた。

2 それに対し、イチャモンをつけている者たちがいた。

「見ーてください、“あの人”!悪党と同じかまめしを食ってますぞ・・・!!!」

パリサイ一派や掟の学者たちである―― 【彼らは、宗教的な男が悪い評判を持っている人たちと交流することに怒っていた】

3 そこでイエスは、誤解を正すために例え話をすることにした。

4 「羊を100匹飼っていたとする・・・そのうちの1匹が迷っていなくなったらどうする?99匹を放って、迷子の1匹を見つけるまで探すだろ? 5 見つかったら喜んでその羊を肩にかついで 6 帰り、友人や近所のところに行ってこう言うはずだ。

『聞ーてくれ!迷子になった羊が見つかったんだ!!!』

7 同じように、道をそれた人間1人が道を正した時、正常な人間99人足しても足りない喜びで天は溢れる!!!

8 また、女の人が10枚の銀貨を持っていた。ところが、どうしたことか1枚なくしてしまった。彼女はあかりをつけ、家の中をすみからすみまで掃除し、その1枚を見つけるまで、必死で探し回る。

9 見つけたあかつきには友人や近所の人に、

『聞いてッ!!なくした銀貨を見つけたの!!!』

と言うだろ?

10 同じく、道をそれた人間1人が道を正すなら、天使たちは喜びのあまり、天の天まで舞う!!!」

不良息子の豪遊生活

11 「2人の息子を持つ父親がいた。 12 ある日、次男が父親にこんな事を頼んだ。

『親父ぃ!遺産の分け前なんだが・・・亡くなってからじゃあれだし、今もらえないか?ほら、どうせいつかはくれるわけだし、問題はないだろう!』

それで父親は、遺産となるはずだった財産を2人の息子に分けてやった。

13 もらう者をもらうと、何日もたたないうちに、次男は荷物をまとめ、そそくさと遠い国に旅立った。そこで次男は毎日豪遊に明け暮れ、 14 しばらくしてから全財産も底をついてしまった。すると、その国に大飢饉だいききんが起こり、次男は、お金どころか食べるものさえない深刻な状況におちいった。

15 仕方なく、その地方にある農夫に頼み込み、ブタの飼育の仕事を手に入れ、ブタ小屋生活が始まった。かつての豪遊生活はどこへやら。 16 空腹のあまり、泥まみれになったブタの餌でさえ食べたいほどだが・・・誰も助けてくれやしない。

17 ここまで来て、次男は自分のあやまちに気付き、こう思った。

『あーあ、親父の召使いでさえ、今頃腹いっぱい食ってるってのに俺ときたら、飢え死にしかけてる。情けねぇ。』

18 そうだ、親父のもとへ帰ってこう言おう。『俺は神様にも、父さんにも、取り返しのつかないことをしてしまった。 19 もう息子と呼ばれる資格なんてないことぐらい分かっている。だからお願いします。俺を雇ってください』

20 決心がつくと、父親のもとへ帰った」

息子を待つ親心

「ところが、家までは、まだ遠くはなれていたというのに、父親は息子の姿を、いち早く見つけた。そして、ボロボロに弱った姿を見て、父親の心はしめつけられるような思いになった。じっとしてはいられず、走り寄ってぎゅっと抱きしめ、ほほに口づけした。

21 『父さん、俺は神様にも、父さんにも取り返しのつかないことをした・・・もう息子と呼ばれる資格なんてない・・・』

22 ところが父親は、使用人たちに言った。

『さあさあ、何をぼやぼやしている!急いでせがれに一張羅いっちょうらを着せてやれ!我が一家の指輪と丈夫なくつもだ!

23 そうだ!それから最高級の黒毛和牛をありったけふるまってみんなでうたげだ!!

24 死んだものだとあきらめていた息子が生き返り、行方知れずの息子が見つかったのだ!!!』

こうして、うたげは始まった!」

兄の不満

25 「ところで、兄のほうは、その日も真面目に畑で働いていた。家に戻ると、何やら楽しげな踊りの音楽が聞こえてくる。

26 いったい何事かと、使用人に尋ねると、

27 『弟さんが帰られたのですよ!旦那様は、たいへんお喜びで、最高級の牛肉を料理し、ご無事を祝う宴会を開いておられます!』と言うではないか!

28 怒った兄は、宴の中に入るのさえしゃくにさわった。そこで父親が出てきて、一緒に祝おうじゃないかとなだめた。

29 『お父様!僕はお父様のためならと奴隷のように働いてきました!言いつけだって、ただの一度もそむいたことがありません!それなのに、友達とパーティーを開けと言って、子ヤギ一匹ふるまってくれたことがありますかッ?!

30 それなのに、お父様の財産を風俗ふうぞくに使い果たした弟のやつには、最高級の牛肉をふるまって、お祭り騒ぎするなんて、あんまりじゃないですか!!!』

31 すると、父親は言った。

『むすこ、おまえはいつも俺のそばにいたし、俺のものはすべておまえのものだったではないか。

32 あれはおまえの弟だぞ?死んだと思った弟が無事で、行方知れずの弟が見つかったんだ、記念すべき日ではないか!!!』」

本当のとみはどこにたくわえる?

1 イエスは仲間を集めた――

「ある金持ちが計理士を雇った。ところが、この会計士は数字をごまかし、雇い主の財産を浪費しているという、うわさを聞いた。 2 さっそく金持ちは会計士を呼びだした。

『帳簿をごまかしたそうだな。報告書を整理しておけ。終わり次第、君はクビだ』

3 さぁ大変!会計士は一生懸命考えた。

『どうする?力仕事できるほどの体力もないし、物乞いは俺のプライドが許さない・・・

4 待てよ・・・どうせクビになるんだ、今の権限を使って人に恩を売りゃいいんだ!職を失っても情けをかけて、家に迎え入れてくれるに違いない!』

5 思い立ったら即行動!雇い主から借金をしている人たちを片っ端から集めた。

まず1人目。

6 『オリーブオイル100たる分です』―― 【10枚の銀貨相当。およそ12万円】

『新しい契約書です。100樽を50樽に書き直し、はんこを。さぁ、はやく!』

7 同じく、2人目にも。

3

『新しい契約書です。30トンを25トンに書き直し、はんこを。さぁ、はやく!』

8 この抜け目のなさには、さすがの金持ちも舌を巻き、うまいやり方だ、とほめないわけにはいかなかった。確かに、この世の人のほうが、神を信じる者より抜け目がない。

9 ようはこれだ・・・

この世で手に入れたものは、友を作るために使うんだ!この世を去る時、持っていたものは失うが、天の永遠の住まいへと迎えてくれる。

10 小さなことに忠実な人は、大きなことにも忠実だ。小さなことに不忠実な人は、大きな責任を与えられても、忠実に果たしはしない。

11 この世のとみですら任せられない者に、どうして、天にある真の富を任せられる。 12 他人の富をないがしろにするなら、自分の富さえ任せてもらえることはない!

13 だれも2人のかしらに忠誠は尽くせない。一方を憎み、他方を愛す。一方に忠誠を尽くし、他方に興味を示さない。

そう、神とマモン両者に従うのは不可能だ・・・!!!」―― 【マモンは、悪魔のこと。悪魔は富を悪用して人を支配する。イエスはこの世の人は必ず神かマモンに忠誠を尽して生きていることを表しているのだ】

変わらぬ神の掟

14 「こやつは何を言っておるんだ!わははは!」

この話を聞いてイエスをバカにして笑ったのはパリサイ一派。パリサイ一派は裕福で、お金に目がなかったからだ。

15 「人前で良い子ぶったって神にはお見通しだ。人が溺れる欲望に神は吐き気がしている。

16 人は掟と預言の書を指針としてきたが、洗礼者バプティストヨハネが現れてから、神の王国キングダムが来たと最高の知らせゴスペルは広められ、誰もがこの真実に抵抗しようとしている―― 【掟と預言の書とは、旧約聖書のことだ】

17 だが、たとえ天地が滅びようと、神の書物に記されたおきては、何文字たりとも変わりはしない!

18 つまり、妻と離婚して他の女と結婚するなら、姦通罪かんつうざいであり、離婚した女と結婚する者もまた、姦通罪かんつうざいだ!!!」―― 【多くのユダヤ指導者が簡単な理由で妻と離婚していた。当時、離婚された女性は、キズ者となり、生きていくためには、体を売る以外に道がないほどの厳しい時代だった。つまり、イエスは、離婚したせいで追い込まれた女性が罪を犯せば、そうさせたユダヤ指導者のせいであり、そこから負の連鎖で生まれる罪の代償は、すべて発生源に請求され、掟を厳しく守っている聖人きどりとは裏腹に、過ちだらけだという事をイエスは伝えたのだ】

金持ちの男と貧乏人ラザロ

19 イエスの話は続いた――

「全身高級服に身を包み、贅沢三昧ぜいたくざんまいの暮らしをしていたお金持ちの話しだ。

20 彼の高級住宅の門前には、全身皮膚病にかかった物乞いのラザロがいた。

お金持ちとは反対に、それはそれは貧しい男。彼の体はできものだらけ・・・誰もが彼を避ける・・・そんな彼は、金持ちの高級住宅の門前で物乞いした。 21 かわいそうに、野良犬におできをなめられながら、あわい期待を抱いて待ったが、

22 結局このお金持ちは、情けをかけず、ラザロは帰らぬ人となった。すると、すぐさまラザロを迎えにきた天使が、信仰の父アブラハムのところへ連れて行った。少ししてお金持ちも寿命が尽き、埋葬された。

23 だが、彼は死の場所ハデスに落ち、苦しみあえぎながら、ふと目を上げると、はるかかなたに、アブラハムと一緒にいるラザロの姿が・・・

24 お金持ち男はアブラハムに向かって叫んだ。

『信仰の父!アブラハムざま゙ぁ〰〰!!!どうか助げでぐれぇ!!!ラザロをよこし、水に浸した指先でこの舌を冷やしてぐだざい゙!!!炎が熱い、苦じい!!!』

25 アブラハムは言った。『ああ我が同胞の子よ。思い出してもみろ・・・おまえは欲しいものを何でも持っていたのに無一文のラザロに何をした?結果、おまえはそこでもだえ苦しみ、ラザロは楽園に行きついた。

26 それに、そちらへ行こうにも、狭間には大きな溝があって、とても行き来はできない』

27 対してお金持ち男は答えた。『で、ではせめて、アブラハム様!ラザロを私の父の家へお送りください!!!

28 まだ5人の兄弟がいます!父なら彼らを説得できます!こんな目には会わせたくない・・・どうぞ、この恐ろしい場所があることを伝えてやってくだざい゙!!!』

29

とアブラハムは答えた。

30 『それは違う、アブラハム様!もし死からよみがえった人が彼らの前に現れれば、きっと、きっと彼らも生き方を改めるはずです!!!』

31 最後にアブラハムはこう言った。『それは違う、モーセや預言者たちの言葉を聞かない者は、死からよみがえった人間の言葉だって聞かないよ』」

誘惑するより死。7回されても仲直り

1 イエスは仲間に対して話した――

「人間、誘惑はつきもんだが、その誘惑の元になる人には恐ろしい将来が待っている。

2 流されやすい人の道を踏み外させた人はかわいそうだ。コンクリート詰めにされて海に投げ込まれた方がましだ。

3 気をつけろよ!神の家族で道を踏み外した兄弟姉妹がいれば忠告しろ。反省し、心を改めるならそれでよし!赦して、仲直りしろ。 4 1日に7回いやなことをされても、心から謝ってくるなら何度でも仲直りしろ!!」

ゴマ粒の確信が大木たいぼくを根こそぎにする

5 とある日――

「俺たちの信仰を強くしてくれ!!!」

熱い眼差しでイエスに詰めよる十二使徒。

6 「おまえたちがからし種ほどでも信じるなら、あの大木たいぼくを根こそぎ海の中へ放り込むぐらい朝飯前だ・・・!!!」

すべき事は、礼には及ばない

7 「農作業か羊の世話をするかして1日中働いた家来けらいが帰ってきたら、主君しゅくんはなんと声をかける?

『さあ疲れただろ、早く食卓しょくたくにつけ』と言うか?

8 そんなわけないな!まず主君しゅくんの食事のしたくをし、給仕をすませ、主君しゅくんの食事が済んだらようやく、家来は食事につく。

9 命じられたことをしたからといって特別感謝されるわけでもない。当然のことだからだ。

10 同じ心構えだ。すべきことが済んだらこう応えろ。

『礼には及ばない。家来けらいとしてすべき事をしたまでです』」

10人の皮膚病患者と1人の救い

11 イエスはガリラヤ地方を去り、サマリヤ地方との境界線に沿って90㎞南方にある神殿のみやこエルサレムを目指して旅を続けた――

12 ある村に入ると、10人の男たちが皮膚病を持っているがゆえにイエスと距離をとったまま、

13 叫んできた。

「イエスさま〰〰!!!私たちをお救いくださ〰〰い!!!」

14 「ああ、祭司に見てもらえッ!」―― 【掟:皮膚病が治ったら祭司から完治診断書をもらうのが決まりだったのだ】

10人ともイエスの言うとおり祭司のもとへ出かけて行った。

その途中、ことは起きた・・・

「!」「!」「!」「!」「!」「!」「!」「!」「!」「!」

い、いつのまにか全員治っているではないか!

15 そのうちの1人は、治ったことに気付き、大声で神をほめたたえながら帰ってきた。

16 男はイエスの足元に飛びつきひたいをこすりつけながら、死ぬほど感謝した。ちなみにこの男、ユダヤ人から差別されているサマリヤ人であった。

17 「ん?10人治したはずだが、他の9人はどうした。 18 ・・・神を讃えに戻ったのが同族でもない、この男のみとはな・・・」

19 直後、イエスは笑みを浮かべた。

「よく信じた!おかげであなたは治された!さあ、立って行くんだッ!!」

神の王国キングダムはいつ来る?

20 ある日イエスに尋ねる者がいた――

神の王国キングダムは、何年何月何日何曜日の何時何分何秒に来るのでしょうか?」

パリサイ一派だ。

神の王国キングダムは目で捉えるものじゃあない。 21 なんて言って探すものじゃあない。神の王国キングダムの場所か?そりゃあ、あなたがたの間にある・・・!!!」

22 そのまま、イエスは仲間と話を続けた・・・

「1日でいいから“この人”と過ごしたいと願っても、会えない日が訪れる。

23 その時になったらだったりといった噂が流れるが、動じるな。探すな。

24 辛抱しんぼうするんだ。安心しろ、“この人”は、まるで空の端から端までをかけめぐる稲妻いなずまのように神々しい光を放ちながら戻る。そう、誰の目にも一目瞭然!!!

25 だがその前に、“この人”は多くの苦痛を味わわなければならない。この時代の人間が“この人”を突っぱねるからだ。

26 “この人”の再来時、世はまさにノアの時代のごとし! 27 ノアが箱舟に乗り込んだ日まで、人は飲んだり、食べたり、結婚したりの、いつもと変わらない生活をしていたが、洪水にのまれ、1人残らず滅ぼされた!!

28 ロトの時代のごとし!神がソドムのみやこを滅ぼす日まで、いつものように食べて、飲んで、売って、買って、植えて、建てての生活を送っていたが、 29 ロトがソドムを抜け出した日に、火と硫黄いおう流星りゅうせいのごとく降り注ぎ、1人残らず滅ぼされた!!!

30 “この人”の再来も同じく、すべては“いつものとおり”だ。

31 その日、屋上にいれば、荷物を取りに戻る暇はない。外出していれば、帰る暇もない。

32 ロトの妻が振り返った時に何が起きた!―― 【ロトの妻は、振り返ったがために死んでしまったのだ。聖書:創世記19:15-17;26より引用】

33 この世の一生にしがみつく者はそれを“失い”、生涯を喜んで差し出す者はそれを“手にする”。

この世のために生きる者は、命を無駄にし、

神のために生きる者は、命をものにする。

34 その夜、2人が寝ている部屋から、1人は天に上げられ、1人はとり残される。

35 家事をする2人の婦人のうち、1人は天に上げられ、1人はとり残される」 36 2人の男が同じ畑にいると、片方は天にあがり、片方は残される。―― 【いくつかのギリシャ写本には36節がある】

37 「師匠・・・どこでそんなことが起こるんだ?」

「死体を探したけりゃ、はげたかが飛び回る場所を探せ」―― 【誰の目にも明らかになることを意味している】

悪徳裁判官と未亡人みぼうじんの訴え

1 イエスは、希望を失わずにいつでも祈ることを教えた――

2 「これは、神を恐れず、人を人とも思わない裁判官と、

3 夫に先立たれた未亡人みぼうじんの話しだ。

未亡人みぼうじんは数えきれないほど、裁判官のところへ押しかけては、

『私は一方的な差別被害から守られる権利があります!』

と主張した。

4 しばらくの間、全く相手にしなかった裁判官だったが、あまりのしつこさに耐えきれず、こう考えた。

『神さまや人さまがどー思おうと、どーでもいいが、 5 あーの女ときたら、うるさくてかなわん!!!彼女の権利を守らなきゃ、死ぬまで追って来るだろう。ほっといてもらうためだ、願いを叶えてやろう』」

6 王・イエスはこう続けた――

「いいか、悪徳な裁判官でさえ、人の訴えを聞くのなら、 7 神が昼も夜も叫び求める神の民の訴えを聞かないわけがない。それも、正しい時に正しくさばいてくれる!!

8 神はすばやく対応してくれはするが、問題は、“この人”が戻った時まで信じ続ける人がどれだけ残っているかだ」

パリサイ派と税金取りの祈り

9 自分の功績を鼻にかけ、他人を見下す人たちを見て、イエスは例え話を使って教えた――

10 「ある日、パリサイ派と悪徳税金取りが神殿に祈りに来た。

11 パリサイ派は税金取りと距離をとり、胸をはり、天を見上げて祈った。

『ああ神様、感謝いたします。私が他の連中とは違うからでございます。盗んだことも、騙したことも、性的な罪に触れたこともございません。ちょうどあそこの税金取りとは段違いであることを感謝いたします。

12 私は週2の断食だんじきを欠かさず、全収入の1/10を捧げております』

13 一方、税金取りも1人・・・普通なら天を見上げて祈るところ、彼はうつむいているではないか・・・彼は反省のあまり胸を叩きながら祈った。

『神様ごめんなさい!!!こんな俺だが、情けをかけたってぐだざい゙!!!』」

14 「断言する。この日、神に認められたのは、パリサイ派ではなく、“税金取りだ”・・・!!!」

「思い上がる者は、見下され、腰が低い者は、見上げられる」

子どもの祝福

15 ある時、どこからともなく幼い子どもを連れた人たちが集まって来た――

イエス一味の数人がそれに気付くと、

「しっし、だめだめぇー!先生は忙しいのッ!」

親御おやごさんたちは、イエスから子どもに触れてもらい、祝福を祈ってもらいたかった。

――「!」

16 「子どもたちを通せッ!!!誰も止めるべきじゃあない!いいか、神の王国キングダムは、まさにこの子たちのためにある!

17 いいか、子どもが素直に受け止めるように、神の支配を受け入れなければ、神の王国キングダムに入国できやしない・・・!」

裕福な男が求める永遠の命エターナルライフ

18 「善良なる教師よ、、永遠の命エターナルライフを得るためには、どうすればよいのでしょうか?」

イエスに尋ねたのは、ユダヤ指導者。

19 「なぜ俺を善良呼ばわりする?神のみが善良だ―― 【イエスも善良であったが、ユダヤ指導者がそれを見越してではなく、お世辞だったのでイエスはこう言ったのだ】

20 それに、結婚した人以外とセックスをしない、殺さない、盗まない、陰口をたたかない、だまさない、父と母をうやまうという神の掟ぐらい知っているだろう?」―― 【聖書:出エジプト記20:12-16、申命記5:16-20より引用。イエスは確かに唯一きよい人ではあったが、この人がそれを見通してではなく、イエス以外の教師をも、お世辞でこう呼んでいたからこその回答であろう】

21 「子どものころから、ぜんっぶ!守り続けておりますッ!!」

ユダヤ指導者は、自信ありげだ。

22 「惜しいが1つやり残している・・・。自分の全財産を売り払い、貧しい人たちに与えてこい!そうすれば、天に富を築けるぞ!!終わったら俺についてこい!!」

23 「え・・・・・・!」

痛いところをつかれた・・・このユダヤ指導者は、相当な金持ちであり、それだけは手放したくなかったのだ。

24 がっかりしている姿を見て、イエスが口を開いた。

「裕福な人間が神の王国キングダムに入るのは、至難のわざだ・・・

25 “富”に信頼をよせる者が神の王国キングダムに入るより、ラクダをはりの穴に通す方が楽だ」

人生を捧げた報酬

26 「そ、それなら一体誰が救われるって言うんだよ・・・!」

27 「人間にできないことが神にはできる!」

イエスは、仲間たちの疑問を断ち切った。

28 「見てのとおり、俺たちゃ全てを置いてあんたについてきたッ!!」

29 「約束する!!!誰でも神の王国キングダムのために自宅、嫁、兄弟、親、子どもを差し置いたなら、 30 この世で何倍ものむくいを受け、やがて来る世では、永遠の命エターナルライフ贈呈ぞうていされる!!!」

死に場所へ

31 十二使徒を近くに寄せた――

「よく聞け。これより俺たちは、エルサレムに行く。神が“この人”について記せと預言者に命じたすべての預言が“実現する”・・・!!!

32 “この人”は外国人たちの手に落ち、侮辱ぶじょくされ、つばを吐きかけられる・・・

33 それからムチで打たれ・・・殺される!だが、3日目に“生き返る”ッ!!!」

34 (一体どういうことだ・・・)

使徒は理解しようにもできなかった。まだ、明かされる時ではなかったからである。

盲目のバルテマイ

35 イエスと一味がエリコ町付近に着いた時の話―― 【ヨルダン川の谷間に在る。神殿のみやこエルサレムまでは徒歩で約8時間ほど。東に約24㎞ほどの場所に位置する】

道端には、座りこんだ盲人が通りがかりの人に物乞いものごいをしていた。

36 (ん?なんの騒ぎだ?)

あわただしく大勢の人が向かってくる音がする・・・それに、あたりの様子もおかしい。

「そこの人や!こりゃあいってぇ何の騒ぎで?」

盲目の物乞いは周りにいた野次馬やじうまに尋ねた。

37 「ナザレ村のイエスがもうすぐでここを通るんだよ!!!」

38 (にゃ、なんと!!!)

「イエスさまぁー!ダビデの子よー!!どうぞお助けを!!!」

盲人は興奮して叫んだ!

39 「おい、静かにせんか!」

「やかましいぞ!」

列を先導していた人が黙らせようとした。

「んダ〰ビデの子や〰〰!!ど〰か私をお助けを〰〰!!!」

彼は黙るどころか、負けずと前より大きな声で叫ぶではないか!

40 ピタッ・・・イエスは、その場に立ち止まった。

「あの方を連れて来てくれ」

「おう!」――

盲人が近くまで連れてこられた。

41 「俺に何をしてほしい?」

「イエス様、俺はもう一度・・・もう一度、見えるようになりだい゙ッ!!」

42 「もう見えるぞ!よく信じた、そのおかげで治ったんだ!」

43 ――ハッ!

盲人は目をパチクリさせた。

「見ーえーるぅー!!!」

彼は神に感謝しながらイエスについていった。また、それを見たすべての人が神を讃えたのであった。

取税頭しゅぜいがしらのザアカイ

1 イエスがまだエリコ町を通過している最中――

2 この町に税金取りのかしらザアカイがいた。

3 取税頭しゅぜいがしらのザアカイは、イエスを一目見ようと駆けつけたが、噂の絶えない有名人、同じ考えを持つのは、彼だけではない。そう、イエスの周りには、山のような野次馬が・・・

背伸びして見ようにも、背の低いザアカイには不可能。

4 (そうだ!)

ひらめいた取税頭しゅぜいがしらのザアカイはイエスの通り道にあるイチジクの木に先回りすると、その木によじ登った。

5 やがて、そこへ差しかかったイエスは、見上げた。

「ザアカイ!急いで下りて来い!今夜はあなたの家に泊まることにした!!」

6 ザアカイは急いで下りた!

(こりゃえらい客を招くことになったぞ!)

イエスと一味を家まで案内し、大喜びで迎えた。

7 それを見た群衆はぶつぶつ文句を言った。

「悪党とつるむとは、なんてやつだ。イエスは、よりによってあの悪党・ザアカイの家に泊まったぞ・・・!!!」

8 一方ザアカイはと言うと――

「先生、聞いてください!わしは、半分の財産を貧しい人に分け、だましとった人にゃあ、その4倍の額を返したります!!!」

9 「今日この一家は救われたッ!!!税金取りだろうが、アブラハムの子イスラエルに変わりはない!

10 “この人”は、人生に迷った人を探しだし、救うために来たッ!!!」

3人の召使いの話

11 イエスがいよいよ神殿のみやこエルサレムに、まさに目と鼻の先という距離まで近づくのを見て、ローマ帝国時代が終わり、神の王国キングダム時代が来るのだと勘ぐった群衆はソワソワしていた。それをさっしていたイエスはこんな例え話をした――

12 「ある所に、身分の高い男がいた。彼は国民を治めるために、遠い、遠い国へと旅に出かけた。そこで王に任命されて帰ってくるためだ。

13 出発前に10人の家来を呼びだし、めいめいに3ヵ月分の給与に値する、銀貨100枚が入った袋をわたした。

留守中に事業を始めるように命じたのだ。

14 さて、この国民はというと、

と声明を明らかにし、反乱を起こした。国民はこの男が嫌いだったのだ。

15 反対の声明をよそに、王位を受けて帰ると、さっそくこう言った。

『家来を呼んでくれ。私の金でどれだけ稼いだかを知りたい。』

資金を授けた家来たちを呼び集め、経過報告をさせた。

16 最初の家来は、

1

17 『でかした!少しばかりの責任を忠実に果たしたおまえなら、信頼できる!ほうびに、10の都市を治めてもらおう』

18 次の家来も進み出た。

19 『よし!おまえには5つの都市を治めてもらおう!』

20 そして、別の家来が進み出た。

『陛下、これがあずかっていたお金です。大切に保管しておきました。

21 血も涙もないあなたが私は恐かったんです。自分のものでないものを請求し、他人の作った穀物こくもつ横領おうりょうするのですから』

22 それを聞いた王は――

『へりくつをたれるなこのたわけ者!!!私が厳しく、他人の稼ぎや食料を横取りする人だと言ったか?! 23 仮にそうだとしたら、少なくとも銀行に預けて利息をえただろう!!』

24 王は、側近そっきんに言った。

『こいつからお金を取り上げ、10倍にした者にやれ!』

25 すると、側近そっきんは、

恐縮きょうしゅくですが、彼はすでに10袋分のお金を持っていますよ?』

26 『成果をあげる者は、さらに与えられるが、持てあます者は、持っているものさえ取り上げられる

27 それから、わたしの王位に刃向かった者たちだが、わたしの目の前で死刑にしてやるがいい』」

王の帰還

28 話も終え、神殿のみやこエルサレムへと足を進めた。

29 一行がオリーブ山ふもとのベテパゲとベタニヤ村に近づいた時、イエスは、一味から2人を使いとして先に送り出した。

30 「これからあの町へ行ってくれ。そこには、まだ誰も乗ったことのない若いロバがいる。そのつなをほどき、俺のところに連れてくるんだ。 31 と聞いてくる人がいれば、『かしらが入用で』と答えるといい」

32 オリーブ山のふもとにある町――

おっ!

2人が町に入ると、イエスの言った通り、ロバを見つけた。

33 よしよしとつなをほどいていると・・・

「あんちゃんたち、なんでうちのロバのなわをほどいてんだ?」

そう声をかけるのは持ち主だ!

34 「いや、おかしらが入用で!」

持ち主は、不思議なことに納得している様子。

35 そして2人は問題なくロバをイエスのもとに連れて戻った。仲間たちが次々に上着を脱ぎ初めると、ロバの背にバサバサッと掛けた。イエスをその上に乗っけると、

36 神殿のみやこエルサレムへ続く道を進み始めた。その姿は、なんとりりしいことか。イエスの進む道に、次々と上着をひいてゆく仲間たち。

37 エルサレムに近づき、オリーブ山のふもとに差し掛かった時だった。イエスが見せた数々のとんでもなく素晴らしい行いを思い、仲間の大群は大声で神を讃えて歌った♪

38 「そら、そら、そら、そら、

よ~お~こ~そ!

選ばれし~♫

我がおうに~♪

神より、さち~♫

天産まれ~の安心を!

栄光よ!

神のもの!

ばんざい、ばんざい、ばんざーい!!!」―― 【聖書:詩篇118:26より引用】

39 「先生!お弟子さんが先生についてあんなことを言っておりますよッ!!!止めないのですか?!」

こう言うのは、パリサイ一派の者たち。

40 「彼らが歌わなければ、そこら中の石ころが合唱がっしょうする!!!」

流される涙の理由わけ・・・

41 神殿のみやこエルサレムが一望できる場所にたどり着いた。

ぽとっ、ぽとっ

「!」

目下に広がる街をながめるイエスのひとみから涙がこぼれていた――

42 「おまえに平和をもたらすのが何か・・・それを今日、知ってもらえたらと、どれほど思うか・・・だがまだ・・・その“答え”を知るには早い。

43 おまえの周りを敵が包囲ほういし、逃げ場を失うまで、そう遠くない。 44 奴らはおまえとその民を滅ぼし、チリ1つ残らない。それもこれも、おまえが神の救いの手を拒んだからだ・・・」

泥棒の巣と化した神殿

45 神殿のみやこエルサレム到着――

さっそくイエスは神殿の敷地内しきちないに入った。

「!!!」

そこで商売する人たちを見て、イエスの目が変わった。

コラ゙〰〰!!!

イエスは、商売人を勢いよく追い出した!

46殿と聖書にあるってーのに、泥棒の巣にするとはどういうことだッ!!!」―― 【聖書:イザヤ書56:7、エレミヤ書7:11より引用】

47 この事があってからというもの、イエスは毎日神殿で神について教えるようになった。

あ、あやつめ・・・

祭司や掟の学者、その他の指導者たちは、イエスを殺したくて仕方がなかった。神殿の商売で稼いでいたのは、彼らだったからだ。

48 しかし、方法が浮かばない。イエスはいつも人に囲まれていたからだ。イエスが口を開けば、誰もが耳を傾け、その場を離れられないほどきつけられた。

神?それとも人の権威?

1 ある日、いつものように神殿で、群衆を前に最高の知らせゴスペルを伝えているイエス。

とそこへ、血相を変えた祭司や掟の学者、長老などの大層なメンツがそろいもそろって、イエスを叱りにきた。

2 「答えなさい、あなたにどんな権限があると言うのですか。誰の権限でこれらのことをしているのかと聞いているのですよッ!!」

3 「私にも聞かせてくれ・・・ 4 洗礼者バプティストヨハネが人に洗礼バプテスマを授けていたが、彼の権限は神から来たのか、それとも人から来たのですか?」

5 祭司、掟の学者、長老たちはイエスの質問についてヒソヒソ相談し始めた――

「もし『ヨハネの洗礼バプテスマは神から来たもの』だなんて答えてみなさい、やつはきっとなんてほざくに違いありません・・・。

6 くっ、しかし、ヨハネの洗礼バプテスマが人によるものだなんて、言ってもみなさい・・・群衆に死ぬまで石を投げつけられますよ・・・彼らはヨハネが預言者だと信じているのですからね・・・・・・」

7 あれこれ考えた結果――

「ゴホッ、ゴホン。えぇ、我々は存じておりませぬ」

8 「そうですか!では、私も答えるまい!」

遣わされた一人息子

9 そんな彼らを前に、お構いなしにイエスは例え話を始めた――

「ある人がぶどう園を造り、ビジネスを始めると、何人かの農夫をやとい、そのぶどう園を任せて長い間出かけた。

10 収穫の時期が来ると、ぶどう園の園長は、自分の分け前を取らせにやとわれ農夫のところへと使いをだした。

やとわれ農夫は、到着した使いに分け前をわたし、うやまうべきところだが、その使いを袋叩きにし、手ぶらで送り返した。

11 そこで園長は、別の使いを送り出したが、結果は変わらず、農夫たちは使いをボコボコにして、侮辱ぶじょくした。

12 それでもこらえた園長は、3人目の使いを送ったが、農夫たちは、その使いを半殺しにし、外に放り捨てた。

13 この状況に園長はこう言った。

『どうしよう・・・そうだ!最愛の息子を送ればきっとうやまってくれるに違いない!』

14 ところがっ!雇われ農夫たちが園長の息子を見るなり、とんでもないことを言いだした。

『こいつぁ、驚いた。園長のガキじゃあねぇか!いいこと思いついた!このぶどう園はいつか、跡取りのこいつのものになる。ならいっその事、こいつを殺しちまえばいいじゃあねぇか。そうすりゃあ、このぶどう園は俺たちのもんよ!!ガハハハハ――』

15 農夫たちは園長の息子を殺すと、遺体をぶどう園の外に放り捨ててしまったではないか!

この後、園長はどうする? 16 ぶどう園にすっ飛んでいって農夫たちを殺し、他の人を雇うだろう」

「そんなのあんまりだ!」

「こんなことがあってはならない!」

例え話を聞いた群衆はそう口にした。

17 イエスはそう言った者たちの目を見た。

「ならこの聖書の一節を説明してくれ。

『𝄞大工が捨てた石は、

最も重要ないしずえに』―― 【聖書:詩篇118:22より引用】

18 この石につまずけば、打ち砕かれ、あなたの上に倒れるなら、潰される!」

19 (きさまぁぁぁ・・・!!!)

これを聞いた掟の学者と祭司たちは、心中しんちゅう穏やかでは無い。イエスの話の“雇われ農夫”が彼らを指していると気づいたからだ。すぐにでもイエスを連行したかったが、群衆の反感を恐れて踏みとどまった。

納付の義務

20 深く根に持ったユダヤ権力者たちは、イエスを罠におとしいれる方法を探った。

そこで、何人かの使者を送り出した。彼らの作戦はこうだ。いかにも純粋なふりをしてイエスの失言しつげんを誘い、それを口実にローマ帝国の権威の元で、合法的にほうむる・・・。

21 さっそく潜り込んだ使者たちは、いい顔をして質問するために手を挙げた――

「先生、あなたの教えと言葉は、真実極まりないと存じ上げております。誰がいようが、顔色をうかがうことなく、真っ直ぐに神の道を教えていらっしゃる。

22 先生、ここで1つお尋ねしますが・・・我々ユダヤ人は、ローマ帝王カイザルに税金を納めるべきでしょうか?」―― 【この時、すでに帝王カイザルは亡くなっていたが、ローマ帝王として大いに讃えられ、この時まで、ローマ帝王を称して“カイザル”と表すことがあった】

23 イエスに、彼らの狙いはお見通しだった。

24 「銀貨を見せてみろ。この銀貨に刻まれているのは、だれの肖像、だれの名だ?」

「カイザル様でございます」

25 「じゃあカイザルのものはカイザルに返し、神のものは神に返せ・・・!!!」

26 イエスの答えは、使者の想像をいっしていた。あまりに立派な答えであったがゆえ、驚きを隠せなかった。失言させるところが逆転し、感心して帰ったのだった。

生きた者の神

27 死んで、のち復活することなどないと信じる、サドカイ一派サドカイ一派がイエスの元にきた。

28 「先生、モーセは掟の中で、夫が子どもを残さずに亡くなった場合、弟は兄の家系を絶やさぬため、取り残された奥さんと結婚しなければならないと定めています―― 【聖書:申命記25:5-6より引用】

29 そこで質問です。あるところに7人の兄弟がいたとしましょう。

長男はある女と結婚しましたが、子を持たずして亡くなりました。 30 そこで次男が長男の嫁と結婚しましたが、またもや亡くなりました。

31 三男も同じくその女と結婚しましたが、亡くなりました。兄弟全員に同じことが起き、誰ひとり彼女との子どもを残すことなく、この世を去りました。

32 そして、ついには彼女も息をひきとりました。

33 7人全員が彼女と結婚したわけですが、天国に行ったら、彼女は一体誰の妻になるのですか?」

34 「確かにこの世で、人は結婚する。 35 神に認められ、死から復活し、再び新しい人生を生きる人はいる、しかし新しい人生で結婚など存在しない。

36 まるで天使のように、二度と死ぬことはない・・・!!!死からよみがえった者は、神の子どもなのだ。

37 あなたがたも信じる預言者・モーセが、生き返ることを示したではないですか!モーセが燃えるしばについて、“神は、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの“神であった”ではなく、“神である”と。 38 そうだ、神は生きている者の神であり、死んだ者の神ではない。神の目には、全ての人が“生きている”・・・!!!」―― 【聖書:出エジプト記3:1-12より引用】

39 「ご、ご名答です!!!」

掟の学者たちは、度肝を抜かれた。

40 これ以上、イエスと知恵比べする者はいなかった。戦意喪失したからだ。

救世主キリストはダビデの子か?

41 今度はイエスが彼らに問いただした。

「なぜ、救世主キリストはダビデ王の子だと言う人がいる?

42 詩篇でダビデ自身がこう書いた――

『𝄞王なる神より我が王へ

座れ、私の右の座へ

43 汝の敵、汝の足下あしもと

ひれ伏す日まで』―― 【聖書:詩篇110:1より引用】

44 ダビデ自身が救世主キリストのことをと呼んだのに、どうして救世主キリストがダビデの子になりえる・・・?」

掟の学者に対する警告

45 大勢の人が話を聞いている中だったが、イエスは仲間だけに聞こえるように忠告した――

46 「掟の学者や宗教家たちに気をつけるんだ。彼らは身分の高い服装を好んで着ては、特に人通りの多い場所をうろちょろして、自分が偉いことをアピールする。それもこれも、人に敬意をはらわれたくて、仕方がないからだ。

また、ユダヤ集会所シナゴグやパーティー会場では上座かみざに座りたがる。

47 だが、裏では夫に先立たれた貧しい女たちの家をだまし取る・・・。表面上、長々と祈り、自分がいかに信仰深い者なのかを見せびらかすが、そんな八方美人は神によって滅多打ちにあう・・・!!!」

額を上回る価値

1 エルサレム神殿にて――

ジャリリリリン・・・

ふと顔を上げると、神殿の献金箱に捧げものをしている金持ちを見かけたイエス。

2 おや、そこへ1人の貧しい身なりをした未亡人みぼうじんが来た――

チャリン、チャリン

イエスは、この女が小さな銅貨を2枚入れる様子を見た。

3 見ろッ!

「この女性は小さな銅貨2枚“しか”入れなかったが、彼女はどの金持ちよりも“多くのものを捧げた”。

4 あの金持ちは、自分にとっちゃどうってことない額を捧げたが、彼女は必要な生活費すべてをそそぎ込んだ・・・!!!」

この世の終わりの前兆

5 なーんてキレイなんだ・・・

イエスの一味では、神殿の美しさが話題にあがっていた。高級な石細工や壁飾りに目を奪われた・・・それは、どれもユダヤ人が神に捧げたものでできていた。

6 「ああ、見てみろ。こいつぁ、いつか全壊する。この石は、1つ残らず地面に叩きつけられ、1つとして、重なったままにはならない・・・!!!」

7 少したって――

「先生、さっきの話だが、いつそんなことが起きんだ?なんか前兆はあるのか・・・?」

仲間がそう聞くと、イエスの目が鋭くなった・・・

8 「騙されないように注意しろ・・・!

俺の名を語るヤカラが多く現れる。『私こそ救世主キリスト!』、などと言って偽り、人を惑わすが、流されるな。

9 戦争や暴動が起きたことを聞く。だが恐れるに足りない。この世が終わる前に必ず起きることではあるが、その後すぐってわけじゃあない」

10 イエスは話し続けた――

「民族は民族に、国々は国々に敵対して立ち上がり、

11 大地震が起き、各地で人は飢え、伝染病が流行し、人への警告として、恐ろしい異変が空に現れる。

12 だがそれらの前に、おまえたちはとらえられ、ひどい仕打ちを受ける。ユダヤ集会所シナゴグで訴えられ、牢屋にぶちこまれ、王や権力者たちの前に立たされる。それもこれも、俺に従ったことが理由で。

13 だが、これは俺のことを証言する絶好のチャンスだ!

14 何を言うか心配しないように、今のうちに決断しろ。

15 俺が知恵を授け、どんな反対者も反論できないことを言わせよう!

16 両親、兄弟、親戚、友達でさえ反対し、殺される人だっている。

17 俺に従うがゆえに嫌われる。

18 だが、誰も魂には指一本触れず、髪の毛一本さえ失わないことを約束しよう!

19 強く信じ続けるなら、どんな災難からも救われる・・・!!!」

神殿のみやこエルサレムの崩壊

20 「エルサレムが軍隊に包囲ほういされたとき・・・それが滅びの時だ・・・!!!

21 ユダヤにいる人は山を目指せ。エルサレムから急いで離れるんだ。

みやこ付近にいるなら、みやこに逃げ込むな!

22 神の最後の審判ファイナルジャッジメントについて預言者たちが何度も書き記している。俺が言う“その時”にそれらすべてが“起こらなければならない”。

23 その日、妊婦や赤ん坊を持つ母にとっては、特につらい時期になる・・・!そう、神のいきどおりが降り注がれる最悪な時代がこの地に訪れるからだ。

24 ある者は兵士に殺され、ある者は捕虜ほりょとなって多くの国々に連れ去られ、追放される。時が来るまで、エルサレムは外国の手に落ちる」―― 【エルサレムは、選ばれし神の都市なのである】

終焉しゅうえんの季節

25 「それから、不思議な現象が太陽、月、そして星々に現れる。荒れ狂う海と白波の音に、世界が混乱におちいる・・・

26 人は世界で起きていることを目にし、腰を抜かして怯える。空中は一変し、 27 世界は見る。絶大な力と栄光をまとった“この人”が雲に乗って来るのを・・・!!! 28 これらのことが起こり始めたら、恐れず、胸を張って立ち上がれ。お前たちを鎖から解き放つ神の時だからだ・・・!」

永遠に残るもの

29 ここでイエスは例え話を始めた――

「木を見てみろ・・・イチジクの木がいい例だな! 30 緑になったら夏の時期が来たと知る。 31 同じように、俺が話した事がすべてが起きたら、神の王国キングダムが来る時期だと察することができる!

32 今生きている人たちの中に、これらを全て体験する者がいる・・・!

33 やがて、この世は天も地もひっくるめて滅びるが、俺の言葉は永遠にすたれない・・・!!!」

準備せよ!!

34 「パーティーやお酒、この世のことに無我夢中にならないように神経をとがらせろ!もし、してしまったら思考が麻痺まひし、準備が整っていないうちにこの世が終わる時を迎える・・・!!!

35 世界は不意を突かれ、衝撃が走る!

36 だから、スタンバっとけ!起きたら、起きたで、乗り越えられるように祈り、胸を張って神の子の前に立つことができるように祈れ!」

37 イエスは、朝から日が沈むまで神殿の敷地で群衆に教え、夜には人里離れたオリーブ山と呼ばれた、丘の上で過ごした――

38 「早く起きて!行くよッ!!」

「今日は何が聞けるんだー!」

「朝だ!行くぞ!」

早朝にも関わらず、大勢の人がイエスの話を聞きに神殿に集まったのである。

祭の前の企み

1 過越すぎこしと呼ばれた<種なしパン祭>間近のこと―― 【初日は過越すぎこしの祭典として、子羊を生け贄にし、1週間かけてイースト菌の入っていないパンを食べる祭】

2 ――「うまく殺す手立てはないのですか・・・?」

イエスを殺したがっていたのは、なんと祭司や掟の学者たち!彼らは、かげで逮捕する方法を探っていた。しかし大多数の人がイエスをうやまっていたため、反感を買うのを恐れていたのだ。

イスカリオテ人のユダ

3 その頃、悪魔王サタンは、十二使徒の1人を見て笑みを浮かべた・・・

その目に映っていたのは、イスカリオテ人のユダ。

悪魔王サタンは、ユダの中に入り込んだ――

4 ユダは師匠であり、友人であるイエスを殺すことに躍起やっきになっている祭司やエルサレム神殿の護衛たちと、こそこそ話をしている――

「・・・十二使徒の“わたし”にお任せを!」

なんと!ユダは、イエスの引き渡しに協力すると言うではないか!!!

5 願ったり叶ったりの祭司たちは大喜び。イエスと引き換えに希望の報酬を支払うと、約束した。 6 この条件に握手を交わしたユダ――

それからのユダは、イエスのそばにいても、腹の内ではイエスを引き渡す機会探り・・・。人目を避けられる場所でなければならなかったからだ。

過越すぎこしの食事

7 さて、ユダヤ人のしきたりにならい、種なしパン祭初日である過越すぎこしを祝うため、子羊を生け贄としてささげる日が来た。

8 イエスのそばには岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネ。

「みんなの過越すぎこしの食事を準備してきてくれ!」

9 「ああ、だがどこで?」

10 「町に入ったら水瓶みずがめを持った男を目にする。彼についていけば、家に入るから、 11 そこの主人に

『先生とその仲間たちが一緒に過越すぎこしの食事をする部屋を見てくるように頼まれました』

と伝えるんだ。

12 主人は俺たちのために用意された2階にある広い部屋へ案内してくれる。そこで、食事の準備を整えてくれ!」

13 さっそく岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネが町に着くと、イエスの言った通りになったので食事の準備をした。

最後の晩餐ばんさん

14 イエスは十二使徒と食卓に着き、楽しく過越すぎこしの食事をしていた。

15 「死ぬ前にどうしても“お前たちと”過越すぎこしの食事をとりたかった!

16 神の王国キングダム過越すぎこしの真の意味が明らかになる日まで、俺がこうして過越すぎこしの食事をとることはない・・・!!!」

17 そう言うと、ワインの入ったさかずきを取って神に感謝を捧げた。

「このさかずきをとってみんなに配るんだ。 18 神の王国キングダムが来る日まで、俺がワインを口にすることはない・・・!!!」

19 次にイエスはパンを取り、それを神に感謝した。それからそのパンを裂くと、使徒たちに配った。

「このパンはおまえたちのために捧げる俺の体だ。俺を記念して食べるんだ」

20 食後のデザート時――

先ほどと同じようにワインが入ったさかずきを手にとったイエス。

「このワインは神が人と交わす新たな条約だ・・・お前たちのために流される俺の血によって印は押される・・・!!!」

裏切り者への警告

21 「だが、俺の敵に俺を引きわたす悪の手は、この食卓についている・・・!!!

22 神の計画どおり“この人”は死ぬが、“この人”を殺す手引きをする人はどんなに最悪な結末を迎えるか」

23 「この中でそんなひどいことをする人と言えば誰だ?」

使徒たちは互いに問いあった。

仕える者が1番

24 しばらくすると――

使徒たちは、十二使徒の中で誰が1番偉いかを論じあっていた。

25 会話に加わったイエス――

「この世で王と呼ばれる者や人の上に立つ人たちは、だと呼ばれたがる。 26 そんなんじゃダメだ。この中で1番上に立つ者は、まるで誰よりも立場が低いかのように行動しなければならない。

27 接待する者と、接待される者はどっちが偉い?

一般的には、接待される側が偉いとされるが、俺はお前たちに仕えてきた。

ほとんどの人が机についてふんぞり返って接待されている人の方が“偉い人”であり、“重役”だと思っている。俺はおまえたちと共にした時間、接待役にまわった。

28 おまえたちは俺と一緒に数多くの試練を乗り越えてきた。 29 だから、父さんが俺に与えた、神の王国キングダムを共に治める権威を与えよう。 30 その神の王国キングダムで、また食卓を囲み、王座に座り、イスラエルの十二部族を裁くのだ」

岩のペテロの覚悟

31 「シモン、シモン!よく聞け・・・悪魔王サタンはおまえたち1人1人を麦のようにふるいにかけたいと願いでた。

32 だがシモン、おまえが完全には希望を失わないように祈った!いいか、俺に立ち直った時、兄弟姉妹を助けてあげるんだ」―― 【シモン:ペテロの別名】

33 「師匠、俺は火の中、水の中、牢の中、あの世にでさえあなたについていくッ!!!」

34 「ペテロ、おまえは翌朝雄鶏ニワトリが鳴くまでに俺なんか知らないと・・・

神の働きに金、カバン、くつ、剣は必要?

35 ―― 【預言の書に神の王国イスラエルが復興すると書いてあったが、当時の人たちはイエスの一味を含めて、軍事的戦争によってそれが成されると思っていた。そのため、今からローマ帝国に挑むのかと、イエスの一味はピリピリしていた】

そこでイエスは使徒に尋ねた――

「なあ、前に金やカバン、くつでさえ持たせずに使いに出したよな?その時、何か困ったことはあったか?」

「別にないが・・・?」

36 「それじゃあ金もカバンも今度は必要だし、剣がないなら上着を売っぱらってでも買っとかないとなー!

37 いいか、聖書にはこうある――

―― 【聖書:イザヤ書53:12より引用】

確かに聖書にあることはそのとおりにならなきゃいけない。だが、この箇所はおまえたちではなく、“俺”をしている!もう、この箇所の歯車は動きはじめている」―― 【イエスは、自分の力に頼らずとも神の王国キングダムが勝利することを遠回しに教えようとした。そして、人に手をかけることは犯罪だ。しかし犯罪者とみなされるのは、イエスのみであることを教えたのである】

38 ――「師匠!言う通り、剣を2振り持ってきたぞ!!」

「いい加減にしろ」―― 【一味はイエスが話したポイントをつかめていなかった】

独り祈る救世主キリスト

39 イエスは仲間と街を出ると、いつもどおりオリーブ山へ行った――

40 「誘惑におちいらないように祈っておけ・・・!」

仲間にそう告げると、 41 イエスは50歩ほど仲間と距離をとり、ひざまずいて祈った。

42 「父さん・・・あなたの意志にそぐわないなら、この苦しみの杯サカズキを飲ませないでくれ・・・だが俺じゃなく、あなたの思いどおりに・・・・・・」

43 すると、天使が下って来てイエスを支えた・・・

44 精神的な死闘からひたすら祈るイエス。そのひたいからは、おびただしい汗がぽとぽと落ちる。

45 イエスが仲間のもとへ戻ると――

Zzz・・・・・・彼らは嘆き疲れて眠り込んでいた。

46 「おい、こんな時に何を眠っている・・・起きて祈るんだッ!」

口づけの挨拶

47 イエスが話し終わらないうちに、

ザッザッザッ――

集団がやってきた・・・先頭に立つのは、十二使徒の1人、イスカリオテ人のユダ。彼らは、祭司や掟の学者たちをはじめとした、長老たちに派遣されたのだ。ユダは笑顔でイエスに寄ってくると、ほほに口づけのあいさつをした―― 【親しい人にする当時の挨拶】

48 「ユダよ、友への口づけを使って“この人”を敵にわたすのか・・・」

49 イエスのそばにいた一味も状況が読めた。

「師匠、剣を抜きましょうか?」

50 にゃろォォォ・・・スパっ・・・

応える間もなく、他の仲間が剣をふりかざし、大祭司の召使いの耳が切れた。

51めろ!!!」

一喝したイエスは、その傷口に手を当てて、人知を超えた力で耳を元通りに治した。

52 すると、自分を捕えに来た祭司たちや長老、ユダヤ兵たちをギロッと見た。

「なんのために剣やこん棒を持ってきた?俺が犯罪者だとでも言いたいのか? 53 俺は逃げも隠れもせず、毎日神殿の境内けいだいで教えていたじゃあないか。なぜその時に捕まえなかった?まあいい・・・今はおまえたちの時だ。少しの間、おまえら“闇”の指揮下に落ちる・・・」

二度鳴く雄鶏ニワトリ

54 武装集団は、イエスを捕まえ、そのまま大祭司の屋敷へ連行した。

一方、距離を保ちながらイエスの後をつけている者がいた。岩のペテロだ。

55 集団は大祭司の中庭の真ん中で、たき火を焚き始めたので、岩のペテロも何食わぬ顔で一緒に座った。

56 焚き火が岩のペテロの顔をゆらゆらとだいだい色に照らす――

その時、屋敷の召使いの少女が岩のペテロの顔を覗き込んだ・・・。

「ん?この人・・・。あっ!この人あの男と一緒にいましたよッ!」

57 「う、やつのことなんか知らん!」

58 少し経つと――

「あれー!あんたもやつの一味じゃあねぇか!」

「う、とんだ思い違いだ!」

59 1時間後――

「いや、確かにこいつはやつといた男だ!ガリラヤ出身だろ!間違いない!」

60 「おい、何の話だッ!俺は知らん!!!」

コケコッコ~~~~!!!

岩のペテロが話を続けている時に雄鶏ニワトリが鳴いた――

61 そのとき王・イエスは振り返り、ペテロの目をじっと見た。

「――!――」

途端にペテロはイエスの言葉を思い出した――

――翌朝、雄鶏ニワトリが鳴くまでに、俺を知らないと三度断言する――

62 岩のペテロは中庭を勢いよく飛び出した――

「うわああああああああああ!!!」

そして泣き崩れたのであった・・・。

イエスの目隠し

63 イエスの見張り番たちは、イエスをからかって痛めつけた。

64 彼らはイエスに目隠しをすると――

ビシッ!ボコッ!ゴキッ!

「オラッてめぇ預言者だろ!誰が殴ったか当ててみやがれッ!ガハハハハっ!!」

65 彼らは大声で侮辱ぶじょくの言葉を浴びせた・・・

正当化をはかるユダヤ指導者

66 夜明け頃のこと――

長老、祭司、掟の学者というそうそうたるメンツが集うと、彼らはイエスを最高議会へ連れてきた。

67 尋問は始まり、彼らは口々に言った――

「あなたが神に選ばれし王なのですか、答えなさい!」

「俺が答えたところで、信じるまい。 68 俺が聞こうが、誰も答えまい。 69 ともあれ、これより“この人”は、全知全能たる神の右に着座する・・・!!!」

70 「それでは、神の子なんですね?」

誰もが尋ねた。

「そう呼びたければどうぞ」

71 「え゙―――ぃ!!!もう十分です。これ以上の証言がいりますか?!今の言葉、全員聞きましたね!!!」

裁判にかけられる救世主キリスト

1 衆議一決しゅうぎいっけつ。全議員そろって、イエスをピラト総督のもとに引っ立てて行った。

2 ピラト官邸かんてい――

「総督閣下、失礼いたします・・・」

「この男が市民を駆り立てているところを捕まえてまいりました。あろうことか、帝王カイザルに税を納めるべきではないだとか、自身こそが選ばれし王だなどと言うのです!!!」

口々に訴える議員たち。

3 ――「ふむ、おぬしはユダヤ人の王なのか?」

「そうとも言える」

4 ピラトは祭司たちの方に向き直った。

「何も悪いことはしていないではないか」

5 「とんでもございません!!!彼が教えていることはユダヤ全土で大問題になっているんですよ!!!ガリラヤ地方から始まり、ここエルサレムにまで来たんですよ!!!」

ヘロデ王が着せたガウン

6 「ではガリラヤ地方出身なのか・・・?」

7 ガリラヤ地方と言えば、ヘロデ王の管轄下。そうと知ったピラト総督は、ちょうどエルサレム来訪中のヘロデ王のもとへイエスを送りつけた――

8 イエスに会えたヘロデ王は大喜び!イエスの噂を聞いて以来、ずっと会いたいと思っていたのだ。ヘロデ王は噂に聞いたイエスのキセキを見せてもらいたかった。

9 ヘロデ王は多くの質問を投げかけた。

「・・・・・・」

しかし、イエスが口を開く気配はない。

10 祭司や掟の学者たちもそばでイエスを批判し、怒鳴っていた。

11 ――「ダァッハッハッ!これはいい!!お似合いだ!!!」

ヘロデ王とその兵士は、王に似せてイエスにド派手なガウンを着せてバカにした。散々笑ったあと、ピラト総督のもとへ送り返した。

12 それまで、ピラト総督とヘロデ王は犬猿けんえんの仲だったが、この日をさかいに親しくなった。

ピラト総督の慈悲じひ

13 それから、祭司、ユダヤ指導者たちを含めた会衆を呼び集めたピラト総督。

14 「この男が、ローマ帝国政府への反乱を指導したとおまえたちがいうので、詳しく調べさせてもらったが、そのような事実はない。この男は無罪だ。 15 ヘロデ王も同じ結論に達し、送り返してきた。この男は、死刑にあたいすることを何一つしていない。 16 よって、軽く罰したあと、釈放することとする!」 17 ピラトは毎年、過越しの祭りの際に囚人を一人釈放していました。―― 【ギリシャ語の写本の中には、17節を付け加えているものもある】

18 「そいつを殺してバラバを釈放しろ〰!!!」

「そうだ、そうだ!!!」

と叫びだす群衆―― 【毎年過越すぎこしの日には、ユダヤ人が選んだ囚人を1人、釈放する恒例事項があり、ピラト総督がバラバかイエスのどちらかを釈放すると言ったのだ】

19 ――囚人バラバ――

バラバは、都内みやこないで政府転覆を図った反乱の罪と殺人罪で投獄されていた悪党である。

20 「いや、イエスを解放する!」

ピラト総督はイエスを釈放したかった。

21 「殺せ〰!!十字架で殺せ〰!!!」

再びヒートアップする群衆の声・・・

22 「なにィ!なぜだ?こやつが何をした?!こやつは無罪だ。死刑を宣告する理由がない!軽く罰したら釈放する!!」

ピラト総督は3度目に念をおした。

23 じゅ〰じ〰か!じゅ〰じ〰か!!じゅ〰じ〰か!!!

ますます大声でイエスの十字架刑を求める会衆。あまりの大声に、 24 ピラト総督は音を上げ、会衆の要求をのんだ・・・

25 反乱組織に属す人殺し、バラバの釈放と引き換えにイエスの死刑を承認し、彼らに引き渡した。

ユダヤ人の王をかかげた十字架

26 イエスを処刑場へ連行していた兵士だったが、進むのに苦戦していた。なんせ、ボロボロのイエスに重たい十字架を背負わせていたからだ。

「おい、そこのお前!こいつの十字架を一緒に背負え!」

「え!で、でもおいらこれから用が・・・」

「ええい、いいから手伝わんか!」

「ゔッ・・・」

田舎から神殿のみやこエルサレムに着いたばかりだったクレネ人・シモンもイエスの後ろからその十字架を背負わされるはめになった。

27 イエスの後にくっつく大群。

わ゙〰〰ん゙、わ゙〰〰ん゙・・・

イエスがあまりにもかわいそうで泣き声をあげる女がちらほらいた――

28 すると、イエスが振り返った!

「エルサレムの女たちよ・・・その涙は、俺ではなく、自身と子のためにとっとけ・・・

29 子の心配をしない不妊だったらと願う日が来る。

30 人は山を見れば、

丘を見れば、と言う日が―― 【聖書:ホセア書10:8より引用】

31しげる木がこの有り様なら、枯れ木はどうなる・・・?」―― 【今のように戦争がない時に、ユダヤ人の間で暴力行為が起きるのであれば、戦争が始まったあかつきにはどれだけひどくなるのかを意味していた】

32 イエスの他、2人の犯罪者が処刑場に連行された。 33 この処刑場、名をどくろの地ゴルゴダという・・・

――カンッ、カンッ、カンッ、ベチャッ・・・・・・

たどり着くと、イエスの手足に太い釘が打ち込まれ、十字架にはりつけられた・・・

イエスの右に1人、左にも1人、犯罪者が釘づけにされた。

34 想像を絶する苦痛の中、イエスはつぶやいた・・・

「父さん・・・彼らを・・・ゆるしてやってくれ・・・何も分かってねんだ・・・・・・」

その頃、兵士たちは――

「おーし!サイコロで決めるぞ!」

「行くぞー。そーらよっ!」

「き、きたー!!もーらいっと!」

兵士らはイエスが着ていた上質な服を切り分け、誰がどの部分をもらうかサイコロで決めていた。

35 周りにはたくさんの野次馬やじうまが・・・

「もしですよ、この方が神に選ばれし救世主キリストならば、今ここで十字架から降りてくればよいではないですか。他人を救えて自分を救えないのですか?」

「カーハッハッハ!!!」

ユダヤ指導者たちは笑った。

36 兵士たちも一緒になって笑うと、イエスの口元に、棒の先端にぶどう酒を染み込ませたものをつけて差し出した。

37 「ユダヤ人の王なら、まず自分を救ってみろ、オラ!」―― 【安いワインや、酸っぱいワインは水によって希釈され飲まれていた。奴隷や、兵士の飲む者とされており、ここで、イエスを十字架に架けた兵士が手元にあったワインをイエスの口元にあてて冷やかした】

38 ――ユダヤ人の王――

イエスの頭上に掲げられた罪状看板には、そうつづられていた。

39 隣の十字架に架かっていた犯罪者の1人も叫んだ――

「うっ、てめ、おい!救い主キリストなんだろコラ!そんなら自分と一緒に俺らも救いやがれ・・・!」

40 もう1人の犯罪者は違った――

「コラ!このに及んで、まだ神様を恐れねぇのか・・・?お、俺たちゃもうじきおだぶつよ・・・ 41 俺もてめぇも殺されて同然の人間だ・・・罪を犯しちまったんだからな・・・だがこの方が見えねぇのか!なんもしてねぇじゃあねぇか・・・!!!」

42 死刑囚は続けた、

「イエスさん、あんたが王として統べる時、どうか俺を思い出してやってください・・・」

43 「約束する・・・おまえは今日、俺と楽園に行く・・・!!!」

救世主キリストの死にざま

44 ブオオオオオ・・・・・・

正午になると、国中が暗闇くらやみに包まれた・・・。そしてそれが3時まで続いた・・・

45 その間、太陽は光を失った。そして神の存在と人を分けへだてた神殿の幕が真っ2つに裂けたではないか!!!―― 【神殿の幕の奥は、ユダヤ人1人を代表して大祭司が年に一度だけ進入を認められていた。幕には太陽、月、星が描かれ、天と地、神と人のへだたりを象徴していた】

46 「父さん!!!俺の命をゆだねる!!!」―― 【聖書:詩篇31:5より引用】

ガクンッ・・・

その言葉を最後にイエスは息をひきとった。

47 「やはり、善良なお方だった!!!」

その光景を目の当たりにした百人隊長は、神を讃えた。

48 イエスの死に際見たさに都市から足を運んだ大勢の野次馬たちは、その死にざまを見て、申し訳なくなってすごすご帰っていった。

49 イエスの親友たちも、十字架から距離をとった場所からこの様子を目に焼きつけた。ガリラヤ地方からイエスのお供をした女たちもそうだ。

救世主キリストの埋葬

50 他にもユダヤ地方の都市アリマタヤ出身のヨセフという男がこの光景を見ていた。

――アリマタヤのヨセフ――

51 神に認められた善人であり、神の王国キングダムが訪れるのを心待ちにしていたユダヤ最高議会の議員だ。彼は他のユダヤ権力者たちと違い、イエスの処刑に大きく反対していた。

52 ピラト総督にイエスの遺体引き取りを願い出た彼は、 53 遺体を十字架から降ろし、布に包んだ。そして、岩壁がんぺきに掘られた未使用の墓にほうむったのだった。

54 日没とともに休日サバスになる。そう、今日は休日サバス前日の金曜日。

55 ガリラヤ地方からイエスのお供をした女たちは、アリマタヤのヨセフと一緒だったため、イエスの埋葬まいそうを見届けていた。墓の場所も、イエスが寝かされた場所さえも確認していた。

56 その後、彼女たちは遺体に塗る甘い香りの香料を用意しに家に帰ったが、休日サバスになったので、掟どおりにおとなしく休息をとった。

復活の伝令

1 日曜日になってすぐ、女たちは用意していた香料を持つと、イエスが眠る墓へ行った。

2 「え?」

「入り口の石が開いてる・・・」

墓をふさぐ重いおもーい円盤状えんばんじょうの石が転がされ、入口が開いていた。

3 (誰かいるのかなぁ)中に入って、薄暗い静かな墓室を見わたした。

「?」

ない!そこにあるべきはずの王・イエスの遺体が・・・ない!

4 状況が読めず、頭の中を整理していると・・・

「やぁ☆」

「ひぃッ!!!」

輝く衣をまとった男2人がいきなりそばに来たではないか! 5 彼女たちはあまりの恐ろしさに勢いよく土下座した。

「なぜ生きている人間を探しにここへ?ここは死人の場所だよ。

6 イエスならここにいない・・・!!!ほら、ガリラヤ地方で言ったことを思い出してごらん?

7 『この人は罪人の手に落ち、十字架にかけられた3日目に死からよみがえる』

って言われたじゃん!」

8 (そーだ!)彼女たちの表情がぐるりと変わった。イエスのことばを思いだしたのだ!

9 (た、大変だー!!!)彼女たちは、11人の使徒や仲間たちを探しに一目散に走り出した。

――「皆聞いて!!!イエスが生きてるッ!!!」

女たちは墓での出来事を彼らにぜんぶ伝えた。 10 マグダラのマリヤ、サロメ、そしてヤコブの母マリヤとその他の女たちみんなで使徒たちに一から最後まで。

11 「なにを言いだすかと思えば・・・」

使徒でさえもが信じようとしない。

12 しかし、ある男は立ち上がり、走って出て行った。

岩のペテロだ!

彼は走った。急いでイエスの墓まで・・・!墓に到着して覗き込んだが、中はもぬけの殻。

(イエス・・・なにが・・・どうなっている・・・)

残されていたのは、イエスを包んでいたはずの亜麻布だけだった。

岩のペテロはただ1人、何が起きたのかと思いを巡らせにとことこと歩いて行った。

イエス復活――エマオの晩餐ばんさん――

13 同じ日――

神殿のみやこエルサレムから11㎞ほどのエマオ村に向かって歩くイエスの一味2人が、 14 イエスを取り巻くあらゆる出来事について話していた。

15 あーだった、こーだったと話しながら歩く2人のそばに近づく者がいた・・・

イエス本人ではないか!

16 しかし神はあえて2人が気づかないようにはからった。

17 「歩きながら何を話しているんだい?」

2人は足を止め、隠したくても隠せない悲しそうな表情を見せた。 18 そしてクレオパが口を開いた。

「はは、あそこで起きたことを知らないやつなんて、エルサレムじゃあんたくらいだよ」

19 「何の話だい?」

「おいおい・・・ナザレ村のイエスだよ。人から見ても神から見ても偉大な預言者だった。発言をとっても行動をとっても天下一よ!

20 それなのに・・・俺たちユダヤ人の権力者や祭司たちが裁判官に手渡し、殺した。十字架に釘づけにしてだ。

21 彼こそイスラエル国復興ふっこうを実現する救世主キリストだと信じていたんだが、まさかこうなるとはな・・・。まぁそれはそれで、彼が殺されて3日たつんだが、 22 知人の女たちからすごい話を聞いたのさ・・・早朝、彼女たちがイエスの眠る墓に行ったんだが、 23 遺体がなくてあたふたしていると、天使が聖なる幻ビジョンに現れたらしんだ!なんでもよ、イエスが生きていると言うんだ。 24 そこで他の仲間も墓を見に行ったんだが、彼女たちの言う通り、墓はあってもイエスがいなかったんだ・・・」

25 「預言者の記したことはそんなにのみ込みづらいか?

26救世主キリストが栄光に輝く前にそれらの苦難を通る』とあるじゃあないか!」

27 それからイエスは、預言者モーセの書を始め、聖書に記された預言者のことばを借りて、自分について説き明かした。

28 そうこうするうち、エマオ村の近くになり、イエスはあたかもまだ旅を続けるそぶりをした。

29 「もう日も暮れる。なーいいだろう!今夜は、俺たちのところに泊まってってくれよ!」

2人が頼み込むので、イエスは彼らと過ごすことにした――

30 夕食のため、一同が食卓につくと、イエスはパンをとって神に感謝した。それからパンをちぎり、2人に分けた。

31 「!」

この時はじめて、2人の目が開かれ、この男の正体がイエスであることが分かった。

「イエス!!!あ、あれ・・・」

しかし、そこにはもう、イエスの姿は無かった。姿を消したのだ。

32 「そ、そう言えば!道中で聖書の本当の意味を明かしてくれた時、魂に火がついたように興奮したなー!!!」

33 (こうしちゃあいられない!)日は暮れていたが、2人は神殿のみやこエルサレムへすっ飛んで行った。

11 人の使徒が一味と集まっているところへたどり着くと 34 起きたことを説明する暇もなく仲間のほうから、2人に寄ってたかってきた。

「お、おい、聞いたか!!イエスは本当に復活したんだ!!!シモンの前に現れたんだよ!!!」―― 【シモンは岩のペテロの別名だ】

35 これを聞いて2人も興奮して道中で起きたこと、パンを分けてもらった瞬間にイエスだと気づいたことを伝えた!

最期の助言

36 2人がみんなにその出来事を話している時だった――

彼らの間に突然イエスが現れたのだ!

「平安よ、ともにあれ!」

37 「!」

「で、でた〰〰!!!」

一味はお化けだと思って腰が抜けた。

38 「なーに驚いてんだ?自分の目を疑ってどうする? 39 この手足が見えないか?ほーら、触ってみろ。分かったか、幽霊に骨や肉はない・・・」

!!!」

40 イエスはこう言いながら、手足を見せた。

41 「イ、イエスだああああああ!!!」

一味はイエスが生きているのを見て、死ぬほど嬉しかった!しかし、それと同時にウソのような現実に実感が湧かない・・・それをよそにイエスは、

「腹が減った!食い物はねぇのか?」

42 焼き魚を持ってくると、 43 仲間たちの目の前でほおばるイエス。

44 「覚えてるか?“前に”おまえたちといた時、掟、預言者の書、詩篇の中で俺についてつづられたことは、そのとおりに実現されなければならないと言ったのを」

45 イエスは、その本当の意味を、仲間たちが理解できるように説明した。

46 「いいか、聖書にこうある!救世主キリストは、殺されて3日目に生き返り、 47 俺のもとに立ち返れば、罪がゆるされる。この救いの知らせは、エルサレムから始まり、世界中に伝えられなければならない! 48 おまえたちはそれを見た“証人だ”!

49 父さんの約束どおりに俺はおまえたちへ神の霊ホーリースピリットを送る。いいか、天からその力を受けるまで、エルサレムを離れるな」

天国へ帰る王

50 イエスは一味を連れて神殿のみやこエルサレムからベタニヤ村の近くまでやって来た。そして、イエスが手を掲げて一味を祝福し始めると、

51 ブオーン・・・・・・

イエスが天に引き上げられた!

52 わっはっは―、すっげ〰〰!!!イエス様ばんざーい!!!ばんざーい!!!

残された仲間たちは、イエスをたたえ、最高な気分でエルサレムへ戻った。

53 一度は希望を失った一味だったが、その後はというと――

くる日もくる日も神殿で時間を共にし、神を讃えたのだったとさ。