使徒の活動記録

著者ちょしゃルカによる前置き

1 親愛なるテオピロへ

私が初めにつづった書、すなわち福音書では、イエスの生涯と、彼が教えたことについて書き記した。 2 イエスは、復活してから天に引き上げられるまでの間、神の霊ホーリースピリットの助けによって使徒たちを任命し、これからすべきことを伝えた。

3 十字架刑の後に復活してからの40日間、何度も使徒たちの前に姿を現した。まぎれもなく自分が、一度死んだイエスであることを様々な方法で証明した。また、姿を現すたび、神の王国キングダムについて教えてくれたのだ。 4 イエスが使徒たちと食事をとっていた時に教えてくれたことから話そう――

父さんがくれると約束した神の霊ホーリースピリットを受けとるまで、エルサレムから離れてはいけない。 5 洗礼者バプティストヨハネは水で洗礼バプテスマを授けたが、おまえたちはもうすぐ神の霊ホーリースピリットによる洗礼バプテスマを受けるからだ・・・!!!」

天に引き上げられる救世主キリスト

6 オリーブ山――

「イエス様!今こそイスラエル国を解放し、独立国として再興さいこうなさるのか!」

目を光らせて尋ねるのは、イエスのもとに集まっていた使徒たちだ。

7 「それは父さんが決めることだ・・・だから、おまえたちが知る必要はない。 8 だがな、神の霊ホーリースピリットが注がれ、おまえたちが力を受ける時、ここエルサレムからユダヤ全土、そしてサマリヤ地方から地の果てまで、俺の死と復活を伝える証人となる!」

9 ブワンッ――

「!」

話し終わると、使徒たちの目の前でイエスは天に引き上げられた!

使徒たちに反応する間も与えず、そのまま雲のようなものに包まれて姿を消してしまった・・・。 10 使徒たちはまばたきも忘れ、ただ呆然ぼうぜんと空を見上げたまま立ちすくんでいた。

スゥッ・・・

そこへ現れたのは真っ白なころもに身を包んだ2人の男たち。

11 「ガリラヤ出身のみなさん」

「!」

「なにをそんなに突っ立って空を見つめているのですか?あなた方のもとから天に引き上げられたイエスは、同じようにして戻ってきますよ・・・!!!」

2人は、紛れもなく天使であった。

十二使徒再結成

12 使徒たちはオリーブ山を下りて神殿のみやこエルサレムまで、およそ1㎞の道のりを歩いて帰った。

13 みやこにはいり、滞在していた家の2階にあがった。

そこには、岩のペテロ、雷兄弟・兄ヤコブと弟ヨハネ、ペテロの弟アンデレ、ピリポ、トマス、バルトロマイ、マタイ、アルパヨの子ヤコブ、右翼うよくのシモン、ヤコブの息子ユダの顔ぶれが揃っていた。

14 使徒たちはつどい、心を合わせて祈っていた。

おっと、イエスの兄弟やその母・マリヤや女たちがいたこともあげておこう。

15 それから数日後――

そこには120人ほどの仲間たちが集まっていた。

16 「兄弟姉妹のみんな、聞いてくれ!」

岩のペテロが口を開いた。

「ユダは敵を引き連れてイエスを裏切ったが、すべて聖書の言葉どおりだった・・・なるべくしてなったことだ!ずっと昔、神の霊ホーリースピリットによって、ダビデ大王が預言したことだからだ。 17 ユダは、使徒にも選ばれた、俺たちの仲間だった・・・」

18 ――ペテロのスピーチの間に、ユダについてはさんでおこう。彼の裏切りに報酬が支払われた。彼は土地を購入し、頭から真っ逆さまに落ち、その衝撃で体は引き裂かれ、はらわたは血とともに飛びだした。 19 この事件は神殿のみやこエルサレム中に知れわたり、今ではその地は血の土地アケルダマと呼ばれるようになった。さて、ペテロのスピーチに戻ろう。

20 「詩篇でもユダについてはこう記されてある・・・

『𝄞彼の土地は避けられ、

だれも住むことなかれ』―― 【聖書:詩篇69:25より引用】

また、

𝄞―― 【聖書:詩篇109:8より引用】

21 そこでだ。我らの王・イエスが俺たちと共にいた期間、 22 つまり、洗礼者バプティストヨハネが洗礼バプテスマを授けていた頃から、イエス様が天に引き上げられるまで、終始しゅうし俺たちと行動を共にした人の中から1人!俺たち使徒に加わり、イエスの復活の証人にならなければならない・・・!!!」

・・・おぉっ!一体誰が選ばれるんだっ!

23 と、そわそわ、わくわくしながら待っていると、2人の候補が前に呼ばれた。

まずは――

ユストと呼ばれたヨセフ。またの名をバルサバ。

次に――

マッテヤだ。

24 使徒たちはこの2人のために祈った。

――「すべての人の思いを知る我が王よ。この2人のうち、どちらが 25 使徒の務めを担うにふさわしいか示してくれ!イスカリオテ人のユダはなるべくしてこの役割を放り出し、帰るべき場所へ帰った!」

26 くじをするため、ユストとマッテヤ、それぞれの名を小さな石に記すと、それをビンの中に入れた。

・・・チリリリリリンッぼと・・・

そのビンを振って最初に出てきた石をとりあげた。

つばを飲んで見届ける人たち。

「どれどれ・・・んま、マッテヤだ!」

うおぉぉぉ〰〰!!!

くじは神がマッテヤを選んだことを示した。マッテヤは使徒に加わり、十二使徒再結成となった―― 【当時、この方法のくじでものごとを決めるのはごく自然のことだった。なぜなら聖書:箴言16:33にあるように、くじの結果を決めるのは神と信じていたからだ】

授けられる神の霊ホーリースピリット

1 五旬祭ペンテコステの日―― 【五旬祭ペンテコステ過越祭すぎこしさいから50日目という意味。もともとは収穫を神に感謝して祝う祭だったが、ある時を境に預言者モーセが、神より十戒じっかい授与じゅよされた日としてお祝いする祭となった】

イエスに従う大勢の人たちが、ひとつの場所につどっていた。

2 そんな時――

・・・グォォォオッッ!!・・・ゴトゴトゴト・・・ガタガタガタ!!・・・

地面が割れんばかりの激しい風のような音が、天から鳴り始めるではないか!その音は、家中へ響き渡った。

3 ぶぉ!ぶぉ!ぶぉ・・・

(な、なんなんだ!)

舌の形をした炎が現れたかと思うと、各々おのおのの頭上にとどまった!

4 ――ぶぉぉぉぉぉぉん――

ははは――!!!

そこにいた誰もが神の霊ホーリースピリットに満たされた!

そして、今まで学んだこともない外国語を、満たされた神の霊ホーリースピリットの導くままに話し始めたのだ!

5 「な、なんだネー今の音!」

「なんだっぺ・・・?」

「なんでござんすかーッ今の!」

「ふむ・・・何事でござるか?」

「ずんげー音!見に行っぞー」

「ワット、クレイジーサウンド!」

そう、神殿のみやこエルサレムには五旬祭ペンテコステを祝いに世界中から神をうやまう外国人が集まっていた。

6 ものすごい音を聞きつけた大勢の野次馬が使徒たちがつどう家に駆け寄ってきた。

「#%&‘=~+@*・・・=~+@*#%&・・・~+@*#%&‘=・・・」

(ん、なにを言って・・・?ちょちょちょーと待て、その言語は!!!)

何か祈っていると思い、耳をすました外国人たちは、目の前でとんでもないことが起こっていると瞬時に悟った。

ここで注目してほしいのは、祭のため、外国各地から来たユダヤ人が多くいたことだ。つまり、ユダヤ人はユダヤ人でも、誰もが違う国の言語を話すわけだ。その外国人たちがまさかここで母国語を耳にするとは、 7 夢にも思っていなかった。状況が読めない外国のユダヤ人。

「み、見ろよ・・・あいつら全員ガリラヤ人だぞ・・・」―― 【ガリラヤ人は、アラム語のみを話し、漁師や農家のような普通の家系が多かったのだ】

8 「どうやって俺らの言語を・・・? 9 ざっと見てもパルテヤ人、メジヤ人、エラム人、メソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポント、アジヤ、 10 フルギヤ、パンフリヤ、エジプト、クレネのみやこに近いリビア地方に住む人たち、また、首都ローマ、 11 クレテ人、アラビヤ人、ユダヤ人からユダヤ人の神様を信じ、改宗かいしゅうした外国人までいるというのに・・・我々の母国語で彼らの賛美さんびを聞こうとは・・・!!!」

12 「アンビリーバボー、なーにが起―きていまースカ・・・」

「そな馬鹿ネ、驚きネ・・・!」

そこには驚きを共有し合う外国人たちの姿。

13 「何をおっしゃるんですか、酔っ払っているんですよ!」

あまりの光景に見当違いのことを言う人もいた。

救われた3000人

14 すたすた・・・

驚く人たちを前に立ちあがったのは、岩のペテロと他11人の使徒だ。

「ユダヤの同士よ〰〰〰!!!エルサレムに住むみなさん、重大なお知らせがあります・・・よく聞いてください! 15 今は朝の9時。俺たちが酔っているわけがありません! 16 預言者ヨエルの預言がたった今、“起きた“んです!

17 『神は言われる。

私は終わりの日、私の魂をすべての人に注ぐ。

おまえたちの息子、娘は預言をし、

青年は聖なる幻ビジョンを見、

老人は特別な夢を見る。

18 その時、男女を問わず、

私に仕える全ての人へ私の魂を注ぐ。

そして彼らは預言する。

19 天に神秘を。

地にはキセキ的なしるしを起こす。

その時、血と炎と立ちこめる煙を見ることになる。

20 太陽の光は暗闇へ。

月は血のような紅色べにいろに。

これらは、天地の王が来られる栄光の日の前に起きる。

21 そして、天地の王に助けを求める者は誰であれ、“救われる”!』―― 【聖書:ヨエル書2:28-32より引用】

22 イスラエルのみなさん、もう一度言おうッ!!神がナザレ村のイエスを俺たちのもとへ送ってくれた!イエスはその証拠としてキセキや人知を超えた数々のことをしてくれた。そのことを実際に見聞きしてきた、みなさんだからこそ、俺の言葉にウソ、偽りがないことを知っているはずだ!

23 それなのにどうだ、あなたがたは“その手で”イエスを殺した!!!

俺たちの神を、なんとも思っていないローマ人たちの手を借り、イエスを十字架につけてしまったのだ!!!

・・・だが、問題じゃあない。はるか昔から神によって立てられた計画だったからだ!

24 ・・・イエスは死の苦しみを味わったが、神はよみがえらせた。そう、“死”でさえもイエスをおさえることは不可能だった!!

25 ダビデ大王はイエスについて、こう言った!

『𝄞我が神が、共にいること、決して忘れはしない。

すぐ側にいてくれるため、害が及ぶことはない。

26 だから躍る我が心、だから湧き出る喜びの歌!

体が朽ちても、朽ちないこの希望。

27 私を墓に放置せぬ神。

忠誠尽くす者の体を腐敗のままにせぬ神。

28 きみが示してくれる生命いのちの道。

きみといるだけで、絶えない喜び。よりそえば、とこしえの楽しみ』―― 【聖書:詩篇16:8-11より引用】

29 兄弟たちよ、私たちの偉大な祖先であるダビデ大王について断言できることがある。ダビデの墓は今日もこの町にある。 30 ダビデ大王は預言者であり、神がなんと言っているのかも知っていた。ダビデの家系から生まれる者が彼の王になると約束されたことを」―― 【聖書:サムエル記7:12-13、詩篇132:11より引用】

31 「そしてダビデ大王はその約束に確信を持っていたことが分かる。彼はその王について、こう語っているからだ。

『𝄞彼は墓に放置されなかった。

彼の体は腐敗しなかった』―― 【聖書:詩篇16:10より引用】

・・・ダビデ大王はこの言葉で、救世主キリストが復活することを伝えた。 32 神がよみがえらせたのは紛れもなくイエス。俺たちみんなが証人だ!この目で見た・・・! 33 イエスは天に引き上げられ、今は神の栄誉ある右の座に悠々ゆうゆうと座っている。天の父は約束どおり、神の霊ホーリースピリットをイエスに送り、イエスは“彼を”俺たちにも送ってくれた!みなさんがさっき見聞きして驚いたのは、まさに神の霊ホーリースピリットの働きだ・・・! 34 天に引き上げられたのはダビデ大王ではない。彼自身が言った。

『𝄞王なる神より我が王へ

己の敵、己の足下あしもとへひれ伏す日まで、

35 私の右に座れ』―― 【聖書:詩篇110:1より引用】

36 イスラエルの民が知るべきことはこうだ・・・。あなたがたが十字架にかけてしまったイエスこそが神に選ばれし王なのだッ!!!」

37 お、俺たちゃなんてことを・・・

ずっと待ち望んだ救世主を・・・

こ、殺しちっまったぁぁぁ・・・

いやぁぁぁ――・・・

岩のペテロの話を聞いた群衆は、罪悪感から深い悲しみと後悔に沈んだ・・・。

「同志よ・・・我々は、どうしたらいいんですかッ!!」

38 「心を入れ替えろ!新たな生き方をするんだ!その手始めとして、選ばれし王・イエスの名によって洗礼バプテスマを受ければ、神が過ちをゆるし、神の霊ホーリースピリットを与えてくれる!!!

39 神の約束は、俺たちだけのためでなく、俺たちの子孫や遠く離れた人を含めたすべての人間のためにある!俺たちの王である神によって選ばれた全ての人に差し出された約束だ!!!」

40 岩のペテロは他にも多くの言葉を用いて彼らを悟らせたのだった。

――「頼むから世の価値観に流されず、世の手から身を引いておのれを救ってやってくれッ!」

41 多くが岩のペテロの言葉を受け入れ、洗礼バプテスマを受けた。その日だけでも3000人が新たな人生を始め、使徒たちの仲間となったのだ!

でっかい家族の始まり

42 神殿のみやこエルサレム――

イエスの信者クリスチャンたちは使徒たちの教えを毎日聞いて過ごした。時間だけでなく、何から何までも分かち合い、パンをき、一緒に祈る日々。

43 使徒たちを通して多くのキセキを目の当たりにし、全ての人が神の偉大さに感動するばかりだった。

44 神を信じる仲間たちは、愉快に過ごし、なんでも分かち合った。

45 自分の土地や財産を売り払っては、必要な人たちに分け与えた。分かち合える広い心を持っていたのだ。

46 彼らは同じこころざしを持ち、1日のほとんどを教会で過ごした。また、家でも共に食卓を囲い、喜んでごはんを分け合った。 47 仲間たちはそろって神をたたえ、確固たる信心を持っていたために、どんな人からも尊敬された。そんな彼らの姿を見て、多くの人が救われた。そう、王・イエスが次々に仲間に加えていったのだ。

美しの門を自らの足でくぐる物乞い

1 「そろそろ時間か、行こう・・・」

ある日の午後3時ごろ――

岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネは、2人で神殿に向かっていた。この地方では、午後3時になると祈るために神殿に行く習慣があった。

2 神殿へ通じる<美しの門>が見えるところまで来ると、そのわきに生まれながら足の不自由な男が座っているのが見えた―― 【美しの門はおよそ23mの高さの2つの扉がそびえ立つ門。青銅で作られており、金と銀のメッキがはられた、名前のとおり美しい門であった】

すいやせん・・・おねげぇじまず・・・すいやせん・・・

その男は、来る人、来る人に声をかけては物乞ものごいをしていた。

――この物乞いについて説明しよう。彼は、神殿への通り道、<美しの門>まで友人たちに運んでもらっては、そこへ入っていく大勢の人たちに物乞ものごいをするのが日課であった。

3 ――「どうかぁ、恵んでくだせぃ・・・!」

通りすがった岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネにも頭を深く下げて求めた。 4 男に気付いた2人は、足を止めた。

「顔を上げてください!」

5 「!」

岩のペテロの優しい声に反応し、物乞ものごいは顔を上げた!2人がお金をくれるものだと思い、目をキラキラと輝かせている。 6 岩のペテロは手を差し伸べた。

「お金じゃあないが、持ってるものをあげよう・・・!救世主キリスト、ナザレ村のイエスの名によって、立ちあがれッ!」

7 物乞ものごいは岩のペテロに右手をぐいっと引っ張られると・・・ぶるぶるしていた足首がみるみるうちに強くなり、シャキーンと立っているではないか!

8 (あでぇ―――!ゆ、夢なのか・・・?)といった表情を浮かべる物乞ものごいは立っていることへの実感を噛み締めつつも不思議そうに歩き始めた。

「おぉ、おぉ、おぉぉぉ!!!」

神殿へと先を急ぐ岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネについていった。

嬉しくてたまらない物乞ものごいは、ホップ、ステップ、ジャンプ。そんな調子で神をたたえた。


エルサレム神殿――

「ハッハッハ――!ヤッホ―ィ!見ろォ―ィ、おらは立ってるヨォォォ!!!」

などと騒いでいると、

9 「な、なんの騒ぎだ?」


当然のように神殿の中にいた民衆の視線は物乞ものごいへ集まった。

10 「あいつは確か・・・なぬ゙〰〰!!!」

いつも<美しの門>の脇にいた足の不自由な物乞ものごいであることに気づくまで、そう時間はかからなかった。あまりにも信じられない光景に、互いのほっぺをつねりあうほどだった。

ソロモンの回廊で説く岩のペテロ

11 エルサレム神殿・ソロモンの回廊にて――

歩けるようになった物乞ものごいの気分といったら、それはもう最高潮であった。岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネが行く方へはあっちでもこっちでもピタッとくっついていく。この様子を見た民衆は・・・

「先生!す、すごいじゃないですか!」

「何をされたんですか!先生!」

「お、教えてください先生!何をどうしたんですかッ!」

と言って神殿にあるソロモンの回廊にいる岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネにこぞって駆け寄った―― 【ソロモンの回廊は神殿の一部。12mにもなる立派な柱が685本そびえ立ち、廊下の長さは500mにもなる】

12 すると岩のペテロの顔色が変わった。

「イスラエル国の同士よ、何を驚いている?俺たちがこの男を治したと・・・?俺たちが聖く善良がゆえにキセキが起きたのだと・・・? 13 見当違いだッ!いいか、誰でもないアブラハム、イサク、ヤコブ、そして俺たちの祖先が崇拝すうはいした神が、自身の息子であり、選ばれし使者であるイエスにほほ笑んだ!

そのイエスをローマ人たちに引き渡し、死に追いやったのは誰だ?イエスの潔白は明白だったために裁判官ピラトが釈放しようとしたというのに、おまえたちは・・・突っぱねた・・・ 14 それどころか、神に忠誠を尽くしたイエスよりも、殺人犯の釈放を求めたではないかッ! 15 そうやっておまえたちは命の創始者イエスを殺してしまった・・・だがな、幸いにも神がよみがえらせた!!この目で見た俺たちが証人だ。 16 おまえたちがよく知っているこの男が歩けるようになったのは、イエスの名に信頼をよせたからだ。彼を見ろ、おまえたちが見ている非現実的な光景は、イエスを信じるがゆえに起こったのだ・・・!!!

17 イスラエル国の同志、自分が何をしているか、自分でもさっぱりだったからあんな仕打ちができた。いいか、おまえたちの指導者もしかり、誰を相手にしているか知っていたら恐れ多くてイエスに手出しはしなかっただろう・・・。

18 だが、問題じゃあない。神は大昔からこれらのことが起きるとしていた。俺たちのために選ばれた王が苦しみ、俺たちのために死ぬと、神は預言者を通して語ってきた。その神こそがなるべくして実現させたことだ!!

19 分かったなら心と生き方を改めろ!創造主である神のもとへ戻るんだ!そうすれば、おまえたちのあやまちは神によってゆるされる・・・!! 20 そして、王・イエスがすべてを一新する時、選ばれし救世主キリスト・イエスを再び送ってくれる! 21 だが、この世のすべてが元通りになる日まで、イエスは天にとどまる必要がある。これは神に選ばれし預言者たちを通して昔から伝えられてきた。

22 例えば、モーセ。『あるじたる神が、あなたたちに預言者を送る。預言者はあなたがたの民の中より与えられる。彼は私のような存在であり、 23 あなたたちは、彼が言うこと全てを注意深く聞き従うのだ!彼に耳を傾けないものは必ず滅び、神の民イスラエルから引き離される!!!』―― 【聖書:申命記18:15, 19より引用】

24 実にサムエルをはじめ、それ以後の預言者たちはみな、今まさに起こっていることを預言した!!

25 預言者たちは彼らの子孫であるおまえたちに語っていたのだ!そう、神がおまえたちの先祖とわした約束は目の前だ。我らの信仰の父、アブラハムに神は言った。『地にある全ての国はおまえの子孫によって祝福される』と。 26 神は、ご自身の使者であるイエスを復活させたあと、おまえたちイスラエルの民へ真っ先に遣わした。おまえたちを誤った生活から引き戻し、豊かに祝福するためだ・・・!!!」

岩のペテロと雷兄弟ヨハネ VS ユダヤ権力者

1 エルサレム神殿――

岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネがこのように集まってきた人に話をしていると、顔を真っ赤にした数人のユダヤ指導者が突っかかってきた。

祭司や宮の警護隊長、そして権力者であるサドカイ一派の人たちなど、どれもみな権力を持つ者たちだった。 2 彼らは2人が、イエスが生涯してきたこと、また死んだはずであるイエスが復活したという知らせを群衆に教えていることに腹を立てていた。 3 ユダヤ指導者たちは、これ以上ペテロとヨハネにイエスのことを伝えさせないために連行し、投獄してしまった・・・。裁判にかけるというのだ。彼らは決して逆らうことなくユダヤ指導者たちに従った。すでに夕方だったので、彼らは翌日まで牢屋に入れられていた。

4 しかし、岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネの話しを聞いた多くがすでにイエスのことを信じた。その数は男だけでも5000人にのぼる!

5 翌日、神殿のみやこエルサレムにて――

「おい、なんか起きるのかよ?」

「ありゃー、お偉いさんたちばっかじゃねえか」

「なんでも昨日話していた2人の裁判のために呼ばれたらしいぞ!」

エルサレム中から、ユダヤ指導者たち、長老、そして掟の学者たちが岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネの裁判のために招集されていた。

6 大祭司アンナス、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデルや、その家族までもがエルサレム神殿の裁判所につどったのだ。

7 ――前へ!

ついに裁判は始まった。

ユダヤ指導者たちは、大祭司を含め、権力者やそこにいた全ての人の面前めんぜんに岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネを立たせた。厳粛げんしゅくな雰囲気の中、2人は繰り返し質問の雨を浴びせられた。

――「さて、答えなさい!きみたちはこの足の不自由だった男をどうやって治したのですか?え?どんな力を使い、また誰の権限で治したのですか?」

8 ビュンッ!

岩のペテロは神の霊ホーリースピリットに満たされた。

「・・・わが国の名誉ある指導者ならびに長老のみなさん、 9 今、私たちが取り調べを受けているのが、あの足の悪い男が完治されたことについてであり、彼の身に起こった普通では考えられないような素晴らしいキセキに関してなのであれば・・・ 10 ここにいるみなさん、いやそれだけでなく、イスラエル国の全ての民にはっきりとお伝えします。彼は私たちの救世主キリストであるナザレ村のイエスの力によって治りました。“あなたがたが”イエスを十字架につけましたが父なる神がイエスを死からよみがえらせました」

(こ、こいつ!)

「彼は今も“生きている”!!!」

(ぬぅぅぅ、言ってくれましたね・・・!!!)

「足の不自由だったこの男が今こうして元気に立っていられるのものおかげです!!

11 このイエスこそが

『家を建てるために、捨てられた石が、

土台をえるための最も重要な礎石そせきになった』―― 【聖書:詩篇118:12より引用】

と聖書にある、その石だ・・・!

12 人を救うことができるのはイエスの他にいません。この世界で人を救うために唯一与えられた力、それこそイエスの“名”なのです・・・!!!」

力強い岩のペテロの言葉に会場は・・・

13 シ―――ン

「・・・おおお・・・」

イスラエル国を引っ張る権力者たちを目の前にしても、あまりにいさましく語る2人に、そこにいた議員たちでさえもタジタジの様子であった。しかも彼らは明らかに教育を受けているようにも、掟の先生のようにも見えなかったため、イエスと共にいたがゆえに、こうも立派で弁が立つのだと認めざるを得なくなったのだ。

14 その上、実際に足の治った男が、岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネのそばに笑顔で立っているのを見て、権力者たちは返す言葉が見つからない。

15 権力者たちは仕方なく2人を退場させると、まさかのこの事態にどうしたものかと話し合う始末。

16 「・・・うぅぅぅ」

「彼らが起こしたキセキを否定することはまず、“できない”。すでにエルサレム中の者たちの耳に入っていますから」

17 「ですが、これ以上彼らに“あの名前”を使わせるわけにはいきませんよ。どうですか、今後イエスのことを人前で語ったらただじゃすまないと、脅しをかけましょう。そうすればこれ以上問題も広まりますまい」

18 「それは名案です」

話が決まったところで、権力者らはペテロとヨハネを呼び入れ、今後、一切イエスのことを話してはならない、さもなければ今回以上の処罰が待っていると2人にすごみをきかせて強く命じた。

19 (ふん、ここまで言えばひとまず安心でしょう・・・)

そんなふうに権力者らが安心しかけていたときのこと。

「聞かせてください。みなさんは、神が何を望んでいると思いますか。私たちがみなさんに従うこと、それとも神に従うことでしょうか・・・? 20 私たちはおのれの目と耳で見聞きしたことを伝えないわけには・・・!!!」

21 岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネに脅しは通用しなかった・・・ユダヤ指導者たちはついに諦めて2人を釈放した。なぜなら、神が実際に起こしたキセキについて、群衆が神を褒め讃えていたからだ。

22 事実、40年以上も立てなかった人が、完全に治ったのだから当然である。

23 岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネは無事釈放され、晴れて自由の身になると、他の仲間たちのもとに帰った。

「ペテロ、ヨハネ!おかえり〰〰〰!」

「おまえらよく帰ってきた!信じてたぜ!」

「ははは!」

温かい仲間たちの笑顔と歓迎に心安らいだ岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネは、ユダヤ指導者や長老たちに言われたことを一から報告した。 24 それを聞いた仲間たちはみんな、心を1つにして祈った。

――「すべてをべる王、天地創造の神よ! 25 俺たちの先祖であるダビデ大王の口を通し、神の霊ホーリースピリットが言った。

『𝄞なぜ国々はここまで傲慢ごうまんになり、

なぜ民は無駄な計画を立てる?

26 地上の王たちと権力者たちは手を組み、

天地の王と選ばれし王に挑む』―― 【聖書:詩篇2:1-2より引用】

27 この言葉どおり、エルサレムで、ヘロデ総督、ポンテオ・ピラト総督、他の国々、そしてイスラエルの民は一緒になってイエスに挑んだ。イエスこそ、あなたによって特別に選ばれた使者であり、選ばれし王!

28 イエスに挑むため、団結した人たちにより、あなたの計画は実現し、あなたの力と意思によって達成された!

29 我らの王よ、俺たちはあなたの使者だ。今こそ彼らの脅しに目を向け、俺たちが恐れに負けずにあなたの伝えたいことを伝えられるように助けてくれッ! 30 あなたの力で俺たちを奮い立たせ、病人を治し、あなたの特別な使者・イエスの権威によってキセキや神秘を引き起こしてくれッ・・・!!」

31 グラグラグラッ・・・

うおぉ!

祈り終わると同時にその場所が揺れ動いた!

ズオン、ズオ、ズオ、ズオン!

そこで祈っていた全員が神の霊ホーリースピリットに満たされた!そして誰も恐れることなく神の教えを勇敢に語っていったのであった!

一心同体・大同団結

32 イエスの信者クリスチャンたちはみな、心と思いを一つにし、同じこころざしをもっていた。お互いのことを思いやり、誰1人、仲間や困っている人のために自分のお金や持ち物を出し惜しみする者はなく、全てのものを分かち合ったのだ。 33 使徒たちは、すさまじい力を持ってして王・イエスの復活を広めた。そしてそんな彼らを神は果てしなく祝福したのだった。

34 そのため、教会で生活に困っていると言える者はいなかった。土地や家を所有する者はみな売り払い、その金を使徒たちへわたした。 35 使徒たちはそのお金を、必要ある全ての人たちへ配ったのだった。

36 ――励ましのバルナバ――

紹介しよう、その頃イエスの信者クリスチャンたちの中にヨセフという名の男がいた。使徒たちが、励ます者を意して“励ましのバルナバ”と呼んでいた男だ。彼はキプロス出身のレビ人、すなわち外国人だった。

37 励ましのバルナバは自分の土地を売り払い、そこで得た収入を使徒たちのもとに持ってきた。彼については、後ほどさらに詳しく触れることになる。

埋葬まいそうされたアナニヤとサッピラ夫妻ふさい

1 しかし中にはこんな人たちもいた――

男の名をアナニヤ。そしてその妻サッピラ。2人は自分の土地を売ってそのお金を献金しようとした。しかし・・・

2 (これは俺たちの金だ。ちょっとくらいごまかしたからってバチはあたんねぇべ?)そんな思いを巡らせながら、彼は捧げると言ったお金の一部をふところに入れた。

あ、どうも!アナニヤは使徒に用意したお金を手渡した。

「これで“全額”です」

さも、何も無かったかのように、残金を使徒に渡した。その場にはいなかったが妻のサッピラもグルだった・・・

3 「アナニヤッ!」

「い゙ッ」

岩のペテロは鋭い眼差まなざしで見た。

「なぜ悪魔に耳を貸した!なぜ神の霊ホーリースピリットにウソをつき、こっそりお金の一部をふところに入れた? 4 そもそも土地は、おまえのものじゃあないか!例え何に使おうとも誰も責めやしないというのに・・・。なぜこんな悪巧みをした!がっかりだぞ!おまえは、俺達ではなく、“神”にウソをついちまったってことを分かってんのかッ!!!」

5 「ヒィッ!あ゙ッ」

ズ、バタッ・・・

これを聞いたアナニヤは糸が切れた操り人形のように崩れ落ち、死んでしまった・・・。

この事件を後に聞いた人たちは恐怖に怯えた。

6 それから、数人の若者が遺体を包み、墓へ埋めるためにかついで行ったのだった・・・・・・。

7 旦那に起きた悲劇を知らない妻サッピラは3時間ほどしてから、涼しい顔で現れた。

8 「サッピラ、あなたが売った土地の代金はこれで全部かな?」

旦那のことはふせた岩のペテロ。

「はい、間違いないです!」

9 「よくもまぁ夫婦そろって・・・・・・。旦那もしかり、なぜ悪魔の誘いに乗り、神の霊ホーリースピリットを試すことに同意したッ!!耳をすませろ、あの足音が聞こえるか?あれはあなたの旦那をほうむった人たちの足音だ。サッピラ、あなたも同じように運び出される・・・!!!」

10 ゔ、どさっ・・・

岩のペテロが言い終わるやいなや、妻サッピラまでもがその場で息を引き取ってしまった・・・。

ちょうどその時、アナニヤを埋葬まいそうした若者たちが帰ってきた。

――「!」

(奥さんまでもか・・・)

彼らは彼女の遺体も運び出し、旦那の横に埋めた。 11 これを聞いた教会やその他の誰もが恐れを抱いたのは言うまでもない。

地域に敬われるイエスの信者クリスチャン

12 それからも使徒たちは人々のために多くのキセキを起こし、イエスの信者クリスチャンは1つの目的を胸にエルサレム神殿・ソロモンの回廊に定期的に集まった。

13 「あいつらすごいよな!」

「この間のあれ見たか?」

「ああ、かっこいいよな!」

そんな風に話しながらも反対勢力を恐れ、仲間に加わる勇気がなかった人たちも大勢いたが、そんな彼らも使徒たちの働きを尊敬していた。 14 こうして老若男女ろうにゃくなんにょ問わず、イエスを信じる人は増え、仲間に加わっていった。 15 中には岩のペテロの影がかかるだけでも治されるだろうと、彼が通りそうな道路に、布団ふとんごと病人をならべる人もいるほどだ。そしてびっくり仰天ぎょうてん、岩のペテロの影がかかっただけで本当に完治したのだ!

16 民衆はエルサレム中から病人や悪魔に取りかれた人たちを運んできた。そして、1人として、治らずに帰った者はいなかったのだ。

逮捕される使徒

17 さて、この事を知った大祭司とその一味、サドカイ派の人たちは、 18 嫉妬しっとに任せ、無実の罪を着せて使徒たちを牢屋にぶちこんだ! 19 しかし、神が黙っていなかった。

ゆけ・・・神が天使を送ったのだ!

その夜、牢屋――

ビュン――ガチャン、ガチャン・・・

「い゙!」

「しー、こっちだッ」

天使は牢屋の鍵を開け、使徒たちを外へ出した。

20 「さぁぐずぐずせず、神殿付近に行って新たな生き方を伝えるんだ!」

21 「は、はい!!!」

使徒たちは言われた通り、夜明けとともに神殿でドンと人々に伝え始めたのだった!一方、大祭司は部下たちを連れ、ユダヤ人の長老たちを最高議会に招集した。

「キミ、あの不届き者たちを連れてきなさい」

「はッ」

部下は、使徒たちを連れ出すために、牢屋に向かった。

22 「衛兵よ、ご苦労。大祭司が例のやつらをお呼びだ」

「はっ。こちらです」

「・・・え、あ、あれ!見当たりませんね・・・。おい、てめぇら!出てこんか!」

「・・・・・・」

「お、おっかしいな。ははは・・・」

「早く中を確認しなさい!」

「は、はい!」

「い゙・・・い゙ない・・・・・・・?」

使徒たちがいたはずの部屋はもちろんもぬけの殻。

彼らは混乱したまま急いで最高議会へ戻った。

はぁはぁ・・・ドンッ

23 「も、申し上げます!だ、脱獄の模様です!!!鍵もかけ、外から万全に見張っていたにもかかわらず、ろ、ろろ、牢の中は、か、空っぽなんでずぅぅぅ・・・!!!」

24 「キミ・・・、一体何を言っているのですか?」

全くもって信じがたいことを耳にした大祭司と警備隊は、混乱した様子だった。

25 バタンッ!

「報告ですッ!昨日牢に入れた者たちがたった今、神殿付近で説教せっきょうをしております!!!」

別の人が駆け込んできたかと思うと、またもや信じがたいことを・・・。

26 「えーい、次から次へと!今すぐ連行して来なさいッ!」

警備隊長は兵を引き連れ、使徒たちを再び連行しに行った。しかし、彼らをしたう民衆に石を投げつけられて殺されることを恐れたため、強硬手段きょうこうしゅだんをとることができず、お願いするかたちになった。

27 兵士は、使徒たちを最高議会に連行し、大祭司の前に立たせた。そして使徒たちに詰めよった。

28 「“あの男”の名前を使って教えてはならないと、あれほど伝えたはずですが・・・。しかし、あなたがたときたら、教えないどころか、エルサレム中に広めましたね!!それどころか、“あの男”の死を我々のせいにするとは・・・この無礼者どもめ!!!」

29 これに対し、岩のペテロと使徒たちは臆さず主張した。

「われわれは、あなたがたや人間以上に、“神に”従わなければなりません! 30 あなたがたは、イエスを十字架に釘付けにして処刑しましたが、われわれの先祖せんぞが拝んだ神が、イエスをよみがえらせたのです!! 31 そして、名誉ある神の右の座へイエスを座らせ、天地をべる救世主キリストとされた!!過ちを改め、神に立ち返ってゆるされる機会をイスラエル中の人へ与えるために、神はこうしたんです!

32 私たちは確かにこれらのことを目撃しました。神の霊ホーリースピリットもこれが真実だと告げています。神は彼に従う者へ神の霊ホーリースピリットを与えられたのです!」

33 その言葉に感情的になり、目を真っ赤に充血させた議員らは、使徒たちをどう殺そうかと計画を練り始めるほどだった。

34 しかしその時、1人の議員が立ち上がった!

――ガマリエル議員――

彼は掟の学者であり、議員、または、教師として多くのユダヤ人から大変尊敬されている人物だった。 35 彼は使徒たちに一度、席を外させた。

「イスラエルのみなさんや。彼らをどうするかよくよく注意しなされ・・・。 36 チウダの件はご存知じゃろ。チウダは、自分が特別な存在だと言い張り、400人もの人が仲間に加わったが結局は殺され、手下は即座に逃げて行きよった。

彼らは何一つ成し遂げずに終わったな。 37 その後、住民登録の時に起きたことも同様。ガリラヤ人のユダでしたかな?多くの者が仲間に加わりはしたが、彼が討たれると、その仲間も駆け足で逃げおったわ・・・。

38 結論・・・放っておくのがよかろう。もし彼らが私利私欲しりしよくのためにこんな事をしでかすなら、必ずや同じ道をたどるのですから。 39 だがもし、神様からの指示で行っているとしたら、止める事などできやせぬ・・・それどころか神様にけんかを売ることになりかねませんぞ・・・!!!」

「そ、そうですね・・・」

ガマリエル議員は、水をかけるようにして、熱くなった議員たちに冷静さを取り戻させた。ユダヤ指導者たちは、ガマリエル議員の提案をんだ。

40 そこでもう一度使徒たちを呼びいれ、メンツを保つため、とりあえず“むち打ちの刑”を言いわたした。そしてイエスの名を用いて教える事が二度とないようにまたも脅してから、釈放したのだった―― 【むち打ちの刑とは、全て公衆の面前めんぜんで行われる。痛みと共に恥をさらされる刑だった】

41 「いてて・・・ひでぇツラだな兄弟!」

「いやいや、おまえこそ!づッ・・・」

「ははは・・・!」

イエスの為に取った行動で罰せられたことを使徒たちは最高の名誉として心に刻み、傷だらけの体に満面の笑顔を浮かべて議会を後にしたのだった。 42 彼らは、教える事をやめるわけもなく、それからも毎日、ある時は神殿の周辺、ある時は家で伝え続けた。神に選ばれし王は“イエス”だというその最高な知らせゴスペルを。

助人たすけびと七人衆

1 「おい、ふざけるなよ!こりゃ立派な差別だッ!!」

――イエスを信じて従う仲間は勢いよく増えていった。しかし、新たな問題が浮上した。内部からの不満や中傷ちゅうしょうだ。

当時、ギリシャ語を第一言語とするユダヤ人と、へブル語を第一言語とするユダヤ人がいた。

へブル語/ユダヤ人グループが、ギリシャ語/ユダヤ人グループにいる未亡人みぼうじんに食料を均等きんとうに配らないという内輪もめがあったのだ。

2 十二使徒は仲間を集めて提案した。

「みんな聞いてくれ!神の言葉を教える労力をさいてまで、炊き出しに力を注ぐのはよくない。

3 ・・・とは言っても、解決すべき問題だ。そこで、兄弟姉妹たちよ!みんなから評価された7人を選び、連れてきてくれ!神の霊ホーリースピリットと知恵にあふれた者にこの件を一任しよう。 4 そうすれば、俺たちはめいっぱい祈りと神の言葉を教えることに専念できる!」

5 「それはいい!」

仲間たちはこの提案を受け入れた。

選りすぐりの7人を紹介しよう――

ステパノ

神の霊ホーリースピリットで常に満たされた確信の強い男。

それから、ピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナにニコラオ。

ニコラオ

シリヤ州のみやこアンテオケ出身。

7人の中で唯一ユダヤ人ではない。元ユダヤ教の信者だったが、イエスの仲間になることを選んだ。

6 抜擢ばってきされた7人が使徒たちの前に出た。光栄なのだろう、7人ともどこか誇らしげだ。

「よし、おまえたちにこれを一任するッ!」

使徒たちは、助人たすけびと七人衆に手を置いて祈った。

―― 【手を置いて祈る:特別な祝福や治癒、特務に必要な力や神の霊ホーリースピリットがその人に注がれるよう、求めるときに行う行為】

こうして、問題を解決する特務を与えられたチームが誕生した。

7 神の言葉はすごい勢いで広がり続け、仲間は神殿のみやこエルサレムで爆発的に増えていった。驚くことにユダヤ教の祭司までもが大勢イエスを信じて従い、仲間に加わったのだった!

助人たすけびとステパノ

8 さて、先ほど紹介したように、助人たすけびと七人衆の一員となったステパノは、特別に素晴らしく絶大なキセキを起こす力を神に与えられ、それを発揮しまくっていた。

9 そんなある日――

自由民一派がステパノの前に立ちはだかった―― 【自由民とは、ユダヤ人でありながら、外国の地で元奴隷、または、父が奴隷だったが自由の身となり、神殿のみやこエルサレムに引っ越してきた人が集まってできた一派】

一派には、クレネのみやこやエジプトの首都・アレキサンドリヤ、キリキヤ州、アジヤ州から来たユダヤ人がいた。

10 「これこれこういうわけで、あなたたちは間違っている!」

「でもそれってこうですよね?」

「うっ!しかし・・・・・・」

彼らは議論を仕掛けてきたが、こんな調子で神の霊ホーリースピリットがステパノに知恵を与えるので、彼の屈強な言葉に誰1人として歯が立たなかった。 11 (ぬぅぅぅ・・・このまま引き下がると思うなよ・・・)言い負かされた自由民は仲間たちにデマを言いふらすよう手配した・・・。

「みなさーん!!!聞きました?今このステパノという男がモーセと神様をバカにしましたッ!!!」

「なんだって・・・?」

「聞いたか?あそこのヤツ、神様をバカにして回ってるらしいぞ・・・」

12 「捕まえろー!!!」

このような裏工作うらこうさくの結果、群集や長老、掟の学者の怒りをあおり、ステパノは連行された。

エルサレム神殿にある最高議会で裁判になるほどの大ごとに発展したのだ・・・。

最高議会裁判――

13 自由民一派が裁判で根も葉もないウソの証言を言うようにと男を遣わした。

「この方はえらい悪党です!いーつーも神殿と掟に反することばかり並べ立てているのですから!信じられますか? 14 イエスが神殿を破壊して掟を塗り替えるなんて言うのですから!」

15 その場にいた者たちは、助人たすけびと七人衆ステパノをじっとにらみつけていたが、彼の表情は、まるで天使のようであった。

助人たすけびとステパノの最高な知らせゴスペル

最高議会裁判――

1 「この証言はまことか?」

緊迫した空気の中、大祭司の声が響いた。

2 助人たすけびと七人衆のステパノは笑顔であいづちをした。

「この国の親であり、同胞である最高議員のみなさん。我々の先祖をたどれば行きつくのはアブラハム。アブラハムが旅に出る前であり、ハランの町に移る前、そう、メソポタミヤ地方に住んでいた頃のお話――

アブラハムの前に現れたのは、栄光に輝く神だった! 3 『親族を置いて故郷を発ち、私が示す地に行くのだ!』 4 そこでアブラハムはカルデヤ地方を離れ、父が死ぬまでの間、ハランの町に住んだ。その後、神がアブラハムを導いた先は、今日こんにちわれわれが住むこの地!―― 【現在、カルデヤ地方はイラクの一部である】

5 でも神は、一坪の土地、1人の子さえ持っていないアブラハムに、その領土を彼と、その子孫へ与えると約束した!! 6 神は言った・・・

『よいか?アブラハムよ。おまえの子孫は一度この地を離れる。そして外国の地で400年間、奴隷となり、好き勝手にこき使われる。 7 だが、私がその者たちに罰を与え、おまえの子孫を救いだす!彼らは再びこの地で私を讃えるのだ!』―― 【聖書:創世記15:13-14より引用】

8 アブラハムは神と誓約を交わし、その証として行われたのが“割礼かつれい”だった。その後、めでたく息子イサクが産まれ、生後8日目に割礼かつれいの手術を受けた。このイサクもまた、息子のヤコブに割礼かつれいほどこし、ヤコブも同じように息子たちに割礼かつれいほどこし、彼らは後にユダヤの十二部族のおさとなった!

9 十二部族の1人であったヨセフは、私たちの先祖である兄弟からねたまれ、奴隷としてエジプトに売り飛ばされた・・・それでも神は見捨てず、ヨセフと共にいて、 10 あらゆる試練から救い出してあげた。当時、エジプトを治めていたファラオの前に立たされたヨセフは、神に与えられた知恵を使った。おかげでファラオに気に入られ、驚いたことに囚人からエジプト州全土と王宮を治める総理大臣にまで昇格した!

11 数年後、エジプト州とヨセフの故郷のカナンの地に干ばつが起こり、大飢饉だいききんになり、ご先祖は食料の底がつき、大変苦しんだ。

12 しかし、総理大臣・ヨセフが治めていたエジプトはしっかりと対策がほどこされていたため、食料が十分あった。そのことをヨセフの父ヤコブが知った。とっくの昔にヨセフが死んだと思って落胆していた父ヤコブは、息子が生きてそんな偉大なことをしているとは知らず、他の息子たちにエジプトまで食料を買いに行かせた。

13 兄弟たちが2度目にエジプトへ来た時、ヨセフは自分の素性すじょうを打ち明け、ファラオもヨセフの家族について知り、 14 ヤコブや兄弟たち、親戚も含めた総勢75人をエジプトに招き入れた。

15 こうしてヤコブと息子たちはエジプトで天寿てんじゅを全うした。 16 遺体は彼らの故国ここくシケムに運ばれ、アブラハムがハモルの子から銀で買った土地に葬られた。

17 イスラエル人の人口はエジプト州でどんどん増えていき、 18 長い年月が経つと、かつての総理大臣ヨセフを知らない者がファラオとなった。 19 このファラオが、増え続ける我らの子孫、イスラエル人を脅威とし、ひどい扱いをし始めた。その手口ときたらまぁ残虐で、子どもを野原に捨てさせ、そのまま放置して死なせるというものだった。

20 モーセが生まれたのはちょうどこの頃。それはそれはかわいらしい子どもで、両親は3ヶ月間、隠しながら彼の世話をした。 21 しかし、それ以上隠しておけなくなり、助かることを願って川に流した。ところが、それをファラオの娘が拾い、自分の息子として引きとった。 22 晴れて、モーセは王宮で当時最高の英才教育を受けて育ち、言葉遣いから立ち振る舞いまで立派な青年へと成長した。

23 事件が起こったのはモーセが40歳になった頃。モーセが同胞・イスラエル人の住宅街へ足を運ぶと、 24 1人のエジプト人がイスラエル人を虐待している現場に出くわした!モーセは見過ごせず、たちまちそのエジプト人をボコボコにしたが、強く殴り過ぎ、殺してしまった・・・

25 モーセは、同胞を助けるために神より遣わされたと思ってくれるに違いないとふんだが、 26 翌日にもう一度出かけると、今度はイスラエル人同士が喧嘩しているじゃあないか!またもや正義感に駆られたモーセは仲裁に入った。

27 すると暴力をふるっている方の男がモーセを突き飛ばし、食って掛かった。

『止めんじゃねぇ!いつからおまえが俺たちの王になった? 28 昨日のエジプト人みてぇに俺を殺そうってーのか?』―― 【聖書:出エジプト記2:14より引用】

29 これを聞いたモーセはエジプト州からミデアン州まで勢いよく逃げた!!そして、外国の地に住みついたモーセは、そこで妻をめとり、2人の息子をもうけた。

30 それから40年後にモーセがシナイ山ふもとの荒野で燃えるしばの中にいる天使を見た。 31 なんじゃありゃ!と現場に近づいたモーセは、そこで天地の王の声を耳にした。

32 『モーセ!私は、おまえたちの先祖の神・・・アブラハム、イサク、ヤコブが神と呼んだ者だ!』―― 【聖書:出エジプト記3:6より引用】

モーセの驚きは尋常ではなかった!恐れで震えあがり、そのしばを見るのが怖くてたまらなかったところ、 33 神がこう言った。

『まず、靴を脱げ。おまえがあがっているのは聖地だ・・・ 34 私の民がエジプトで苦しむ様子を見た。彼らが助けを呼ぶ声を聞いた。私は、彼らを救うためにここへ来た。来いモーセ。これから、おまえをエジプトへ送り返す』―― 【聖書:出エジプト記3:5-10より引用】

35 だが、モーセは同胞に拒絶された。

と。

それでも神は、“拒絶されたモーセ”を当時の救世主とし、民を治める者として送り出した!!そしてモーセに天使を送り、助けた。燃える柴の中に見た、あの天使が!―― 【聖書:出エジプト記2:14より引用】

36 モーセは伝説に残る数々のキセキによって、イスラエルの民をエジプトから脱出させ、紅海レッドシーを真っぷたつに割って渡り、40年もの間キセキを起こし続けながら荒野の冒険を導いた。

37 このモーセが、

『あなたたちの中から私のような預言者が現れる。彼は同胞から出現する』とイスラエル人に宣言した!―― 【聖書:申命記18:15より引用】

38 このモーセが、荒野で神と人との仲介者となった。すなわち、シナイ山で、神の生命いのちのことばを天使から受け、それをイスラエルの民に与える役を果たした!

39 しかし、ご先祖は、モーセの言うことに従おうとせず、いちゃもんをつけてはエジプトに帰りたがった。

40 ついには兄のアロンにこう言う始末。

『エジプトから連れ出した肝心のモーセが山にこもったまま、どうなったか分からないじゃないか!新たに我らを率いる神々を作ってくれ!』―― 【聖書:出エジプト記32:1より引用】 41 イスラエル国は子牛の像を自らの手で作ったうえ、供え物し、宴会まで始めた・・・

42 そしてまことの神は、イスラエル国がお天道様てんとさまを神だと言って讃えるがままに放っておいた。さらに、預言者アモスが書いた本の中でこう言った。

『イスラエルの民よ・・・。荒野で過ごした40年、私に捧げ物をした事はなかった。

43 あなたは、モロクしんを讃える幕屋テントを運び、星の神ロンパの絵を手にしていた。

これらは、あなたがたが讃えるために作り上げた神々。だからあなたがたをバビロンのかなたへ送ってしまおう』―― 【聖書:アモス書5:25-27より引用】

44 荒野での冒険で先祖は聖なる幕屋テントを神殿代わりに持ち歩いたが、この幕屋テントの作り方は神がモーセに教えたものだった。

45 その後、後継者ヨシュアの指揮で外国を勝ち取り、その地の者を神が追い払った。ご先祖がその地に踏み込んだ時も、聖なる幕屋テントは使用され続けた。そして、イスラエル大王・ダビデの時代まで受け継がれたのだ!

46 ダビデ大王は神の心にかなう男だった。ダビデはイスラエル王国のため、神殿を建てさせて欲しいと願い出たが、 47 結局、ダビデの子・ソロモンが建てることになった。

48 だが、人間の手によってつくられた神殿など、すべての上に立つ神には必要なかった。それは預言者が書き記したとおり。

49 『天は私の玉座ぎょくざ、地は私の足台。

“この私”の家を建てるのか?休む所でも必要なのか?

50 笑わせるな、“すべて”を創ったのは、“この私だ”』―― 【聖書:イザヤ書66:1-2より引用】

51 頑固な指導者たちよ!」

――(い゙、いまなんと・・・???)

「心を神にゆだねず、耳を傾けすらしない!神の霊ホーリースピリットに反抗する姿は、ご先祖顔負けだッ! 52 あなたがたご先祖が傷つけなかった預言者を1人でも挙げてみなさいッ!

しまいには預言されし救世主キリストにまで手をかけた! 53 あなたがたこそが天使から神のおきてを授かり、従わなかった民そのものだッ!!!」

ステパノが残した言葉

54 「な゙に゙い゙ぃぃぃ!!このガァキィー!!!」

そこにいた者たちは歯ぎしりするほど怒り狂った。

55 ブワンッ

そんなことをよそにステパノは神の霊ホーリースピリットに満たされ、天を見上げた。

――!――

ステパノの目には神の栄光が映った。そこには神の右に立つイエスの姿がある。

56 「はは、見ろッ!“あの人”だ!天が開かれ、イエスが神の右に立ってらぁ!!!」―― 【聖書:ダニエル書7:13より引用。預言者ダニエルと同じ光景を見たのだ】

57 「ヴあ゙ぁあああ〰〰知るかぁぁぁぁぁ!!!オォォおおおおおお〰〰!!!」

人々は耳をふさいで叫び狂い、なだれのようにステパノへ向かって突進した。

58 彼らはステパノを街の外まで引きずり出した。ステパノについてウソの証言をした男たちは、後にパウロと呼ばれる男、サウロに上着を手わたした――

すると、すかさず石を投げつけ始めるではないか・・・!!!

「今だ、殺じでぢまえ゙〰!!!」

ブ、ブン、ビュン・・・ドスッ・・・グチャ・・・

(・・・当然の報いだ)と言わんばかりの表情で上着を預かったサウロはそこに立っていた。

59 石が次々とステパノめがけて飛んでくる中だった・・・

――「王・イエス、俺の魂を受け取ってくれ・・・」

と祈っていた。石は容許なくステパノの頭、腹、脚、急所に。彼の命は着々と削られていった。

60 そして致命傷を負い、ひざまずくように、力無く崩れ落ちるとこう叫んだ。

「王よ・・・どうか彼らの過ちの責任を・・・彼らに負わせないでくれ・・・」

ドサッ・・・・・・これが助人たすけびと七人衆の1人、ステパノの最期の言葉となった。そして、初めてイエスの後に続く者となったのであった。

迫害時代

1 (は、ざまぁねぇな・・・)

サウロ青年はステパノの処刑に賛成だった

世は迫害時代――

ギィア〰〰・・・やめろ〰〰・・・あ゙〰〰・・・

イエスの従者クリスチャンおさの1人であった助人たすけびと七人衆の1人であるステパノの死は、迫害の嵐を呼び、エルサレム教会を襲った・・・。

そのため、使徒を除いたほとんどのイエスの信者クリスチャンが命からがら、ユダヤ地方やサマリヤ地方に逃げた。結果、1つにまとまっていたイエスの信者クリスチャンは多方へ散らばることになったのだ。

2 その時、別のところでは――

ぐずっ、ゔあ゙〰〰ん゙・・・ずでばの゙ぉぉおぉぉ・・・

神を信じる男たちがステパノの遺体を埋葬まいそうし、声を大にしてなげいていた・・・。仲間から大変愛されていた男だったのだ。

3 一方、迫害の嵐の中にはサウロもいた――

彼は、イエスの信者クリスチャンを根絶やしにしようと躍起やっきになっていた。彼らの家へ押し入っては、男女問わずひっぱりだし、片っ端から牢屋へぶちこんだのである・・・。

助人たすけびと七人衆ピリポ

4 逃げたイエスの信者クリスチャンたちは、ただ逃げたわけではない。

彼らは行き着く先々で神からさずかった最高の知らせゴスペルを広く伝えていった。

5 都市サマリヤ―― 【イスラエルは大きく3つの地方に分割されていた。北にガリラヤ地方、中央にはサマリヤ地方、南にユダヤ地方があった。都市サマリヤは、文化的背景からユダヤ人にさげすまれていたサマリヤ人の都市だ】

ピリポは都市サマリヤで代々だいだい預言された救世主キリスト・イエスのことを伝えた。 6 話を聞いた人たちはピリポが行うキセキを目の当たりにし、ピリポの言葉に注意深く耳を傾けるようになった。 7 ピリポは人々に取りいた悪魔を次から次へと追い払い、悪魔は大声を出して逃げ出した。

また、ピリポは麻痺まひで体が不自由になった人や、足が悪くて歩けない大勢の人たちを人知を超える力で治した。

8 ――わっしょい、わっしょい、王・イエスにばんざい、ばんざーい・・・・・・

その最高な知らせゴスペルや、素晴らしい出来事に、都市中の人が歓喜の声を上げた!行くとこあっちもこっちも喜びでいーっぱい!

9 さて、そんな中こんなことがあった――

――魔術師シモン――

紹介しよう、彼は都市サマリヤの市民。ピリポが都市に来る前までの間、シモンは魔術で人の尊敬を買っていた。彼は、自分自身を偉大な者だと言いはっていたうぬぼれ者である。

10 しかし、身分の高い者も、低い者もみな魔術師シモンの言うことを信じていた。

「あのお方の力は、神様の偉大な力によるものに違いないわッ!!」

「ああ、シモンさまー!!」

「キャー!シモンさまよー!」

11 魔術師シモンは、その魔術で長い間、市民を魅了し続けた。やがて市民たちは、魔術師シモンのとりことなっていた。 12 そんな都市へピリポがやってきたのだ。ピリポは、神の王国キングダムに関する最高な知らせゴスペルと、イエス・救世主キリストの力について語った。老若男女ろうにゃくなんにょ問わず、サマリヤの市民はピリポの言うことを信じ、洗礼バプテスマを受けたのだ!

13 あの魔術師シモンでさえもピリポが語る最高な知らせゴスペルを信じ、洗礼バプテスマを受けた。それからのシモンは、ピリポからひと時も離れようとしない。彼もピリポの行うキセキや強力な出来事に衝撃を受け、魅了されていたのだ。 14 神殿のみやこエルサレムにいた十二使徒はサマリヤの市民が神の言葉を受け入れたことを聞き、動いた。

十二使徒、岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネが出向くことになったのだ!!!

15 都市サマリヤに着いた2人は、さっそく市民たちが神の霊ホーリースピリットを受けとるようにと祈った。

16 そう、神の言葉を受け入れたサマリヤの民衆は、王・イエスの名によって洗礼バプテスマを受けてはいたが、まだ神の霊ホーリースピリットを受け取っていなかったのだ。 17 岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネが彼らの上に手をおいて祈ると、

・・・スン

「こ、これは!」

イエスを信じた民衆はみなぎる力を感じた!そう、外国人であるサマリヤ人が神の霊ホーリースピリットを受け取ったのだ!

18 使徒たちに手を置かれた人が、次々に神の霊ホーリースピリットを受け取るのを見たシモンは、金を差し出した。

19 「この金をやる代わりにわいにも同じ力を!わいが手を置く人に神の霊ホーリースピリットが授けられるようにそのお力をッ!!」

20 「神より授かった力を“金”でか?・・・おまえ、その金と一緒に消されたいのか? 21 今のおまえを神の働きの仲間に加えることはできん。おまえの心は神を前にして正しくない。 22 心を入れ替えろシモン!悪い思いや欲を捨てて神に祈れ!そうすれば神もゆるしてくれるだろう。 23 おまえは嫉妬しっとや恨みにとらわれ、罪の毒に犯されちまってる・・・」

24 「んなっ!お二人の言ったことがわいの身に起こらぬよう、頼む、神様へ祈ってくれ!!!」

25 その後も使徒、岩のペテロと雷兄弟・弟ヨハネは、救世主キリストを待ち望んでいた彼らに、救世主キリストがイエスであることを伝えた。また、イエスについて見聞きしたことをも。神殿のみやこエルサレムへの帰り道でさえもサマリヤ地方にある数々の町に神からの最高な知らせゴスペルを広めていったのだった。

宦官かんがんの朗読

26 「ピリポっ!さあ南へ下る準備を!エルサレムからガザのみやこに繋がる砂漠の道に向かうのだ!」

助人たすけびと七人衆ピリポにこう伝えに来たのは、神に仕えし天使だった。

27 「は、はい!」

ピリポは早速準備して言われた通りに出掛けたその道中――

エチオピアから来た男に遭遇そうぐうした。なんとその男、エチオピア女王・カンダケに仕える宦官かんがんであり、そのために去勢きょせいまでしている人だった。さらに女王の財政大臣だったのだ!

宦官かんがんは神を礼拝するために神殿のみやこエルサレムまで来ていた。 28 その帰り道に事は起こった――

宦官かんがんが馬車に乗って、聖書、預言者イザヤの書を読んでいるところだった。

29 「――走れ!あの馬車まで行け――」

その時、神の霊ホーリースピリットがピリポの心に語りかけた。

30 ザザッ――!

・・・彼は、肉屋に連れて・・・

ピリポが馬車まで来ると、乗っていた男の声が聞こえてきた。預言者イザヤが記した預言の書を読んでいるようだ・・・。

「失礼!朗読なさってる内容をお分かりで?」

31 「まさか!誰も説明してくれないのに分かるはずがないでしょう!」

どれどれ・・・

宦官かんがんはピリポを馬車に乗せ、自分の隣に座らせた。 32 男が読んでいた聖書箇所はこうだ。

「彼は食肉処理される為に連れてかれる羊のよう。

毛を刈られる羊のような静けさ。

口はつぐんだまま。

33 恥ずかしめられ、

権利がすべて奪われ、

地での人生は幕を閉じ、

子孫について語られることはない」―― 【聖書:イザヤ書53:7-8より引用】

34 「ぜひ教えてください!預言者はいったい誰について語っている?自身についてですか?それとも他の誰かでしょうか?」

35 ピリポはこの聖書箇所を用いて、最高の知らせゴスペル、つまりイエスを伝えた。

36 「あ!」

道を進んでいると、宦官かんがんが指をさした。

「ほーら、あそこ!あそこに水がありますよ!ここで洗礼バプテスマを受けない理由などないでしょう!」

37 ピリピはうなずいた。

「あなたが心から信じるならもちろん!」

宦官は確信に満ちた目でピリピを見た。

「私はイエス・キリストが神の息子であることを信じます」―― 【原本にこの節はないが、後の写本に加えられている】

38 馬車を止めろー!

ヒヒーン!タカタッ・・・

よっこらしょっと・・・

ピリポは宦官かんがんと共に水に足をつけた。そして、その場で宦官かんがん洗礼バプテスマを授けた。

39 彼らが水の中から出てくると、

――ビュンッ

「あ、あれぇ・・・?」

神の霊ホーリースピリットがピリポを連れ去り、宦官かんがんは1人取り残された。何が起きたかがよく分からなかった宦官かんがんだったが、大喜びして帰路についた。

40 港町アゾト―― 【現在のイスラエル国アシュドッド市】

ピリポは、港町アゾトに現れた!

そこから海辺に沿って北上し、港湾こうわん都市カイザリヤに向かった。その道中でも、立ち寄った全ての町や村の住民にイエスについての最高の知らせゴスペルを伝えたのであった。

開眼のアナニヤ

1 ――サウロ――

さて、少し前にあげたサウロが神殿のみやこエルサレムでイエスの従者クリスチャンを殺すとまで脅していた・・・サウロは大祭司のところへ行き、 2 イエスの従者クリスチャンであれば男女問わず捕まえ、神殿のみやこエルサレムへ連行する権限を求めた。大祭司は商業都市ダマスコにあるいくつかのユダヤ集会所シナゴグ宛てに、サウロの権限を記す手紙をしたためて渡した。 3 サウロは手紙を手に、ダマスコに向かった―― 【ダマスコは、ローマ世界の各地と繋がる通商路がいくつもある主要な商業都市だった】

ダマスコまであと少しというところだった――

ピカッ!!!

太陽よりも強い光が天から差し込み、サウロを照らした。

4 「うわあああああっ!!!」

ドサッ・・・

サウロは地面に倒れ込んだ。

「――サウロ、サウロ・・・なぜ俺を攻撃する・・・?――」

5 「・・・主よ、あなたはいったいどなたですか?」


「――俺か?おまえが敵対する者・・・“イエス”だ・・・!!!

6 さぁ、立ち上がり、街に行け。おまえのすべきことは、そこの者が伝える――」

7 サウロと一緒にいた男たちは言葉を失った。彼らに声は聞こえたが、声の主は見えなかった。

8 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

サウロはよろよろと立ち上がった。

「!」

「め、目が・・・?見えない!!!」

一緒にいた男たちがサウロの手をとり、商業都市ダマスコまで連れて行った。

9 目が見えなくなったサウロは、それから3日間自ら断食だんじきした――

10 「――アナニヤ――」

イエスはダマスコにいたイエスの従者クリスチャンの1人、アナニヤに聖なる幻ビジョンを通して語った。

「はい、イエス様。私はここにおります!」

11 「――起きよ。そして<まっすぐの道>に行き、ユダの家にいるタルソ出身のサウロという男を訪ねなさい。彼は今そこで祈っている。 12 あなたがやって来て、彼の上に手を置いて祈る時、見えなくなった目は再び開くという、聖なる幻ビジョンを見せた――」

13 「しっ、しかし、イエス様!私は、多くの人からサウロという男について聞きました!どれも悪い話ばかり。エルサレムにいる仲間たちにしたひどい仕打ちの数々といったら・・・ 14 次の標的は、ここダマスコですッ!!私たちを捕える権限が大祭司から与えられてる人ですよッ!!!」

15 「――行くのだ!俺は重要な使命を果たすのに、サウロを選んだ。彼は他の国々、そこの支配者、王たち、そして迫害をしたユダヤ人やイスラエル国民、さらに遠い首都ローマの地までも、俺のことを伝えさせる。 16 そして俺のためにどれほど苦しまなければならないかも示す!――」

17 「・・・わ、分かりました!」

イエスからの使命を受けいれ、腹を決めたアナニヤはユダの家に行った。サウロに会うと、彼の上に手を置いた。

「兄弟サウロよ。私はイエス様からの使命によって、ここに来た。あなたはダマスコに来る途中でイエス様を見たな。あなたの目が再び開かれ神の霊ホーリースピリットで満たされるようにと、イエス様が私を送った」

18 ぽとぽとっ

そう言うやいなや、サウロの目からウロコのようなものが落ちた。

「はっ!み、見える・・・!」

すぐに立ち上がり、洗礼バプテスマを受けたサウロは、 19 3日ぶりの食事をし、力をみなぎらせたのだった。

サウロ始動

サウロはそれから数日間、商業都市ダマスコでイエスの仲間たちと過ごした。

20 「イエスは神の子だ!!!」

商業都市ダマスコのユダヤ集会所シナゴグを巡り歩き、サウロはイエスのことを伝えた。

21 「えぇ?!おい、あれって・・・」

「うそだろ・・・サウロじゃないか?!あいつはたしか、イエスを信じる者たちをおどし、殺してたんじゃなかったのか?!ダマスコに来たのだって、イエスを信じる者たちを大祭司へ連行するためだろ?」

サウロの言葉を聞いた人たちは目を丸くして驚いた。

22 「いいか、イエスこそが救世主キリストだ!!」

権威と力を与えられたサウロは、力強く語ったのだった。確信を持って話すサウロの言葉には説得力があり、商業都市ダマスコに住むユダヤ人は誰も反論できなかった。

サウロ殺戮さつりく陰謀いんぼう

23 数日後――

「気に入らんなぁ・・・」

何人かのユダヤ人が集まってサウロを殺そうとくわだてた。 24 彼らはサウロを捕まえようと街の門を昼も夜も見張った。

「なんだと・・・!」

しかし、サウロはこの陰謀に気がついた。

25 ある晩——

「サウロさん、こっちです!」

サウロによって最高の知らせゴスペルを教えられたイエスの信者クリスチャンたちが、街の脱出ルートに導いた。

ザザザ、ズルズルズル、ドスッ

彼らはサウロをかごにのせ、城壁じょうへきの穴を通して吊り降ろし、見事脱出させたのだった。

(よし・・・)

エルサレム教会に現れる元・迫害長

26 神殿のみやこエルサレム――

その後、サウロはイエスの従者クリスチャンたちと交わろうと考えていた。

しかし――

「サウロたって、あのサウロだよなぁ・・・」

「ひぃ、罠だよ!罠!」

まだサウロを恐れていたイエスの信者クリスチャンは大勢いた。

27 しかし、サウロを受け入れた男が1人だけいた・・・

――励ましのバルナバ――

励ましのバルナバは、サウロを使徒たちのもとへと連れていった。

バルナバはサウロがイエスを見たこと、イエスの従者クリスチャンになったいきさつを説明した。イエスがサウロに語ったことや、サウロが商業都市ダマスコでイエスについて大胆に語ったことまで。 28 励ましのバルナバのおかげで、サウロはイエスの従者クリスチャンたちの家に住むようになり、神殿のみやこエルサレムでもイエスのことを伝え始めた。

29 一方で、ギリシャ語を話すユダヤ人とはよく口論になった。そうして、彼らはサウロを殺す計画をくわだて始めた。 30 そのことを知ったイエスの従者クリスチャンたちはサウロを港湾こうわん都市カイザリヤに連れていき、そこから港のみやこタルソに送った。

31 こうしてサウロはイエスの仲間となり、ユダヤ、ガリラヤ、神殿のみやこエルサレム教会に晴れて平和な時代が戻ったのだ!

神の霊ホーリースピリットに助けられ、各地の仲間たちの確信はますます強まった。彼らは、ライフスタイル全てをもってして神へ従順となり、敬意を表すようになった。それと同時に教会もドンと成長していったのだった。

全身麻痺まひ歴8年の男アイネヤ

32 ルダの町――

岩のペテロは、神殿のみやこエルサレムの周辺を旅し、ルダの町に住むイエスの信者クリスチャンたちのもとを訪れていた。

33 岩のペテロはそこで、全身が麻痺まひし、8年間寝たきりだったアイネヤという男に出会った。

34 「アイネヤよ。救世主キリスト・イエスがあなたを治す・・・起き上がり、布団ふとんを片付けて行くんだ!」

スッと彼は起き上がった!

「はは、はは、はははは・・・動けるぞおおお!!!」

35 ルダの町人とサロン平原一帯の人たちはみな、麻痺まひしていたアイネヤが元気に歩き回っている姿を見て、王・イエスに従うことを決めた。

鹿のドルカス

36 港町ヨッパ――

さて、この町にイエスの従者クリスチャンであるタビタという女がいた。

――ドルカス・本名タビタ――

紹介しよう、彼女は、ギリシャ名で鹿しかを意味するドルカスと呼ばれ、いつも貧しい人にはお金を与え、必要がある人を助け、地域社会に大きく貢献している親切な人だった。

37 岩のペテロがルダの町にいた頃のこと――

鹿のドルカスが病気で亡くなってしまった。ヨッパの町人は悲しみ、彼女の体を丁寧に洗い、2階に遺体を安置した。

38 港町ヨッパにいたイエスの従者クリスチャンたちは、そう遠くはないルダの町に岩のペテロがいることを耳にした―― 【港町ヨッパからルダの町まではおよそ10㎞】

ま、まだ希望があるかもしれん・・・急げ!

芽生えた希望を胸に、すぐさま2人の使いを送りだした。

ルダの町――

あッ!いたッ!

港町ヨッパからの使いは岩のペテロを見つけた。

「ぺ、ペテロさん、急いでヨッパまで来ていただけないでしょうかッ!!!」

39 岩のペテロは事情を聞くと、すぐに港町ヨッパへ向かった。到着すると、鹿のドルカスの遺体が置いてある家の2階に通された。そこには鹿のドルカスを取り囲むたくさんの女たちがいた。彼女たちは夫を亡くし、貧乏な暮らしをしていた人たちだった。そう、鹿のドルカスが面倒を見てくれたおかげで生活できていたのだ。

「見てください!この服も、この上着も、ドルカスが私たちのために作ってくれたんです・・・ゔッ・・・」

40 岩のペテロは、部屋にいた人たちに出てもらった。そして、鹿のドルカスの横にひざまずいて祈った。

「ドルカス、起きなさい!」

すると、彼女は目を開いた!なんと岩のペテロを見るなり、すぐに起き上がったのだ! 41 岩のペテロは、彼女の手をとって立ち上がらせると、外で待っていた人たちを中に入れて、その姿を見せた。

「は、ははは、ド、ドルカスが生き返った!!!キセキだわ!!!ペテロさん、イエス様、ありがとう!!!」

悲しくて泣いていた人たちの涙は、歓喜の涙へと変わった! 42 この噂は町を駆け巡った。そして、町中の人が王・イエスを信じる決断をしたのだ!

43 ――その後、岩のペテロは港町ヨッパの革細工かわざいく職人・シモンの家にしばらく滞在することにした。

百人隊長の聖なる幻ビジョン

1 港湾こうわん都市カイザリヤ――

――コルネリオ百人隊長――

紹介しよう、この都市にはコルネリオというローマ軍イタリヤ隊百人隊長がいた。 2 彼や彼の家族、家臣たちも神を強く信じており、いつも神に認められた生き方をしようと励んでいた。貧しいユダヤ人に喜んで必要なものを与え、祈ることはつねで、忘れることはなかった。


3 ある日の午後3時ごろ――

「――コルネリオ!――」


鮮明な聖なる幻ビジョンの中、天使に話しかけられたコルネリオ。

4 「はっ、はいっ!何のご用でしょうか?!」

コルネリオは恐怖いっぱいの瞳で天使をじっと見た。

「――神は、あなたが頻繁ひんぱんにする祈りにいつも耳をかたむけている。貧しい人たちに物を与えるあなたの姿を見て、あなたを助ける準備をしているのだ。神はあなたについて何もかも知っている。 5 港町ヨッパに使いを送り、シモン、または、岩のペテロと呼ばれる男を探すのだ。 6 彼は海辺に住む革細工かわざいく職人シモンの家にいる――」

7 シュン――

伝えるべきことを言うと、天使はあっという間に消えてしまった。コルネリオ百人隊長は、すぐに2人の召使いと1人の兵士である部下を呼んだ。この兵士は、コルネリオ隊長によく仕える部下で、神に従う者だった。


8 「・・・と、いうわけだ・・・頼んだぞ」

「はッ」

コルネリオ百人隊長は3人にたった今起きたことを全て話し、港町ヨッパへ送り出した。


9 翌日の昼、3人は港町ヨッパ近くまで来た。

その頃、ヨッパにいる岩のペテロは、家の屋上で祈っていた。


10 ぐぅぅぅ・・・

お腹が減り、食事ができるのを待っていると聖なる幻ビジョンを見た。


11 グオ――ン・・・

「ん・・・?」

天が開いた???そして、4すみがピンっと張られた大きな布が天から下りてくるではないか!布の中央には何か乗っているようなたるみがある。 12 よく見ると、そこにはあらゆる種類の動物、爬虫類はちゅうるい鳥類ちょうるいやらがいた。


13 「――起きろペテロ。この中から好きな生き物を選び、殺して食べるのだ――」

14 「そんな!俺は汚れたものや、食べるべきでないものは一度も食べたことがない!」

とっさに聞こえた神の声に岩のペテロは焦りをみせた。

15 しかし、天の声は続く。

「――私がこれらのものをきよくした。だからもうきよいのだ。ふさわしくない、などと言ってはならない――」

「し、しかしっ・・・!」

16 スゥ――

こういったやりとりが3回続いた後、生き物が入った布は天へ戻っていった。

17 「これはいったいどういう意味だ・・・」

岩のペテロが聖なる幻ビジョンの意味について思いをめぐらしていると・・・

すみませーん!コンコンコンっ


コルネリオ百人隊長から送られた3人が、革細工かわざいく職人シモンの家の戸口にいた。


18 「こちらにシモン・ペテロさんはいらっしゃいますか?」


19 岩のペテロがまだ聖なる幻ビジョンのことを考えていると、

「――よく聞け、3人の男があなたを探しに来た。 20 1階に下りて彼らに会うんだ。心配はいらない。彼らを呼んだのは私だ。彼らと共に行け――」


それは、神の霊ホーリースピリットだった。

21 ――ガチャ

「お探しのシモン・ペテロは俺だが、いったい何の用で?」

22 「コルネリオ百人隊長よりもらったことづけを伝えにまいりました。それは、夢の中でした。天使より、あなた様の話を聞くため、家に招くようにとお告げがあったのです。

コルネリオ隊長は、神様をこよなく愛す善人です。また、その地方のユダヤ人に大変うやまわれている方です」


23 岩のペテロはうなずいた。

どうぞ中へ・・・

3人の使いを家に招き入れた。その晩、彼らに食事をふるまい、家に泊めたのだった。

翌朝――

岩のペテロはコルネリオ隊長のもとへ出掛けた。港町ヨッパのイエスの従者クリスチャンたちも何人か一緒に来た。

24 翌日、港湾こうわん都市カイザリヤ――

(シモン・ペテロ様がもうすぐ・・・)

「準備は整っているか?」

「はッ!!」

コルネリオ百人隊長は、家族や親戚、仲間を家に招き、岩のペテロを迎える準備は万端。みんなで
今か今かと待っていた。

25 コルネリオ隊長!シモン・ペテロ様をお連れしました!

岩のペテロが家に踏み込むと――

ペ、ペテロさまー!!!

コルネリオ百人隊長は彼への敬意から岩のペテロの前にひれ伏して褒め讃えたのだ。


26 「顔を上げろ!俺はあなたとなんら変わらない人間だ・・・!」

27 岩のペテロはコルネリオ隊長と話しながら家の奥へ進んでいった。

「ようこそ〰〰!!!」


岩のペテロを歓迎するため、そこにはたくさんの人が集まっていた。


28 「・・・ユダヤ人とユダヤ人以外の人が友好関係を持つことや、ユダヤ人以外の家の訪問は、俺たちユダヤ人の掟で禁じられていると知っていますね。だが、その資格があるか、聖いかどうかを俺が測るべきでないと神が示してくれた。 29 だからこの招待を拒まなかった。さあ、俺を呼んだ理由を聞かせてもらおう」


30 「4日前です・・・私は祈っていました。すると、ちょうど今と同じ3時ごろに、突然美しい衣に身を包んだ人が現れて、 31 こう言いました。

『神はあなたの祈りに耳をかたむけている。貧しい人たちに物を与えるあなたの姿を見て、あなたを助ける準備をしている。あなたの全てを知っている。 32 港町ヨッパに使いを送り、シモン、または、ペテロと呼ばれる男を探せ。彼は海辺に住む革細工かわざいく職人シモンの家にいる』と!

33 そこですぐにあなたのもとへ使いを送りました!本当にようこそおいで下さいました!我々の王があなたにお命じになったことを1つ残らず伺うため、神様の前にこうして集まったのです!」

コルネリオ百人隊長の目は喜びのあまり輝いていた。

コルネリオ百人隊長と岩のペテロ

34 岩のペテロは息をつくと語り始めた。

「たった今、神は誰もひいきしないということがよくわかった。 35 神を心から愛し、正しく生きるなら、人種や国籍は関係ないということが! 36 神がイスラエルの民に告げた最高な知らせゴスペルとは、“救世主キリスト・イエスを通して平和が実現した”ということ。イエスこそが全ての民をべる王!

37 ユダヤ全土で起きたことは知っているだろう・・・それはガリラヤ地方で洗礼者バプティストヨハネが洗礼バプテスマを受ける必要があることを伝えたことから始まった。

38 ナザレ村出身のイエスについて耳にしたと思うが、神は神の霊ホーリースピリットと、力を与えることにより、彼が約束されし王であることを示した。イエスは行く先々で人々のために生きた。悪魔に支配された者を解放し、神が共にいることを証明した!

39 俺たちはユダヤ人とイスラエルの民の間で、イエスのありとあらゆる働きを目にした。それからイエスは、木製の十字架にかけられて殺された・・・ 40 その3日目には神の手によって生き返り、その姿をおおやけにした! 41 神から証人として選ばれた俺たちへのみその姿をあらわにした。俺たちは復活したイエスと飲み食いさえしたんだ!!

42 俺たちは、すべてのユダヤ人にイエスこそが生きた人から死人までの全人類を裁く、神より選ばれし裁判官であることを伝えるように命じられた。

43 イエスを心底信じる人は誰でも、イエスの名によって過ちがゆるされる。これにはすべての預言者が同意した・・・!!!」

外国人に下る神の霊ホーリースピリット

44 岩のペテロが話している最中だった――

ボッボゥボゥボゥボゥ・・・

話しを聞いていた全員の上に神の霊ホーリースピリットが下るではないか!

45 (な、が、外国人にぃぃぃ・・・?!!)

港町ヨッパから岩のペテロのお供をしていたユダヤ人は目を丸くした。

46 彼らは話したことのない外国語で語り、神を讃えはじめるではないか! 47 ペテロは目を輝かせた。

「これを見て、だれが彼らの洗礼バプテスマに反対できる?

俺たちユダヤ人同様、彼らも神の霊ホーリースピリットを受けとったッ!!!」

48 岩のペテロは、仲間たちに救世主キリスト・イエスの名によって、コルネリオ百人隊長とその仲間、親戚へ洗礼バプテスマを授けるように指示した。

それからコルネリオ百人隊長は、岩のペテロに数日間滞在するように頼んだ。

帰還した岩のペテロ

1 神殿のみやこエルサレム――

ユダヤ地方にいた使徒とイエスの信者クリスチャンたちは、ユダヤ人以外の人も最高の知らせゴスペルを受け入れたことを聞いた。 2 しかし、岩のペテロが神殿のみやこエルサレムに帰ってくると、それを非難するユダヤ人もいた・・・。

3 「ちょっとちょっと、ペテロさん!ユダヤ人でないうえに、割礼かつれいも受けていない外国人たちの家にお邪魔しただけではなく、食事まで共にしたそうではないですか!!なんてことを・・・!!」

4 などと言うユダヤ人たちに対し、岩のペテロは事の経緯いきさつをこのように説明して聞かせた。

5 「港町ヨッパにいた時のことだ・・・

祈っていると、聖なる幻ビジョンを見せられたんだ。天が開いて、4すみがピンッと張られた大きな布が下りてきた。 6 のぞいて見ると、そこにはあらゆる種類の動物、汚れたもの、爬虫類はちゅうるい鳥類ちょうるいまでいた。 7 すると・・・『ペテロよ、起きなさい。この中から好きなものを殺して食べなさい』という声がしたんだ! 8 もちろん俺は反論した。『王よ、俺にそんなことはできない。俺は汚れたものや、食べるべきでないものを口にしたことがない!』と。

9 すると、天の声は『私がこれらのものをきよくした。だから食べるべきでないなどと言ってはならない』と言うんだ。 10 それでも信じられず、三度も同じやり取りをすると、布は天へ引き上げられていった・・・ 11 とその後すぐ、俺が滞在していた家の戸口に3人の使者が立っていた。俺を迎えにカイザリヤから送られてきたと言うのだ! 12 神の霊ホーリースピリットが俺にためらわず彼らと行くように言うので、ここにいる6人の仲間と一緒にカイザリヤにあるコルネリオ百人隊長の家へ向かったんだ。

13 コルネリオ百人隊長に会うと、4日前に天使が現れ、彼に告げたことを話してくれた。『港町ヨッパに使いを送り、シモンまたは岩のペテロと呼ばれる男を招き入れなさい。 14 彼の話により、あなたの家族そして家臣まで全員が救われる』と告げられたと言うのだ・・・。 15 そこで俺が話し始めると俺たち同様に神の霊ホーリースピリットが彼らにも下るからびっくりッ!!!

16 そして、イエスが『洗礼者バプティストヨハネは水の洗礼バプテスマを授けるが、あなたたちは神の霊ホーリースピリットにより洗礼バプテスマを受ける』と言ったことを思い出した。 17 神は、救世主キリスト・イエスを信じた俺たちと同じ贈り物を外国人にも与えたんだ!神がすることに誰が反対できる!!!」

18 「そ、そんなことが・・・!!!はは、神は人種にかかわらず、誰の心でも一新させて永遠の命エターナルライフを与えてくれるんだ!!!」

ユダヤ人のイエスの信者クリスチャンたちは、岩のペテロの言葉を聞くと、非難をやめ、むしろ、これについて感謝の声をあげたのだった!

三大都市アンテオケ

19 助人たすけびと七人衆ステパノの殺害から始まった迫害がイエスの信者クリスチャンたちを地方に散らした。

ある者は130㎞以上北に離れたフェニキヤ州へ――

ある者は20㎞以上東に離れたキプロス島へ――

さらにはフェニキヤ州を越え、600㎞以上も東にある三大都市アンテオケにまで逃げた者がいた――

逃げついた先々で、ユダヤ人のみにではあったものの最高の知らせゴスペルを伝え続けたのだった。

20 三大都市アンテオケ―― 【現在のトルコに位置する。首都ローマ、エジプトの首都・アレキサンドリヤに次いで、アンテオケは古代ローマ時代最大級の都市であった。活気のある商業の中心地であり、東洋の世界への入り口だった。また、水商売も盛んで、様々な神々を拝んでいる都市でもあった】

キプロス島や神殿のみやこエルサレムから1000㎞以上離れたクレネのみやこ出身のイエスの信者クリスチャンたちは、三大都市アンテオケに行き、ユダヤ人ではない人たちに最高な知らせゴスペル、つまりイエスについて熱く広めていった。

21 彼らは、王・イエスによって力で満たされ、おかげでたくさんの人がイエスを信じ、ついて行く決断をした。 22 その働きを知ったエルサレム教会は、三大都市アンテオケに励ましのバルナバを送った。

23 神に祝福されたアンテオケのイエスの信者クリスチャンたちを見て、バルナバの心は躍った。

――「王・イエスをいつも信頼し、心を尽くして仕えるんだッ!」

24 励ましのバルナバは神の霊ホーリースピリットと信仰に満ちた立派な男だった。バルナバを通してイエスに従う人が増し加えられた。

25 それから励ましのバルナバは、港のみやこタルソにいるサウロを探すために三大都市アンテオケを去った―― 【港のみやこタルソは三大都市アンテオケから海を渡れば150㎞ほどの位置にある】

26 港のみやこタルソ――

「お、サウロッ!」

サウロを見つけると、彼を連れて三大都市アンテオケに戻った。そこでおよそ1年間、共に過ごしたのだった。

励ましのバルナバとサウロは教会でつどうたびにイエスのことを教えた。三大都市アンテオケで初めて、イエスについて行く彼らを見て、“クリスチャン”と呼ぶようになった。

27 そのころ、神殿のみやこエルサレムにいた数人の預言者が三大都市アンテオケに出向いた。

28 三大都市アンテオケ教会にて――

その中の1人、預言者アガボが神の霊ホーリースピリットに満たされ、語り始めた。

「全世界に大飢饉だいききんが来る。ほとんどの国の食料が底をつくだろう」

この飢饉ききんは皇帝クラウデオの治世ちせいに起きたものであった―― 【紀元45–54年のこと】

29 預言の日は来た――

三大都市アンテオケのイエスの従者クリスチャンたちはユダヤ地方に住む兄弟姉妹たちを助けようと、 30 教会からお金を集めた。この集められたお金は励ましのバルナバとサウロに託され、ユダヤ地方の長老たちに贈られたのだった―― 【エルサレム教会によって建てられたアンテオケ教会だが、この大飢饉だいききんが起こった時、生みの親とも言えるエルサレム教会の窮地きゅうちを救うことになったのであった】

迫害第二波

1 このころ、さらなる困難が教会を襲った――

んぐぁぁぁ、キャー、あ゙ぁぁぁ・・・

ヘロデ王が教会に通う多くの人に危害を加え始めたのだ・・・。

2 そんな中、悲劇は起こった――

スパンッ・・・

――ヤ゙ゴブゥゥゥ〰〰!!!

新たな王ヘロデは、十二使徒の1人である雷兄弟・兄ヤコブの首を切るように命じ、公開処刑されたのだ・・・。

3 ヘロデ王ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい・・・

(な゙、喜んでいるぞ・・・!)

もちろん、喜んだ民衆とは、イエスに反対しているユダヤ指導者たちであった―― 【特にパリサイ派は、ヘロデ党を支持していなかったため、喜んでいる姿を見てヘロデは驚いたのだ】

ヘロデ王はしめたとばかりの表情を浮かべた。

「ペテロも捕えろ!」

「はッ」

―― 【ヘロデ王は総督だったが、祖父ヘロデ大王の栄光のなごりからそう呼ばれた。ヘロデはローマ帝王からイスラエルを治める権威が与えられており、敵になりかねない新たなナザレ派を鎮圧ちんあつするため、見せしめとしてヤコブを処刑したのだ】

この一件は、“種なしパン祭”の間に起こったのだった。 4 とばっちりで牢獄に入れられたにもかかわらず、岩のペテロは、厳重な監視のもとに置かれた。看守たち4人1組のグループを4つ作り、交代制で完全な監視体制を整えた。

(にひひひ、貴様の命も祭明けまでだぞぃ・・・)

ヘロデ王は岩のペテロを公開裁判にかけて処刑してやるつもり満々だったが、“種なしパンの祭”が終わるまでは待とうと考えていた。

5 また、別の場所では――

神様!我らの兄弟ペテロを助けてくれ・・・!

投獄されている岩のペテロのため、教会みんなで祈り続けていた。

牢獄脱走プリズンブレイク

6 裁判を翌日にひかえた夜――

岩のペテロは、2つの鎖につながれ、2人の兵士の間で眠っていた。他にも数名の兵士たちが、岩のペテロの牢獄を監視している・・・。

7 すると突然・・・

ピカ――――ンッ!!!

牢獄の中が一瞬にして光で溢れた!

トコトコ・・・

光の中から現れたのは、紛れもなく神より送られし天使だった。

天使は岩のペテロを起こそうとそのわきをたたいた。

「ん?い゙ッ!」

「さあ、早く立て!」

すると、岩のペテロの手にガッチリかけられていた頑丈な鎖が、ポロッと難なくはずれるではないか!

8 「着替えてくつをはくんだ」

天使に言われるがままにする岩のペテロ。

「さあ上着も着て、私について来いっ」

9 (あぁ・・・天使さま・・・)岩のペテロは、夢なのか現実なのかおぼろげなまま天使について行った。

10 ブオンッ、1つ目・・・ブオンッ、2つ目・・・

岩のペテロと天使は、2つの門をなんなく突破した・・・。さて、いよいよ街に通じる鉄の門アイアンゲートに差し掛かった。

さすがにここは簡単に通れないだろう・・・

ゴゴゴゴォォォ・・・

ひ、ひとりでに鉄の門アイアンゲートが開き始めた!

門をくぐり、外に出てからある程度進むと、

ビュンッ・・・

天使は岩のペテロを置いていなくなった・・・。 11 ハッと我に返った岩のペテロ。

「い、今のは・・・夢・・・じゃない!!!俺のために神が天使を送り、ヘロデ王やユダヤ人たちの悪だくみから救い出してくれたんだッ!!!」

12 そう悟った岩のペテロは、ヨハネ、通称マルコの母・マリヤの家に向かった。その頃、彼女の家では、大勢の人が集まって祈りをささげていた。

13 ドンドンドン・・・!

岩のペテロがドアを叩くと、女召使いロダがドアを開きに来た。

14 「俺だ、開けてくれッ」

「!」

(この声は、ペテロ様だわ!!!)

「み、みんな――!」

ロダは嬉しさのあまり、ドアを開けることさえ忘れ、家のみんなに伝えに行った。

「ペ、ぺ、ペテロ様が戸口に!!!」

15 「おかしなことを言うなよロダ」

「ほんとなんだってばッ!」

みんなロダをなだめようとしたが、それでも彼女は本当だと伝え続けた。

「ペテロの守護天使でも見たんだろう」

に受けなかったほど、信じられないことだったのだ―― 【ユダヤ人の中には、自分と生き写しの姿をした天使がいつも護衛していると考えている人もいた】

16 ドンドンドンドンドン・・・!

そうこうしている間も、外でドアをたたき続けていた岩のペテロ。

「どーちらさんですかぁ・・・?」

ぎぃぃぃ・・・

「ぺ、ぺ、ぺ、ペテロ〰〰?!!」

ドアを開けたイエスの信者クリスチャンたちは、岩のペテロを見て、目ん玉が飛び出そうになった。

17 「し!」

岩のペテロは、手を上げて静かにするよう合図した。

「ほぉ、ほんものか???」

「ったりめーだ」

それから、神が牢獄から連れ出してくれた次第を声の加減に気をつかいながら伝えた。

「イエスの弟ヤコブや他の仲間たちにこれらについて伝えるんだ」

そう言うと岩のペテロは、他を当たりに行った。

18 翌日、牢獄――

・・・どこへ行った!!!・・・

牢獄では岩のペテロがいなくなったことで大騒ぎ!16人の番兵たちは特に取り乱していた―― 【囚人を取り逃した番兵は、囚人の刑を負わなければならなかったからだ】

19 ヘロデ王は隅々まで探したが、もちのろん、見つけることはできなかった。

「閣下、我々は、抜け目なく見張っておりました!!!」

「えーぃ黙れ、つかいもんにならん無能め、全員死刑だ!」

「ご、ご、ご勘弁をぉぉぉ」

ヘロデ王は番兵たちを尋問した後、処刑したのだった・・・。

ヘロデ王の最期

その後、ヘロデ王はユダヤ地方から港湾こうわん都市カイザリヤに行き、しばらく滞在した。 20 世に飢饉きががはびこっている中、港のみやこツロとシドンは、ヘロデ王からの食糧の支援を必要としていた。その地方は王の国から食糧を得ていたからである。

しかし、ヘロデ王は、ツロとシドンの人々に対して強い敵意を抱いていたため、両都市は和解を求める使節団しせつだんを遣わした。その末、ヘロデ王の側近・ブラストを味方につけることに成功したのだった。

21 側近・ブラストを味方につけた日にヘロデ王は使節団しせつだんと会うことを決めた。

港湾こうわん都市カイザリヤ――

彼は美しい王服を身にまとい、王座に座って演説を始めた。

22 「神の声だ!」

「これは人の声ではない、神の声だ!!」

「うぉー神の声だ!!!」

その演説を聞いた人たちがこう叫び続けた。 23 神が受けるべき歓声を浴び、うぬぼれたヘロデ王は、天使にたたかれ、やまいにかかり、体内を虫に食い尽くされて死んだのだった。

24 ――神の知らせが、ますます広まり、さらに多くの人の耳に入った。 25 励ましのバルナバとサウロは、神殿のみやこエルサレムでの使命を終え、マルコと呼ばれたヨハネを連れて神殿のみやこエルサレムから600㎞強離れた三大都市アンテオケに戻ったのだった。

神からの指名

1 三大都市アンテオケ――

アンテオケ教会の預言者や教師である指導者たちはこんな顔ぶれだ。

励ましのバルナバ

黒人のシメオン

クレネのルキオ

ヘロデ王の幼なじみ・マナエン

サウロ

2 ある日、このメンツ一同が天地の王に仕え、断食だんじきしていた時のこと――

「――励ましのバルナバとサウロに“わたしの”特務を一任する――」

「――“わたしが”彼らを任命した――」

神の霊ホーリースピリットだった。

3 教会は、断食だんじきして祈った。そして、この2人に手を置き、祝福を祈った後、特務のために送り出したのだった。

いざキプロス島へ

4 港のみやこセルキヤ――

励ましのバルナバとサウロは神の霊ホーリースピリットに導かれ、三大都市アンテオケから港のみやこセルキヤに下ってきた。そこから船に乗って、地中海に位置するキプロス島に向かうためだ―― 【キプロス島は、ユダヤ人の人口が多く、バルナバの故郷でもあった。面積は9251㎢で、日本の四国、約半分の島だ】

5 キプロス島の都市サラミスで下船――

「はは、懐かしいな・・・!」

励ましのバルナバがこぼした。

さっそく2人は、助手・マルコと呼ばれるヨハネとともに都市サラミスにあるユダヤ集会所シナゴグ最高の知らせゴスペルを伝えた。

6 キプロス島のみやこパポス――

島中を回り、都市サラミスの反対側に位置するみやこパポスに着いた。

魔術師エルマ

そこで、ユダヤ人の魔術師エルマに出会った。自称・預言者、その名をバルイエスと言い、ギリシャ名がエルマだった彼は偽預言者だ。

7 魔術師エルマは、その地方の総督であるセルギオ・パウロの世話になっていた。セルギオ・パウロ総督は非常に賢く、神の言葉をぜひとも聞きたいと、励ましのバルナバとサウロを屋敷やしきに招待したのだ。

8 しかし、これに猛反対したのは、魔術師エルマだった。総督にイエスを信じてもらいたくなかったのだ。

9 ドヒュン――

だがサウロ、またの名をパウロは、神の霊ホーリースピリットに満たされ、魔術師エルマをギロッとにらみつけた・・・

10 「このペテン師め!おまえのような悪魔の子は、正しい者の敵だ。真理を曲げることが生き甲斐がいか? 11 自業自得だ、神がおまえの目からしばらく光を奪う。おまえは、太陽の光さえ見えなくなる」

「!」

エルマの表情が凍りついた・・・

「あ、あ、あぁぁぁ〰〰。め、目が〰〰!だ、誰か手を貸してくれ〰〰!!!」

本当に目が見えなくなったのだ!ふらふらしながら、手をひいてくれる者を探しまわり始めたエルマ。

12 (か、神の偉業いぎょうだ・・・)セルギオ・パウロ総督は、この様子を見て、イエスを信じた。イエスの教えに心から感心したのであった。

パウロが明かす最高な知らせゴスペル

13 さて、パウロ一行は、キプロス島のみやこパポスから船出した。

行く先は、およそ300㎞離れたパンフリヤ州にある港のみやこペルガ!

港のみやこペルガ――

ここで助手マルコ・ヨハネは2人を置いて、神殿のみやこエルサレムへとっとと帰ってしまった・・・。 14 それでもパウロと励ましのバルナバは旅を続けた。

次はおよそ200㎞北上して着いたのは、ピシデヤ地方のみやこアンテオケ―― 【アンテオケは、道路が整備された交易こうえきの中心地だった】

休日サバス――

2人は神を礼拝するためにユダヤ集会所シナゴグに入って座った。 15 “モーセの書”と“預言者の書”を読み終わると、ユダヤ集会所シナゴグの会堂長が2人に言ってよこした。

「兄弟たちよ、もしここにいる人たちの助けになるような話があれば、是非お願いします」

16 パウロが立ち上がり、サッと手を上げて注目を集めた。

「イスラエルのみなさん、ならびにまことの神をたたえるその他のみなさん。お聞き願いたい!

17 イスラエル国の神は、我々の先祖を選びました。そして、エジプトに外国人として住んでいた先祖を偉大な民としてくれた。そしてそこから、その偉大な力でご先祖をエジプトから導きだしてくれました!

18 そして荒野で過ごした40年、彼らの不満の声や、わがままにも耐えながら、滅びないようにやしないました。 19 カナンの地にあった7つの国を打ち倒し、その地を与えてくれました。 20 これらすべて450年の間に果たされたことです。その後、神は預言者サムエルの時代まで彼らに強力な指導者たちを立て続けてくれました。

21 そして、王を強く求めた彼らに、ベニヤミン族のキシュの子・サウロを選び、40年の間、王として務めさせました。 22 やがて神は、サウロを退任させ、代わりにダビデを王として選抜し、こう言ったのです。

『エッサイの子ダビデ!私が選んだ男。私が願うとおりに生きる男』だと。 23 神は、ダビデと約束した通り、イスラエル国の救世主をダビデの子孫から誕生させました。

その名も“イエス”!

24 洗礼者バプティストヨハネは、イエスが来る前に何をすべきか、イスラエル中に伝えました。新たな生活を歩む証として人々に洗礼バプテスマを授けたのです。

25 ヨハネが役目を全うした時、こう言いきりました。

『私を誰だと思っている?私は選ばれた救世主キリストではないぞ!その方は後から来るが、私にはその方の靴ひもをほどく価値すらない!』と。

26 アブラハムの子、兄弟、そして家族。また、神を讃える外国の方々よ、よく聞きなさい!この“救い”の知らせは、我々のもとへ“届いた”のだ!

27 神殿のみやこエルサレムの市民と、その指導者たちはイエスが誰なのか分からなかった。毎週、休日サバスにはイエスについて預言者たちが告げたことを読みあげていたにもかかわらず!

そしてついにはイエスを殺してしまった・・・だが、それで預言者のことばは実現した!

28 彼らは、死刑にする法的理由を何一つ見つけられなかったのにもかかわらず、ピラト総督に死刑を執行するように願いでた。

29 ユダヤ人は、イエスに起こると預言された全ての悪を行った。そしてイエスを十字架から降ろし、墓に埋めた・・・

30 ところが神はイエスを死からよみがえらせたんだ!!

31 ガリラヤ地方からエルサレムまで、イエスと共にいた仲間たちは、何日にもわたり、生き返ったイエスを目にしたんだ!!!目撃した彼らこそが我々同胞の生き証人。

32 私たちも、昔、神が先祖に約束された、この最高な知らせゴスペルを伝えている! 33 そう、我々がその子孫であり、神がイエスを復活させたことによって、約束を守ってくれた!!

その約束とは詩篇の2章にある。

『𝄞あなたは私の息子。

私は今日、あなたの父となったのだ』と―― 【聖書:詩篇2:7より引用】

34 神はイエスを死からよみがえらせ、二度と朽ちない体を与えた。

そして神はこうも言った。

『ダビデと交わしたまことで聖別された約束を、おまえに与えよう』―― 【聖書:イザヤ書55:3より引用】

35 そして詩篇の別の箇所にははっきりと

『𝄞神は聖なる者が墓の中で朽ち果てることをゆるさない』―― 【聖書:詩篇16:10 からの引用】と言った。

36 ダビデ大王は生きている間に神の思いをしっかり全うした。だが彼は死んだ後、先祖と同じようにほうむられた・・・彼の体は死後、朽ちたが、 37 神が生き返らせた者の体は、朽ち果てることはなかった!!

38 みんな、我々が伝えることをよく理解してほしい。このイエスを通し、我々の過ちはゆるされる! 39 掟はあなたの罪を取り除けなかった。しかし、イエスを信じるならその罪悪感から解放される!!

40 だからこそ、この預言者の忠告がみなさんに当てはまらないように、注意してほしい!

41 『見よ、疑う者どもよ。

驚け、そして滅び去れ。

あなたが生きている間に、

聞いても信じられないことをするからだ』」―― 【聖書:ハバクク書1:5より引用】

42 礼拝も終わり、パウロと励ましのバルナバがユダヤ集会所シナゴグを去ろうとした時のこと、

「すみませーん!来週も教えてもらえないでしょうか!」

「ぜひまたお聞きしたい!」

そこにいた人たちは、今日聞いた話について、来週もまた教えてほしいと口々に頼んだ。

43 集会のあと、人びとはパウロと励ましのバルナバについて行った。その中にはユダヤ人や自分の宗教から改宗し、ユダヤ人のようになり、まことの神を賛美する決断をした人たちが多くいた。2人はさらに恵みが受け取れるよう、彼らに教え続けた。

44 翌週の休日サバスの出来事だった――

「おい!前が見えねぇぞい!」

「コラ!押すんじゃねぇ!危ねぇだろ!」

「てやんでぃ!俺たちはこの話を聞くまで帰らねぇよ!」

「みなさん落ち着いてくださ~い!!」

その日、ユダヤ集会所シナゴグは、人、ひと、ヒト!みやこ中の人が2人の語るイエスの言葉を聞きに来たのだ。 45 この状況を見て嫉妬しっとしたユダヤ人たちもいた。彼らは2人の話にとことん反発して口論した。 46 しかし、パウロはビシッと対応した。

「我々は神からもらった最高な知らせゴスペルを、まずあなたがたユダヤ人を優先して伝えなければならなかった。にもかかわらず、あなたがたは自らそれを突っぱね、永遠の命エターナルライフを受けるにふさわしくないことを証明してしまった・・・。

それで私たちも見切りをつけ、ユダヤ人ではない人たちへ伝えることを決心するほかなかった。

47 “神が”私たちにこう命じた、

『おまえを外国人たちの灯火ともしびとした。

世界中の人が救われる方を知るために』」―― 【聖書:イザヤ書49:6より引用】

48 おぉぉぉ!!!

これを聞いた外国人たちは興奮を隠しきれない。パウロたちの話を喜んで信じ、大切に心に閉まった。永遠の命エターナルライフを受けとるにふさわしい者として選ばれたのは、外国人である彼らだったのだ。

49 こうしてピシデヤ地方のみやこアンテオケを取り巻く全ての地域に王・イエスのメッセージは広まっていった。 50 しかし、嫉妬しっとしたユダヤ人たちが黙っていなかった。位が高い女宗教者やみやこの権力者をそそのかし、パウロと励ましのバルナバに敵対させた。彼らは、2人をこのみやこから追い出したのだった。

51 パンッパンッパンッ・・・

2人はこのみやこにこれ以上関わらないという意味で足からちりを払い落とし、心をきりかえて150㎞東にあるみやこイコニオムへ向かった。

52 一方、ピシデヤ地方のみやこアンテオケ――

パウロらの言葉を信じたそのみやこイエスの従者クリスチャンは、神の霊ホーリースピリットで満たされ、喜びに満ちあふれた生活を送ったのだった。

めでたし、めでたし。

みやこが真っ二つ

1 みやこイコニオム――

パウロと励ましのバルナバは、みやこイコニオムのユダヤ集会所シナゴグ最高の知らせゴスペルを伝えた。

結果、ユダヤ人、ギリシャ人を問わず、大勢の人がその言葉を信じたのだった。 2 しかし、誰も彼もが信じたわけではなく、根も葉もないうわさで2人への不信感をあおる者もいた。

3 そんなことに揺るがされることもなく、2人はみやこイコニオムにとどまり、勇敢に神の恵みを語り続けた。神は2人を通してさまざまなキセキを起こし、2人の言葉が真実であることを証明していった。

4 そして、パウロと励ましのバルナバを信じる派と、敵対するユダヤ人を信じる派で都市が真っぷたつに分かれてしまったのだ・・・

5 「あいつらを痛めつけるいい方法はないもんか・・・」

「石打ちだ・・・石打ちにして殺してしまおう・・・」

あるユダヤ人とその指導者たちやユダヤ人でない人は一緒になって、パウロと励ましのバルナバを目のかたきにしていた。

6 「バルナバさーん、パウロさーん・・・!!!はぁはぁ・・・大変です。あるユダヤ指導者が人をかき集めてあんたらを殺そうとやっきになってまっせ!」

この知らせを聞いた、2人はこっそりみやこイコニオムを脱出し、50㎞ほど南にある隣町・ルステラに向かった。

丘の町ルステラ→東のルカオニヤ地方へ→ルカオニヤ地方のみやこデルベ→

パウロらは、このおよそ150㎞にわたる旅路の中でも、 7 最高の知らせゴスペルを教え、広めて行ったのであった。

ゼウス神とヘルメス神

8 丘の町ルステラ――

この町でパウロたちは、生まれつき足が不自由で、1歩も歩けない男に会った。 9 この男は、他の者と一緒になってパウロの話に聞き入っていた。

(彼は信じてるな・・・)パウロの目には、その男の顔に“神なら治してくれる”と書いてあった。

10 「そこの方、自分の足で立ち上がるんだッ!!!」

パウロが命じたと同時に、ぴょんと飛び上がった!かと思えば、すぐに歩き始めたではないか!

11#%神だ𝄞&@+#¥<*=%人の形をしたカ〰〰ミだッ!!!」

ルステラの町人はルカオニヤ地方の言語で叫びだした。

「?」

パウロと励ましのバルナバたちには、理解できない言語だったため、2人は気にしていなかった。 12 しかし、あげくの果てには、励ましのバルナバを“ゼウス”、パウロを“ヘルメス”と呼び始めたのだ・・・。おもに話をするのはパウロだったからだ―― 【ちなみに、ゼウスはギリシャ神話の神々の上に立つ神のおさ。ヘルメスは知恵と旅の神としていた】

13 町の門を出てすぐの場所には、ゼウスを祭った神殿があった。そこから祭司まで出てきては花飾りを作り、それを首にまとった牛を町の門まで連れてきた。祭司と群衆はその雄牛を生け贄にして、2人に捧げようとするではないか!

14 (ちょっと待てよ・・・)

ようやく事態を飲み込んだパウロと励ましのバルナバは自分の服を引き裂いた―― 【不名誉なことや悲劇を現す意図で服を破る文化があった】

そして、息をあらげながら、群集の中に飛び込んで叫んだ。

15 「なんてことしてんだ〰〰ッ!!!俺たちは神じゃない、みんなと同じ、ただの人間だッ!!ただこの最高な知らせゴスペルを伝えるために来たんだ!こんなバカなまねをやめて、天、地、海、また、その中にある全てのものを創ったまことの神に目を向けるように伝えたじゃあないかッ!!!

16 神は今まで全ての国の人間が好き勝手していることに目をつぶっていた。 17 それでも神は、いつも側で素晴らしいことをして自身の存在を証明してくれた。そう、天から降る雨や収穫の時、十分な食物と、それらを楽しむ心をッ!!!」

18 こう言ってもなかなかやめなかったが、やっとのことでこの生け贄騒動を静めることができた。

19 ――彼らは悪党ですぞ・・・

とデマを流しだしたのは、みやこイコニオムとピシデヤ地方のみやこアンテオケでパウロたちに敵対したユダヤ人たちだった。

丘の町ルステラまでしつこく追ってきたのだ・・・。

彼らはうまく、ルステラの町人をだましてパウロに敵対させることに成功した。

やっちまえ゙ぇぇぇ〰〰〰〰

ブン、ブン、ブンッ

ゴツンッ!!

ウグゥァ!オエッ、ウハッ・・・ばた・・・・・・

不意を突かれたパウロは、ルステラの町人や敵対したユダヤ人に容許ようしゃなく石を投げつけられた・・・しばらくするとパウロはピクりともしなくなった・・・

「死んだ死んだ!」

「ふん、あっけなかったなぁ・・・」

パウロは町の外まで引きずられ、そこに放置された。

20 イエスの従者クリスチャンたちがパウロのもとに駆け付けた。

「くそぉ・・・・・・」

「うっ・・・」

「!」

「パ、パウロさん?!い、生きている!!!」

パウロはなんなく立ち上がったではないか!

そしてすぐに町に戻った。

翌日――

パウロと励ましのバルナバは、休むことなくルカオニヤ地方のみやこデルベへ向けて出発した。

パウロと励ましのバルナバ、第一回の旅にピリオド

21 みやこデルベでは神がもたらした最高の知らせゴスペルを語り、多くの住人がイエスに従うようになった。

――2人は、来た道を戻ることにした。

丘の町ルステラ→ピシデヤ地方のみやこアンテオケ→みやこイコニオム→

22みやこでできた仲間とは時間を過ごし、ますます神を愛し、親交を深め、

神の王国キングダムへの道のりは険しくなければならない・・・」

と教えたのだった。

23 そして、その教会を任せる長老たちを、教会ごとに任命することも忘れなかった。任命した長老たちは、王・イエスに強く信頼を置く人たちであった。

長老たちのために断食だんじきして祈り、王・イエスの手に委ねた。

24 それから、ピシデヤ地方のみやこから150㎞南にあるパンフリヤ州を通った。

25 途中、港町ペルガに立ち寄って神のメッセージを広めた。そして隣のみやこ、アタリヤ 26 の港から乗船。向かうは、懐かしき三大都市アンテオケだ。

出発進行!

この都市こそ、イエスの従者クリスチャンたちが2人を特務のために送り出した場所だ。

そう、任務を完了し、最初の長い旅路にピリオドを打った。

27 三大都市アンテオケ――

「み―ん―な―!2人が帰ってきたぞぉぉぉ――!!!」

2人が帰ると、教会全員を招集した。

2人は行った先々の都市、町、村で神が彼らを通して行ったことを一から仲間たちに伝えた。

「はっはー、ばんざーい!神がユダヤ人ではない人たちへ信じる道を開いてくれたぞ!!!」

パウロと励ましのバルナバの話を聞いた教会はこう言って神を讃えたのだった!

28 しばらくの間、この地に腰を据え、イエスの信者クリスチャンたちと長い年月を共にした。しかし、彼らの冒険は、まだまだつづく・・・

掟の改定・・・?

1 三大都市アンテオケ――

ユダヤ地方からやってきたユダヤ人のイエスの信者クリスチャン数名がアンテオケ教会にやって来た。

「つーまーり、モーセの教えどおり、割礼かつれいなしに救われることはあーりませんッ!」

2 パウロと励ましのバルナバはこの教えに強く反発した。意見と意見はぶつかりあい、言い争いへと発展した。それはそうだ。長年守られてきた掟、一筋縄ひとすじなわにはいかなかった。

三大都市アンテオケ教会は解決すべき案件として、エルサレム教会にいる十二使徒及び、長老と相談することを決めた―― 【ユダヤ人以外の人種が救われるために掟に従うべきかどうかの問題は、極めて重大であった。そのため、注意深く対処しなければ、教会を分裂させる可能性もあった】

そこで、パウロと励ましのバルナバに加え、数名が神殿のみやこエルサレムに向かうことになったのだった。

3 ――「これも一緒に・・・安全な旅を・・・!」

三大都市アンテオケ教会は、600㎞強にもなる旅に備え、必要なものをすべて提供して送り出した。

―― 【道のり】フェニキヤ州→サマリヤ地方→

「が、外国人までもが?!」

ユダヤ人でない者までもがまことの神を信じて変わったことを道行く町々で伝えながら進んだ。パウロ一行の話しを聞いたイエスの信者クリスチャンたちはというと、それはそれは大喜びであった!

4 月日は流れ――

「おっかえり――!」

ここは、神殿のみやこエルサレム――

パウロ一行が到着すると、十二使徒や長老たちを含めた教会のメンツが勢ぞろいで歓迎した。

パウロと励ましのバルナバをはじめ、旅を共にした仲間たちは、土産話をエルサレム教会と分かち合った。神がした素晴らしいできごとを聞いて誰もが喜んだ!

5 ――ガタンッ

「掟に従うよう、伝えるべきです!外国人のイエスの信者クリスチャンにも割礼かつれいを!」

こう主張するのは、掟を厳しく守るパリサイ一派のイエスの信者クリスチャンであった。

6 使徒や長老たちは、この問題を話し合うためにつどった。

7 ・・・と言っている・・・だが・・・ああ、でも・・・いーや、そうだ・・・

討論とうろんは長く続いた・・・

「!」

立ち上がったのは十二使徒、岩のペテロ!

「同志よ・・・外国人に最高の知らせゴスペルを伝える第1人者として、神は他の誰でもない俺を選んだことを忘れてはいないか。外国人はこの俺から最高の知らせゴスペルを聞いて信じた。

8 誰の考えもお見通しである神が外国人を受けいれたんだ。それは、俺たち同様、神の霊ホーリースピリットを外国人に与えて示した決定的な証拠。 9 神からしたら俺らも外国人も変わりやしない!外国人が信じたとき、神はゆるした。

10 さてさて、となるとなぜ、“あなた”に外国人イエスの従者クリスチャンの背に、重い負担をかける権利がある?神の判断が間違っていたとでも言いたいのか?我々どころかご先祖様たちでさえその負担を背負しょいきれなかったというのに・・・

11 いなッ!!誰であろうと、我らと同じ、王・イエスの“恵み”によって救われるのだ・・・!!!」

12 ・・・・・・辺りは静まり返った。すると、議論の態勢だった人たちが一転。聞く姿勢に変わったのだ。そこで、パウロと励ましのバルナバは外国人の間に起きたキセキを共有し始めた。

13 2人が話し終わると、イエスの弟ヤコブが口を開いた――

「兄弟たち聞いてくれ、 14 先ほどシモン・ペテロが神は外国人を“神の民”として受け入れ、彼らへの情けを示したと言ったが、 15 聖書にある預言者もこれを裏付けている!

16 『私はこの後戻る。ダビデの家を建て直しに。崩壊したからだ。

壊された部分を再建さいけんし、新しくする。

17 それから残りの国々へ。私より選ばれし世界各国の外国人たちが王たる私の後を追いたがる。

これは、王の発言であり、ご自身の手で何もかも実現される』―― 【聖書:アモス書9:11-12より引用】

18 また、―― 【聖書:イザヤ書45:21より引用】

とある。

19 だから、神に従う外国人に大変な思いをさせるべきではない・・・ 20 その代わり!避けるべき事柄を手紙にして送るべきだ。

偶像ぐうぞうに供えたものは、汚れているため食べない。結婚した異性以外とセックスをしない。絞め殺された動物、または、血のある状態の肉を食べない。

21 ユダヤ人の気を害さないためにも今挙げたことはすべきでない。

長年にわたり、ユダヤ集会所シナゴグで毎週休日サバスに掟が朗読され、それに従うようにす人があらゆる町にいるのだから。」

掟改定“励ましの手紙”

22 十二使徒や各長老、およびエルサレム教会は、三大都市アンテオケへパウロと励ましのバルナバだけでなく、“エルサレム教会代表”を数名選出し、同行させることを決めた。

選出されたのは次の2名。

――エルサレム教会代表――

―バルサバと呼ばれたユダ

―シラス

この2人は、エルサレム教会のイエスの従者クリスチャンたちからうやまわれている指導者であった。 23 手紙は彼らに預けられた。

――手紙――

兄弟、使徒および長老より

三大都市アンテオケおよび、シリヤ/キリキヤ州に住むすべての外国人兄弟たちへ

24 我々の教会から数名がおとずれ、発言したことが面倒めんどうを起こし、みなさんの気を悪くしたと伺いました。これが、我々の指示でなかったことをここに告げます。

25 全員合意の上、代表を選出し、盟友バルナバとパウロに同行させました。

26 そう、バルナバとパウロは、我らの王なるイエス・救世主キリストに命を尽くしてきた者たちです。

27 だからこそ、代表ユダとシラスは、適任極まりないこのお二方に同行させます。彼らもまた、お二方の考えと一致しています。

28 結論を神の霊ホーリースピリットと合意の上でここに書き記します。

以下の必須項目ひっすこうもく以外の荷を負わせんとす:

29偶像ぐうぞうそなえたものを食べない

―絞め殺された動物の肉を食べない

―血のある状態で肉を食べない

―結婚した異性以外とセックスをしない

以上、4点をければ、よし。

それでは、よろしくお願いします。

――おしまい――

30 パウロ、励ましのバルナバ、ユダとシラスは、神殿のみやこエルサレムを出発した。

いざ、向かうは、600㎞北に位置する三大都市アンテオケへ。

さて、旅は進んで、ここは三大都市アンテオケ――

到着後さっそく、イエスの信者クリスチャンたちを集めて手紙を渡した。

31 イエスの信者クリスチャンが手紙を読みあげようとすると、アンテオケ教会のみんなはつばを飲んで耳を傾けた。手紙を読み終えると、彼らの顔からは笑顔がこぼれた。大変励まされたのだ。

32 エルサレム教会代表ユダとシラスも預言者であったため、みんなの面前めんぜんに立った時、また、個人的にもイエスの信者クリスチャンたちを力強く励まし、彼らの確信をより一層いっそう強めた。

33 それから、ユダとシラスはしばらく三大都市アンテオケに滞在した――

「そろそろだな・・・」

ユダとシラスは、イエスの信者クリスチャンたちに旅の安全を祈ってもらい、見送ってもらった。

さあ、帰るべき神殿のみやこエルサレムへ!

34 ちょっと待った!と言わんばかりに踏みとどまったのはシラス。

彼は三大都市アンテオケに残る決断をしたのである―― 【この節は、筆者ルカが書き記したものではなく、後の写本で付け加えられた】

35 さて、残ったパウロと励ましのバルナバ、また、その他多くの者は、イエスの信者クリスチャンを指導し続け、イエスを知らない者に神からきた最高の知らせゴスペルを伝えたのだった。

パウロとバルナバの決別

36 数日後――

「私たちがイエス様について伝えたすべての町を再度訪問しよう。イエスの信者クリスチャンたちの状況を確かめるべきだ」

パウロは励ましのバルナバに持ちかけた。

37 「そうだな。ならマルコ・ヨハネにも声をかけよう・・・」

「!」

マルコにも来てほしいと願っていた励ましのバルナバ 38 かたやパウロは、やめた方がいいと考えていた。マルコ・ヨハネが初めて旅を供にした時、パンフリヤ州で仕事を放棄ほうきして帰ったことがあったからだ。

39 彼らの意見はぶつかった。

「考えなおせ!」

「いーやマルコは連れて行く!」

両者ゆずらず、いつのまにか火花が散るほどもめていた。

「い゙ぃぃぃ・・・」

「ぬ゙ぅぅぅ・・・」

「えーい!ならいた仕方ない・・・共に旅するのはここまでだ!!」

「あー名案だ!!」

口論は、2人の旅を決別させるほどにまで発展してしまったのだ・・・。

励ましのバルナバはマルコ・ヨハネを連れ、舵を取ってキプロス島へ――

40 パウロは、エルサレム教会代表であったシラスを旅のお供に選んだ。

アンテオケ教会は、パウロたちが天地の王に余すことなく、助けられるように祈り、送り出したのであった。

41 パウロとシラスは、シリヤ/キリキヤ州を通り、各教会が強く成長するよう助けて回ったのであった。

混血こんけつのテモテ

1 ―― 【キリキヤ州からの旅路】

港のみやこタルソへ進み→約160㎞西へ→ここでルカオニヤ地方に突入→みやこデルベ→さらに約160㎞西へ進んでたどり着いたのは、

丘の町ルステラ――

ここの町人まちびとに、イエスについて学ぶ混血こんけつのテモテという男がいた。

母はユダヤ人であり、イスラエル国の神を信じる者であったが、父はギリシャ人だった。 2 ルステラの隣、みやこイコニオムに住むイエスの従者クリスチャンたちの間で混血こんけつのテモテが話題になれば、長所しかがらないほど評判のいい男だった。

3 パウロは混血こんけつのテモテを旅の供として連れて行きたいと思ったが、気がかりがあった。その地方に住むユダヤ人たちは、彼の父がギリシャ人、すなわち外国人であることを知っていたのだ―― 【つまり、ユダヤ人の象徴である割礼かつれいを赤子の時に受けていないことはユダヤ人の間で知られていたのだ】

――「最良を期すためだ・・・」

ユダヤ人たちの気をそこなわないため、パウロは混血こんけつのテモテに割礼かつれいを勧めると、テモテは進んでそれを受けた―― 【掟では、外国人や混血との交わりを持つべきでないとあったため、せめてユダヤ人の象徴である割礼かつれいを受けさせたのだ】

晴れて混血こんけつのテモテは、シラスに続いて旅の仲間として迎えられた。 4 さて、パウロ一味は、町々を通っては、神殿のみやこエルサレムの使徒と長老たちが外国人用につづった取り決めの手紙を配って回った。

5 これを通し、その地方にある教会たちの確信はさらに強まり、イエスの信者クリスチャンの数は日々、増えていったのであった。

あっちかそれともあっち、いやこっち!

6 パウロ一味は、アジヤ州を突っ切るのではなく、フルギヤ/ガラテヤ州周辺を進む北ルートを選んだ。

これには事情があった・・・アジヤ州で最高な知らせゴスペルを広めようとしたところ、神の霊ホーリースピリットが止めたのだ。神の霊ホーリースピリットは別の計画を用意していた―― 【アジヤ州は現代のトルコ地方に位置する】

7 およそ200㎞進んだムシヤ州の国境――

ここを越えればビテニヤ州・・・いざ!

「―!―」

進もうとした途端とたんに、イエスの魂ホーリースピリットがひき止めた。こっちでもないようだ・・・。 8 そこで西のムシヤ州を突っ切って、エーゲ海の港町トロアスへ向かった。

9 ――おや・・・?何やら物欲しげにパウロに迫ってくる男がいる。彼は、マケドニヤ州からはるばるパウロに会いに来たようだ。

――マケドニヤの地にいる我々をお助けください――

彼はそこに突っ立ったまま、懇願こんがんしてくる。

――バサッ・・・!はぁはぁ・・・

そう、これはパウロの夢の中の出来事だった。

10 ――「出発だぁぁぁ!!!」

パウロが聖なる幻ビジョンを見たあと、私たちはすぐさまマケドニヤ州に向けて出発の準備を始めた―― 【ここから、筆者ひっしゃルカが旅の供に加わった】

私たちは、察した。神は初めから私たちをこの地に呼んでいたのだと。そこの人々へ最高な知らせゴスペルを広めてほしいのだと。いざ、海の向こうの地、マケドニヤへ。

紫布むらさきぬののルデヤ

11 ―― 【エーゲ海沿岸えんがんの航海】

港町トロアス→サモトラケ島→港のみやこナポリ→

航路こうろ陸路りくろ駆使くしし、出発の翌日には港のみやこナポリに到着した。

そう、マケドニヤ州へ突入したのだ!

12 そして隣のみやこへ足を進めた――

そこは、ローマ帝国の植民地しょくみんちであり、イタリヤ州とその東側を結ぶ交通の大動脈だいどうみゃく、イグナティア街道上かいどうじょうにあった。

その名も、ピリピのみやこ――

パウロの一味は数日間そこに滞在することにした。

13 休日サバス――

私たちは祈るのにちょうどよさそうな場所があるだろうと、みやこの門を出て、郊外こうがいの川沿いへ向かった。

すると、川辺かわべには女たちがたむろしているではないか。

――こんにちはッ!よっこらしょっと・・・

私たちはそこへ腰を下ろして彼女たちの会話にまざった。

14 その中に神を心からうやまう女がいた。

――紫布むらさきぬののルデヤ――

アジヤ州・テアテラのみやこ出身、紫布販売を生業なりわいとしていた。

そんな彼女がパウロの話を聞いているときだった・・・

「―!―」

イエス様が彼女の心を開いた!

おかげで、彼女はパウロの一言一句いちごんいっくを受け入れることができたのだ。

15 それからはトントン拍子。彼女を含めた一家全員がそばの川で洗礼バプテスマを受けたのである!

そして、紫布むらさきぬののルデヤは、私たちを家に招いてくれた。

――「いいでしょ!もし、あたしが真のイエス様の信者だと思うのなら、わが家に泊まってって!」

彼女は私たちにそう勧めてきたので、宿やどを借りることにした。

賛美中の開錠

16 ある日のこと――

いつもの場所へ祈りに向かっていた。

「・・・チョット、ソコノオ兄サン方」

「?」

話しかけてきたのは若い女召使。

――占い師――

特別な知識を持つ悪魔に取りかれた女は、その力で占いをし、雇い主たちのふところやしていた。

17 そんな占い師は、パウロとその一味である私たちを追っかけ回してきた。それだけではない・・・

「ミ〰〰ナサマ、コノオ方タチハ・・・イト高キ神ノ使イ!救ワレル方法を説イテクレマスヨォ・・・!!!」

こう叫んでは、叫んで、叫び続けるのだ。

18 最初はシカトしていたが、こんなことが何日もしつこく続いた・・・

そんなある日、パウロの眉間みけんにしわが寄った。

「イエス・救世主キリストの権威によって命ずる!彼女の中から出なさい!!!」

我慢ならなかったパウロがそう命じると、悪魔は一瞬にして彼女から出ていった!

19 「ん・・・?」

しかし、その様子を見ていたのは、占い師の主人である。

「くら゙ぁぁぁ!よくも人の金づるを〰〰!!!」

怒った主人らはパウロとシラスをひっとらえ、役人のいる公共広場まで引きずり、 20 訴えた。

「お役人殿ぉー!こいつらはユダヤ人のくせして、我らのみやこピリピで騒ぎを起こし、 21 ローマ市民として禁じられていることをするようにと教え回ってるんですッ!!!」

22 「!」

平凡に生活していたはずの民衆がガラッと敵になり、瞬く間にブーイングの嵐――

「や、役人殿・・・」

「ムチ打ちだぁぁぁ!!こいつらの服をはげッ!!!」

口を開こうとするパウロたちの声をかき消すように命じた。

びりりりりりり・・・・・・

パウロたちに発言の余地なし。

23 ベシッ!スパンッ!!バシッ!!!ぐあ゙ぁぁぁぁぁ・・・・・・

――ドスッ!

政府の役人は、2人を岩と鉄格子ごうしで囲われた牢獄ろうごくに投げ込んだ。

「おい!厳重げんじゅうに見張っとけ!」

「はッ」

そして、こう看守かんしゅくぎを刺した――

24 (ふぅ、念には念だ・・・)

さっそく看守かんしゅは、牢獄ろうごくの奥深くにパウロとシラスを閉じ込め、木でできた大きな足かせをはめ、拘束した。

25 あたりも静まり、時刻は真夜中になろうかというころ、パウロとシラスは祈り、神をめたたえて歌った・・・♪

響きわたる歌声に聞き入っていたのは、他でもない牢獄にいるすべての囚人であった!

26 ガタガタガタ・・・・・・!!!

突然、牢獄ろうごくの土台が激しく揺れ動くほどの強い地震があった!

ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガコン・・・・・・

なんと格子こうしの扉という扉すべてが開き、囚人全員の手錠てじょうや足かせが解けたではないか!

27 zzZ――・・・

「ん・・・ん゙、ほあーあ!?地震だっ!!」

看守が監視を任されていた牢獄の扉も開いてしまっていた。

「・・・・・・おっ・・・おわ・・・終わりだ・・・!!!」

彼は全囚人が逃げたと思い、絶望した。

(こ、殺される・・・ならいっそのこと、ここで・・・みんな・・・ずまん・・・)

目を固く閉じ、冷たい剣先を自分に押し当てようとしたその時・・・

28 「早まるなッ!!!誰1人逃げてはいない!」

29 「!」

「い゙、明がり・・・あ、明かりだッ!!」

「はッ!」

部下が明かりを持ってくると、牢獄ろうごくの中に駆け込んだ看守かんしゅ。その体は恐れでブルブルと震えていた――

「ヒ、ヒィ――」

パウロとシラスを見つけるやいなや、勢いよく2人の前に土下座した。

30 看守かんしゅは、他の囚人に聞こえないところまで2人を連れていくと――

「頼む、何をしたら助けてくれる・・・?」―― 【囚人が逃げ出したら、首が飛ぶため、看守はパウロたちと交渉しようとした】

31 「信じろ!天地の王・イエスを。そうすれば、助かるばかりか、一家共々救われる・・・!!!」

32-34 ――イツツツツっ・・・す!すまん・・・

夜は遅かったが、看守かんしゅはパウロとシラスの傷を手当した。

それから看守かんしゅの自宅に招かれた。パウロとシラスは、看守かんしゅのみならず、一家全員にイエスのことを語り伝えると、一家そろって洗礼バプテスマを受けたのである!

それから、看守かんしゅは2人に食事を振る舞った。一家全員が笑い、喜び、幸せでいっぱい。神を信じきったからである。

35 翌朝――

「あの者たちを釈放せよ」と看守長かんしゅちょうの家まで行って伝えてこい

「はッ」

そう警察官に伝えたのはローマ帝国役人。

36 その知らせを受け、看守が嬉しげにパウロたちのもとへやってきた。

「彼らは役人殿より“指令”を授かって来た警察官たちです・・・・・・では指令を申し上げます・・・しゃ、ですッ!!安心してお帰り下さい!!!」

37 「・・・そんなわけにはいかない」

(パ、パウロさん?!)

パウロは警察官たちを見た。

「あの役人たちは、ローマ市民である我らに非があるかどうかを調べもせず、おおやけの場で滅多打ちにした後、ろうにぶちこんだ。そのあげくの果てには、速やかにお帰りくださいだと?ふざけてはいけない・・・政府の役人たち本人の足でここまで来て、その手で外へ案内していただこう」―― 【ローマ市民は、正当な裁判を受ける権利があった。ローマ市民法には、“裁判前に刑罰を与えるべからず”とあったのだ】

38 今度はパウロの言葉を政府の役人へ伝えに戻った警察官――

「・・・彼らはローマ市民と主張しておりますッ」

「な゙・・・な゙に゙ッ?!」

政府の役人たちは青ざめた・・・

39 そして、政府の役人自らが2人のもとへ来て謝罪し、外まで案内すると、こう頼んだ――

「た、大変恐縮きょうしゅくではございますが、どうかみやこを去ってはいただけませんでしょうか・・・?」

40 ――牢獄ろうごくから出たパウロとシラスはまず、紫布むらさきぬののルデヤ家に寄った。

そこで、イエスの信者クリスチャンたちを励まし、別れを告げたのであった。

いざ、次の地へ!

ヤソンが支払った保証金

1 パウロとシラスの旅は続いた・・・

ピリピのみやこ→約50㎞西へ→水のみやこアムピポリス→数㎞南へ→港湾こうわん都市アポロニヤ→約100㎞西へ進み、たどり着いたのは、マケドニヤ州で裕福かつ有力な港のみやこテサロニケ――

そこにはユダヤ集会所シナゴグがあった。

2 今日も、いつものようにユダヤ集会所シナゴグに入って行くパウロ――

「パウロさん、質問が!あの、聖書のここに書いてある・・・・これは・・・・・・?なるほど・・・!」

休日サバスに行う聖書についての意見交換は3週間あまり続いた。

3 ――「今、私が話したイエスがここに記された救世主キリストだ!」

聖書箇所をもとに救世主キリストが一度死んでから、よみがえる必要があったことを説明した。

4 パウロの話を聞き、イエスの信者クリスチャンになったユダヤ人数名、さらには敬虔けいけんなギリシャ人、有力な貴婦人きふじんたちが仲間になった。

5 信じなかったユダヤ人たちはねたみを抱き、都市にいた“ごろつき”たちを集め騒動そうどうを起こした・・・

――「パウロはどこだぁぁぁ!!!」

「シラスはどこだぁぁぁ!!!」

パウロとシラスを集会の真っただ中に引きずり出そうと、ヤソンの家まで探しに行った。

6 しかし・・・結局2人を見つけることはできなかった。

「えぇーい、もうおまえらでいいわ!俺と一緒に来やがれぇ!!!」

ついにはヤソンと何人かのイエスの信者クリスチャンを引きずり出し、役人に向かって叫んだ。

「世界中で騒ぎを巻き起こしているヤツらが、この都市にいやがりやす!! 7 このヤソンという男はそいつらを家にかくまってやがるんです!イエスとかいう別の王がいるとか言って、カイザル様の法律に背いてやがるヤツらなんすよ!!」

8 「なんだとぉ?!」

これを聞いた役人と周りにいた人はみな怒り狂った。

9 結局ヤソンを含むイエスの信者クリスチャンたちは、もう騒ぎを起こさないことを保証するために多額の保証金を支払わされた。

勤勉きんべんたみ

10 その夜――

イエスの信者クリスチャンたちは、夜のうちにパウロとシラスを隣町のベレヤに送り出した。それは港のみやこテサロニケから南西に約70㎞行ったところにある町だ。

ベレヤの町――

到着するやいなや目指したのはユダヤ集会所シナゴグ

11 ベレヤの町人は、学ぶことに貪欲どんよくだった・・・

港のみやこテサロニケの人に比べ、パウロの言葉に喜んで耳を傾け、聞いたことが本当かどうか確かめるために毎日聖書を読んでは調べた。 12 そして、ギリシャ人の有力な女、男たちを含む多くの人がイエスを信じたのだ!

13 ――「なぁにぃ!?今度はベレヤの町でだとぉ!!!」

パウロが、ベレヤの町で神のメッセージを伝えているという情報が、港のみやこテサロニケのユダヤ人の耳に入ってきた。

わざわざベレヤの町にまでやってきては、町人ちょうにんにデマを吹きこみ、騒ぎを起こし始めた。

14 イエスの信者クリスチャンたちはすぐに、パウロを海沿いへ送った。しかし、シラスと混血のテモテはベレヤの町に残ることを選んだ。

15 ――「“なるべく早くこちらへ”と伝えてくれ」

海の向こうのみやこアテネにたどり着いたパウロからシラスと混血のテモテへのことづけをあずかり、おつきの者はベレヤの町に戻って行った。

知られざる神

16 みやこアテネ――

「な・・・何だこりゃ・・・・」

シラスと混血のテモテの到着を待つパウロは、どこへ行っても偶像だらけの、みやこアテネの有様を見て激しくいきどおった。

17 パウロは、まことの神を信じるユダヤ人、ギリシャ人とユダヤ集会所シナゴグで論じ合った。また、毎日広場に出向いては、そこに集まってくる人とも論じ合ったのだった――

18 エピクロス一派とストア一派の哲学者の何人かがパウロに異論をぶつけた。

「このかたは自分が何を言っているのか分かってないようですねぇ。ズバリ!何が言いたいのかさっぱりですよ」

パウロは彼らに、“イエスについての最高の知らせゴスペル”と“3日目の復活”について話した。

「あの方は、ズバリ!外国の神々について語っているようですねぇ」

19 ――パウロは、みやこアテネのアレオパゴス丘で開催された議会に招かれた。

「あなたが教えている新しい考えとやらについて、もう少し説明してくれませんかね。 20 私たちにとってすごく新鮮でして。こんな教えは一度も聞いたことがないんで、ぜひともその意味をお聞かせ願いたい!」

21 ――みやこアテネの人、そこに住んでいた外国人たちは、時間さえあれば、最近の考えについて情報交換して過ごしていた。

22 ――スッ

「アテネの皆さん!」

パウロが立ち上がった。

「この都市のあらゆる点で、とても宗教的な人たちであることが分かりました。 23 通りを歩いているとき、みなさんが祈りをささげ、崇拝すうはいしている祭壇さいだんを目にしました。そこに記されていた言葉はこう・・・

――知られざる神に――

みなさんは“知らない神”を敬っているが、実にその“神”こそが、私が話したい“神”だ。 24 “神”はこの世界、この地にある全てを創造した。天地の王であり、人間の手によって作られた宮には住んではいない。 25 人間を創造し、命を授け、息を与え、私たちの必要全てを満たしてくれる方・・・自分が創った人間の助けなどはもちろん無用。何せ、全ての源だからだ・・・

26 神はまず1人の人間を創り、そこから世界の至るところに住む、異なる全ての人種を生み出した。“いつ”、“どこ”で生きるかまでをも明確に定めた。 27 神は人間に探しだしてもらいたいと思っている。実際、本気で探し求めるなら、必ず見い出す!!そう、神は私たちから遠く離れてはいない!!むしろいつもそばにいる!!

28 神によって、私たちは生きることができ、使命を持ち、それを成し、ありのままのおのれとして存在する。詩人しじんたちが語ってるが、 29 まさにその通り!私たちは、神から生み出された者です。

だから人が想像したり、作れるような神を考えてはいけない。金や銀、石で作られた神とはわけが違う。 30 人が神を知る前、神は人について大目に見ていた。しかし今は、世界のありとあらゆる地で心を入れ替え、神に立ち返るようにと語っています。 31 神は、全世界の人間を公平に裁く、その日を定めている。すでに選ばれた“1人の方”、その方が死からよみがえることによって、人にそれを確信させた!!」

32 「なんだそりゃ!」

「いや、興味深い!その話、後でもっと聞かせてください!!」

人が死からよみがえるところまで聞くと、あざ笑う者もいれば、もっと知りたいと求める人もいた。 33 パウロは議会を後にした。

34 「パウロさん、待ってください!」

パウロの後を追う者が何人かいた。その中にいたアレオパゴス丘で開かれる議会の議員であるデオヌシオやダマリスという女、また、その他の人たちがイエスの信者クリスチャンとなったのである。

港のみやこコリントで受ける究極の励まし

1 みやこアテネをあとにしたパウロが次にたどり着いた地は港のみやこコリント―― 【ギリシャ州の政治と商業の中心都市であると同時に、水商売など、道徳に反する問題が横行おうこうするみやこだった】

2 このみやこで、イタリヤ州から港のみやこコリントへ最近引っ越してきたという夫婦に出会った。旦那は、ポント地方出身のユダヤ人アクラ。奥さんの名はプリスカ。

――「どうしてコリントへ?」

「クラウデオ帝が首都ローマに住むユダヤ人をみーんな強制追放したもんで・・・」

そんな話をきっかけにパウロは、夫婦の家を訪ねることに。 3 奇遇きぐうにもこの夫婦は、パウロと同じ、革細工かわざいく職人だった。そんなこともあり、住み込みで働き、共に汗を流した。 4 休日サバスには必ずユダヤ集会所シナゴグに出向き、ユダヤ人に限らず、ギリシャ人にも熱心にイエスのことを伝えたパウロ。

5 シラスと、混血のテモテもマケドニヤ州から合流したのち、尽くせる限りの時間を費やし、神の言葉を広めることに尽力じんりょくした。そう・・・全ユダヤ人にイエスこそが救世主キリストだと宣言し、確信してもらうべく伝え続けたのだ。

6 「なぁんだそりゃ、俺にゃあ関係ねぇ話だ」

全く聞く耳をもたず、パウロを侮辱ぶじょくするユダヤ人・・・

――パンッパンッ

「あなた方の“救い”はあなた方自身の責任だ!私は手を尽くした!もうユダヤ人のもとには行かない・・・!!」

パウロは、縁をきっぱり切るしるしとして、自身の手で両肩のちりを払い落とすしぐさと共に警告し、 7 ユダヤ集会所シナゴグを後にした。

――さて、ユダヤ集会所シナゴグの隣には、神を心から敬い、従っていたテテオ・ユストという外国人の家があった。パウロは、そこに招かれたのでしばらく滞在することにした。

8 ユダヤ集会所シナゴグの会堂長クリスポとその一家を始め、港のみやこコリント市民の多くがイエスを信じる決断をし、洗礼バプテスマを受けた。

9 その夜のこと――

パウロの聖なる幻ビジョンにイエスが現れた。

「――恐れるな!あきらめずに人々へ語れ! 10 俺が一緒なんだ。おまえに危害を加えられる者はいない。この町には、俺につく者が大勢いる――」

11 力強く励まされたパウロはそれから1年半の間、港のみやこコリントに滞在し、神のメッセージについて教え続けた。

ガリオ総督の知らん顔

12 ストア派の哲学者、ネストの兄弟ガリオがアカヤ州の総督に就任することになった―― 【現在のギリシャ国】

すると、ユダヤ人たちはみんな一緒になってパウロに襲いかかり、総督のところに引っ張って行ったのだった―― 【ストア派といえば禁欲主義などで有名だ】

13 ――「総督!こやつがローマ法に反するやり方で多くの人に神様を礼拝するよういております!」

ガリオ総督に申し立てるユダヤ人たち。 14 対するパウロが反論しようとした瞬間――

「いいか、ユダヤ人諸君。犯罪やその他の事件に関する訴えならば私も喜んで耳を傾けよう。 15 しかしだ!単なる言葉の解釈や、この人に対する批判、あるいは諸君独自の宗教規則に関する論争であるなら、自分で解決しろ。私には関係ないし、関わりたくもないわ!!!」

16 スバッと言い放ったガリオ総督は彼らを裁判所から追っ払った――

17 彼らは腹いせにユダヤ集会所シナゴグ会堂長ソステネをひっとらえ、裁判所の外で袋叩きにした。それでも、気にも留めなかったガリオ総督。

パウロの旅は続く

18 この出来事のあとも、パウロはイエスの信者クリスチャンと共に、しばらく港のみやこコリントにとどまった。

時は流れ――

港のみやこコリントへ別れを告げると、次なる目的地シリヤ州へとかじを取った。もちろんプリスカ、アクラ夫婦も一緒に。航海の途中、港町ケンクレヤで神への誓いとして、ユダヤ人のならわしで髪を剃った―― 【髪を剃ること、それは神に対する特別な誓約を捧げた者。すなわち“ナジル人”の誓いのしるしだった】

19 一行が次にたどり着いたのは、港のみやこエペソ――

「私たちもここでお別れです・・・」

旅を共にしてきたプリスカ、アクラ夫婦をこの都市に残す決断を下したパウロ。エペソ滞在中も、パウロはユダヤ集会所シナゴグへ足を運んでは、ユダヤ人たちにひたすら話をした。

20 ――「もう少し残って、ここで話を聞かせてください」

求める彼らに対し、パウロが首を縦に振ることはなかった。

21 「神が導くとき、また戻る!」

満面の笑顔でその言葉を残し、パウロは港のみやこエペソを出航した。

22 パウロは次に港湾こうわん都市カイザリヤに→そしてエルサレム教会を訪問し→三大都市アンテオケへと向かった→

23 旅の舞台は大きく飛んで→三大都市アンテオケ→ガラテヤ州→フルギヤ州へと進んでいく・・・

しばらくの間、三大都市アンテオケに滞在してからは、各地方の国から国、町から町へといった具合に、西へ西へと進んだパウロ。

訪問地でイエスの従者クリスチャンたちを訪ねては、彼らがより強くイエスを信頼できるように施した。

情熱の男“アポロ”

24 舞台は再び港のみやこエペソ――

あるユダヤ人の男が訪れていた・・・

エジプトの首都・アレキサンドリヤ出身。聖書に精通し、同時にメッセンジャーとしても有能であった男、アポロ。

25 アポロはイエス王の道を教わっており、イエスについて語る時といったら神の霊ホーリースピリットによって燃えていた。

彼の話は正しかったが、洗礼者バプティストヨハネの洗礼バプテスマしか知らなかった。 26 自信に満ち、ユダヤ集会所シナゴグで大胆に語るアポロ。それを、あのプリスカ、アクラ夫婦が耳にした。

アポロを自宅に招いた2人は、救いの道、神の計画について正確に、そして分かりやすく伝えたのだった。

27 「海の反対岸にあるアカヤ州へ進もうと思う・・・」

アポロの口から出たその思いに港のみやこエペソのイエスの従者クリスチャンたちは賛成した。アカヤ州までの順調な旅路の手筈てはずを整えた。アポロがたどり着いた時に困ることの無いよう、現地のイエスの従者クリスチャンたちに、“アポロをよろしく頼む”とつづった手紙を送った――

彼がアカヤ州にたどり着くと、そこの教会を励ますためにすべてをささげたのだった。神の恵みのおかげで、それはそれは大きな助けとなった。

28 「・・・・・・聖書にはこうある!」

おおやけの場で、ユダヤ人たちの誤りに大胆に反対したアポロ。聖書の言葉を引用しながらユダヤ人の誤った考え、習慣をズバズバと指摘し、イエスこそが救世主キリストであることを証明していった。

港のみやこエペソに下る神の霊ホーリースピリット

1 さあパウロに話を戻そう――

旅を進めたアポロが、アカヤ州の港のみやこコリントにいた頃、いくつかの地を渡り歩きながら、パウロが向かっていたのは・・・

港のみやこエペソ――

この都市でも、イエスの従者クリスチャンたちと出会ったので、こう尋ねた。

2 「ところで信じた時、神の霊ホーリースピリットは受けとりました?」

「はい?ホーリー?聞いたこともありませんが・・・」

3 「ほう・・・ではどんな洗礼バプテスマを?」

洗礼者バプティストヨハネが教えた洗礼バプテスマです!」

4 「確かに洗礼者バプティストヨハネは人生を変えたいなら、洗礼バプテスマを受けるようにと教えた。だが、それだけではない。自分の後に来る方を信じるようにとも教えていた。その方こそが“イエス”だ・・・!!!」

5 「おぉ!!!」

これを聞き、いてもたってもいられないイエスの従者クリスチャンたちは、すぐさま“イエスの名”によって洗礼バプテスマを受けた。

6 ――ブワンッ――

「――!――」

パウロが彼らの頭に手を置くと神の霊ホーリースピリットが天より彼らに下った。その瞬間――

「#%&‘=~+@*」

口にしたこともない外国語を語り、互いに預言し合い、励ましあった。 7 そこにいた12名ほどの男たちが、神の霊ホーリースピリットを受け取ったのだ。

8 ――「いいか、神の王国キングダムとはな・・・・・・」

パウロはユダヤ集会所シナゴグに足を運んでは、ユダヤ人に“神の王国キングダム”を受け入れるようにと説得した。その姿といったら大胆そのもの!パウロは、このように3ヵ月間伝え続けた。

9 幾人かの人たちは、心を閉ざし、信じることを拒んだ・・・彼らは会衆の前でさえ主の道をけなした。そんなユダヤ人から一線を引くため、パウロは、主の従者クリスチャンを連れ、ツラノという男の所有する学校に場所を移し、毎日、集まってくる人たちに教えた。

10 月日が流れ、気づけば2年――この働きの結果、アジヤ州に住む人、ユダヤ人/ギリシャ人、人種/国籍に関わらず、全ての人たちが王・イエスについて聞いたのであった!

呪文書の山、灰と化す

11 ヒラッ・・・

――「お、おぉ・・・治った!治ってるぞぉぉぉ!!!」

神はパウロを通して人知じんちを超えたキセキを起こした。 12 パウロが仕事で身につけていたはちまきや前掛まえかけを病人にヒラッとかけると病気は治癒し、りつく悪魔たちが追い払われた。

13 ――さて、同じころ、おはらい師として生計を立て、各地を巡るユダヤ人の男たちがいた。

14 ――祭司スケワの息子七人衆――

彼らは、ちまたでたいへん噂の王・イエスという名前を使っておはらいをしてみようということになった。こんな会話の果て、早速その、“イエスの名”でおはらいする機会があったおはらい師七人衆――

「パウロが伝えている“イエスの名”によって命ずる!この男から出て行けッ!!」

バシッと言った7人。

15 悪魔に取りかれた人はというと・・・

「ハ?“イエス”ナラ知ッテル、“パウロ”ダッテ知ッテイル。ダガ、オメェラ・・・・・・誰ダ?」

16 次の瞬間――

「ギャッハ〰〰!!!」

とりかれた男がおはらい師たちに飛びかかった!

ボカッ!ボコッ!ビ〰リビリビリ・・・・・・

「ひぃー!堪忍しでくでぇ〰〰!!」

やたらめったら殴られ、服を引き裂かれながらもおはらい師七人衆は命からがら、なんとかその家から逃げ出した――

17 この出来事はまたたく間に港のみやこエペソ中に広まった。ユダヤ人、ギリシャ人など聞いた者はみな、恐れをなした。それと同時に圧倒的な力を持つ王・イエスを心からうやまい、たたえた。

18 これをに、多くのイエスの従者クリスチャンたちが犯してしまったあやまちを自白した・・・!

19 占いなどの霊術を行っていた民衆は、今まで使っていた呪文書やおふだを持って来ては、一カ所にポイポイ投げ捨てていった―― 【港のみやこエペソは黒魔術などのまじないごとの中心地でもあった】

積もりに積もり、呪文書の山ができた。

ボワッ

呪文書に火をつけると、勢いよく燃えた。ざっと見積もっても、銀貨5万枚に相当する量をだ―― 【この銀貨は古代ギリシャの銀貨だと思われる。銀貨1枚は1日あたりの平均労働賃金へいきんろうどうちんぎんに匹敵する金額。つまり、5万日の平均労働賃金へいきんろうどうちんぎんに値するのだ】

20 このような力強い方法で王・イエスの言葉は広まった。その結果、信じる人は急速に増えていった。

パウロの旅計画

21 マケドニヤ州→南へ→アカヤ州→神殿のみやこエルサレムというルートでパウロは、旅路を計画した。

(エルサレムの後は首都ローマへも出向かなければ・・・)―― 【どの町、都市を訪れてもローマ帝国に影響されているのを見たパウロは、最も影響力がある首都ローマで最高な知らせゴスペルを広める重要性を感じていた】

22 パウロの信頼できる助手、混血こんけつのテモテと会計事務員エラストの2人を、先にマケドニヤ州へ送り、自分はアジヤ州に滞在することにした。

銀細工ぎんざいく社長が巻き起こす“港のみやこエペソの大混乱”

23 一方その頃、港のみやこエペソでは――

イエス王の道のことが大騒動にまで発展していた・・・

24 事を起こした中心人物は

――銀細工ぎんざいく社長・デメテリオ――

この男、女神アルテミスの神殿をかたどった小さな像や神殿を作って商売を成功させていた。そう、彼は多くの職人たちを抱える経営者である。 25 デメテリオ社長は、自分の職人たちや同業者を集めて会合を開いた――

「皆のもの!分かり切ったことだが、俺たちはこの神殿の銀細工で食ってる。この銀の像のおかげで生活できてんだ。 26 ところが、あのパウロちゅう男はエペソのみやことアジヤ州中を駆けめぐっては、多くの人たちを改宗かいしゅうしてやがるッ!

しまいにゃ、『人の手で作ったものは本物の神様なんかじゃねぇ』なんて抜かしやがる!!! 27 こんなんじゃ、商売あがったりだッ!お客さんがみんな逃げちまう。それだけじゃあねぇ・・・声を大にして叫びてぇのは、このままじゃあ、偉大なる女神アルテミスの神殿を軽視し、彼女の威信いしんが地にちちまうということでぇい!!!アルテミスは、世界が崇拝すうはいすべき女神じゃあねぇのか!!!」

28 熱心な演説に刺激され、職人たちは怒り狂った。

アルテミス様ばんざーいッ!

エペソの女神こそ最も偉大な神様だ〰〰!!!

29 ア゙〰ル゙〰デ〰ミ゙〰ズ!ア゙〰ル゙〰デ〰ミ゙〰ズ!!ア゙〰ル゙〰デ〰ミ゙〰ズ!!!

ゔお゙〰〰・・・・・・・たちまち街中が混乱状態におちいり、そこら中で叫ぶ声が響き渡っていった。そんな中、パウロの旅仲間であるマケドニヤ出身のガイオとアリスタルコの2人は捕まえられ、無理やり野外スタジアムへ引きずりこまれた。

30 ――「な゙、な゙に゙ッ!!!」

騒動被害に巻き込まれたのが、仲間のガイオとアリスタルコだと知ったパウロ。飛んで野外スタジアムで話しをつけようとした・・・その時!

バシッ!

「パウロさんッ!だ、だめです!」

イエスの従者クリスチャンたちが押しとどめた。 31 また、パウロの友人であるアジヤ州政府の役人たちも、「くれぐれもスタジアムに入らないように!」と注意書きの手紙を送って来たほど危険だった。

32 そのころ、スタジアム内では――

ある者はこう叫び、ある者はああ叫ぶという、もはや収拾しゅうしゅうのつかない状態に発展していた。ほとんどの人が、なぜここに集まってきたのかさえ理解していなかった。

33 そんな中、何人かのユダヤ人たちが人混みの中をかき分けた。ユダヤ人を代表して演説をしてもらうべく、アレキサンデルを群衆の面前めんぜんへ押し立たせた―― 【群衆がこの一件をユダヤ人全体のせいにしていたため、ユダヤ人の問題ではなく、クリスチャンの問題だと説明したかったのだ】

アレキサンデルは、なんとか注目を集め、静かにさせようと群衆に向かって身振り手振り合図をした。 34 ところが、アレキサンデルがユダヤ人であると分かった群衆は前よりひどく荒い声をまき散らした。

・・・女神アルテミス様ばんざーい!!!

・・・最も偉大な女神アルテミス様、ばんざーい!!!

・・・女神アルテミス様ばんざーい!!!

繰り返し何か叫びだしたかと思うと、これが2時間も続いた・・・

35 この騒ぎにとうとう市長までもがかけつけ、やっとのことで騒ぎがしずまり始めた――

「エペソの諸君。ここが、偉大なる女神アルテミスの神殿、また、女神の聖なる岩を有する地であることは、分かっているではないか! 36 これはどんなに騒いでも否定できない事実。だから、事を起こす前によく考えなさい! 37 みなさんがここに連れて来た男たちは我々の女神に対して、何ら悪い発言をしたわけでも、盗みを働いたわけでもありませんッ!! 38 我々には法廷があり、裁判官がいる。

銀細工職ぎんざいくしょくにんのデメテリオ!

そして職人たちよ!2人を訴えたいか!?であれば法廷へ行きなさい!そこで話したいだけ話せばいい!

39 それ以外に何か不平不満があって声を上げたいのならば、市民の会合に来なさい。そこでもっと話し合いましょう。 40 とにかく、今日の騒動の責任を問われても、説明の余地なしだ!なんせ、この騒ぎには正当性がないッ!」

41 市長はそこに集まった会衆を解散させた。

4つの人種からなる一味の旅

1 騒動もひと段落――

パウロはというと、イエスの従者クリスチャンをみな集めた。

彼らを励まし、別れを告げ、いよいよマケドニヤ州へと出発――

2 マケドニヤ州を通る際、行く先々のイエスの従者クリスチャンを力づけてまわるパウロ。そこからギリシャへ進路を向けた。

3 パウロは3ヵ月にわたってギリシャに滞在した。

時は流れ――

次なる地、シリヤ州に向けて出帆しゅっぱんの準備をしていたところから話そう・・・

「我が進路に邪魔者ありか」

幾人かのユダヤ人がパウロを妨害しようと策略を立てていることが発覚した。仕方なく、シリヤ州入りの航路を断念。再び北上し、マケドニヤ州を経由しながら陸路でシリヤ州へ戻ることにした。

4 パウロの旅のお供は、4つの人種からなる異文化な7人:

ベレヤ人――プロの息子のソパテロ

テサロニケ人――アリスタルコとセクンド

デルベ人――ガイオと混血こんけつのテモテ

アジヤ人――テキコとトロピモ

5 先に出発した一行は、アジヤ州北部にある、エーゲ海の港町トロアスでパウロの到着を待っていた――

6 掟のしきたりにのっとって、種なしパン祭を祝い終わると、私たちはみやこピリピの港を出発した。5日後には港町トロアスで下船し、7人の仲間と落ち合うと、そこに7日間滞在した。

居眠りのユテコ・・・3階から落ちる?

7 週始めのこと――

私たちはパンを割き、イエスに感謝を捧げるべく、つどった。パウロは出発前日にも関わらず、仲間たちと朝まで語り明かした――

8 私たちはあかりいっぱいの最上階につどった。 9 そこの窓に腰を掛けて話を聞いている若者ユテコ。

パウロがあまりに長いこと話しているので、ユテコは何度となくひどい睡魔に襲われながらも、寝そうになれば起き、また寝そうになれば起きるを繰り返す――

それでな・・・と言った具合に話し続けるパウロ。

・・・zzZ

ついには眠り込んだユテコ。

――ドサッ!

(え・・・ユテコは?)

先ほどまで、窓際に座っていたユテコの姿がない!

「ユ、ユテコが落っこったぁ〰〰!!!」

3階の窓から転落してしまったのだ。

仲間がダダダッと階段を下り、ユテコにかけよった。そして、抱き起こしたがピクりともしない・・・

「し、死んでる・・・」

10 パウロは、後から下りてくると、ユテコの横にひざまずいて、抱き寄せた。

「心配無用、ユテコは生き返った」

「な゙ッ!!!」

11 ――何もなかったかのように3階に戻ったパウロたちは再びみんなとパンを裂いて食べた。ユテコも一緒だ。パウロが延々えんえんと語っていると、気持ちいい朝日が差しこんできた――

時間だ・・・パウロは出発した。 12 イエスの従者クリスチャンたちは生き返ったユテコを家に連れて帰り、フゥーっと大きく一息つくと、平安を噛みしめた。

港湾こうわん都市ミレトまでの船路ふなじ

13 パウロは時間がかかる陸路で向かう必要があったため、私たちは海路で先回りするようにと言われた。私たちは、港町トロアスを出航し、待ち合わせ場所である港村アソスへ向かった。

14 港村アソス――

パウロと落ち合い、船に乗せた。そして、次に目指したのは港町ミテレネ――

15 翌日――キヨス島沖とうおき

その翌日――エーゲ海のサモス孤島ことう

そのまた翌日――

「着いた――!!!」

港湾こうわん都市ミレトに到着――

16 ここから港のみやこエペソまでは目と鼻の先であったものの、最初からエペソには寄らないと決めていた。できれば五旬祭ペンテコステの日までには、神殿のみやこエルサレムに到着していたかったパウロは、アジヤ州には長く滞在しなかった。

エペソ教会長老たちとの涙の別れ

17 港湾こうわん都市ミレトにいたパウロは、エペソ教会の長老たちに返信した。

「こちらに会いに来てください」

18 「パウロからじゃ!」

彼らは大急ぎで、パウロのもとに向かった――

「よくぞ集まった!私がアジヤ州に初めて足を踏み入れたときから、みんなと共に時を過ごしたからこそ、私の人生と生き様についてはよく知っていることだろう。 19 ユダヤ人たちの陰謀いんぼうには悩まされ、時には涙を流しながらでも、自分ではなく王・イエスを第一に考えてきたことを。

20 どんなときでも、みんなのために最善を尽くし、人前だろうとみんなの家だろうと、公然と最高な知らせゴスペルであるイエスを教えた・・・

21 ユダヤ人、ギリシャ人を含む全ての人に、心を入れ替えて神に返るようにと語った。そう、我らの王・イエスを信じるようにと。 22 これから私は、神の霊ホーリースピリットに従い、エルサレムへ行かなくてはならない・・・何が起こるかは分からない・・・ 23 ただ・・・この旅の過程で、神の霊ホーリースピリットが何度も教えてくれた。それは、エルサレムで待ち受ける、辛い辛い牢獄生活について・・・!

24 自分の命ならどうなってもいい。最も重要なのは、自分の使命を成し遂げることだ。私は、王・イエスが与えてくれた使命を・・・

!!!

神の恵み、そして最高な知らせゴスペルを知らせること。これが私の使命だ。 25 だからよく聞くんだ。確かにみんなと会うのはこれが最後だろう・・・みんなといる間、私は神の王国キングダムについての最高な知らせゴスペルをしっかり伝えたな。 26 だから確信して言える。もしこの中から救われなかった人がいても、私の責任ではない。

27 神が伝えたいこと、知ってほしいことは伝え尽くしたからだ。 28 神に与えられた人たちや自分自身に気を配れる者でいるように。この教会の羊たちを見守る役割をおまえたちにさずけたのは神の霊ホーリースピリットだ。教会の羊、それは指導者に従う人たちのこと。

いいか、神の教会のために羊飼いとなれ・・・彼らは、イエスの流した血を代価に神が買い取った人たちだ・・・! 29 自分が去った後、この群れの中に、“ヤカラ”がやって来るだろう・・・!彼らは野生のオオカミのように、この群れをくずそうとする。 30 また、この群れの中から、間違ったことを教え始める者もでてくる。彼らはイエスの従者クリスチャンたちが、真理に従わないよう、あの手、この手を尽くしてくる。

31 だから、気を張っていろ!共に過ごしたこの3年を忘れてはいまい・・・1人1人のことを思った私が時には涙を流し、昼も夜も相談に乗って指導し続けてきたことを・・・

32 これをもって、あなたがたは完全に神の手にゆだねる。そう、あなたを強めると言う“恵みのメッセージ”に委ねる。このメッセージによって神の民イスラエルとして選ばれた者にだけ与えられるはずだった“祝福の約束”は外国人も受けとれるようになった!

33 みんなと共にしたとき、金や銀、衣服をくれと頼んだことも無ければ、欲しいとさえ思ったこともない。 34 いつも自身や周りの者をやしなうため、この手で働いてきたことは、おまえたちがよく知っているだろう。

35 必要のある人たちを助けるために、働くべきだといつも、模範をもって示した。という我らの王・イエスの言葉を教え続けたことを忘れるんじゃないぞ!」

36 語り終え、ひざまずくパウロ。そしてみんなと共に祈ったのだった――

37 「会うのはこれが最後だ・・・」その言葉の重みに、 38 長老たちは泣いた・・・ただただ泣いた――

いよいよ訪れた別れの時・・・

彼らは別れのあいさつとしてパウロを抱きしめ、ほほに口づけをすると、船まで見送った・・・

パウロ・揺るがぬ決意と神の計画

1 長老たちに別れを告げ、神殿のみやこエルサレムに向けた航海が始まった――

―― 【旅路】コス島→ロドス島→ルキヤ地方の港の商業都市パタラ→

2 そこに停泊中ていはくちゅうだった、フェニキヤ州行きの船に乗り替えて出航した。

3 北側に見えるのはキプロス島・・・それを横目に、地中海をいざ、シリヤ州に向けかじをとった。

まず、船の積み荷を降ろすべく、港のみやこツロに立ち寄った。

4 港のみやこツロ――

このみやこで出会ったイエスの従者クリスチャンのもとに、私たちは7日間ほど滞在した。

――!――

(そ、そんなのあんまりだ!!!)

「パウロ、行っちゃだめだッ!!!」

そこのイエスの従者クリスチャンたちは、神殿のみやこエルサレムで、パウロの身にどんな災難が待っているか、神の霊ホーリースピリットから聞いたのだ。

5 しかし、出発の時は来た――

船に戻った私たちは、次の地に向けて旅を続けた。出発を目前にし、港まで一緒に来た、女、子どもに至る、すべてのイエスの従者クリスチャンたちと共に熱く祈った。 6 別れを告げ、乗船する私たちを港のみやこツロのイエスの従者クリスチャンたちは手を振って送ってくれた。

7 次にたどり着いたのは、港のみやこトレマイ――

この町のイエスの従者クリスチャンたちに挨拶をし、1日を共に過ごした。 8 私たちは、翌日出発し、港湾こうわん都市カイザリヤに到着した――

港のみやこトレマイから見て南に位置するみやこだ。

さっそく、最高の知らせゴスペルを広めていた助人たすけびと七人衆の1人、ピリポと会い、彼の家に滞在した。 9 ピリポには、未婚の娘が4人いた。彼女たちは、“神の言葉を預かる能力”すなわち預言の賜物ギフトを持っていた。

10 滞在し始めてから数日後――

アガボという預言者がユダヤ地方からやって来た―― 【15年前に飢饉ききんを預言したあのアガボだ。聖書:使徒11:27-29より引用】

11 来るやいなや、パウロのベルトを借り、自分の手足をギュッとしばりあげたアガボ。

「パウロよ、神の霊ホーリースピリットはこう語っとるぞ!『エルサレムのユダヤ人たちが、このベルトの持ち主を縛り上げ、神を知らん者たちに引き渡す』とな!」

12 これを聞いた私たち、そして他のイエスの従者クリスチャンたちは、神殿のみやこエルサレムに行かないようにと必死になってパウロに頼んだ。

13 「なぜ泣いて、私の決意を揺るがそうとする・・・?私はな、王・イエスの名のためなら、エルサレムで投獄とうごくされるばかりか、死ぬ覚悟だって出来ている・・・!!!」

14 確固たる決意は変わらない。どれだけお願いしようとも、エルサレム行きを止めることはできなかった。

「イエス様の計画通り、ことが進んでいくように・・・」

とどまるようにとうことをやめ、神の計画遂行すいこうのために祈った。 15 私たちは準備を整え、神殿のみやこエルサレムへと進んだ――

16 港湾こうわん都市カイザリヤ出身のイエスの従者クリスチャンも数名、旅に加わった。彼らは、初めの頃にイエスの従者クリスチャンになった1人、キプロス人のマナソンの家を宿やどにと案内してくれた。

事実無根のうわさ・・・

17 神殿のみやこエルサレム――

「おっかえり〰〰」

みやこにいた兄弟姉妹クリスチャンたちは、私たちに会えたことを非常に喜んでくれた。

18 翌日――

パウロは私たちと一緒にエルサレムの教会指導者である、ヤコブを訪ねた――

「ヤコブー!」

「おぉパウロ!!!」

そこには、長老たちも、全員集結しゅうけつしていた。 19 あいさつを交わすと、パウロは、自分たちを通して神がユダヤ人以外の人たち、すなわち外国人の間に起こした素晴らしい出来事できごとを一から伝えた。

20 身を乗り出して聞いていた指導者たちの心は躍り、神を讃えた!

――「同志、パウロよ・・・知っての通り、何千というユダヤ人がイエスを信じ始めているが、その多くはいまだに掟を徹底すべきだと考えている。 21 そんな中、パウロが外国に住むユダヤ人に対し、『子どもへの割礼かつれいから何までやめるように教え、掟に従うのをやめさせている』と事実無根じじつむこんうわさを耳にしているんだ・・・

22 この町にいる、ユダヤ人のイエスの信者クリスチャンたちは、遅かれ早かれ、あなた方が、ここエルサレムに来ていることを知るだろう。 23 だから我々の言う通りにしてほしい・・・ここに神へ誓いを立てた者が4人いる―― 【この誓いはナジル人の誓願せいがんだろう。一定の期間(7~30日)、神に特別なことをして身を捧げる式。聖書:民数記6:1-21を参照】

24 この4人と一緒に<清めの儀式>費用を出してやるんだ―― 【清めの儀式:ナジル人の誓願せいがん終了の儀式である】

それを見れば、うわさで聞いたパウロの働きが、誤った情報だと証明できる!なんせ、その働きのおさであるパウロ自身が、掟に従っているのを目にするんだ! 25 外国人のイエスの信者クリスチャンについては、われわれの決断を記した手紙をすでに送ってあるから心配はいらん。

―偶像に捧げられたものを食べない

―絞め殺された動物の肉や

―血が残ったどんなたぐいの肉も食べない

―結婚した異性以外とセックスをしない」

暴徒化する群衆

26 翌日――

パウロは、4人の男を連れ、<清めの儀式>に参加した。神殿に行き、儀式終了の日程を発表した。最終日には、パウロが4人それぞれの捧げ物ささげものの代金を支払う―― 【これで、パウロが神殿を支援していることをあらわにしたかったのだ】

27 7日後、儀式最終日――

いよいよ儀式も終わろうかという時のことだった。アジヤ州から来たユダヤ人が、神殿にいるパウロを見かけ、そこにいた人たちへ茶々を入れ始めた。

「みなさん!見てください!あの悪党がここに!あれが例の反逆のおさですぞ・・・!!!」

これを聞いた人たちは暴徒ぼうとと化した。

「オラ゙ァ〰〰!」

とパウロをつかみにかかった。

28 「イスラエル国の同志よ、力をかしてくれぇぇぇ!掟や私たちユダヤ人、そしてこの神殿へ反逆をうながす例のヤカラはコイツです!こんなとんでもないことをどこへ行っても教えているんです!今度は、ギリシャ人たちを神殿に連れ込み、この神聖な場所をけがそうとしておりますッ!!!」

声を荒げるユダヤ人たち。

29 ・・・・・・アジヤ州から来たユダヤ人たちは、外国人であるトロピモがパウロと一緒にエルサレム街にいるのを見たのでこう言った―― 【彼らは外国である港のみやこエペソ出身のトロピモを宮の神聖な領域に連れてきたのだと勘違いし、怒り心頭した。掟ではユダヤ人以外の外国人は、神に認められてない者とされていたからだ】

30 怒りはまたたに町全体へ・・・!怒り狂った人たちが神殿になだれ込む!捕えらえたパウロは神殿の外へ引きずり出された途端に門が閉ざされた!

31 ――パウロが今にも殺されそうになっているとき、神殿のみやこエルサレムが、混乱のうず只中ただなかだという情報が、ローマ軍司令官に届いた。

32 「なにッ!?すぐに出動だ!」

司令官は、軍の将校や兵士を連れ、群衆が群がる場所に駆けつけた。

「――!――」

司令官と兵士たちに気付いた群衆は、パウロを滅多打めったうちにしていたその手を止めた。 33 司令官はパウロに近寄ると、彼を逮捕した。

「こいつを2本の鎖で縛り上げとけ!!」

「はッ!!」

兵士にそう命じた司令官は、そのまま群衆の方へ向き直った。

「一体何事だ!?こいつは何者だ、何をした!?」

34 「%+:★¥※◎△・・・!!!」

一斉に大声でそれぞれが勝手なことをしゃべりはじめる・・・

「あ゙ぁ〰!もういい、そいつを軍の建物へ連れてゆけ!」

この騒ぎのせいで、まったく真相の把握ができない司令官は一旦、パウロを連行することにした――

35 連行中、こぞってついて来るユダヤ人の群衆・・・

「ヤツを殺せェ〰〰!」

「ひぃッ!」

ぞっとした兵士は、思わず声を発した。階段に到着した時には、パウロを抱えて運ばなければいけなくなるほどに。 36 というのも、群衆はまるで獣のように血相を変え、今にもパウロに襲いかかりかねなかったからだ。

37 兵士たちがパウロを連れて軍の建物へ入ろうとした時だった――

「司令官殿・・・一言いいでしょうか・・・?」

「うおっと!君はギリシャ語を話すのか? 38 勘違いか!ちょっと前に、反乱を犯し、4千人もの武装テロリストを連れて荒地へ逃亡したあのエジプト人だと思っていたんだが・・・」

39 「いえ、私はキリキヤ州のタルソ出身で、主要都市の市民です。どうか、彼らと話をさせてください・・・!」

パウロは真実を伝えた。

40 司令官が承認したので、パウロは階段に立った。まずは、群衆を静めるために手を振った・・・・・・

すると、めちゃくちゃだった群衆が少しずつ落ち着きを取り戻した。そして、パウロは群衆に向かってアラム語で語り始めた。

パウロの演説

1 「イスラエル国の同胞たちよ。そして、指導者の皆様、私の言い分を聞いていただきたい!」

2 「!!!」

パウロがアラム語で話し始めたのを見て、しーんとしたユダヤ人たち。アラム語は、この地方に住むユダヤ人の第一言語。

3 「私は、キリキヤ州タルソ出身のユダヤ人です。タルソで育ち、ガマリエル先生のもとで祖先の掟を徹底的に教えてもらいました―― 【ガマリエル師匠はユダヤ人の中で最も有名な教師の1人だった】

ここにおられる皆さんと同じように、神を熱心にうやまっていました。 4 事実、イエス王の道に従う人たちを迫害し、私のせいで死んだ人もいたほど・・・男、女、見境みさかいなくとらえては、投獄とうごくしました・・・

5 これについては、大祭司や政府役員の方たちも証言できることです!私は、まさにその大祭司方から商業都市ダマスコにいるユダヤ人宛ての手紙を授かりました。

そこにいるイエスの従者クリスチャンに罰を与えるため、逮捕してエルサレムに連行する権利書です」

パウロの証、逆鱗げきりんに触れる

6 「それはちょうどお昼のことでした。商業都市ダマスコまであと少しといったところにさしかかると突然、突き刺さるような天の光が私の辺り一面を照らしました! 7 地面に倒れ込むと、声がしました!

8 気が動転しながらも、尋ねました!

すると、声の主は、

『おまえが攻撃しているナザレ村のイエスだ・・・』

9 私に同行していた者たちには、理解できない声でしたが、彼らも同じ光を目の当たりにしました。

10 私は、と慌てて尋ねると、『立ち上がってダマスコへ行け。おまえのすべきことは、そこで知ることになる・・・』と、残して消えたのです・・・!

11 私は、その光によって、視力を完全に失い、同行していた者たちにダマスコまで連れて行ってもらいました。 12 ダマスコに着くと、アナニヤという男が私のもとに来ました。神を敬い、掟に従う彼は、ダマスコに住むすべてのユダヤ人にうやまわれている方でした。

13 彼は私にこう言いました。

『わが兄弟、サウロ・・・頭を上げ、もう一度見えるようになれ!』

アナニヤが私のところに来てそう放った途端とたんに、パッと見えるようになったんです!!

14 さらにアナニヤは言いました。『私たちの先祖がたたえてきた神が、その計画を知る者としてあなたをはるか昔から選んでおられた。神はあなたに、救世主キリストを見、彼の言葉を聞く特権を与えた。

15 あなたは、すべての人に対し、“神の忠実な使者”として、見聞きすることを伝える証人となる! 16 ぐずぐずしているヒマなどない。立ち上がり、イエスが救ってくれることを信じ、洗礼バプテスマを受け、犯した過ちを完全に洗い流してもらうのです』

17 このあと、私はエルサレムへ帰り、神殿で祈っていると、ある聖なる幻ビジョンを見ました!

18 なんとそこにイエスが現れてこう言ったのです。

『今すぐ、エルサレムを離れろ。ここにいる人たちは、おまえが語る、俺の真理を受け入れない』

19 私は言いました。

『で、でもイエス様!私は、あなたについていく者をとらえ、投獄とうごくする者として、知られているんですよ・・・!あなたの信者クリスチャンたちを見つけ出して逮捕するために、すべてのユダヤ集会所シナゴグを回り尽くしました・・・ 20 そ、それだけじゃない!あなたの証人、ステパノが殺害された時、私もステパノの死に同意してその場に立っていたんです!彼を殺害していた男たちの上着を預かり、荷物番まで名乗り出たほどです・・・』

21 しかし、イエスは私にこう言った。

『行け!!おまえを遠い、外国人のもとへ遣わす!』と・・・」

22 「こぉのぉやぁろぉ〰〰!!!こいつに生きる価値はねぇ〰〰!!!」

「うぉ――――――!!!」

パウロが最後の部分を言い終える頃には、民衆は再び怒り狂い、暴徒ぼうとと化した・・・ 23 彼らは叫び続けた。

びりびりびりィ〰〰自分の服を引き裂き、砂をまき上げ、怒るさまは、野獣がごとく。――

24 真相をつかむため、司令官はパウロを軍の建物に連行し、拷問ごうもんするようにと兵士たちに命じた・・・。

なぜ民衆がこれほどまでにパウロを敵視し、怒り狂ったのか真相をつかみたかったのだ。

25 「へへへ、こいつぁいてぇぞぉ・・・」

兵士らはパウロをギュッと縛り、打ち叩く準備を整えていた。

「有罪が確定していないローマ市民を、拷問ごうもんにかける権利はあるんですか・・・?」

パウロは、隊長に尋ねた。

26 「なに゙ッ!」

隊長はすぐに手を止め、すっ飛んで行った。向かうは司令官のもとだ。

「失礼します!!・・・司令官、承知の上ですか?!連行した男はローマ市民でございますぞ!」

「な、な゙にぃ・・・!!!」

27 司令官は本人の口から聞くべく、パウロのもとへやって来た。

「答えるんだ・・・。あなたは、本当にローマ市民なのか?」

「はい」

28 「私は、ローマ市民になるために大金をはたいたんだ・・・!」

「私は生まれながらのローマ市民です」

29 兵士らは、すぐさま予定していた拷問から手を引き、パウロを解放した・・・それでも不安がつきまとう司令官。

なんせ、有罪判決の下されてない、ローマ市民権保持者をすでに鎖でしばりあげてしまっていたからだ。

サドカイ派とパリサイ派のパウロ取り合いっこ

30 翌日――

なぜパウロがユダヤ人たちに告訴されたか知ろうと腹を決めた司令官は、大祭司らをはじめとする、最高議会のメンツ一堂を召集した。

パウロの鎖は解かれ、最高議会の前に立たされた・・・・・・

1 そこには議員が勢ぞろいで座っている・・・緊迫きんぱくした空気の中、パウロが口を開いた。

「同胞のみなさん、私は良心にたがわず、神の前で恥じのない生き方を心がけて今日この日まで生きてきました・・・」

2 「そやつの口を打てぃ」

大祭司アナニヤは、話の最中にパウロのそばに立つ者へ命じた。 3 すかさずパウロは――

「あなたは神によって打たれる。汚れた壁に上塗りされた白いペンキのように、上辺だけの“あなたを”だ。掟にのっとって裁く席に座っているあなたが、私を打てだと?掟を破っているのは“あなた”ではないか・・・!!!」

4 「神様に選ばれし大祭司を侮辱ぶじょくするとは、どういうことだッ!!!」

強く反応したのはパウロの側に立つ者。

5 「兄弟よ、この方が大祭司だとは知りませんでした・・・確かに『あなたの民の指導者を、悪く言ってはならない』と聖書にある・・・」―― 【聖書:出エジプト記22:28より引用】

6 周りを見渡すパウロ。(なるほど・・・)この議会に、サドカイ派とパリサイ派の者たちがいることを見て突然大声を発した。

「兄弟よッ!!!私も、私の父もパリサイ派!私は今、人が死から復活することを信じるがゆえに裁きにかけられているのだ!!!」

7 その途端!

%+:★¥※◎△・・・・・・!!!

パリサイ派とサドカイ派の間で大きな言い争いが起き、議会が真っ二つになったではないか!

8 サドカイ派――死後の世界がないと信じている。死んだ人は、体を持って生き返ることもなければ、天使やら霊の見えない姿として生き返ることさえないと。

パリサイ派――死後の世界があると信じていた。体を持ってか、天使や霊などの形は問わず生き返ると。

9 だんだんと大きくなるユダヤ人たちの声・・・パリサイ派の掟の学者が数人立ち上がった。

「私どもには、この男をとがめるに値する罪状は見当たりません!きっと、天使、あるいは霊に語られたのでしょう!」

10 「なんですとォ〰〰!」

「わたせぃ!!!」

「いーや、こっちにわたせぃ!!!」

オオオ〰〰!!!

「こ、このままじゃ引き裂かれてしまう!直ちに確保しろッ!」

「はッ!」

議論は闘いへと発展し、パウロの体がバラバラに引き裂かれてしまうのではないかと、気が気ではなかった司令官は兵士に命じた。下りていってユダヤ人からパウロを引き離し、軍の建物にかくまうようにと。

11 次の日の夜――

王・イエス本人がパウロのそばに現れた・・・

「――勇敢であれッ!俺についてエルサレムの民によく語った!首都ローマでも同じように語るんだ――!!!」

パウロ暗殺計画

12 翌朝――

小鳥のさえずりが聞こえてくる中、ヒソヒソと何かを企む人影が・・・

それは、パウロを殺そうと計画するユダヤ人の集団だった・・・!

彼らは、神に誓った。パウロを殺すまでは断じて、飲み食いをしないと。 13 この計画にたずさわったのは、40人強。 14 誓いを立てたユダヤ人グループの中から数人、計画遂行けいかくすいこうのために祭司たちやユダヤ長老のもとへ出向いた――

「お邪魔します」

「何事だね・・・?」

「我々は、パウロを殺すまでは飲み食いしないと誓いました・・・! 15 そこでお願いが・・・最高議会のみなさまから司令官に伝えていただきたいのです。

と言って、みなさんのところへ導き出してほしいのです。彼が連行される道中、我々が待ち伏せしてあの無礼者を殺してみせます・・・!」

16 (な、なんだって!!!)この場には、パウロのおいもいた。おいはすぐさま、パウロがいる兵営に駆けて行った。

「た、大変だよ、おじさん!」

「どうした・・・?」

うん、うん・・・・・・

パウロのおいは、見聞きしたことをすべて、洗いざらい伝えた。

17 「隊長殿」

「なんだ?」

パウロは1人の百人隊長を呼び寄せた。

「この青年を司令官のもとへ連れて行ってください。司令官宛ての言伝ことづてがあります」

18 百人隊長はパウロのおいを、司令官のもとへ連れて行った――

「失礼します!」

「どうした?」

「はい、獄中ごくちゅうのパウロより、この青年を閣下のもとへ連れて行くよう、頼まれました!なんでも言伝ことづてがあるとのことです」

「はい、司令官と内密にお話しがしたいのですが・・・」

「よかろう」

19 青年を連れた司令官は、2人になれる場所へ移った。

「話とは?」

20 「明日、数人のユダヤ指導者がパウロを議会に連れてくるようにと司令官に願い出ます。先日に続き、パウロに質問をしたいと言いますが、この願い出には裏があります・・・! 21 彼らを信用しないでください!!!40人を超える者たちがパウロを待ち伏せし、殺す策略です!

パウロを殺すまでは飲み食いしないと、神に誓いを立てているほどです!彼らに残るは、あなたの許可のみです・・・!」

22 「いいか、やつらの策略を打ち明けたことは、ここだけの話だ・・・!」

司令官は、青年を送り出すと同時に事の重大さが身にしみた。

400名の兵士に護送されるパウロ

23 司令官は2人の百人隊長を呼んだ。

「今晩9時、パウロを連れ、港湾こうわん都市カイザリヤへ向かう。歩兵を200名、騎兵きへいを70名、また槍兵やりへいを200名同行させる準備を整えろ。 24 パウロがペリクス総督のもとへ無事届けられるように、彼が乗る馬を数頭用意しておけ!」

「はッ!」

25 司令官はパウロの件を手紙にしてペリクス総督に宛てた――

26 ――手紙――

クラウディオ・ルシヤよりペリクス閣下へ

ごあいさつ申し上げます。

27 ユダヤ人たちがパウロを捕え、殺害しようとしました。しかし、彼がローマ市民であることが判明したため、兵士らと共に彼を救出きゅうしゅつした次第でございます。

28 彼らがなぜ、パウロを責めていたのかを知るため、ユダヤ指導者を集めた議会にパウロを連れていきました。

29 分かったことは次の通りでございます。ユダヤ人たちは、パウロが過ちを犯したと主張しましたが、それはユダヤ人独自の掟に関する事柄ことがらであり、投獄や死刑に相当するものではありませんでした。

30 ユダヤ人たちが彼の殺害をくわだてていることを知ったため、彼を閣下のもとへ送ることにしました。

また、彼を責め立てているユダヤ人たちには、直々に閣下をたずね、訴えるようにと言い送りました。

――おしまい――

31 その夜――

ザッザッザッ・・・・・・

指示に従った兵士たちは、パウロをみやこアンテパトリスへ連れて行った。神殿のみやこエルサレムと港湾こうわん都市カイザリヤの間にあるみやこだ。

32 翌日――

「それでは、我々はここで失礼する」

70名の騎兵きへい隊以外の槍兵と歩兵たち計400名の兵士は神殿のみやこエルサレムの兵営へ引き返した。

33 70名の騎兵きへい隊はパウロと共に港湾こうわん都市カイザリヤに入り、ペリクス総督のもとに着いた。

港湾こうわん都市カイザリヤ――

「ペリクス閣下!司令官クラウディオ・ルシヤより、ペリクス閣下宛てのお便りを預かっております!」

総督に手紙を渡し、パウロを彼の前に立たせた。

34 「ふむ、どれどれ・・・」

手紙を読み終えた総督はパウロにたずねた。

「そなたはどこ出身だ?」

「キリキヤ州です」

「なるほど、 35 そなたについては、起訴きそするユダヤ人たちが来てから聞くことにしよう。この者をヘロデ総督の宮殿きゅうでんへ案内し、かくまっておきなさい」

「はッ!!」

弁護士テルトロが主張するパウロの罪状

1 5日後――

大祭司アナニヤ以下数名の最高議会役員であるユダヤ指導者と弁護士のテルトロが起訴きそした―― 【ローマ法の弁護士だ】

2 パウロがペリクス総督の前に呼び出されると、弁護士テルトロは告訴理由こくそりゆうを丁寧に読み上げた――

「えっへん。偉大なるペリクス閣下。私どもユダヤ人がとぉーっても平和に暮らせているのも、あなた様の一方ならぬ、日々の労苦の賜物でございます。 3 そのため、一同、心よーり!御礼申し上げますーる。

4 さて、ペリクス閣下の貴重なお時間をいただいておりますので、単刀直入にこの男の罪状を申し上げさせていただきます。どうぞお聞き下さい。

5 このパウロと呼ばれる男は、ナザレ組のカシラでございまして、世界中をまわっては、我々ユダヤ人をそそのかし、暴動などの騒ぎを起こしているのでございますーる。

6 そのさなか、神殿をけがそうとした所を捕まえました。我々はこの危険なナザレ組を、私どもユダヤ教の掟にて裁こうといたしましたが、 7 司令官ルシヤ様がこのパウロの身柄を力ずくで奪い、取り締まったのでございますーる。

8 彼を責めたければ、ペリクス閣下のもとへ行くようにと言うのでございますーる。すべて閣下のご判断にお任せいたしますが、彼にいくつか質問をすれば、これが事実であることが明白になりますーる!」

9 「そうだ!間違いございません!」

「今申し上げた通りです閣下!」

「テルトロの言うとおりです!」

長老や大祭司、高官たちが弁護士テルトロに歓声を送った。

ペリクス総督のもと、カイザリヤで開かれた<第一の裁判>

10 ペリクス総督はうなずき、パウロの発言をゆるす合図をした――

「この国の裁判を長きにわたり、担当されてきた、閣下の前だからこそ、安心して話すことが出来ます。

11 私が神を讃えるためにエルサレムを訪れたのは、ほんの12日前のことです。これが真実かどうかは、調べればすぐにわかることです。

12 私を訴える彼らは、私がユダヤ集会所シナゴグで騒いだところを見ていません。ユダヤ集会所シナゴグであれ、街であれ、問題を起こしていないのですから。

13 彼らは、自分の訴えについて、一切証明することができないでしょう。

14 イエス王の道に従うことにより、先祖が信じ、たたえてきた神と、同じ神をたたえています。それは、彼らユダヤ人が間違っていると“思っている”道です。

また、掟に記されていること、そして預言の書に記されたすべてを信じています。

15 私はこの人たちが神に持つ希望と、同じ希望を持っています。それは、善人から悪人までのすべての人が神によってよみがえるということです。

16 それゆえに私は神の前、また、誰を前にしても正しくいようと精一杯生きました。

17 私が数年ぶりに帰ってきたのは、貧しい人を援助するための土産みやげをユダヤ人の同胞へ渡すため。また、神への供え物を捧げるためです。

18 彼らが見たのは、<清めの儀式>が終わり、お供え物を捧げていた私の姿です。

特に大人数でいたわけでもなく、騒いでいたわけでもありません。

19 いたとすれば、アジヤ州から来たユダヤ人数人です。万が一、私が間違ったことをしていたなら、彼らも一緒に私を責め立てているはずです。

20 私が最高議会の前に立たされた時、私が犯した罪をひとつでも指摘できた方がいるか、彼らに聞いてみてください。

21 私のせいで起きた騒ぎがあるとすれば、最高議会で私が『神は死人をよみがえらせると信じているがゆえに議会に呼び出された』とパリサイ派とサドカイ派を前にして叫んだ時ぐらいです」

22 「そこまで!後は、ルシヤ司令官の話を聞いてからまた、審議する」

すでにイエス王の道についてある程度理解していたペリクス総督は判決を先延ばしにすることにした。

23 「やつを保護しろ。だが、お手柔らかに」

「はッ!」

ペリクス総督はパウロの面会や差し入れの受け取りも自由にさせるよう、部下へ命じた。

ペリクス総督の政治とパウロが伝える最高な知らせゴスペル

24 数日後――

「おい、パウロをここへ連れて来い」

「はッ!」

ペリクス総督はユダヤ人である妻のドルシラと一緒にパウロを迎えた。2人でパウロが語る救世主キリスト・イエスの話を聞いた。

25 しかし、正義や道徳、また、いずれ来る“最後の審判ファイナルジャッジメント”について聞くと、冷や汗をかいた・・・。

「そ、そこまでで結構だ・・・折りをみてまた招待しよう」

26 それからも、ペリクス総督は“話がしたくて”何度かパウロを招待した。しかし・・・

(さあ賄賂わいろの話を持ちかけてこい・・・)

そう、ただ話がしたいだけではなかったのだ。

27 月日は流れ、2年が経った――

ペリクス総督はポルキオ・フェストを後継者こうけいしゃにし、ユダヤ地方を離れる事になった。

ペリクス総督は、ユダヤ人の支持を失わないようにパウロを拘束こうそくしたままにしておいた。

フェスト総督のもとカイザリヤで開かれた<第二の裁判>

1 ポルキオ・フェストの総督就任から3日後のことである――

総督は、本拠地である港湾こうわん都市カイザリヤから神殿のみやこエルサレムを訪れた。

2 大祭司やユダヤ指導者たちは、訪問中のフェスト総督を訪ね、パウロを告発した。

3 港湾こうわん都市カイザリヤに収監しゅうかんされている、囚人パウロを神殿のみやこエルサレムに引き渡してほしいと頼みこんだ。

エルサレムに向かって来る道のりで襲って殺すという暗殺計画を新たに練っていたからだ・・・。

4 「いーや、パウロはカイザリヤに残す。近々帰る予定だ。 5 どうだ、パウロとか言う男を告発したい代表者が私と一緒に来るというのは。もしおまえたちが言うような罪を犯したなら、そこで訴え、裁こうではないか」

6 フェスト総督は8日から10日、神殿のみやこエルサレムに滞在した後、港湾こうわん都市カイザリヤへ帰った。

さっそくその翌日に裁判は開かれた――

7 パウロが出廷するや否や、神殿のみやこエルサレムから来たユダヤ人たちは次々に重い罪名を挙げて告発した。しかし、証拠が不十分なことはすでに調べがついていた。

8 (やれやれ・・・)長い時間を経て、ようやくパウロの発言の番がきた――

「私は潔白です。ユダヤ人の掟を破るようなことはおろか、神殿や、ローマ法に反すようなことも一切していません!」

9 「どうだね?パウロよ。エルサレムで裁判をしないか?もちろん、私の名で行わせてもらおう」

フェスト総督は、ユダヤ人の支持を得るためにそう話した。

10 「私は今、ローマ帝王の法廷に立っています。もし裁かれるのであれば、ここがふさわしき場所です。しかし、私がユダヤ人に何一つ間違ったことをしていないことは明白で、誰より閣下がご存じのはずです。

11 万が一、死刑に値する罪状があるなら、大人しくこの身を差し出しましょう!

死から逃げようとは思っていません。しかしです、もしその告発が間違ったものなら、誰も私に手出できません!

そこで、私はカイザル帝王に・・・上訴じょうそいたします・・・!!!」

「!!!」

12 パウロの発言にフェストは驚いた。しかし総督は顧問達と協議したのち、決断を下した――

「よかろう!おまえは帝王陛下・カイザルに上訴じょうそしたのだ。ゆえに首都ローマへ送る!そこで帝王に話を聞いてもらうがよい!!!」

アグリッパ王の訪問

13 数日後――

港湾こうわん都市カイザリヤのフェスト総督のもとに就任しゅうにんを祝う2人の来客があった。

それは、アグリッパ王2世と、その妹ベルニケである。

14 2人が滞在していた数日間、フェスト総督はアグリッパ王にパウロのことを話した――

「そういえば、前任のペリクス総督から引き継いだ囚人に妙な男がいるんです。 15 私がエルサレムを訪れたとき、そこの大祭司やユダヤ指導者たちが彼を告発し、有罪判決を下すようにと要求してきたんですよ。

16 もちろん、わが国の法律で裁判もせずに有罪にすることはできないと伝えました。告訴を受けるためには、告発された側の弁論も直接聞く必要があると。 17 それで告発したがる宗教家と、その男を私のところへ連れてくるように命じ、次の日、裁判を開いたんです。

18 大祭司やユダヤ指導者から、どんな話が出てくるのかと聞いていたら、それがあまりに予想外でして。 19 彼らが非難していたことは全て、彼らの宗教と、それにまつわるイエスという男に関するものだったんですよ!

なんでも、死刑になったイエスという男が生きていると、パウロが主張しているだけでしてね。 20 このような問題に対して、どうやって真実を追及すべきか、正直頭を抱えましたよ。だからエルサレムに帰って裁判をするかと、パウロにもちかけたんです。

21 そしたら・・・帝王陛下に上訴するなどと言い出すものですからびっくり。仕方なく、帝王陛下がいる首都ローマに送る手続きが済むまで牢に入れてあるんですがね・・・」

22 「ほほぅ!その男の話、我が輩も聞いてみたいぞぃ。よいですかな?」

「え、ええ。では、さっそく明日にでも」

23 翌日――

アグリッパ王とその妹ベルニケは、軍司令官、権力者、街の著名人ちょめいじんを連れたド派手な登場をした。そして、フェスト総督はパウロを連れて来るように命じた。

24 「アグリッパ王、それとご列席のみなさま。ユダヤ人たち、さらにエルサレムおよび、ここカイザリヤの人たちはこの男について訴え、死刑にされるべきだと叫びました。

25 しかし、私の調査結果、この男にはそれに値するほどの罪はありません。しかし、被告本人が帝王陛下に直訴じきそしたいというので、彼を首都ローマに送ることにした次第です。

26 しかし、先ほど申し上げたように、この男に告訴する理由が見つからず、帝王陛下になんと書いて手紙を送ればよいか、頭を抱えています。

ゆえにアグリッパ王をはじめとする皆さんの前に連れてきました。皆さんに質問をして頂き、帝王陛下に書き送るべき内容を教えていただければと思います。 27 何の告訴理由もなく、囚人を帝王のもとへ送っては、マヌケもいいところですので、どうぞよろしくお願いします」

アグリッパ王へ。パウロの証

1 「発言を許すぞぃ。弁明するがよぃ」

とアグリッパ王。

・・・ピシッ!

手を真っ直ぐにあげ、会衆の注目を一点に寄せるパウロ。

2 「アグリッパ王!今日、あなたの前でこのユダヤ人たちの訴えについてすべて弁明できること、ありがたく思います。

3 ユダヤ人の慣習や争点・問題を大変詳しく理解しておられる方に、こうしてお話しができて幸いです。どうぞ、最後までお聞きください。

4 ユダヤ人なら、誰もが私の過去を知っています。祖国に生まれ、エルサレムに至るまでの暮らしぶりを知らない人はいません。

5 長年に渡って、私を知っている彼らだからこそ、私が熱心なパリサイ派であったことを証言したければできます。

ご存知の通り、パリサイ派は他のどんな宗派よりも厳格に掟を守っております。

6 私はただ、先祖に約束された“神の約束”を信じてるがゆえに、裁判にかけられております。

7 我々、全12部族がこの約束の実現を待ち望んでいます。

そして、この約束を信じるがゆえに、ユダヤ人は日夜にちや欠かさず神に仕えているのです。

王よ、私は同じ約束を望むがゆえにユダヤ人から訴えられております。

8 なぜ、あなた方人間は、死人を生き返らせることが神にできないと考えるのでしょう?

9 かつての私は、ナザレ出身のイエスに刃向かうためだったら手段を選びませんでした。

10 私が動き始めたのが、エルサレムにいる時でした。大祭司たちから権限をもらい、多くの神の信者クリスチャンを牢に放り込こむだけでなく、彼らの死刑が検討された時は、死刑に票を投じたほどです!

11 ユダヤ集会所シナゴグをくまなく巡っては、神の信者クリスチャンたちを迫害し、イエスを悪く言うように強制していきました。

さらには、罰を与えたこともあります。このような人たちに対する怒りがあまりにも大きく、もっと他にも探し出して痛めつけるため、ユダヤ人の町ではない都市にも出向きました」

パウロの証<授けられた使命>

12 「大祭司の許可と権威を得た後すぐ、ダマスコに向かいました。 13 その道中のことです。昼間であったにもかかわらず、天から光が射してきたのを見ました!太陽よりもまぶしい光は、私を含め、共に旅をしていた者たちまでをも包み込み、 14 全員その場に倒れ込みました。

そのとき、アラム語で話す声が聞こえてきました。

『サウロ、サウロよ、なぜ俺を攻撃する?俺と争っても、傷つくのはおまえだぞ』と。

15 私は、慌てて聞き返しました。

すると声の主は、『俺はおまえが攻撃している、イエスだ。

16 立て!!!

俺の使者としておまえを選んだ。これよりおまえは、“俺”を広める。今見ていることやこれから示すことすべてを。これがおまえのもとへ来た理由だ。

17 俺が送った先のユダヤ人や外国人の手から、おまえを守る。 18 おまえは、彼らの目を開き、真理を悟らす。彼らは暗闇から光の方へ、悪魔の支配から神のもとへ導かれる。俺を信じることによって、選ばれたすべての人たちと共に、神の相続財産を受けとることになる・・・!!!』」

パウロの証<預言されし真理>

19 パウロは続けた――

「アグリッパ王、私は天からの聖なる幻ビジョンを見たときから、従ってきました。 20 私は、『心と生き方を変え、神に立ち返らなければならない』と伝え始めました。

また、本当に人生が変わったなら、それを生き様で示すようにと教えました。

ダマスコを皮切りにエルサレム、そしてユダヤ地方の全地域に行っては、住民たちに伝えていきました。また、外国人のもとへも。

21 これが理由で、ユダヤ人たちは、神殿にいた私を捕まえて殺そうとしたのです。

22 それでも、神は私を助け出し、今日に至るまで支え続けてくれています。神の助けによって、今日、私はここに立ち、今まで見てきたことをここにいる皆さんにお話しできるのです。

ただ、私は何一つとして新しいことは言っていません。

モーセと預言者たちが、起こると預言したことを伝えているにすぎません。

23 彼ら預言者は、『神に“選ばれし王”は死に、死から復活する第一人者となる』と言いました。

また、その方が“救いの真理”という名の光をユダヤ人だけでなく、外国人にさえも照らすと言っているのです。」

王と総督に伝えられるパウロの願い

24 パウロが弁明を続けていると、フェスト総督が突然叫んだ――

「パウロ、正気かッ!!!勉強のし過ぎでイカれたかッ!!!」

25 「フェスト総督殿、私はいたって正気でございます!私が言ったことは真実であり、全て理にかなっております。

26 アグリッパ王はすべてご存じであるからこそ、自由に語ることができます。アグリッパ王の耳にも届いたと確信するのは、何もかもがおおやけで起きたからです。

27 アグリッパ王!あなたは預言者たちの言葉を信じますか?もちろん信じるでしょう」

28 「ふん、そうやすやすと我が輩をクリスチャンにできるとでも思ったかよぃ!」

アグリッパ王が口をはさんだ。

29 「簡単か難しいかは、私にとって関係ありません。

私の願い・・・それは王ばかりか、この話を聞く全ての者が、私のようになることです・・・!!!」

「この鎖に繋がれることは別ですが・・・」

と、最後に冗談めかしたパウロ。

30 ――ザッ!

アグリッパ王、フェスト総督、王の妹ベルニケ、さらに参列者全ての人が立ち上がり、 31 部屋から退場して話し合った――

「この男は、死刑、懲役ちょうえきを受けるほどの罪は一切犯していないようだな」

32 「釈放することもできるというのに・・・自らカイザル帝王を要求するとはよぃ」

こうアグリッパ王はフェスト総督に言い残した。

首都ローマへの航海、はじまりはじまり~

1 私たちのイタリヤ州・首都ローマへの航海が決まった。航海中、ローマ帝王直属の特別部隊に所属する百人隊長ユリアス隊長が、パウロと他の囚人たちの護送を担当することになった。

2 港町アドラミテオ――

私たちは、アドラミテオの港で乗船した。この船はアジヤ州各地に寄港きこうしながら航海する。

――アリスタルコ――

ここから仲間として同行することになったアリスタルコを紹介しよう。彼は港のみやこテサロニケ出身のマケドニヤ人だ―― 【アリスタルコといえば、港のみやこエペソで暴動が起きた際に、スタジアムに引きずりこまれた男だ】

3 翌日、私たちは港のみやこシドンに着いた――

百人隊長ユリアスの親切心で、パウロは現地の友人に会いに行く自由を与えられ、彼らにもてなしてもらうことができた。

4 港のみやこシドンを発ち、航海は始まった――

ビュー!ザッパーン!ビュー!

「おーい!かじをとれ―!航路を変えるぞー!」

一行は予想外に吹き荒れる向かい風と闘っていた。

(この分だと、キプロス島の航路の方が良さそうだな・・・)

一行は地中海の沿岸えんがんをなぞるように進み、風の影響の少ないキプロス島の近くを航行こうこうするルートを選んだ。

5 ルキヤ地方の港湾こうわん都市ミラ――

それから、私たちはキリキヤ州とパンフリヤ州の南の海上を通って、ルキヤ地方の港湾こうわん都市ミラに着き、乗り継ぐ船を待った。

6 「イタリヤ州行きだ。これに乗るぞ」

エジプト州の首都・アレキサンドリヤから来ていたイタリヤ州行きの船を見つけたユリアス隊長は、私たちをその船に乗せた――

7 向かい風の中で航海は容易よういではなかった。600㎞以上離れたアジヤ州南部の港湾こうわん都市クニドに向かうために何日もかけ、ゆっくりと進んだ――

「こ、これ以上は無理だ!」

「くッ、クレテ島に一度寄ろう・・・」

あまりの難航のため、これ以上進むことを断念し、別の航路に変えた――

サルモネみさきを右手に見ながら南下→東西に260㎞程度にわたって伸びる島、クレテ島沿岸部えんがんぶ→風をしのぎながら進むものの、 8 相変わらずの難航状態の中、クレテ島の港町、ラサヤのそばにあった港に着いた。その名も<安全な港>――

9 「出発からこんなに経つのか・・・」

出航からかなりの日数が経過し、嵐が多くなる、ユダヤ人の<断食だんじきの日>の時期もすでに過ぎていたため、パウロはこの先の航海について、忠告した―― 【ちなみにこの<断食の日>、ユダヤ人にとって1年の終わりにあたる特別な日、<贖罪しょくざいの日>とも呼ばれる。つまり、罪を償う日だ。この時期の海は荒れた】

10 「みなさん、この航海には多くの困難が待ち受けています。船だって、積荷だって全部ダメになるかもしれない。それだけじゃない。命を失ってもおかしくないほどの困難ですッ!」

11 ――船長と船主ふなぬしがパウロの忠告を聞き入れる様子はない。ユリアス隊長もパウロよりも船長たちの意見を信用した。

12 それには、他にも理由があった。立ち寄った<安全な港>が冬を越すには良い場所ではなかったため、誰もが出航に賛成したのだ。

<安全な港>から100㎞少々離れた漁村ピニクスであれば、冬の間、船を停泊させておけるとの考えがあった。

北東風ユーラクロンがもたらした絶望

13 「来ーた、来た来たー!!!この風を逃すわけにはいかねぇ!!!」

南からのいい風が吹き始めると、船員たちの表情が一気に明るくなった。彼らはいかりを上げて、クレテ島の沿岸ギリギリのところを進んだ――

14 ところが、北東風ユーラクロンという強風が島の方から吹き荒れた。

15 「む、無理だ、強すぎる!!!」

船は翻弄ほんろうされ、一気に押し流されてしまうではないか!

風に抵抗するのは逆に命取りだと判断した一行は、風に流されるまま航行こうこうすることにした――

16 流され続けた船はクラウダ島という小さな島の近くまでくると、島のおかげである程度、風がさえぎられた。

クラウダ島――

降り続ける大雨と強風の中、帆走はんそうに使用していた小舟を必死に引きあげる。

「い゙、うおぉぉぉ!!!」

17 やっとの思いで小舟を引き揚げると、船の周りに縛り付けて固定した。

船員は、北アフリカ沿岸にあるスルテスと呼ばれる浅瀬に乗り上げるのを恐れ、をゆるめ、風に流されるがままに航行こうこうすることにした。

18 翌日――

「海に投げ捨てろぉー!」

「仕方ねぇ!」

沈没を予感させほどの激しい嵐に見舞われ、船具せんぐを捨てて船を軽くした。

19 翌日、嵐はつづいた――

「だめだこりゃ・・・」

いかり以外の船具せんぐはすべて海に投げ捨てた。 20 来る日も来る日も続く嵐。最後に日の目を見たのはいつだったか。星々のきらめきはどんなものだったか。終わった。誰もがそう思った。

21 何日も食事にありつけないほどに緊迫した日が続いた。弱り果てている彼らの前に、パウロが立ち上がった。

「みなさん、覚えていますか?私がと忠告したことを。あのとき、私の忠告に耳を貸すべきでした。そうすれば、何も失わず、こんな苦労だってしていなかった。

22 ですが、元気のでる報告があります!船は失いますが、誰1人として死ぬことはありません! 23 昨晩、私がたたえ、信じている神のもとから、1人の天使がやって来ました。

24 その天使が私にこう告げたのです・・・

『パウロよ、恐がる必要はない!おまえは、必ずカイザルの前に立たなければならない。そして、神はあなたと乗員の命を救うと約束している』

25 ですから心配は無用!私は神を信用している。これから天使が言ったとおりのことが起きる! 26 その代わり、この船は助かりません・・・!!!」

27 14日目の夜――

未だに私たちは地中海中央部のイタリヤ州とクレテ島の間のアドリア海を漂流していた。

「!」

船員たちは、陸地に近付いているのを感じ、 28 先端に重りをつけたつなを海に投げ入れると、水深は約40mになった。

29 船員たちは、暗い夜の間に浅瀬に座礁ざしょうするのを恐れ、海にいかりを4つ投げ入れて夜明けの訪れを祈った――

30 ガタンッ!スルスルスルーッ!

「うまくごまかせよぉ」

数人の船員クルーが船からの脱出をはかっていた。他の船員にはいかりを降ろしているように見せかけながら、以前船上に上げた脱出用の小舟を海に降ろしていたのだ! 31 それに勘づいたパウロは、事の次第を隊長や兵士らに伝えた。

「もし、彼らが脱出すれば、我らの生きる望みは絶たれますよ」

32 「な゙ッ!」

ザシュ!シュルルルルル、バッチャーン!

兵士らは、急いでつなを切り、海に落ち行く小舟を見届けたのだった。

33 夜明け前――

パウロは乗員みんなに何か口にするように勧めた。

「この2週間、みなさんはこの時を待ち続け、何も口にしていない。 34 どうか、食べてくれ!生き抜くためだ!何があろうと、髪一本失うことはない!!」

35 こう言うとパウロはいくつかのパンを持った。全員の前で神に感謝を捧げると、ちぎって食べ始めた。 36 それを見て、気が向いたのか、他のみんなも食べ始めた。 37 船には276人が乗っている。 38 私たちは、心ゆくまで食べてから、船を軽くするため、食糧を海へ放り捨てた。

謎の島に漂着

39 夜明け頃――

「おいっ!島だ!島!みんなー!!島が見えたぞー!!!」

船員らは島を発見したが、何という島までは特定できなかった。砂浜のある入り江が見えたので、そこに船を寄せることにした。

40 ザシュッ!ブチッ!シュルルルルルーッ

降ろしていたいかりつなを切り捨て、かじを固定していたつなをほどき、前の帆を風に向かって張り、浜に向かって進んだ――

41 ガッゴーン!ズゴゴゴゴォォォ!!

「し、しまった〰〰!!!」

あと少しというところで、船が座礁ざしょうした。船の先が砂にめり込み、動かない・・・

バッシャ――――――ン!バキンボキン!グガガガゥァッゴーン!!!

直後に船の後ろから大波が襲いかかり、船の後ろは粉々に砕かれた。

42 「に、逃げろ〰〰!!!」

船の上は大混乱。

(こ、殺すしかない!!!)兵士たちは、囚人たちが泳いで逃亡しないよう、殺そうとした。

43 しかし、ユリアス隊長はそれを許さなかった。パウロも囚人。つまり許可を下せば、パウロも一緒に殺されてしまう。ユリアス隊長はパウロに生きていてほしかったのだ。

「聞けー!!!泳げるものは海に飛び込み、陸にあがるのだぁぁぁ!!!」

ユリアス隊長は、囚人たちに命じた。

44 泳げない者は船にあった板切れを持って飛び込んだ。

――バッチャーン・・・バッチャーン・・・

海岸に波がうちつける音・・・

しめった砂の感覚・・・

そこには無事、陸に辿り着いた者たちの姿が・・・

そう、276人全員、生き延びたのだ!

毒ヘビに噛まれるパウロ

1 マルタ島――

イタリヤ州南部にあるシシリー島から、さらに南へ100㎞ほど離れた島であった。漂着後、マルタ島であることをつきとめた。

2 現地の人は私たちにとても親切にしてくれた。雨が降って寒い時は、彼らが火をいて全員をもてなしてくれた。

3 ――火をくため、枝を集めては火にくべていたパウロ。

シャ〰〰〰〰!!!

「!!!」

パウロの手に毒ヘビが噛みついたではないか!

枝に隠れていたが熱で飛び出してきたのだ。

4 「この人は、さ、殺人犯に違いない!!!海では生き延びたが、正義の女神が彼の“生”を求めておらぬ・・・!!!」

島の民はパウロの手にぶら下がった毒ヘビを見てそう言った。

5 「ん?」

パウロは何事もなかったように、ヘビを火の中に振り落とした。

6 島人は思った。今にも彼の手がれ上がり、苦しむか、倒れて死んでしまうだろうと。しかし、いくら待ってもパウロに変化がない・・・

「こっ、この人は神様だッ!!!」

「う、うおぉぉぉ!!!」

島人の考えはぐるりと一変。

7 そこの近くに、島一の権力者ポプリオというローマ人の敷地があった。

――島一の権力者ポプリオ――

彼が私たちを自宅に招いてくれたので、そこに3日間滞在した。私たちがいる間、とてもよくしてくれた。

8 ところで、島一の権力者ポプリオの父親は、重いやまいわずらっていた。辛い発熱と下痢に苦しんでいたのだ。

パウロが彼を訪ね、父親の上に手を置いて祈ると、その重いやまいが治った! 9 この一件があってからというもの、島のあらゆる病人がこぞってパウロのもとに来たので、来る者拒まず治してあげたのだった――

10 3ヵ月の滞在を終えて出発の準備ができると、島人は、パウロたちにさまざまなものを捧げ、敬意を示した。

首都ローマ突入!

11 再出発――

私たちが乗船したのは、冬の間マルタ島に停泊していたエジプトの首都・アレキサンドリヤから来た船だ。船首にはギリシャ神話の双子の神・カストールとポルックスの像が付いている。

12 そこからの旅路はこうだ――マルタ島→160㎞→シシリー島首都シラクサに3日間滞在→ 13 イタリヤ州南部にある港湾こうわん都市レギオンにたどり着いた――

翌日に南西風なんせいふうが吹き始めたおかげで、すぐに出航できた。日中にはイタリヤ州の港湾こうわん都市ポテオリに到着――

14 そこで何人かのイエスの信者クリスチャンたちに会った。彼らにされ、彼らのもとに1週間滞在した後、遂に到着したのは、

ローマの首都――

15 ローマの首都にいるイエスの従者クリスチャンたちは、私たちの到着を耳にした。

私たちがまだ、アピア街道のポロ市場にいる時、約50㎞北にあるローマ市街からイエスの兄弟姉妹クリスチャンのグループがわざわざ迎えに来てくれた。

また、ローマ市街から50㎞ほど離れた街、三ッ宿トレス・タベルネまで迎えに来てくれた人たちもいた―― 【タベルネは、旅の者の休憩場所として、宿やお店が密集した場所だ】

パウロはイエスの信者クリスチャンたちに会えたことを神に感謝した。とっても励まされ、勇気づけられたからだ。

首都ローマでのパウロ

16 世界の中心都市ローマに到着――

パウロは1人で生活することが許された。ただし、護衛が1人、共に住むことになった。

17 3日後――

パウロはユダヤ人の有力者たちを呼び集めて話した――

「兄弟たち、私は同胞であるユダヤ人にも、先祖のしきたりに対してだって何1つ、反することはしていない。それにも関わらず、エルサレムで捕えられ、ローマ人の手に引き渡された。

18 彼らは私を尋問じんもんしたが、死刑に値する理由を何1つ見つけることができなかった。ゆえに、私を釈放する方向で準備を進めていた。 19 しかし、その場にいたユダヤ人がこれに猛反発した為、私はカイザル帝王に上訴すべく、首都ローマに来ざるを得なくなったという訳なんだ。

私は、同胞を何かの過ちで訴えようとしているのではない。 20 だからこそ、こうしてあなたがたと会って、話をしたかった。私は、イスラエル国の希望を信じているがゆえに、鎖につながれているのだ・・・!」

21 首都ローマのユダヤ指導者たちはパウロに答えた。

「私たちはユダヤ地方から、あなたに注意するような手紙は受け取っていません。それらの地を訪れたユダヤ人から何の報告も受けていませんし、いかなる悪いうわさも耳にしていない!

22 だから我々は、あなたの話を聞きたい・・・この新しいグループクリスチャンについて悪く言う人がどこにでもいるということは、我々もよく知っていますから」

23 パウロとその他のユダヤ人たちは、別に日を設けて会うことにし、その日には、前回よりも多くのローマ市民のユダヤ指導者がパウロの家に集まった。

パウロは丸一日かけて彼らに語り、神の王国キングダムについて説き明かした。

掟と預言の書を用いて、そこに記されている救世主キリストがイエスであり、神の約束が成し遂げられたことを彼らに教え、確信へ導いたのだった。

24 パウロの言うことを、あるユダヤ人は信じ、ある者は信じない。 25 彼らの間で言い争いが生じ、立ち去る寸前のこと。パウロはこう付け加えた――

「あなたがたの先祖に対し、預言者イザヤを通して神の霊ホーリースピリットが語ったことはまことだった。それは、

26 『この民のところに行って語れ。

あなたは聞くところまで聞くが、決して悟ることはない。

あなたは見るところまでは見るが、本当の意味では見えない。

27 この民は悟ることができない。

耳はふさがり、目は閉じているからだ。

目があっても見えず、耳があっても聞こえず、頭があっても理解ができない。

もし、悟ることがあれば、彼らは私に立ち返る。

そうすれば、私は間違いなく、彼らを癒そう』―― 【聖書:イザヤ書6:9-10より引用】

28 あなたがたユダヤ人に言っておきますが、神は救いの手を、外国人へ送られた。彼らは耳を傾けて聞くからだ・・・!!!」

29 ポールはこれを言った後、ユダヤ人はまだお互いに大きな議論を残していた―― 【後世のギリシャ語の使徒の写本の中には、29節も付け加えている】

30 さて、それからというもの、パウロは自分で借りた家に2年住んだ。

――「パウロさーん、こんにちは!」

「どうもこんにちは!」

「おぉ、よく来たな、ささ、座った座った・・・」

「ハハハハハハっ・・・・・・」

――2年の間、自分をたずねてくる人を、いつでも、そして誰彼だれかれ構わず歓迎したパウロであった。

31 訪れた者に神の王国キングダム救世主キリストである王・イエスについて教えた。パウロは、大胆に語り続けたが、止める者は、誰もいなかった。